お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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タイトルが……タイトルが何も思いつかない……(なお最近の数話ずっと)



第393話 アスキン生存ルート開拓チャート

「消し飛べ! 狛村左陣!!」

「ぐおおおおおおおっっっ!!!!」

 

 装甲内部仕込まれていた無数のミサイルを展開すると、BG9(ベー・ゲー・ノイン)は狛村目掛けて一斉に放った。

 本来ならば精々が弧を描く程度の単純な軌道でしか飛ばないはずのそれらは、彼の持つ動作(ザ・キネクト)の能力によって一本一本が生き物のような複雑な軌道を描きながら狛村へと突き刺さり、爆発していく。

 天譴を操り防御に徹してこそいるもの、それでもその破壊力は狛村の肉体を易々と食い破らんほどだ。

 爆破の熱が毛皮を焦がし、その奥に守られた皮膚までを黒く焼いていく。ミサイルの破片は肉体へと突き刺さり狛村の身体へ出血を強いらせ、本人は爆破の衝撃で吹き飛び地面を転がる。

 

「これまでのデータより、未だ死していない可能性が極めて高い。故に攻撃を続行する……今度こそ消し飛べ!」

「ぬ、ぐあああぁぁぁっっ!!」

 

 すでに幾度もの攻撃を受けており、狛村の肉体は満身創痍そのものだ。だがそれでもBG9(ベー・ゲー・ノイン)は攻撃の手を緩めることは無かった。

 仮面の奥に光るモノアイから霊圧の光線を放ち、狛村を撃ち貫こうとする。

 狛村は、地に伏せながらも天譴を掲げて光線を防いだ。障害物と衝突したことで光線は大爆発を起こし、倒れていた狛村の身体をさらに吹き飛ばす。

 

「ハァ……ハァ……ぐ、ううぅっ……!!」

「対象の霊圧……未だ、健在……」

 

 それでもなお、狛村は立ち上がる。

 片手を膝に付けながら身を起こし、痛みに震える肉体で天譴を構えるその姿に、BG9(ベー・ゲー・ノイン)はモノアイが僅かに揺らめかせた。

 その輝きが意味するのは、相手の生命力に対する怒りと苛立ちの感情だ。

 

「狛村左陣……なんなんだお前は!! 何故だ! どうして死なぬ!! とっと死んで卍解を明け渡せ!! 私に肉体を寄越せええぇぇっ!!」

 

 卍解を通してだが、失ったはずの肉の身体をもう一度操れるという喜びと、それが不可能となったことによる落胆。

 なにより生命力を漲らせる狛村の姿が、改造人間(サイボーグ)となった彼の目には憎くて仕方がないのだ。

 ゆえにその命を奪い取り我が物にしようと、霊子兵装のガトリングガンを乱射する。

 

「死ねぬ……儂はまだ、死ぬわけには行かぬのだ……東仙(とも)の為にっ!!」

 

 迫り来る無数の銃弾を、地面を天譴で叩いて衝撃波を生み出すことで打ち落としながら、狛村本人は瞬歩(しゅんぽ)にて別の場所へと移動する。

 しかしBG9(ベー・ゲー・ノイン)のセンサーはその動きを即座に感知していた。回避する動きに合わせて金属の触手を伸ばし、狛村の肉体を刺し貫こうとする。

 

「ぐうっ……! なんのっ!!」

「むっ……!?」

 

 狛村は迫り来る触手へ向けて自ら手を伸ばすと、ワザと自らの腕を貫かせた。

 そのまま貫かれた腕で金属触手を掴み取ると、力尽くでBG9(ベー・ゲー・ノイン)の身体を引き寄せる。接近させて天譴を確実に当てるためだ。

 

「もらった!!」

「甘い」

「ぐっ!?」

 

 僅かに引き寄せられたものの、BG9(ベー・ゲー・ノイン)は自ら金属触手を切り落とすことで拘束から易々と逃れる。

 重さが消えたことで狛村の体勢が一瞬崩れると、その隙を逃さずさらなる金属触手を伸ばして追い打ちを掛けた。突き刺すのではなく切り裂くように蠢く金属触手は狛村の身体を浅く、けれども確実に傷を刻む。

 

 ――まだか……まだなのか……!?

