よし! (タイトルを付けるまでの思考の流れ)
変身を終えた途端、羽根から幾条もの光を放って攻撃して来ました。
「あぐっ……!!」
「湯川!!」
その速度と攻撃密度に反応できず、光の一撃をマトモに受けてしまいました。
浮竹隊長が心配してくれましたが――
「な、なんとか無事……です……」
卍解と同時に作った刀を杖にして、立ち上がります。
この攻撃は、リジェの
ただ、変身したことで複数同時発射が可能になったみたいで……
どんなインチキよ!!
『
解ってるわよそのくらい!! 前に、素手で戦った時から! いえ、ユーハバッハと戦った時からずっと理解してるわよ!!
でもさあ、不可視で絶対命中で防御不可の攻撃を二十発以上も同時に撃つってのはどう考えてもインチキでしょ!?
あの羽根に空いている三つの穴! 某ゲームだったらマテリアとか入れられそうなあの穴から複数同時って! 一翼で三発! 八枚あるから合計で二十四発の同時発射!!
しかもこれ、より最悪を想定するなら連射してきてもおかしくない!!
こんなのインチキでしょうが!!
日頃から射干玉の粘液に塗れてなかったら、この一発で十回は死んでお釣りが来るわよ!?
『ジョグレスな進化ができたおかげでござるよ! 拙者偉い!!』
ええもう!! 本当に感謝しっぱなしよ!! ありがとね!!
射干玉に感謝しつつ、なんとか反撃を試みようと睨み付けますが。視線の先のリジェは私からさらに距離を取りました。
「あの量の裁きの光明でも死なない、か。だけど、どれだけ耐え切れるかな?」
「なんだ、アイツ……姿が!?」
「透明化……? いや、アレは……!!
「解ってます!!」
リジェが姿を消した――ように見えました。
ですが霊圧感知を通せば、何をしているのかがはっきりと解ります。
アレは言うなれば瞬間移動。
「最短距離で接近、死角からの攻撃……」
……ねえ、これやっぱりインチキだってば!!
『
こんなお相子なんて要らないわよ!! あと私は日常業務でバカみたいに振り回されているんだから、ちょっとのインチキくらい多めにみてよぉ!!
「相変わらず、大した能力……でも変ねぇ? 私には絶対に近づかないんじゃなかったの? 神に近い男っていうのはウソだったの?」
「近づいてなどいない。お前の死角に移動しただけだ」
ちょっと煽ってみましたが、無駄でした。
完聖体となったリジェは変身する前よりも冷静に、そして淡々と私を狙い続けています。
多分だけどこれって、自分の能力にそれだけの自信を持ってるんでしょうね。その上で私を確実に殺すという確固たる意思と決意の表れだと思います。
「消えろ」
「
四対の翼で空を自在に飛び回り、
そんなテロリストか何かのような戦い方を、リジェは延々と繰り返してきます。
出現する直前くらいに何とか感知できるので、身を躱してどうにか致命傷だけは避けていますが、それでも少しジリ貧ですね。何しろ身体の表面を削られるくらいのダメージは受けていますので。
その怪我は回道を使うことでなんとか癒やせますが、回復に意識を割くと次の一手がどうしても少し遅れてしまいます。
「これだけ撃ってもまだ死なないか。けど、死ぬまで撃つ準備は既に整えている」
「ちょっ……――!!」
ついに来ました! 八枚の翼を全て使った、合計二十四発の同時発射です!
ただ、翼の全てを攻撃に回した影響か、今までの攻撃と比べると少しだけ狙いや位置取りが甘いわね!
……甘いって言っても、今まで百点だったのが九十点になるくらいの差なんだけど。それでも僅かな隙ではあります。
その隙を利用して、他の戦場に流れ弾が届かないように自分自身の位置取りを調整しながら、二十四の光線を全力で回避します。身体が多少削られたけど、その辺はご愛敬!!
光の雨を避けながら隊首羽織を脱ぎます。
「――っとだけ、隙ありっ!!」
攻撃に意識を集中させすぎたリジェのちょっとだけの隙を突いて、全力の
狙うは、リジェの全身。その全身目掛けて、先ほど脱いだ隊首羽織を思い切り叩き付けます。
……え? 攻撃をするんじゃないのか? 何をやっているのか理解できない?
