お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第404話 よく、わかりません……ユーハバッハです……

「……ふぅ」

 

 大きく息を吐き出しながら、私は意識を元の世界へと戻します。

 これできっかり、綺麗サッパリ、ユーハバッハと繋がる物は無くなりました。もう二度と、あの世界の彼とコンタクトを取ることは出来ません。

 

藍俚(あいり)殿も無理なのでござるか?』

 

 うん、もう無理。

 何度リダイヤルしても「おかけになった電話番号は現在接続できません」って言われるわね。

 

『ああ。ユーハバッハ殿ってば、お可哀想に……よく考えたら、あんまり可哀想でも無いでござるな』

 

 ねー、これだけ被害を出している時点で同情の余地ってあんまり無いわよねぇ。

 ということで、ユーハバッハから受けた被害の一つであるところの、斬られた腕をくっつけて回復させます。

 

「……ん、問題なし」

 

 軽く指を握ったり開いたりして感触を確かめ、問題ないことを確認してから、ようやく変身を解除します。

 

『ラーメン全部乗せ、本日の分は終了しましたでござるよ』

 

 その表現だと明日の分の仕込みをしなきゃならないんだけど……

 もう嫌よ! 全部乗せてんこ盛り変身は年に一回でも多いくらいなんだから!

 

『今回の事で、更木殿がますます藍俚(あいり)殿との斬り合いを望むことに……』

 

 そうよねぇ……でもコレが無いと、更木副隊長の卍解に対応しきれないから……

 

「おーい! 湯川さーん!!」

「……あら?」

 

 肩を落としていたら、一護がやってきました。その後ろには、更木副隊長もいます。

 二人とも変身やら卍解やらは解除していますね。一護はまだまだ元気そうですが、更木副隊長は……あ、かなり辛そう……

 卍解に加えて卯ノ花隊長の一時的な霊圧補強で、かなり無茶してたもんねぇ……

 元に戻ったので具現化された草鹿さんですら、心配そうに更木副隊長の顔を覗き込んでいます。

 

『さすがの更木剣八殿でも、限界はあるということでござるな……』

 

 うーん、アレってどっちかって言うと、慣れてないから辛いってだけだと思う。初めて飛行機に乗って酔った、みたいな感じ。

 あと二・三回同じ事をやったら、ピンピンしてると思うな……

 

『マジでござるか!?』

 

 多分だけどね……自分で言ってて何だけど、おっかないわね……

 

「ユーハバッハは!? ユーハバッハはどうなったんだ!! ……あ、わ、悪ィ……」

「ああ、ユーハバッハ? なら、コレがそうよ」

 

 私に食ってかかりながら、何がどうなったかの説明を求める一護でしたが、すぐに慌てて手を放して視線を逸らしました。

 その行動が何を意味していたのかは不明だけど、とりあえず私はすぐ近くの"真っ黒な塊"を指差します。

 

『ちなみに一護殿が目を逸らしたのは、藍俚(あいり)殿の今の格好が原因でござるよ!』

 

 私の格好……? ……あ!

 

『てんこ盛り変身が原因で、藍俚(あいり)殿の死覇装はあちこちがボロボロに! ただでさえ激戦をくりぬけてボロボロなのに! よってあちこちがチラリズムで肌色満載! 胸元からもむっちりと詰まったお肉の谷間が丸見えでござる!! デッッッかぁ! これで四番隊隊長は無理でしょ? って感じでござるよ!!』

 

 そっかぁ、そりゃあそうよね……18歳だもんねぇ……

 

 ……それはそれとして。

 

『スルーでござるか!?』

 

「この真っ黒な……なんて言うのかしらね? ねじれ双角錐? これがユーハバッハよ」

「この変なクリスタルみてぇのが!?」

 

 私から身体ごと視線を逸らして、ユーハバッハだった物を一護はマジマジと見つめます。

 ちなみにコレ、一護はクリスタルって言ったけど、私としてはオベリスクを連想したのよね。

 

『ゴッドハンドクラッシャーを放つことで有名なあの!? 全然似てないでござるよ?』

 

 巨神兵(オベリスク)じゃなくて、方尖柱(オベリスク)の方ね。エジプトとかにある石で出来た柱のモニュメントみたいなやつ。

 あんな形をイメージしてもらえれば、大体合ってるわよ。見上げる程度には大きいし。

 けどやっぱり一護の「クリスタルみたいな」って表現が、一番てっとり早くて分かり易いかもしれないわね。

 

『触れると転職(ジョブチェンジ)出来そうでござるなぁ……拙者は踊り子でお願いするでござる!! 褐色肌でムチムチで、スケベな格好をしてて、スケベな貴族に見初められて(ねや)で睦言を始める直前、口の中に仕込んでおいた小型の戦輪(チャクラム)で暗殺とかしたいでござる!!』

 

 それ、踊り子じゃなくて暗殺者……アサシンみたいなジョブってあったっけ?