 

 新たな傷の痛みに表情を歪ませながらも、狛村は臆することなく再び立ち上がった。だが決して攻め込むことはなく、油断なくBG9(ベー・ゲー・ノイン)の様子を伺う。

 その胸中の「いつに卍解を取り戻せるのだ!?」という感情を押し殺しながら。

 

「何を企んでいるのかは不明だが、諦めることを推奨する……死ね! 死ね死ね死ね! 死んで卍解を私の物にさせろおおぉぉっっ!!」

 

 機械のような冷静な言葉を発したかと思えば、次の瞬間には激情を露わにしながらガトリングガンを再度放ってきた。

 防御主体の戦い方を続けていることは、BG9(ベー・ゲー・ノイン)もとっくに気付いている。

 だがまさか"封印された卍解を直接解放に行っている"とまでは思っていないようだ。仮にその可能性に気付いていれば、もっと苛烈な――それこそ自らの身体ごと自爆するような手段を用いてでも、狛村を倒すことを優先していたはずだ。

 なにしろ彼の身体は機械なのだ。自爆しても修理すれば問題は無いのだから。

 

 狛村を倒して卍解を完全に我が物としてから、他の死神たちを倒したい。肉体を操るという感触をゆっくりと味わいたい。

 BG9(ベー・ゲー・ノイン)の内にあったそんな欲望が戦いを長引かせ、最悪の結果を招くこととなった。

 

 

 

 ――朗報だヨ、卍解は取り戻した。是非とも喜んでくれ給え――

 

 

 

「ようやく、か……遅いぞ涅……!」

「なんだ……なんなのだこの声は!? 卍解を取り戻した、だと……」

 

 なんの予兆もなく、突如として周囲に響き渡ったマユリの声に、狛村は文句の言葉を口にする。だが言葉とは裏腹に、その表情は隠しきれないほどの笑みが浮かんでいた。

 通知の声が聞こえる数瞬程前、手にした斬魄刀から力が漲ってきたのが感じられて「もしや」と思った。その「もしや」を後押しするかのようなマユリの言葉を耳にすれば、昂った感情を抑えられるはずがなかった。

 

「卍解! 黒縄天譴明王!!」

 

 普段よりもずっと力強くその名を呼びながら、卍解を発動させる。

 真なる名を呼ばれ、狛村の背後に巨大な鎧武者・明王が姿を現す。背中から伝わる気配で明王の存在を感じながら、振り返ること無く狛村は呟く。

 

「明王よ……すまぬ、苦労を掛けた……未熟な儂に、もう少し付き合ってくれ……」

 

 その言葉に、明王は身体を震わせた。

 だが狛村は動いていない。持ち主の動きに連動するはずの黒縄天譴明王が、勝手に動いたのだ。

 まるで歓喜に打ち震えたかのようなその動きから斬魄刀の意思を如実に感じ取り、狛村は再度口の中で礼の言葉を呟く。

 

「……黒縄……天譴明王……」

 

 見上げるほど巨大な卍解を前に、BG9(ベー・ゲー・ノイン)はその動きを完全に止めていた。

 先ほど響いた「卍解を取り戻した」という通知すらどこかに追いやり、我を忘れた様に黒縄天譴明王を一心に見つめるその姿は、どこか少年のような純粋さすらあった。

 待ち焦がれていた卍解が再び眼前に現れた喜びに――機械の身体では感じることの出来なかった命が躍動する感覚に、我を忘れて打ち震える。

 

「お主の操った明王の動き、大したものだった。それは認めよう……だが! お主に卍解はやれぬ!!」

 

 だが、この場所は戦場。死神と滅却師(クインシー)が殺し合いをしている場所だ。

 動きを止めて棒立ちとなった相手の隙を逃すことなく、狛村は卍解を操ると致命の一撃を放つ。

 

「ああ……やはり、素晴らしい……私の卍解……私の、肉体を……」

 

 迫り来る明王の巨大な刃。

 身を躱すことも防ぐとも忘れて凝視を続けるBG9(ベー・ゲー・ノイン)に、その刃が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

BG9(ベー・ゲー・ノイン)……恐ろしい、相手だった……」

 

 機械の身体は真っ二つに砕け散り、もはや完全に霊圧が感じられなくなったことを確認してから、狛村はようやく安堵の息を吐き出した。

 

「ぐ、ううぅぅ……」

 