だって、攻撃するにはまず
そしてリジェの
だから、粘液を塗り込むことを優先したの。
羽織には、卍解で生み出した射干玉の粘液をたっぷりと塗り込んでおきました。
逃げる途中に頑張って仕込んだのよ。大変だったわ。
『拙者もまさか移動しながら搾り取られるとは思ってもいなかったでござるよ……
ダ・イ・タ・ン! じゃないってば!! こっちは命掛かってるんだからね!!
勿論羽織に染み込ませた粘液は、リジェの
つまり、コレをぶつければリジェが粘液塗れになる!
粘液を塗り込めば、リジェの
弱体化すれば、戦いやすくなる!
羽織に塗り込んだのは、直接触れる面積を広げるため!!
ね? 理に適ってるでしょ?
もしかしたら背中の翼か、頭の光輪を狙って攻撃しても良かったかもしれないけど、
ある意味で、この世で一番信頼できる粘液を直接ぶつける戦法を取ることにしました。
問題があるとすれば、後で総隊長に「隊首羽織を何だと思っておるんじゃ!!」って怒られることくらいだけど……どうせもう片方の袖が破られているし、再利用よ再利用!!
『(ミニー殿と力比べした時に破れたなんて、誰も覚えてないでござるよ……)』
「神の使いに隙など存在しない」
「……っ!?」
――って、ウソでしょ!?
ぶつける直前、リジェはまたしても姿を消して羽織から逃れました。
あ、あれだけ説明しておいて、逃げちゃうの……??
「その上着に何か仕込んでいたようだが、その程度はこちらも想定済みだ。お前の攻撃は、もはや絶対に受けない様、常に警戒している」
再び遠くから放たれる裁きの光明。
回避は出来ますが……ちょっと困ったわねぇ……
『ホント、困るでござるなぁ……』
……射干玉?
『このまま遠距離ガン逃げチキン戦法とか、絵面がすっごい地味でござるよ!! 効果的なには当然でござるが!! 認めてしまうでござるが!! けど遠くから撃ってるだけ! 回避してるだけ!! 盛り上がらねえでござる……』
何目線!? 射干玉は一体何の心配をしてるのよ!!
一応ね! リジェは私の機動力を削ぐ様に狙ってるの! だから、このまま行けば私がジリ貧になる! 対応が遅れたところを狙って頭を撃ち抜くつもりなの!! リジェはそれを狙ってるの!! 緻密に攻撃を組み立ててる最中なの!! 詰め将棋なの!!
『
私が知りたいわよ!! なんでリジェの擁護してるの私!?
「罪深き死神よ、消し飛べ」
また撃ってきた!!
もおおおぉぉっ!! 真っ正面から戦ってよぉぉっ!!
「おらああぁぁっ!!」
「海燕さん!?」
避けようとする私の視界の端で、海燕さんが光線に向かっていく姿が見えました。
卍解を振るい、その能力で裁きの光明を弾き散らします。
「すまねぇな湯川! あの妙な光線、対応するのに遅れた!! オマケに変身前と代わってやがってよぉ!!」
「いえ、ありがとうございます」
僅かに残念そうな様子を見るに、あの一撃も跳ね返すつもりだったのかしら?
変身前とは違って数発纏めての攻撃、霊圧の性質も変化しているみたいだし……私が攻撃されている様子から変身前後の差異を学習して対応したみたいね。
『それつまり、
それくらい良いわよ! 今のジリ貧の現状をなんとかできるなら私の怪我くらい十分に必要経費だから!!
