お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第406話 霊王護神大戦後の報告

 見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)による瀞霊廷への侵攻から、およそ数ヶ月。

 混迷を極めた尸魂界(ソウルソサエティ)にも、ようやく日常が戻りつつありました。

 

 ……出だしって、こんな感じで良いのよね?

 

『多分、良い感じだと思うござるよ』

 

 うん。じゃあ、OKと言うことにしましょう。

 何か問題があったら射干玉の責任ということにして……

 

藍俚(あいり)殿!?』

 

 はい、ということで。

 冒頭の二行でご説明した通り、色々と混迷を極めたユーハバッハの件から、少し時間が経過しました。

 その間に色々な事があったので、ご説明させて頂こうと思います。

 

 

 

 まずは、そうね……ハリベルたち、(ホロウ)陣営についてにしましょう。

 

 今回の件で、ユーハバッハに真っ先に攻められた場所であり、同時に死神たちへ異変を真っ先に知らせてくれた、ある意味では今回の件の立役者でもあります。

 でも悲しいことに、死神の立場では(ホロウ)を表立って称賛はできません。お目こぼし――公的には何もなかったことにするのが、精一杯です。

 ハリベル達もそれは理解しているので、特に何も言っては来ませんでした。

 ただ、せめてもの心遣いとして。彼らが虚圏(ウェコムンド)に帰るときに、手の空いている死神たちが全員並んで頭を垂れながら、無言で見送りました。

 それを見たハリベルやウルキオラが少しだけ柔らかい表情になったのが、印象的でした。

 

 あと、それから。

 虚圏(ウェコムンド)には物資がないから、ほんの少しだけど嗜好品なんかを送るようになりました。というか、私が届け役に任命されました。

 これはつまり「お前どうせちょくちょく顔を出しに行ってるんだから、そのくらいは働け」ということですね。

 ……私だって、瀞霊廷の復興作業の支援で忙しいんですけどね……

 

 

 

 さて、次は。今回の下手人でもある滅却師(クインシー)たちについて。

 生き残ったのは、まずバンビーズの5人。

 次にバズビーことハザード・ブラック。

 

 それから……えっと……ここから下は、ちょっと微妙なんだけど。

 

 まずアスキン・ナックルヴァールとナナナ・ナジャークープ。

 この二人は涅隊長の下で、技術開発局の備品扱いになってるのよ。だから、その、ね……扱いは、お察し下さい。

 

 それと、ジェラルド・ヴァルキリー。

 この人は……うん、生きて"は"いるみたいね。どうなっているかを詳しく知りたかったら、涅隊長に聞いて。私にはこれ以上突っ込んで質問するのは無理だったの……

 

 ――と、総勢9名です。

 

 ええ、9名です。少ないような、多いような数ですね。

 ……星十字騎士団(シュテルンリッター)だけなら、の話ですが。

 

 それ以外にも聖兵(ゾルダート)と呼ばれる一般兵や、戦力外として見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の雑務などを受け持っていた滅却師(クインシー)がいます。

 この人たちが、そこそこ生き残っているわけで。

 

 その面倒も全部、私に押しつけられました。

 ジゼルを飼ってたし、バンビーズに首輪を付けたんだから、纏めて面倒を見てくれって依頼されました。

 まあ、私ってば四番隊の隊長ですし。救護やら補給やら、裏方を取り仕切っているトップですからね! このくらいはドンと来い……

 

 ……ごめん、やっぱり辛い。泣いていい?

 

『拙者の胸で泣くと良いでござるよ?』

 

 あ、バンビエッタちゃんの胸で泣くから。せっかくだけど遠慮するわ。

 あの子ね、私が疲れていると「ママ、だいじょーぶ?」って言いながら、ギュッと抱き締めてくれて……

 

 そんなことされたら、頑張るしかないでしょ!?

 

『異議無し!!』

 

 ――と、こんな感じのことがあった結果、頑張って受け入れました。

 

 生き残った滅却師(クインシー)たちには、生きる道を探させることにしました。

 ユーハバッハは斃れ、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)は跡形もなくなった。でも自分たちは生き残った。

 なら、残った人生をどうやって生きていく? 現世で人間に紛れて生きる? 尸魂界(ソウルソサエティ)で死神の庇護の下で生きる? それとも全く新しい生き方を選ぶ?