 と同時に、その場に崩れ落ちる。

 防御に徹していたとはいえ、狂気にも似たBG9(ベー・ゲー・ノイン)の猛攻をただ一人で受け続けていたのだ。その傷は決して浅くない。

 加えて戦闘が終わったことで緊張の糸が切れ、痛みや疲労が一気に押し寄せてきたのだ。その衝撃は隊長職を務める狛村であっても耐えられないほどだった。

 だが完全に倒れるより前に、その身体が支えられる。

 

「お見事でした、狛村隊長」

「お主らは、十一番隊の……そうか、戻ってきていたのか……」

「こっちは無駄足みたいなモンでしたけどね……」

 

 支えたのは弓親と一角の二人だった。

 マユリの護衛役として影の領域(シャッテン・ベライヒ)へと赴いていたはずだが、ここに居るということは用事が済んだのだろう。

 

「偶然近くに出たので、余計なことと思いつつ手を出させていただきました」

「余計なこと……?」

「ええ、なにしろホラ」

 

 狛村のことを支えながら、弓親は視線で促す。

 その先では、戦いが終わったことを察知したのだろう。七番隊副隊長の射場が駆け寄って来る姿があった。

 

「隊長!! ご無事ですか!? 卍解だけは見えたんですが……」

「鉄左衛門……ああ、仔細ない」

 

 一角たちは入れ替わる様にして離れ、射場が狛村を支える。

 

「仔細無いっちゅうとりますが……いやいやいや、どう見ても大怪我でしょう!? 問題大ありですよ!!」

「ったく、藍俚(あいり)は何をしてんだよ!? こういうときの四番隊だろうが!」

「お待たせ致しました! 救護隊、ただいま到着です!!」

「うおっ!? は、早えな……」

「ええ、隊長のご指示ですし」

 

 こちらも待ち構えていたのだろう。

 四番隊の伊江村が隊士を率いて現れると、狛村の手当を始める。

 

 何はともあれ、この場は何とかなりそうだ。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 狛村が滅却師(クインシー)を倒したその一方。

 

 

 

 ――戻らぬではないか!!

 

 

 

 『朗報だヨ、卍解は取り戻した。是非とも喜んでくれ給え』という涅マユリの言葉を耳にした瞬間、山本元柳斎は腹の中で怒声を上げていた。

 

「ゴホッ、ゴホッ……痛てぇ……」

 

 そんな山本の怒気とは裏腹に、アスキンは口から血の混じった咳を吐き出す。

 身体の全身には刀傷が刻まれており、そこだけ見れば合戦を命からがら切り抜けた荒武者か何かのようだ。

 だが刀傷はゆっくりと薄くなり、傷が治っていく。

 

「強いねぇ……千年前、陛下を苦労させた三人だもんなぁ……そりゃ強えよ……もう少しで、致命傷になるところだった……」

「まさか……殺しきれないとは……」

 

 自らの血を拭うアスキンの足下では、膝をつく卯ノ花の姿があった。彼女もまた山本ら同様、アスキンに致死量を操作されて戦闘不能状態へと陥っていた。

 無論、回道を上手く用いることで戦いを継続できなくはないのだが、最初の頃と比べれば状態は雲泥の差だ。

 それに加えて、アスキンの全身に深々と刻まれた刀傷は、卯ノ花がアスキンの獲得した免疫を幾度も上回った証拠だった。

 

「危なかったぜ。致死量を獲得する前に死ぬ――ここまでハッキリと死を覚悟をしたのは初めてだ」

「おの、れ……」

「けどあんたが強いおかげで助かったよ。霊圧を大量に叩き込んでくれたおかげで、どうにか死ぬ前に免疫を得られた……ホント、ギリギリだったけどな」

 

 戦闘不能となりながらも、卯ノ花は殺意に満ちた恐ろしい視線を向け続ける。

 その視線に背筋を冷やしながら、アスキンは「そうそう」と前置きしながら口を開く。

 

「卍解が取り戻されたみたいだが……爺さんに致命的なお知らせだ。あんたの卍解だけは陛下が陛下が持っている。取り戻すにゃ陛下から直接奪い返すしかないぜ」

「な……ッ!?」

「なん……じゃと……!?」

「卍解を奪われても、奪い返す手段くらいは講じてくるはず――陛下はそこまでお見通しだ。なら、一番厄介な卍解だけは何が何でも死守しなきゃな。そのくらい、誰だって考えるだろ?」