「罪深い……神の裁きを受けぬなど……罪深いぞ死神!!」
「効かねぇって言ってんだろ!!」
再び放たれた攻撃も、やはり海燕さんは弾き散らしました。
……いえ、ちょっと訂正。
ほんの僅かだけど、無力化できずにダメージを受けています。
流れを操るという卍解を用いても、万物を貫通するという強すぎる圧力には完全に対応しきれていないみたい。
「……湯川」
私が解るくらいですからね。ダメージを受けたのことは、海燕さんは言うまでもなく解っています。
少しだけ弱気な感じで、背後の私に声を掛けてきました。
「詳しくは解らねえが、隊首羽織を使ったアレ……何か狙いがあったんだよな?」
「ええ、避けられましたけどね」
粘液塗れにしてヌルヌル地獄にたたき落とすつもりだったとは言えないので、言葉少なく頷いておきます。
「なら、何かしら同じ方法が出来れば、今度は何とかなるんだよな?」
「多分」
問題は、延々距離を取り続ける相手にどうやって当てるかなんだけどね……
残る戦法は何か罠を張るくらい。
リジェに近づくか、あるいはリジェから近づいてくる方法があれば――
「ならさ、良い方法があるよ
「え?」
両手に大小を持ったまま、京楽隊長が軽い調子で声を掛けてきました。
「ウチのお花がさ、遊びたいんだって。これ、普段は絶対にやってくれないんだけど、
「なんだそれ……? 京楽、まさか指斬りか?」
浮竹隊長が少しだけ不安そうです。
指斬りって確か……質問に対して嘘を吐くと激痛が走る能力ですよね? 以前、教えて貰ったことがあります。
けどその質問に、京楽隊長は首を横に振りました。
「いいや、違うよ。浮竹にも言ってないし、そもそも実際に遊んだことがないからね。僕自身、お花から教えてもらっただけ」
『ふむ……普段は絶対にやらない……い、一体何が!? 拙者、超ワクワクしてきたでござるよ!!』
私としては……もの凄く不安なんだけどね……
だって名指しで「お前がいるから特別だぞ」って言われてるのよ!?
で、でも! やってやるわよ!! 京楽隊長の能力なら何とかなるでしょ!!
伊達にお花をマッサージしたわけじゃないんだからね!!
「……お願いします!」
「湯川! 説明も聞かずに……」
「任されましょう。んじゃ、やろうかお花」
さて、一体何が来るんでしょうか……
「目隠し鬼」
あ(察し)
じゃなくて! そっかぁ、確かにあり得そう!!
となると、今までのルールからして……
「鬼さんコチラ! 手の鳴る方へ!」
真っ先に声を上げながら、手の甲を叩いて音を鳴らします。
「流石、理解が早いねぇ。ほら、浮竹たちも!」
「あ、ああ。こっちだ!」
「そういうことですか……! おらっ! こっちにいっぞ!! 来い!!」
私たちが声を上げる中、リジェは目に見えて動揺します。
「なんだ、これは……目が見えない……どこに消えた死神ども!!」
「消えないよ。一時的に見えなくなっただけ」
相変わらず音を鳴らしながら、京楽隊長は説明を始めました。
「"だるまさんが転んだ"と同じで、これも"遊び"だよ。鬼は音だけで居場所を判断して、相手――今回はボクたちの誰かに触れたら勝ちってルール……なんだけど……」
「チョコラテ・インテグレイスの次はガジーナ・シエガか!!」
「まさかと思ったけど、やっぱり似たのがあるのね」
嘆息する京楽隊長ですが……チョコラテ・インテグレイスって何……?
私が来る前にそういうやり取りがあったの?
『だるまさんが転んだでござるよ。かけ声が「
どの世界でも子供の遊びって似通ってくるのね。勉強になるわね。
で、目隠し鬼も同じのがあるワケね。
けど目隠し鬼のルールなんて、詳しく説明するまでもないものね。アレで十分。
あと「普段は絶対にやらない」と「私が居るから特別」の理由も、なんとなく想像が付きました。
だってこれ、浮竹隊長が
『野郎同士でやってるところを見ても、ちっともさっぱりまったく嬉しくねえでござるよ!!』
けど多分、捕まったときのペナルティは凶悪だと思う……
だってコレ……お花の姿から、これってお座敷遊びのアレを意識してるはずでしょ?
捕まったら、どんあ目に遭わされるか……
「あ、一個だけ追加説明だよ! 捕まえたときには、相手の名前を言わなきゃいけないんだ! ほらほら、早く捕まえなきゃ!!」
「くうっ……どこまでも巫山戯たことを……!!」
早く捕まえなきゃってことは、制限時間付きみたいね。
それよりも「名前を言う」ってことは……そっか、そういうことね!