 あとこれ黒いから、闇のクリスタルね。暗闇の雲を相手にするなら、何とか……

 

『あの、藍俚(あいり)殿……ボケを流されるのは……』

 

「詳しい説明は省くけど、その中に封印したって考えてくれれば問題ないわ。もう絶対に出てこられないし、こちらに影響を与えることもできない。藍染よりも、もっと厳重な牢獄に入れられたって思ってもらえれば」

「牢獄……これが……!?」

 

 説明しても一護はまだ飲み込み切れないみたいで、難しい顔をします。

 うんうん、わかるわかる。

 こんな感じで封印するのなら、中身は美女の方が良いものね。

 

 あれ……? ねじれ双角錐って、なんか他の……もっとカッコいい言い方があったような……

 

 えぇっと……トラペゾへド――

 

「あっ……ダメ、もう限界……」

「湯川さん!? うおおっっ!? 血? 血ぃっ!?」

 

 考えている最中、意識が急激に遠くなりました。

 力が入らず、立っていられなくなり、喉の奥から何かが溢れ出てきたのが感覚で理解出来ます。それが吐血だったと解ったのは、一護の叫び声が聞こえたからでした。

 

 ああ、やっぱり……全部乗せ変身はコレがあるから、キツイのよねぇ……

 高めた霊圧で押さえ込んでいた反動が一気に来るから……

 本当……自分の寿命を削っている……気がするわ……

 

 立っていられないはずだけど衝撃が思ったよりも少ない……

 多分、一護が大慌てで支えてくれたんでしょうね……

 

「ぐ……あ……ぁ……っ……」

「剣ちゃん!?」

「剣八!! お前もかよ!?」

 

 私が倒れたことで連鎖でもしてしまったのか、どうやら更木副隊長も限界だったみたいですね。

 倒れた姿……は、私は見えませんが、何が起こったのかは二人の声から解ります。

 

「おおおいぃっ!! どうすりゃいいんだよぉっ!?!?」

 

 遠くから、一護の悲鳴が聞こえた気がしました。 

 

 

 

 

 

「ご迷惑をおかけしました」

 

 ユーハバッハがいなくなって、霊圧やら殺気やらが感じられなくなって、挙げ句の果てには外周の炎の壁まで消えたわけですから。

 周囲で見守っていた人たちも「戦いが終わったのかな?」と判断して、様子を見に来るのも当然です。

 一護が悲鳴を上げた数秒後には、他の死神や破面(アランカル)の面々もやってきました。

 

「ママ、大丈夫……? 本当に大丈夫……?」

「ええ、もう大丈夫よ。バンビエッタちゃんが看病してくれたから、もうすっかり元気になったわ」

「えへへ……」

 

 中でもバンビエッタちゃんは、いの一番に駆け付けてきてくれました。

 そして一護の肩を借りながらようやく立っている私を見た途端、奪い取るようにして抱きついてきました。

 

 おかげで回復しました。

 この柔らかなお山(おっぱい)の感触があれば、私は何度だって立ち上がれる。

 

藍俚(あいり)殿って、本当に死神でござるか……?』

 

 射干玉に言われたくないなぁ……

 

『もし今、再びユーハバッハ殿が現れたとしたら?』

 

 もう一回てんこ盛り変身をして、二時間くらいは殴り合えると思うわね。

 

『やっぱり回復量がおかしいでござるよ! ほら、回りの方々も不審な目で藍俚(あいり)殿を見てるでござる!!』

 

 滅却師(クインシー)と親密にしているからでしょ。

 あと、一護と同じでユーハバッハのクリスタルが珍しいからだと思う。

 

「これが、ユーハバッハ……か……」

「何ていうか……その、なんて言えばいいのかねぇ……なれの果て……?」

「これ、中身はどうなってんだ……?」

「真っ黒で何にも見えねぇ……見てると吸い込まれそうだ……」

 

 私がバンビエッタちゃんで回復している間に、一護がある程度の説明は済ませてくれました。なので現在、死神たちは例の"ねじれ双角錐"に興味津々です。

 勿論、滅却師(クインシー)側も負けず劣らずに"ユーハバッハだった物"を観察しています。むしろ少し前までは自分たちの王様だった分だけ、死神たちよりも熱心ですね。

 

「……なあ、コレ……本当にユーハバッハ、なのか?」

「復活は、もう出来ないのか……?」

「黒崎君も言ってたと思うけど、それがユーハバッハよ。もう二度と復活はできない、というよりも封印を解くことすら不可能ね。少なくとも私には無理」

 

 だからリルトットは安心して。

 バズビーは、復活させて復讐しようとか考えないでね。説明を聞いた瞬間、残念そうな顔をしないで!