 そういったことを考えさせることにしたんですね。

 

 でもとりあえずは手に職ということで、復興作業のお手伝いに回しました。

 人手が足らないですし、支援の手はどれだけあっても困らない状況ですから。

 タダメシ喰らいを置いておく余裕は四番隊(ウチ)には無いので。

 

『それ、死神からもモブ滅却師(クインシー)からも非難囂々(ひなんごうごう)なのでは?』

 

 黙らせました。

 

『……へ?』

 

 何のためにバンビーズがいると思ってるのよ。猿山のボス猿理論で、あの()たちに命令させたの。

 それにユーハバッハが倒れているからね。トップがいなきゃ、組織って結構脆いものよ。

 

 降伏勧告と命の保証と上司の命令で、効果は絶大だったわ。

 わりとあっさりと、投降してくれたの。

 装備も取り上げたし、死神の子たちにもその旨は説明した。一応、受け入れられたわ。

 

『……最後の一人になろうとも戦うぞ! って血の気の多いのもいたと思うのでござるが……』

 

 そんな子は、いなかったの。いいわね?

 

『……あっ、はい……』

 

 さっき「手に職を付ける」って言ったと思うけど。

 彼ら彼女らの能力を生かすなら、(ホロウ)退治に回すのが一番なんだけど……滅却師(クインシー)だからねぇ……

 

(ホロウ)の存在ごと滅ぼしてしまうので、魂の数のバランスがおかしくなってしまいますからな!』

 

 なので、復興作業のお手伝いとか炊き出しとか、救護業務のお手伝いとか。その辺を任せています。

 後ろ盾は四番隊(ウチ)――というより私。

 

 特にバンビーズなんて、好評なのよ。

 全員にナース服を着せて、怪我人を甲斐甲斐しくお世話させているの。

 特に若い男性死神には大好評よ。

 あの子たちって、それぞれタイプの違う美人だから。目の保養になるから。

 

『なにそれ超見たい。羨ましいでござる』

 

 ただ、バズビーがねぇ……

 立場的なことを考えると、彼には生き残った滅却師(クインシー)のまとめ役をお願いしたいんだけど……まだ心の整理が出来ていないみたいなの。

 黙々と依頼した仕事を熟すけれど、表情の変化に乏しいのよね。

 

『その辺、癒やすのも藍俚(あいり)殿の仕事では? カウンセリングでござるよ! カウンセラー!!』

 

 そうね……

 その内、それとなく聞き出したり相談に乗ったりしなきゃね……

 

 

 

 

 

 ……あ!

 涅隊長の管理下に置かれている約三名だけは、上記は全く関係ありません。

 彼らは何やら、よく解らない実験に巻き込まれているようです。

 十一番隊に備品の返却要請を度々出していますが、成果は芳しくありません。

 

 

 

 

 

 そして最後に――

 

『え!! アスキン殿らの説明はアレで終わりでござるか!?』

 

 最後に! 瀞霊廷や死神についてとなります。

 色々と変わりましたよ。

 

 流魂街から瀞霊廷へ入る際の通行証が簡略化されて、手続きが非常に簡単になりました。

 おかげで人や物資の往来が増えましたし、流魂街の人も人別録(にんべつろく)管理局に登録され、素養のある者は霊術院への勧誘も行われるようになりました。

 先の大戦で減った死神を少しでも補充したり、新しい風を取り入れようと中央四十六室が法整備の改革を行って――……

 他にも、ユーハバッハが大暴れしたせいで瀞霊廷が滅茶苦茶になって、大霊書回廊の記録やら映像庁の監視システムやらがおかしな事に――……

 

 ……あら? もしかして、この話って、どうでも良い??

 

『興味はあるとは思いますが、求めていた物とは違うのでは無いかと思うでござるよ』

 

 そうなんだ。

 じゃあ、護廷十三隊に起きた変化の話をするわね。

 

 まず総隊長……山本重國総隊長からです。

 結論から言うと、総隊長の職を辞することになりました。

 理由としては卍解が出来なくなったことや、怨敵であったユーハバッハが完全に討ち倒されたことなどです。

 

『卍解を失ったのは、藍俚(あいり)殿にも責任が……』

 

 あーあー、聞こえなーい!