浮竹隊長と海燕さんに視線を送り、目だけで意思疎通をします。
「ほらほら、私はこっち♪ 捕まえられるかしら?
「そこかっ!!」
声に従って、リジェが光線を撃ってきました。
あくまで視覚が一時的に封じられているだけで、能力そのものが使えなくなっているわけではありませんからね。
ですが光は私に届く前に減衰し、届いたときには軽く肌を焼く程度になっています。
「飛び道具なんて無粋な真似はよそうよ。直接捕まえなきゃ面白くないだろ? 今この場でできるのは逃げるか捕まえるか、後は音を出すくらいだよ」
「……!!」
うわぁ、今リジェの顔が目に見えて歪んだわ。付き合ってられるかって感情がモロに出てる。
……乗らなきゃ! この煽りのビックウェーブに!!
「鬼さんこちら♪ 鬼さんこちら♪ でも、遠くから撃ってるだけの腰抜けさんじゃあ、私は捕まえられないかしらねぇ~♪」
パンパンと手を鳴らしながら、必要以上に存在をアピールします。
浮竹隊長と京楽隊長。それから海燕さんも、リジェの意識を散らすように別の場所から音を鳴らしてくれます。
「捕まえれば鬼は交代……チョコラテ・インテグレイスの時から察するに……」
「バンビーズは私を捕まえられたけど、親衛隊の貴方はそんな勇気もないってことでいいのかしらねぇ~? い・く・じ・な・し、さんっ♪」
「そこか!!」
「捕まえたぞ!
「悪いな。人違いだ」
――海燕さんに向かって。
「な……にぃ……っ!?」
「残念、捕まえた相手の名前が間違ってたねぇ。罰ゲームだ……
「はあああぁぁぁっ!!」
正解・誤答ともペナルティは無条件の一撃。
今回は誤答のペナルティを与える権利を頂いたので、リジェに向かって
あ、特にこの辺りは念入りに塗り込んでおかないとね。
「ぐ……なんだこの不快な感覚は……!! 僕に一体何をした!? いや、それよりも……何故だ!? 湯川
「なんだ、まだ解らないのか?」
体中にべったりと粘液を塗りたくられて、リジェが不快感を露わにします。けどそれ以上にどうして相手を間違ったのかの方が気になるみたいですね。
その疑問に答えたのは、浮竹隊長でした。
「お前は俺の部下に少しは苛立っていただろう? 何度お前の攻撃を弾いた? もう能力を忘れたか? それとも特記戦力でも隊長でもなければ、覚えるにも値しないのか?」
「何を言って……まさか!?」
ようやく気付いたようです。
推察の通り、海燕さんは卍解の能力で私と自分の声の流れを操り、位置を誤認させていただけです。
そんな単純な欺きですが、リジェはまんまと引っかかりました。
「そんな、そんな児戯に……! いや、これはイカサマだ!!」
「このくらいは許してあげなよ。可愛い悪戯じゃないか」
「そうだな。部下は少しやんちゃな位が丁度良い」
『声真似をして引っかけるくらいは愛嬌でござるよ!! プロなら抱きついた瞬間におっぱいやお尻の感触の違いで見分けなければ遊女と遊ぶ資格は無しでござる!!』
幾ら隊首羽織を脱いでいたとはいえ、私と海燕さんの区別も付かないなんて……
てんで話しにならない……
『男女の区別すら付かなくなるとか……
「誤答の
たっぷりと粘液を塗り込み終え、仕上げの代わりにリジェの身体を刀で軽く叩きます。
そこから伝わってきたのは確かな手応え。
どうやら、
よし! これなら攻撃が通じる!!
「京楽隊長! 目隠し鬼は!?」
「面白いものが見れたから、もう
「なら、今です! 攻撃できますよ!」
念のため遊びが続いていないかを確認してから、三人に声を掛けます。
「面白いものってまさか、俺とコイツが正面衝突したことじゃないでしょうね!?」
「大丈夫だぞ海燕! ちょっとだけ面白かった!!」
「嬉しくないんですけど!?」
そんな会話を交わしながらも、二人は攻撃を放ちます。その攻撃はリジェの身体を切り裂き、ダメージを与えました。
よし! ようやくマトモに戦える!!