 

「ならば、もうあの男と戦わずに済むのか……」

 

 ハリベルは私の説明に、胸をなで下ろしていました。

 真っ先に攻め込まれた破面(アランカル)からすれば、脅威が一つ減ったのは有り難いんでしょうね。

 

「具体的には、何をしたんじゃ? 正直に話せ」

「……総隊長は、私の卍解の能力は御存知ですよね?」

 

 このまま、他の説明はナシでスルーしてくれればなぁって思っていたんだけど、流石にそれは無理でした。

 総隊長の「虚偽は許さん。儂には真実を知る義務と権利がある」と言わんばかりの強烈な視線を前に、私はしぶしぶ話します。

 

「その能力の、応用です。ユーハバッハが持っていた全知全能(ジ・オールマイティ)の能力を下敷きに、卍解の能力を併用して、新しい世界を作り出して閉じ込めました」

「新しい世界……じゃと……!?」

「新しすぎて、何もない世界ですよ? 命どころか、霊圧すらありません。ユーハバッハ本人が溶けて世界になった、延々と続く何もない世界です」

 

 "ねじれ双角錐"の様子を想像したのか、何人かはゾッとしたように背筋を震わせました。

 

「だがその世界が、永遠に何もないわけではあるまい?」

「何かが生まれたとしても、ユーハバッハが干渉できるのはあくまで"自分のいる世界だけ"です。私たちのいる世界にまで影響は絶対に及びません。こちらの世界にまで出てくるのは、以ての外です」

「む……ふむ……」

 

 断言する私の言葉に、総隊長はどうしたものかと顎に手を当て髭を擦ります。

 別の場所からは小さく悔恨したような声が聞こえました。

 

「そうですか……ユーハバッハ……」

「卯ノ花隊長……?」

「遅れを取った借りを返したかったのですが……」

 

 卯ノ花隊長!? 何を仰っているんですか!? まさか、負けたのがそんなに悔しいんですか!? でも封印は解けませんよ!!

 まさかの無茶振りをされるのではないかと、内心ドキドキしていると、卯ノ花隊長はふっと残念そうに嘆息します。

 

「いえ、剣八が勝ったことを祝うべき……なのでしょうね……」

 

 その更木剣八副隊長ですが、さきほど倒れたところまでは説明したと思います。

 今現在は、卯ノ花隊長の膝枕の上で寝ています。あと草鹿さんも一緒に寝ています。

 

『そうしていると親子みたいでござるなぁ』

 

 親子……? 親子、ねぇ……

 

「まったく……せっかく千年の時を費やして貴方に追いついたというのに、気付けばまた離されていた……自らの力で決着をつけるどころか、力を託すのが関の山……まったく、口惜しいやら愛おしいやら……ふふふ……」

 

 あんな風に、素敵な笑顔を浮かべながら更木副隊長の寝顔を撫でてるんだけど……

 親子って表現していいの……かなぁ……?

 

『まさに殺し文句でござるな!!』

 

 殺し文句って、あんなに殺気や闘気を込めて言うものじゃないと思うのよね。

 

 

 

「……ならば、現状は問題なしと考えよう。ではもう一つ、個人的なことを聞かせてくれ」

「はい?」

 

 卯ノ花隊長の様子をチラッと見ていた間にも、総隊長は思案を続けていました。が、やがて自分の中の考えがまとまったらしく、さらに質問をぶつけてきます。

 

 個人的なこと……バンビエッタちゃんの教育方針ですか?

 

『いやいや、藍俚(あいり)殿のスリーサイズでは?』

 

「儂の卍解は……残火の太刀は、どうなった……?」

「…………」

 

 ……あ! そういえば、忘れてたわね……

 

『……ああっ!! えっと、確か……星章(メダリオン)に閉じ込められて……』

 

 星章(メダリオン)そのものは、ユーハバッハが持ってた……のよね……?