 

 そうでなくても二千年にも渡って総隊長をやっていましたからね。

 周辺を取り巻く環境も変わったので、死神も変化を受け入れて風通しを良くするべきなのではないか? というわけです。

 ですが、総隊長の職を辞しても死神まで辞めたわけではありません。

 これからは真央霊術院の講師や、若い死神たちへの剣術指南役として活躍するそうです。

 

 雀部副隊長も、総隊長と一緒に職を辞しました。

 なんでも「丿字斎(えいじさい)殿がいるところが、自分の居場所です」とのこと。

 そうやって山本前総隊長の仕事を手伝う傍ら、趣味が高じての紅茶の店を出店して瀞霊廷の人たちに振る舞ったりしています。

 

『採算度外視の、悠々自適で素敵なセカンドライフでござるなそれ!』

 

 死神は副業をしている人って多いからね。

 雀部副隊長も、ついにその一人になったってわけ。

 

 

 

 こうして一番隊がごっそり減ってしまったわけですが。

 新総隊長には、浮竹隊長が任命されました。

 元々素質はあったし、霊圧も高かったし、前進を司る霊王の左腕(ペルニダ)に触れたおかげか、病気もよくなりました。

 

 そして新副隊長には、京楽隊長が任命されました。

 

『え……京楽殿、降格でござるか?』

 

 ううん、八番隊の隊長と兼任だって。それに八番隊は伊勢さんがいれば回るし、リサが手伝いに回されたからね。なら、京楽隊長が兼任でも問題ないだろうって判断よ。

 気の置けない昔からの知り合いがいた方が気が楽だろうし、上級貴族のしきたりに詳しい者が近くにいた方が実務も楽だろうっていうのが、理由みたい。

 早い話が、浮竹隊長を心配している前総隊長の気遣いが最大の選出理由みたい。

 

 山本前総隊長と雀部前副隊長から指導や引き継ぎを受けながら、お二人はなんとか一番隊の業務を回しています。

 

 

 

 そして、隊長が不在となってしまった十三番隊ですが。

 新隊長は海燕さんが選ばれました。

 

『あ、それは凄い納得でござるな』

 

 志波家の本家の嫡男っていう血筋に加えて、人格や強さだけを見ても非の打ち所がないものね。

 で、空いた副隊長にはルキアさんが任命されたの。

 

 十三番隊の隊士たちもこの人事には大いに納得してたわ。

 引き継ぎなんてスムーズどころか、当日にいきなり「お前今日から隊長やってくれ」「お前今から副隊長な」みたいな速度で仕事を振られたみたいよ。

 

『まるで藍俚(あいり)殿の時みたいでござるな』

 

 私の時は問答無用で隊首会に連れて行かれて、そのまま隊長の任命式だったから……アレと比べれば、まだまだ十分すぎるくらい落ち着いてて余裕があるわよ。

 何しろ新総隊長や新隊長は、まだ隊長就任のお披露目すら行われていないんだから。

 

『既に実権はあるものの、まだお披露目パーティはされていないわけですな?』

 

 瀞霊廷が落ち着いて、復興がある程度進んだら、新体制で新しいスタートを切る。その時にまとめて行うみたいよ。

 おめでたいことは纏めて、派手に騒いでガス抜きをしようって魂胆みたい。

 

 ただ、その告知役を勤めるはずの瀞霊廷通信が休刊しているのよね。

 一応は戦後復興の様子を記載した簡易版が少数、各地に細々と配られているんだけど。

 本格的な復刊第一号はまだまだ半年以上は先らしくて、そのタイミングで新体制スタートの紹介とか新総隊長の紹介とかも含めて行うみたいよ。

 

 

 

 

 

 ……あー、思い出したわ……ガス抜きと言えば……アレがあったわね……

 

『ああ、あの事件でござるな……』

 

 

 

 

 

「なあ、一心よ。俺、前に言ったよな?」

「…………」

「ガキを守るのは親の仕事だって、現世でお前の所に行ったときに行ったよな?」

「…………」

 

 流魂街の志波家では現在、大の大人の土下座ショーが絶賛開催されています。

 土下座をしているのは一心さん。

 土下座をされているのは海燕さん。

 議題は「どうしてユーハバッハ戦の時に援護に来なかったのか」について。

 