「何だ、と……!!」
「っしゃあ!! ようやく通ったか!!」
「これでようやく公平になれたかな? さ、次はどんな遊びをしようか?」
斬撃からの出血を確認して、私たちは一気に湧き上がりました。
けれどそれはリジェからすれば、ありえないはずのこと。
「神の使いに傷を負わせた……だと……? 特記戦力ですらない死神が……? そんなことは……そんなことは、あってはならないィィッ!!」
それまで比較的冷静だった姿から一転、激昂しながら翼を大きく羽ばたかせて上空へ浮かび上がりました。
同時に全ての翼に霊圧が集中していくのが感じ取れます。
どうやら再び二十四発同時射撃を行うみたいですね。しかも今回の場合は、霊圧を集中させた今までよりもさらに強烈な一撃。
……けど、気付いてないの?
「私が何発、その裁きの光明が撃たれるところを見たと思ってるのかしら?」
「粛正だあァァッッ!!」
その瞬間、大轟音と共にリジェの上半身が大爆発を起こしました。
毒々しいほどに眩しく輝きながら破裂するその光景は、まるで小さな太陽のようです。
つまりはそれだけの霊圧を注ぎ込んでいた証でもあるわけですが。
上半身だった物は見えないくらい小さくなりながら辺りに吹き飛び、辛うじて残った下半身だけが奇妙なオブジェのように空中にポツンと浮かんでいます。
「銃を使うのなら、銃口に異物がないかくらいは気にしなさいよ」
誤答のペナルティで射干玉の粘液を塗り込む際、もっとも念入りに埋めたのが翼の穴でした。
今まで攻撃の全てをあの穴から行っている以上、対策するのは当然のことですよね。なので、そりゃあもうたっぷりと塗ってあげました。
『それに気付かない辺り、リジェ殿の嫌々っぷりは手に取る様に伝わってくるでござるなぁ……』
高潔な
可哀想……
『本当に
「湯川、今のも作戦か……?」
「はい、作戦です。ただ……ちょっと予想以上に上手く行っちゃいましたけど……」
「そうか。ま、まあ。これでようやく倒せた――」
浮竹隊長の言葉に返事をしたときでした。
「まだ、だ……」
「――っ!?」
空中に浮かぶ下半身から、声が聞こえました。
続いて、吹き飛んで乱ぐいな断面から真っ白な肉片の様な物が幾筋も浮かび上がって来ます。
「この程度で! 神の使いが敗れると思うなァァッッ!!」
「う、そ……ッ……」
「なんて奴だよ……」
「上半身が吹き飛んでも生きてるとはね……」
「倒せる、のか……?」
肉片は勢いよく立ち上ったかと思うと、そのまま光を放ちながらリジェの全身を包み込んで姿形を変えていきます。
……ちょっと待って!! まだ変身するの!?
もう十分でしょ!?
『あー、何と言いますか……リジェ殿にはまだ隠し玉があるでござるよ』
隠し玉!? そんな雑な理由でどっこい生き返られても困るんだけど!?
これ以上強くなられても困るんだけど!?
私、こう見えても結構いっぱいいっぱいなのよ!!
今まで何人の
…………バンビーズをマッサージしたから、思ったよりも疲れてないわね。まだまだイケそう!! よし! 来なさい!!
『
そしてリジェですが……これはもう、変身よりも変態と呼んだ方がいいかもね。
変身を終えたリジェは、今まで目にしていたのとは完全に異なった、鳥の様な姿になっていました。
……あのね……なんていうか、そのね……
私、これ知ってる! この鳥知ってる!!
あの有名なやつ!!
ピカピカ七色に光ながら、ぐるんぐるん回るやつ!!
えっと、名前……名前は……
カカポ! もしくはゲーミング鳥!!
……いやちょっと待って!!
え……? なんでゲーミング鳥に変身してるの……?
ゼルエルの次はゲーミング鳥って……
射干玉! 解説!!