 

『ユーハバッハ殿が利用して、炎の壁を作ってた……のでそこは確定でござる……』

 

 それから……本人ごと丸っと包み込んで、別世界にしちゃった……わね……

 

 つまり、あるとすればあの中……?

 

『……せ、世界に炎が生まれたでござるよ!! 原初の火でござるな!!』

 

 そんなこと言ってる場合じゃないってば!! えっと、この場合、どうなるの……!?

 繋がりは完全に切れているから……そもそもあの何もない世界で卍解が使えるわけがない……仮に使えたとしても、だからどうしたって……

 

 ……うん、大丈夫そうね。総隊長がもう二度と卍解を使えない以外は。

 

「……申し訳ありません。そこまでは手が回りませんでした」

「そうか、仕方あるまい……卍解と引き換えに彼奴を討てたと考えれば、安い買い物よ……」

 

 サラッと嘘を吐きます。

 私の言葉を信じたのか、それとも嘘だと看破されたのかは解りませんが。総隊長はそう言いながらも、愛おしそうに自らの斬魄刀を優しく撫で回していました。

 

 そうやって話が途切れたのを見計らって、今度は浮竹隊長が手を挙げます。

 

「湯川、俺からも質問させてくれ。ユーハバッハが別の世界に閉じ込められたのなら、霊王様はどうなったんだ……?」

「あ、確かにそうだね。このまま浮竹が霊王様の代わりとして……ってのは、ボクはヤなんだけどなぁ……」

 

 霊王様、ですか……?

 

「このユーハバッハだった双角錐は、霊王様の要素を有していますよ」

「え……嘘、でしょ藍俚(あいり)ちゃん……」

「そもそもユーハバッハが霊王様の御力(おちから)を奪い取ったわけです。その存在を、まとめて一つの世界にしてしまったので」

「だから霊王の力を持っている……ってわけか……? 俄には信じがたいが、世界は安定しているし俺も特に負担を感じていない……事実、なんだろうな……」

 

 浮竹隊長たちは首を傾げつつも、うんうんと頷きます。

 大丈夫! きっと霊王様になれたんだから、ユーハバッハも喜んでいるわよ!

 

『俺の望んでたんと違う……って何もない世界で文句言ってるでござるよ、絶対に……』

 

「――つまりこれ、新たな霊王様……ってことっスか……?」

「ほほう! それは興味深いネ!」

 

 逆に新たな霊王と聞いて、興味津々になった人もいます。

 ワキワキと指を鳴らして涎すら流しそうにしながら、涅隊長は高らかに告げます。

 

「私に任せておきたまえヨ! 新たな霊王! 生物や鉱物とは全く違う! 新たな世界というだけで、どれだけのことが解るか! いやはや、夢のような研究素材だヨ!! 誰にも邪魔などさせん!!」

「待て、涅! これが新たな霊王様というのならば、ここに置いておくわけには行かぬ。かといってお主に研究させるわけにもいかぬ……故に――」

 

 総隊長が止めました。

 首を上げ、視線を天――正確には、その先にあるであろう場所へと向けます。

 

「これは霊王宮へ送る。零番隊にも事情を話し、判断を仰がねばならぬ。命令じゃ、文句は言わせぬぞ」

「……チィッ」

 

 露骨な舌打ちをしますが、総隊長の命令には逆らえません。

 不機嫌を隠そうともしないまま、すごすごと引き下がります。

 

霊王宮(うえ)かぁ……けどこれ、動かしても平気なの……?」

「大丈夫ですよ」

 

 ユーハバッハだったものをポンと手で軽く叩きながら、私は太鼓判を押しました。

 




この真っ黒な厄介物を、上の人に引き取って貰って(おしつけて)、やっと片付きます。
(今回のタイトルは「これ、ユーハバッハです」って言った方がきっと通じる(Vガンダムの母さんです))
 
●原初の火(総隊長の卍解の扱い)
苦し紛れの後付けっぽいですが、予定通りです。
いえ、ホントに。
原初の火って言いたかったんです。

●そろそろ終わりも近いので

https://syosetu.org/novel/351461/
大体の方が知ってそうですが、18禁な方を開示。
(小説情報の方にもリンクを用意)
エッチなので、見る場合は自己責任でござるよ。


AIさんに作って貰いました。
(インスピレーション的な物ということで)
ちょいエロな藍俚(あいり)殿と射干玉ちゃんの絵。多分、卍解するとこんな感じ。


【挿絵表示】

(一応URLも)
https://img.syosetu.org/img/user/v2/5239/208/247944.png
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