 以前、先遣隊として現世に赴いた際に海燕さんは一心さんと「子供(いちご)を護ってやろう」と誓い合ったそうです。

 

 誓い合った……らしいのですが……

 

「お前のことだ。ユーハバッハのことは気付いていたよな? 何しろ一護の斬魄刀を打ち直す際に、お前の所に行ってんだもんな? 気付かないわけねぇよな?」

「あの、それは……」

 

 地面に額を擦りつけながら、一心さんは必死に言葉を紡ぎます。

 ……面白い光景よね、コレ……下手な芝居よりよっぽど見てて飽きないわ……

 

藍俚(あいり)おば様、あの方が……」

「ええ、志波――現世で婚約して、今は黒崎一心さん。海燕さん(おとうさん)に頼まれて、連れてきたの」

 

 娘の氷翠(ひすい)ちゃんの問いかけに、私は正直に答えることにしました。

 ユーハバッハとの戦いも終わり、海燕さんが隊首羽織に袖を通すのも慣れた頃。海燕さんの依頼で、一心さんを連れてくることになったんですよ。

 何故か、私が。

 

『しょっちゅう虚圏(ウェコムンド)に行ってるから、その実績を買われたんだと思うでござる』

 

 なんで!?

 

『真面目な話をすると、下手な隊長では一心殿に逃げられると思い、消去法で藍俚(あいり)殿にお願いしたのではないかと。海燕殿は隊長になったばかりですし、他の隊長方もお忙しいでしょうから』

 

 私が暇しているみたいなこと言わないで……そんなことないから……

 

『(忙しいのに、現世に行って、一心殿を捕まえて、戻って来ている辺り……言葉に説得力が……ある? 無い? もう拙者には理解できぬでござる……)』

 

 まあ、いいか。

 こうして面白い光景を見られるんだから。役得役得。

 

「一心おじさま……父様から聞いていましたが、こうしてお会いするのは初めてです」

「一心さんも、氷翠(ひすい)ちゃんに遭いたかったと思うわ」

 

 ……こんな状況じゃなければね、という言葉を私は必死に飲み込みました。

 

「その、行こうと思ったんだが……尸魂界(ソウルソサエティ)影の領域(シャッテン・ベライヒ)に上書きされていただろ? オマケに鍵が掛かってて、通行証も古すぎて使えなくて……」

「だったらもう少し早くから協力したら良かったんじゃねえのか? なぁ?」

 

 ……影の領域(シャッテン・ベライヒ)に入れない、か……

 それ、私が暴れたのが原因、よね?

 

『そうでござるよ。本来なら、一心殿も援護に来てたでござる』

 

 どのタイミングで?

 

『えっと、全七十四巻のうち七十三巻のラスト辺りだったような……』

 

「それは……」

「確かに俺だって、一護の力にゃなれなかったかもしれねえ。けどよ、来てやるだけでもどれだけ助けになったか、お前には分かるだろ!?」

「…………」

 

『お説教、続いているでござるな――って藍俚(あいり)殿!? どうして無言で伝令神機を取り出したんでござるか!? しかも動画撮影モードまで起動させて!?!?』

 

藍俚(あいり)おば様、どうしたんですか?」

「せっかくだから、録画して黒崎君に送ってあげようかなって。織姫さん経由で」

 

 そう口にした途端、一心さんが飛び掛かってきました。

 

「ちょ、ちょっとおおっ!! 湯川隊長、本当に、やめて下さいよ!! 俺だって、精一杯やろうとしたんですよ! ただちょっと締め出しを喰らってただけで!!」

「おい一心!! 誰が土下座辞めて良いって言った!?」

 

 この後、一心さんは志波家に色々と絡まれたみたいです。

 




 次から、新章。時灘と彦禰(ひこね)とアウラ。

●一心さん
 書いている人が参加させられなかった結果がコレです。
 もうオチに使うしかなかったんです。

●メモ(変更のあった人事)
・一番隊
 浮竹:総隊長(隊長)
 京楽:副隊長&八番隊隊長
 (沖牙が残っているのでサポート)

・八番隊
 京楽:隊長
 七緒:副隊長
 (リサの権限が大きくなった)

・十三番隊
 海燕:隊長
 ルキア:副隊長

・霊術院
 山本と雀部:教師

・十一番隊
 ???
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