『知らん……なにこれ……怖っ……』
あ、射干玉が完全に素になってる。
「オッ! オオッ! オオオオオオオォォッ…………って、なんだこの姿はアアァァァッ!?!?」
変身を終えたリジェが、大声で叫びました。
ってことは、完全に想定外なのねコレ。
その悲鳴の痛々しいこと痛々しいこと……
明らかに自分が想定していたであろう姿からかけ離れた、ピカピカ光る訳が分からないオウムになっているわけですから……
聞いているこっちも涙が出そう! てかもう、可哀想で聞いてられない!!
でも突っ込まなきゃ! 理由は分からないけど……
いや、すっごく簡単に推測できるんだけど……!
射干玉の粘液が
と、とりあえず突っ込まなきゃ!!
「え……それが貴方の真の姿なんじゃないの……?」
「そんなワケがあるかあああぁぁぁっ!!!!」
お腹の底から力一杯否定されました。
『リジェ殿……それが絶望でござるよ……拳で殴られ、粘液に塗れ、自爆からの面白変身……罪深いゆるるんバードな姿に人は絶望するのでござる……かつてジェラルド殿がパンツとブラジャーを被った様に、親衛隊に為す術など無いでござるよ……』
なんかカッコいいようで、ものすごくダサいことを射干玉が言ってる!!
「僕は特権を与えられた神の使いだ……それを……死神いいぃぃっ!! 神の使いの姿を穢したその罪は奈落よりも深いと知れェェッ!!!」
その姿で言われてもねぇ……
カカポの姿なんだけど、目が光っていて、今まで通りに霊圧を放っていて。
嘴を大きく開けると、そこから裁きの光明を放ってきました。
放ってきたんだけど……
気、気が抜ける……いやこれズルいってば!
ある意味、今までで一番のインチキよ!! 集中出来ないってばぁ!!
「けど、随分と倒しやすくなったわね……!」
放ってきた光線は、今までと比べれば落第点でした。子供のお遊びのように弱々しい一撃です。
必死で心を律しながら一撃を躱し、鶏を締めるときの事を思い出しながらリジェを切り裂きます。
「く、ああああァァァッ!! 神の使いを! この僕を斬るなんて……なんて罪深いんだ死神いぃィィッ!!」
「何が神の使いだってんだよ!!」
「散々手子摺らされたが、コレで終わりだ!!」
私の一撃に続けとばかりに、海燕さんと浮竹隊長がゲーミング鳥の羽根を切り飛ばしました。
完全に動きが止まったそこを、京楽隊長が待ち構えていたように動きます。
「やれやれ……覚悟はしていたつもりだけど、あの剣の出番が無くて本当によかった……よっ!!」
「ふ、あぁぁッッアアァァアァァァァァ!?!?!?」
花天狂骨の大小が巧みに振るわれ、ゲーミング鳥はさらに四つに切り裂かれます。
不思議と、今までの私たちの一撃は全て血が流れませんでした。断面は血管すら見えず、光が詰まっているだけです。
生き物とはとても思えない、不思議な光景……
『身体に光が詰まっているから、ああやって七色に輝いているんでござるな』
やめて!!
四つに切り裂かれたゲーミング鳥は、数秒ほど形を保った後、今度は光の粒となって消えていきました。
無数の光の粒がまるで流星雨のように輝き、瀞霊廷の上空に花を添えます。
それは、あのゲーミング鳥の最期とは思えないくらい綺麗な光景でした。
……ところで、"あの剣"って……なんなのかしら……?
「よ、ようやく終わったか……」
浮竹隊長が精魂尽きたようにへたり込みました。
その気持ちは解ります。
すっごくよく解るんですけど……
「浮竹隊長……残念ですけど、まだです」
「え?」
「感じませんか? この降り注ぐ光の粒の一つ一つから、リジェの霊圧が……」
「……うげっ! マジかよ……ってことはコレ全部……!?」
海燕さんが周囲に目を向ける中、まるで植物の芽が出る様に、光の粒からゲーミング鳥がまたしてもその姿を現しました。
「あか、あかかか……」
「きききき……」
「だいいいいいい……」
「あいあいあいあいあい……」
しかも今回は、一体だけではありません。
おそらく、降り注いだのと同じ数だけ増えてるはず……
アメーバかアンタは!! どんな神の使いなのよ!! いい加減もういいでしょう!!