「なるほど、確かにその通りだヨ」

「ッ!?」

 

 得意げなその言葉に同意したのは、この場には居ないはずの者の声だ。

 耳慣れぬ声に、アスキンは冷や汗を流しながら大慌てで周囲を見渡す。

 

「保管庫を何より頑丈に作ることで研究材料を誰にも奪われぬ様にするように、人目に曝したくない物は誰にもあるもの……なるほど、道理であの封印の中に卍解の数が足りなかったわけだネ」

「あんたは……!!」

「涅……」

「急いで戻ってみれば、まさかこんな面白い状況になっていたとは……いやいや、今の私は子供のように好奇心で胸がいっぱいだヨ」

 

 さも"今までこの場に居ました"という雰囲気を醸しながら、涅マユリはうんうんと頷く。

 だが"いつの間に現れたのか"すら察知できなかったアスキンは、さらに大粒の汗を流す。その様子を察知したのか、マユリはさらにニヤリと嗤った。

 

「だが安心したまえ。私は今、気分が良いんだ」

「気分がいい、だって……?」

「その通りだヨ。君がどれだけ暴れても寛大な心で許してしまえるくらいにネ」

「……じゃあ、逃げても良いかい? あんたの相手はしたくないんだ」

 

 息を呑みながら、アスキンはダメ元の覚悟でそう提案する。

 致死量を操る彼にとって、無数の対抗策を用意できるマユリや浦原のようなタイプは相性が悪い。ましてや涅マユリが敵の前に姿を見せた以上、何らかの対策があるのは明白だ。戦いは避けたい。

 懇願にも似た言葉に、マユリは不思議そうな目をしながら答えた。

 

「何を言っているのかネ? それは不許可だヨ。決まっているだろう」

「やっぱりそうだよな……! なら、仕方ねぇ!」

 

 予想通りの言葉に、用意していた毒入りボール(ギフト・パル)を即座に投げつける。

 これで行動不能に出来ればよし。駄目でも他の手段で致死量を操作していけば良い。霊圧を取り込めればなおよし――そう考えていた。

 

「ホホウ、これが噂の」

 

 だがマユリの行動は、アスキンの想定にないものだった。

 懐から何やら生き物のような物を取り出すと、毒入りボール(ギフト・パル)目掛けて投げつける。その生き物は毒入りボール(ギフト・パル)を喰らうと、断末魔のような悲鳴を上げた。

 

「致死量を操作……なるほど、素晴らしいネ。この能力、もっと色々なことに応用できそうだヨ」

「そいつはぁどうも!」

 

 ――アレ何やってんだ!? おっかねぇ!!

 

 そう叫びそうになったのを堪えながら、次の手を打とうとしたときだ。アスキンの身体は背後から凄まじい力で押さえ込まれる。

 

「うぉっ!?」

「ネム、よくやったヨ。そのまま押さえていろ」

「はい、マユリ様」

 

 いつの間にかネムが現れ、アスキンの動きを封じ込めていた。

 よく見れば穿界門(せんかいもん)のような小さな門が傍に発生しており、この門を使うことで直前まで気付かれることなく姿を現していた。先ほどのマユリも同じだ。

 抱きつく様にして動きを封じてくるネムから逃れようと、アスキンは相手を一瞥して思わず呟く。

 

「くっ……! アンタといいソッチのおっかねえのといい、死神ってのはどうしてこう……飾り気が無いのかね!? もっとオシャレしなっての!」

「オシャレ……? やれやれ、機能美という言葉を知らぬのかネ? まあ、研究対象にそこまで求めるのも酷というものか」

 

 嘆息しつつ、マユリはアスキン目掛けてとある(・・・)霊圧を放った。

 放たれた霊圧は抑えつけていたネムごとアスキンに突き刺さると、彼ら二人を包み込むように大きく広がる。

 

「これは……!? これは、まさか……まさかッ!?」

「察しが良いネ。まあ、同族の能力ならば知っていても不思議じゃあない」

 

 打ち込まれた霊圧は二人の全身を包み込むように広がったかと思えば、まるで檻を形成するかのように小さくなっていく。

 その現象は、アスキンにとって見覚えのあるものだった。

 

「キルゲの監獄(ザ・ジェイル)……!? 馬鹿な、どうやってこんな真似を……!?」

「同族の、能力……じゃと……? 涅、お主一体何を……!?」

「簡単なことですヨ。卍解を封じ込めていた牢を解析して、そのついでに自分の物にした……それに何か不都合でも?」

 

