これはその3話目です。ご注意ください。
「なんだ……これは……何が起こったのだ……?」
ユーハバッハの戸惑う様子が伝わってきます。
端々からは焦った様子が手に取るように解り、何が起きたのかを探ろうとする意思がありありと込められていました。
先ほどまで死の恐怖を乗り越えて新たな世界を作ろうとしていた存在だったとは、とても思えないほどに弱々しいものです。
――もしもしユーハバッハ? 理解できるかしら?
「その声は湯川
――声……それに何をした、ねぇ……さて、何をしたと思うかしら?
私の声が聞けて、調子を取り戻したのでしょう。
今度は怒りの感情が伝わってきました。
「答えるつもりはない、ということか。だがおそらくは、何か空間のような物を作り私を
隔離をしたのだろう? ならば打つ手はある!」
おそらくは霊圧を放ち攻撃をしようとしたのでしょう。
ですが、何も起こりません。
「何……ッ!?」
――解らないでしょうから、教えてあげるわね。といってもある程度予想は付いていると思うけれど、貴方にしたのは卍解の能力。それを使って、新しい世界を作ったの。
「新たな世界だと!? 何を言うのかと思えば馬鹿なことを。そのようなことが出来るはずが無い」
ああ、やっぱり信じないわよね。
『信じられるはずがないでござるよ』
「なっ! なんだ今の声は!? この場にいるとすれば更木剣八か、それとも黒崎一護……だがそのどちらとも……いや、死神や
あらビックリ! 射干玉の声が聞こえるなんて……こんなこともあるのね。
ほら、せっかくの機会だから自己紹介して!
『おおっ! なんとなんと!! いやぁ、こんなことは拙者も初めてでござるので……初めまして、ユーハバッハ殿! 拙者、
「射干玉……? 斬魄刀だと……!? 確かにそれは貴様の斬魄刀の名……だが死神の持つ斬魄刀の声が何故……!!」
――だから言ったでしょう? 卍解で、世界を作ったって。だから斬魄刀の声が聞こえるし、なにより貴方はその世界の中心になったの。
『思いっきり愛を叫べるでござるよ!! やったねユーハバッハ殿!!』
「愛を叫べ……? 何の話だ?」
――叫ぼうにも、声が出ないんだから無理でしょうけどね。
「声が出ない……? 何を馬鹿なことを。今もこうして、貴様と会話をしているではないか」
今度は私を小馬鹿にするような、そんな感情が伝わってきました。
――へぇ……貴方は"自分が喋っている"と、"私と会話している"ように感じているのね。
「何……!?」
――私に伝わってくるのは、声じゃなくて意思。私も貴方には、声じゃなくて意思を伝えているはずなのよ。
「…………?」
あらら、理解できないみたいね。
さっきからずっと、私の台詞は鉤括弧じゃなくてダッシュ線になっているのに……気付かないのかぁ……
――さっきも言ったでしょう? 卍解の能力で世界を作って、貴方を世界の中心の存在……いえ、世界そのものにしたの。
「世界、そのもの……?」
――出来るわけがない、そう思うわよね。でもね、今回だけは可能なの。
さてさて。
説明してあげるけれど、果たしてユーハバッハ理解できる……いえ、理解していられるのかしら……?
「射干玉の卍解は、何でも生み出せる。それは新たな世界だって例外じゃない。そしてユーハバッハ、貴方は
『いやぁ、大変でございましたなぁ……コレが終わったら休みが欲しいでござるよ……拙者ちょっと、ヌーディストビーチに行ってくるでござる!』
話の腰を折らない! その声全部、ユーハバッハに聞こえているんだから!
「何かは知らぬが、私が
――いいえ、出来るのよ。貴方の髭、毟って射干玉の粘液に喰わせたでしょう? 解析して、繋がりを得たのよ。
ユーハバッハが息を呑む――いえ、実際に呑んだわけではありませんが、その気配が伝わってきます。
「馬鹿な……あれが、アレが……必要なことだったとでもいうのか……!?」
――幸いなことに、貴方は自身の能力で存在そのものを霊圧に変質させていた。おかげでユーハバッハという個に干渉するよりも、ずっと簡単だったわ。能力に干渉するのも含めて、ね。
『髭は食べても美味しくないでござるよ』
「ふ……ふざけるな! そのようなことが出来るはずが無い!! 何が世界だ! 私は今もこうして存在しているのだ!!」
――そうなの? 私には見えないけど。
否定を続けるユーハバッハへ、さらに説明を続けます。
――さっきも言った通り、今の貴方は世界という存在そのもの。個人ではないし、そもそも概念のようなもの。もしも自分の肉体が見えているというのなら、それはあくまで元の姿を記憶からイメージして、存在していると思い込んでいるだけ。
『スゴイね、イメージ』
いずれ、時が経てば消えてしまう。波打ち際に描いた絵みたいな存在だけどね。
さてそんな私の言葉に、ユーハバッハの焦った様子が伝わってきます。
自分の手足が本当に存在してるか、必死になって確認でもしている最中かしら?
