お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第405話 霊王宮よいとこ 一度はおいで

「ここが、霊王宮……」

「ただの死神じゃあ、一生縁の無い場所って聞いてたけど……縁が、あったね……」

「二人とも……いやまあ、無理もないだろうが……」

 

 私と京楽隊長の交わす会話を聞きながら、浮竹隊長が苦笑します。ですがそう言う浮竹隊長も気持ちは同じらしく、視線があちこちに向けられていました。

 まあ、仕方ないですよね……? 

 

 だって、初めてきたんですから。霊王宮に。

 

 

  

 

 

 あの「ユーハバッハだった物を霊王宮で安置する」という事が決定してからというもの、移送準備は急ピッチで進みました。

 元々「ユーハバッハが霊王宮へと向かうのではないか? その際、死神たちも霊王宮への移動手段を用意しておくべきでは?」――という用心はしていましたからね。

 志波家に協力してもらい、霊王宮まで死神を打ち上げる砲台はとっくに準備済みです。

 ぶっちゃけて言えば「何時でも打ち上げられます」状態なっていました。

 

 使わずに済めばそれで良かったはずの大砲の出番が来たことに、海燕さんや空鶴は少々渋い顔をしたものの、けれどもそれが戦いに行くのが目的ではないことに、安堵していました。奥さんの都さんや娘の氷翠(ひすい)ちゃんは、特に喜んでいました。

 

 

 

 

 

 志波家の皆さんや死神たちに見送られながら、零番隊が帰るときよろしく私たちは砲台にて打ち上げられ、今まさに霊王宮へと到着したというわけです。

 外に出た瞬間、始めた見た景色に驚いて声を上げてしまったり、田舎モノが初めて上京したときみたいにキョロキョロしてしまうのも、仕方ないんですよ!

 仕方ないんですよ! 大事なことだから二回言いました!!

 

 到着したと思ったら、空が青くて!

 到着したのは、広いお盆みたいな所で驚いて!

 遠くの空には、大きな繭か塔みたいな建物があって!

 その回りには、お盆みたいな物が浮かんでいて! お盆の上に街があって!

 

 こんなの見たら、驚くに決まってるじゃないですか!!

 

「お主ら……さっさと要件を済ませるぞ!」

「えーっと、確か霊王宮表参道……だったよな……ココ……」

 

 仕方ないと言っても、総隊長はお気に召さなかったようですね。落ち着けとばかりに叱られてしまいました。

 そして私たちの反応など気にする余裕もないのか、一護が頑張って案内しようとしています。

 

 ……あ、そうそう。忘れないうちに説明しておきますね。

 霊王宮(うえ)までやってきたのは、総隊長・浮竹隊長・京楽隊長・私・一護・ユーハバッハだった物の五人と元一人です。

 総隊長は、総責任者として。

 一護は、一番最新の霊王宮の地理や状況を知っているので、案内役として。

 浮竹隊長は、霊王を身に宿した者として。兼、零番隊の指示を仰ぐため。

 京楽隊長は、浮竹隊長の付き添い兼年長者として。

 私は、ユーハバッハだったもの(例のアレ)の、生産者責任として。

 それぞれやってきたわけですね。

 

『浦原殿や涅殿が来てそうなものでござるが……不在でござるか?』

 

 その辺りは、話がややこしくなりそうだからってことで総隊長権限でダメになったわ。

 けどまあ、絶対に監視用の"何か"が仕込まれているんでしょうねぇ……特に涅隊長は、絶対に仕込んでいると思う……

 

藍俚(あいり)殿が予測できるのなら、山本殿だって気付いて止めるのでは……? 射干玉ちゃんは訝しんだでござるよ』

 

 その辺りのことは、もう諦めてるんじゃないかしらねぇ……

 ヘタに止めて、もっと分かり難い物を仕込まれるよりは、公然の秘密の扱いにしておいた方がまだマシってことでしょ……

 

「その通り。ここは表参道。そしてあの場所が、霊王がおわす本殿――霊王大内裏(れいおうだいだいり)じゃ」

「え……知ってるのか……?」

「その昔に少し知った、程度じゃがな。今ではお主の方がよほど詳しいじゃろうて」

「……ああ、こっからの案内は任せてくれ! こっちだ! 多分」

 