 総隊長の言葉に、さも当然のことのようにマユリは答えた。

 卍解は星章(メダリオン)に封じ込められた後、キルゲ・オピーの監獄(ザ・ジェイル)にて更なる封印を施されていた。その封印を解放するために、マユリは影の領域(シャッテン・ベライヒ)へと赴いたのだ。

 誰に邪魔されることなく、たっぷりと時間を掛けて監獄(ザ・ジェイル)の能力を解析できる――

 そんな好機にあって、涅マユリが監獄(ザ・ジェイル)の能力に手を出さぬはずがなかった。

 なにしろ「相手を閉じ込める檻を形成する」能力なのだ。言い換えればそれは、研究対象を容易に捕らえられるということでもある。

 マユリが奪い取り自らの使える技術へと変換しないわけがない。

 

 ――これは、致命的すぎる……!!

 

 自分たちを中心に形成されていく檻を見ながら、アスキンは青ざめる。

 繰り返しとなるが、アスキンの持つ致死量(ザ・デスリーディング)は「標的とした個人の致死量を操作する」ものだ。

 敵に用いれば死へと近寄らせ、自身に用いれば死を遠ざけられる。絶対無敵の能力の一つと言っても差し支えないだろう。

 

 だが、果たしてそれが牢獄の中で何の意味があるのだろうか。

 

 相手を捕らえ閉じ込めておくことを目的とした牢の中では、どれだけ死を遠ざけたところで意味など無い。

 監獄の目的や刑罰を与える意味からすればむしろ、牢獄は囚人を殺さないように気遣う。

 長生きが出来たところで苦しみが増すだけ。

 必要なのは絶対無敵の能力ではなく、この場から脱獄できるだけの能力だ。

 そして残念なことに、それを為し得るような能力を彼は持っていない。

 

 ――いや、まてよ。キルゲの能力……監獄(ザ・ジェイル)の能力は……!!

 

 これもまた能力のなせるワザか。

 致命的な状況に陥りながらもアスキンは、一つの可能性に思い当たり薄く笑った。

 

「だが、凡ミスだぜ……キルゲの監獄(ザ・ジェイル)は――」

「ひょっとしてだが、敵を封殺するための物……すなわち同族の滅却師(クインシー)には効果が無い――とでも言いたいのかネ?」

「な……っ……!!」

 

 思いついたはずの起死回生の一手は、あっさりと灰燼に帰していた。

 絶句した瞬間、檻は完成した。相手を完全に捕らえて包み込む。

 残ったのはネムの姿だけだ。

 

「だとしたら、とんだ見当違いだヨ。この私が、その程度のことを見落とすとでも思っていたのかネ? とっくに改良済みだヨ」

 

 もはや聞こえないであろう檻の向こうのアスキンに向けて、マユリは告げた。

 




●マユリ様
 そりゃあ(マユリ様に監獄の能力を解析なんてさせたら)
 そうなる(都合良く改良して自分の物にする)
 わけですよね。
(原作だって飛廉脚(ひれんきゃく)使いますし。この人ならこのくらい平気でやるはず。しかも相手を問答無用で捕獲という研究者大喜びの能力。使うに決まってる……)

 ということで、マユリ様の監獄(ザ・ジェイル)は「死神以外を封殺」みたいな条件設定にしていると思われる。

 アスキンの致死量の能力も、基本的には生き物相手。封じ込めるだけの監獄(ザ・ジェイル)は突破する方法が無いと思うのですよ。
(原作でも「マユリや浦原は相性が悪い」って言ってますし)

 やったねアスキン! 生存(モルモット)ルートだよ!
 よかったねキルゲ! 後継者が出来たよ!

冷静に考えると、とんでもないコトした気がする……

●狛村隊長のところ
 彼にはまだ役目があるので「生きてるけど以降は抑えめです」という説明描写。
 (BG9はもっとネタにしたかった様な、そうでもないような不思議な感覚。なお一番「もっとネタにしたかった」のはペペ様)

 あと
「一角たちが出る → マユリも戻ってきてる(次の段落で出ます)という前振り」
「伊江村が来る → 原作での七番隊との縁があるし、このくらいは絡んでも……」
 程度の意味です。
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