――今こうやって会話……いえ、意思を交わし合っているのも、
「ならば途切れれば……」
――世界と会話が出来る存在なんているはずが無いでしょう? 途切れればそれっきり。貴方はずっと一人でそこにいるのよ。
「…………ッ…………!!」
――でも喜んでユーハバッハ。その世界はまだ生まれたばかり。新しい世界がどんな世界になるかは、まだまだこれから。それこそ、貴方が望んだ生も死もない世界にだって、なるかもしれない可能性を秘めている。
『まあ、ちょっとだけ時間が掛かるでござるよ。それまで辛抱でござる! その後はやりたい放題でござるよ!!』
――そうね。射干玉が言った通り、ほんの少しだけ独りぼっちの時間を耐えるだけ。それだけで、新しい世界が形を作り、どんな命が生まれるのかを見ていられるの。
「見……い……け……?」
――あら、声が聞こえない……?
『いえいえ、違うでござるよ。ユーハバッハ殿がご自分を世界そのものだと認識し始めているでござる! よって繋がりが途切れ初めたでござる! なにしろ世界は言葉なんて発しないし、意思を伝え合う相手もいないで!!』
――ああ、なるほど。
「……っ……っ……っっ……!!」
『干渉することがないけれど、干渉されることもない!! 拒絶はされないけれど、受け入れられることもない!! 世界はただあるがまま、存在しないけれど、存在し続けるのでござるよ!! やったねユーハバッハ殿!! 次の天はキミでござる!!』
――でも何も出来なくても、ユーハバッハの意識は残っているんでしょう?
『当然!! その世界の全てが終わるまで、何万年だろうと何兆年だろうと!! だってユーハバッハ殿は世界なのでござるから!!』
「……! ……!! ……!!!!」
――伝えることは伝えたし、そろそろ繋がりを切らせて貰うわ。さよならユーハバッハ……いえ……
新しい世界の、新しい神様。
タイトルを「ユーハバッハは新世界の夢を見るか?」にすべきか迷いましたが……
なんだかんだで、ようやく陛下も終わりました!
私の中で決めていた「ここを超えればエタってもワンチャン許されるライン」を超えました。わぁい、やったぜ。
次が戦後処理的な話(2話くらい?)
その次に綱彌代なアレを書いて。
それで全部が終わります。多分。
●射干玉ちゃんの卍解とかのラストのネタバラシについて。
・射干玉(ぬばたま)
(植物もありますが今回の場合は)古事記に登場する夜や黒の枕詞の意味。
古事記、つまり神道に通じる。
・三科(さんか)
部派仏教の、世界を在らしめる一切法を三範疇に分類した物。
(この辺、もの凄く雑に言ってしまうと「世界の構成要素」みたいなもの)
つまり仏教に通じる。
卍解すると神道と仏教が合わさり、神仏習合になる。
そこから「神仏習合すりゃ、
卍解の能力も「黒は全て塗り潰す。夜は世界の半分(射干玉)」「世界の構成要素(三科)」といった意味合いから、逆算して決定。
(世界を構成したり塗り潰して自分の色に変えたりできる能力。ヌルヌルなのは趣味)
この辺のネタ(考え)は、斬魄刀の名前でバレバレだったかなと思います。
散々、露骨なことを書いてましたし。
●ユーハバッハは神(天)になる
「そんな名前を名乗るなら、本物にしてあげなきゃ」という心遣い(ネタ意識)から。
射干玉ちゃんのおかげで、彼は一つの世界そのものになりました。
世界にはやがて宇宙が生まれ、宇宙のどこかに地球と呼ばれる惑星が誕生します。
その惑星には長い時を経て命が生まれます。
命たちは進化を続け、やがて神の名を呼び称えることでしょう。
よかったね陛下、あなたの世界ですよ。
(なお138億年くらいかかるのは誤差とする。五億年ボタンを28回押したくらい意識アリのボッチ状態で待つが、それも誤差とする)
あと。
ユーハバッハ自身の特性は残っているはずなので、彼は世界という存在に力を分け与え続け、世界が終わるときに力を回収して、また新しい世界になるんだと思います。
(終わる世界は次の世界の元になる)
※ 以上のことは、全て個人の頭の悪い妄想です。
小市民の個人的な妄言です。
よって専門的なアレとかソレとかは無しでお願い致します。