 イマイチ自信のなかった一護を補足するように総隊長が口を挟むと、一護の表情が輝きました。多分、と語尾に付けた辺りに、やや自信の無さが感じられますが。

 とはいえ意気揚々とした力強い足取りで、進み始めます。

 

「この中は移動がちょっと特殊だからよ。まずは……って、うおおぉぉっっ!?!?」

 

 ――が、その足はすぐに止まりました。

 

 叫び声を上げる一護の視線の先には、和尚がいました。

 いえ……いました、というべきか……ありました、というべきか……

 ユーハバッハにやられたんでしょう。五体をバラバラに吹き飛ばされていて、見るも無惨な状態です。

 一護が驚いたことで私たちも和尚の存在に気づき、思わず顔を見合わせます。

 普通なら、もう手の施しようがない状況……なんですが。

 

 ……えっと……なんで霊圧を感じられるのかしら……?

 え、これまだ生きてるの……?

 よくよく探ってみれば、曳舟さんら他の零番隊の人たちの霊圧も感じ取れます。

 え……? どういうこと……?

 

「ッ! 和尚!?」

 

 私があちこちに視線を向けていると、一護が突然口を開きました。

 その様子は私と同じく、あちこちに視線を向けています。

 

「どうしたんだい一護君?」

「わかんないんですよ……ただ、和尚が名前を呼んでくれって……」

「名前……どういうことだい?」

「こんな状態だけど、和尚からは霊圧が感じられます。黒崎君、とにかく名前を呼んでみて」

「あ、ああ……名前……兵主部一兵衛」

 

 一護が名前を呼んだ途端、首だけになっていた和尚の目が大きく見開かれました。

 ついで身体の残骸がぐちょぐちょと寄り集まっていったかと思えば、やがて一つにまとまって人の形になりました。

 ……こんなのユーハバッハと戦ってた時に見たわね。

 

『映像的には、グロ注意でござるなぁ。R-18でござるよコレ』

 

 一護がちょっと引っかかるけど、平均年齢が高いってことでセーフね。

 

「ふうっ! いやぁ、ありがとうよ!」

「…………な……」

「こりゃまた……凄いんだね零番隊って……」

「ふむ……」

「どっ、どうなってんだ!? 死んでたんじゃなかったのかよ!?」

 

 あっさりと復活して気楽な挨拶をする和尚の姿に、一護どころか京楽隊長たちすら絶句して言葉を失っていました。

 総隊長だけは、ある程度予測していたらしく驚きは小さいものの、それでも動揺は隠せていませんね。

 

「ん? 死んどったぞ。名には全て力がこもっとる。おんしに名を呼んで貰うことでおんしの力をちいっとばかしもらい受けて身体を直したんじゃ!」

「ムチャクチャだな……」

「そうか? わしとおんしの力を以てすれば当然じゃぞ!」

 

 ……はぁ。零番隊は不滅だってのは卯ノ花隊長から聞いてたけど……

 

「じゃあひょっとして、曳舟さんたちも生き返るんですか?」

「当然じゃ。伊達に自らの血肉を王鍵と化しておるわけではないぞ? 零番離殿(ゼロばんりでん)が全て滅びぬ限り、わしが名を呼べば歩ける程度には回復するわい」

「離殿……命が融合しているんでしょうか……?」

「そんなところじゃな」

 

 私の疑問に和尚はかっかっかっと豪快に笑い、やがて深々と頭を下げました。

 

「和尚?」

「まずは礼、じゃな。ユーハバッハを倒してくれたこと、零番隊を代表して礼を言う」

「御存知なんですか?」

「当然じゃよ。それから霊王様についても、じゃな」

 

 まず浮竹隊長を、続いて私の後ろの"ユーハバッハだった物"を見つめ、そして再び和尚は浮竹隊長へと視線を戻しました。

 

「浮竹十四郎」

「っ、はい!」

「おんしはその身に霊王様を宿し、世界の崩壊をよくぞ防いでくれた。本来ならば、新たな霊王様となってもらうところじゃが――」

 