――と、文句を言いたいところですが。
「弱ってますね」
新たなゲーミング鳥は、明らかに霊圧が低いです。
それから弱っている何よりの証拠として、色が足りません。
今まで七色に輝いていたのが、今は単色!
これなら負ける気がしない……どころか、ただの出来損ないのオウムですね!
試しに鬼道を放ってみたところ、その一撃で一羽が簡単に吹き飛びました。
『(ゆるるん言ってなかったので不思議に思いましたが、ひょっとしてあのリジェ鳥たちはそれぞれ、自分の色で鳴いていたのでござるか!? 無駄に芸達者なことを……)』
「確かにこれならボクらだけで何とかなりそうだね!!」
「強さも
海燕さんと京楽隊長は、攻撃が通じると理解した瞬間から残敵掃討に動いています。
それじゃあ、私も――
「本当に助かった、湯川。これなら俺たちでも何とかなりそうだ。それで……無茶を承知で言うが、他の所を手伝ってやってくれるか?」
浮竹隊長に断られました。
『お前、もっと強い奴が残ってるんだから、ソレ倒せ。って言ってるでござるな』
……まあ、言われるわよね……
やれって言われるわよね……
「解りました。けど、くれぐれも無理はしないで下さいよ? 死んだりしたら、意地でも蘇生させてお説教しますから」
「それはゴメンだな。二人にも伝えておくよ」
そう告げて、私はこの場を後にします。
次はジェラルドかぁ……
彼、今度はどんなミラクルを見せてくれるのかしら……?
頭の悪いネタを出さなきゃ死んじゃう病……八鏡剣……時灘の時に出せるかしら?。
●名古屋コーチン
愛知県特産の卵肉兼用種の鶏。
後に「名古屋種」と改名されたが、現在でも「名古屋コーチン」の名で流通している。
肉も卵も高級食材であり、成体は卵を良く産む。
比内地鶏、さつま地鶏と並ぶ日本三大地鶏の一つ。
●ゲーミング鳥
皆さん御存知、グルグル回るあのオウム。
正式名称はParty Parrot。
世界で唯一飛べないオウムのカカポ(マオリ語)(和名:フクロウオウム)がモデル。
2009年のBBCドキュメンタリー番組のワンシーンが元ネタとのこと。
(男性カメラマンに求愛行動を取るオスのカカポの動画)
……だって、リジェって変な鳥になるし……
変な鳥っていったら、コレかなって……
(
……リジェがカカポる世界線が一つくらいあってもいいでしょ!!
(なおタイトルにゲーミング鳥と付けるとネタバレが過ぎるので自重しました)
●リジェが鳥になる理由
この人は「理由は解らない(現時点で開示されていない)けど鳥になって復活」するわけで。
ならそこに「射干玉の粘液という最大級の異物(呪物)」が混ざったら、こんな合体事故が起きても仕方ない。理由は分からないけど(暴論)
そんな感じで自分を納得させて書きました。
(読者考察では「鳥の虚に陛下が力を与えた。鳥になったのは元の姿に戻ったから」が主流っぽいですが。なんなんですかね、この
●目隠し鬼(オリジナル)
花天狂骨の遊びの一つ。
鬼は視覚・霊覚とも塞がれる。音のみで相手を探す。
鬼以外の者は、声や音を鳴らして存在を伝え続ける。(黙っているとペナルティ)
相手に触れて名を呼ぶことで、鬼は交代する。(直接触る。武器越しも可だが遠距離攻撃は不許可)
交代時に一撃を受ける(ペナルティとして)
(捕まった時以外は攻撃しても、双方マトモに通らない)
鬼以外は一定時間逃げ切る(制限時間切れ)で、鬼にダメージを与える。
なお「京楽以外に捕まりたくないし、京楽に自分以外を捕まえて欲しくない」「野郎同士が遊んでも華がない」ということで、お花が指斬り以上に遊んでくれない。
(本文中では藍俚がいたので特別に許可してくれた)
意味は直訳で盲目の雌鶏、とのこと(あくまで簡単に検索しただけですが)