 またしても"ユーハバッハだった物"へと視線を向けます。

 

「こうして新たな霊王が在ることじゃ。おんしについてはもはや何も言うまい」

「それはつまり……」

「死神として生きるも、望むならこのまま霊王宮で暮らしても構わんぞ? おんしはどうしたい?」

「そ、それなら……」

 

 和尚に言われて、浮竹隊長は迷いながらも自分の意思を口にしました。

 

「俺は、死神でいても、構いませんか……? 見たいヤツがいるんです……」

「当然じゃよ。おんしは世界を救った者の一人じゃ。ただし、その身に宿した力はしっかりと制御し、死神としての義務を果たすことは忘れるでないぞ」

「はいっ!」

「良かったねぇ、浮竹」

「京楽春水、おんしもじゃ。友と肩を並べるのであれば、その身に抱えておる力とも、そのうちしっかりと決着をつけるのじゃぞ」

「あはは……和尚にはお見通しですか……」

 

 和尚は浮竹隊長と京楽隊長のそれぞれに、そう告げます。

 

「さて次は、このユーハバッハじゃが。こやつの扱いは決まっておるわい。このまま霊王大内裏にて安置する。それでよいな?」

「良いも悪いも、儂らでは異論を口に挟むことはできませなんだ」

 

 総隊長がそう告げ、私たち死神も同意見だとばかりに沈黙しますが、口を挟む者は当然います。

 

「えっと……いや和尚、どういうことだよ!? そこは、霊王がいるって場所だろ!? それにユーハバッハは霊王を……」

「なに、問題は無いわい」

 

 そんな一護の疑問を吹き飛ばすように、和尚はさらに笑みを浮かべます。

 

「おんしには解らんかもしれんがの、霊王様に古いも新しいもない。わしらが霊王様と呼び奉るものがここに在り続けることに意味があるんじゃ」

「…………???」

 

 あ、一護が「何言ってるのかさっぱり分かんない」って顔してるわね。

 

『では藍俚(あいり)殿は分かるでござるか?』

 

 それはまあ、ね……ある程度は。

 自信は無いんだけど、分かっているつもりよ……

 

 霊王って、世界の楔なんでしょ? 三界がバラバラにならないために存在し続ける物。言うなれば世界を形作っている神様みたいなもので、神様がいて世界が今の形を取り続けているのなら、その中身がユーハバッハだって構わない。

 勿論、霊王であることの最低限の資格? 要素? なんていうのかな、そういった物は必要だろうけど、逆に言えばその資格があれば、誰だって構わない。

 尤もらしいことを言って煙に巻いているけど、一護は理解してるのかしらね。

 今までは霊王様と呼ばれていた存在が犠牲になっていて、これからはユーハバッハが犠牲になって、世界は在り続けるんだって。

 

 ……ってことはつまり……

 この場に"ユーハバッハだった物"がいなかった場合は……

 

 最悪の場合、一護が犠牲になってたんじゃ……

 

『いやいや、藍俚(あいり)殿も射程に入ってたとおもうでござるよ』

 

 ……いやぁ、どっちかっていうと射干玉の方が危なかったでしょ? 私の力なんて微々たるものよ……

 

『では間を取って、拙者たちが二人纏めて新しい霊王でござるな!!』

 

 ええぇ~……やだ~……

 

『拙者も嫌でござるよ。よって満場一致で、この案は否決されたでござる!!』

 

 異議無し! これは霊王様の御意志ね!!

 

 

 

「さて、では……」

 

 つ、次は私の番……よね……? 順番的に……! 何を言われるのかしら……

 射干玉と巫山戯て「これは否決されました!! だから大丈夫です!!」って言い合っても、それが和尚に影響なんてしないし……

 

「その黒い塊は、わしが霊王大内裏へと運んでおくとしようか」

「……えっ!?」

 

 スルー!? 私、スルーなの!?

 うわーうわー、これって私が言ってもいいのかしら……!? むしろ自分から突いたら、すっごいやぶ蛇だってことは理解してるんだけど……

 でも私、今さっき「えっ!?」って言っちゃったわよ! 絶対この後、何か言われるんだわ!!

 ……ええい、ままよ! 来るなら来い!! 

 

 じーっ……

 

「山本、おんしらもご苦労じゃった。この世界が無事でいられたのは、おんしら一人一人があったからこそ」

「ありがとうございます」

 

 じーっ……

 

「さ、さて……来て貰った早々で申し訳ないがの。色々と――」

 

 じーっ……

 

「やることが……神兵たちに……ユーハバッハを運ばせ……」

 

 じーっ……

 

「い、いやぁ……ユーハバッハが霊王の力を完全に手に入れたおかげで助かったわい」

 

 ……って! これだけ訴えても何もないの!?

 前回、瀞霊廷まで来たときにはアレだけ射干玉にちょっかいを掛けてたのに!?

 和尚ってば、ユーハバッハに何が起こったのかは理解してるんじゃないの!?

 

 ……あれ……これってひょっとして、全然理解してないんじゃ……?

 

『ほえ……?』

 

 だって和尚の筆も、この世界の"もの"に名を与えたわけでしょ?

 対して射干玉は、別の世界だって作れるわけで。そうなるとユーハバッハの能力と同じで、和尚も手が出せないし、見通せない。

 だから、触らぬ神に祟りなしって感じでいるんじゃ……

 

『ふむ……? つまり、計算されているんでござるな! 角度とか!!』

 

 なんで渦中のはずの射干玉が何にも考えてないの!?

 

「そうそう、湯川藍俚(あいり)。おんしもよくやったの。ユーハバッハを……その……倒してくれたの……」

「倒した……ですか……?」

 

 あ……やっぱりそういうこと……

 ちゃんと理解してたら、倒したって表現は違うわよ……ね……?

 

「倒したと、いえなくもありませんが……」

「どっちかっていうと、封印……だよな……?」

「そ、そうじゃな! わしとしたことが!! とにかく、その力を今後も是非尸魂界(ソウルソサエティ)の為に使ってくれ!!」

 

 一護と思わず顔を見合わせると、和尚は大慌てで話を切り上げました。

 

「(なあ、湯川さん……アンタの斬魄刀って……)」

「(しーっ、これ以上は拾わないで)」

「(……? ……??)」

 

 小声でやり取りをするのが聞こえているのかいないのか、和尚は髭を擦りながら霊王宮の空を見上げました。

 

「さて王悦たちにはこれからきっちり働いて貰わねばな! それに此度の戦に乗じて、ちいとばかし悪さをした童もいるようじゃし! 忙しい忙しい……」

 

 こうして、和尚は有耶無耶のうちに話を終わらせ、私たちもまた霊王宮を後にしまし――

 

 

 

 ……ああっ! そういえば霊王宮には、可愛い子がいるんだったわ!!

 忘れてたぁ!! なんで手を出さずに(マッサージ)せずに帰っちゃったの私!!

 

 燧ヶ島(ひうちがしま)メラさん!

 鑿野(のみの)のの()さん!!

 槌宮(つちみや)罪子(つみこ)さん!!!

 箸原(はしはら)ハス()さん!!!!

 砥ノ川(とのかわ)時江(ときえ)!!!!!

 

 で、いいのよね!?

 

『良く覚えてたでござるな藍俚(あいり)殿!?』

 

 うう……なんで教えてくれなかったの……射干玉のバカァ……!!

 




射干玉ちゃんの存在、触れない方が良いんだって。
和尚は悟ったようです。
(正直、書いている人も「どこまでネタにすればいいのやら」と戸惑っていたでござるよ。
 ぶっちゃけ、今さらゼロ番隊がどうこう言っても、蛇足なのでござるからして。
 もう和尚が直視するのを諦めたレベルってことで。ご納得してほしいでござる)

●そろそろ終わりも近いので(その2)
AIさんに作って貰いました。
(インスピレーション的な物ということで)
今回は「藍俚(あいり)殿が単行本の表紙だったら」です。
(最初は、特に指定無しで生成。2つめは、細々と指定して生成)


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