お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第413話 四大貴族の半分にほぼ無条件で信頼される立場って改めて考えるとやっぱりおかしい

 瀞霊廷の某所、とある施設の地下深く。そこには公式の地図などに記されていない秘密の空間があります。

 太古の昔より、五大貴族が瀞霊廷の方針などについて議論を重ねるための聖なる場所であり、霊王宮に次ぐ重要な場所の一つ……そんな風に言われています。

 

 とはいえ、その場所には何か重要な物が安置されているわけではありません。

 ただ、五大貴族の当主がその部屋に集まった瞬間だけ、この場所の安否がそのまま瀞霊廷の存亡に繋がると言っても過言では無いほどの重要施設へと昇華するんです。

 つまりは現世で言うところの、国際サミットの会場などと同じですね。

 会場自体の価値は微少。

 ただし、そこに各国の重要人物が集まることで重要度や危険度は一気に跳ね上がる。ましてや要人が集まったところを襲撃なんてされた日には、世界中が蜂の巣を突いたような大騒ぎになるわけです。

 

 そんな重要施設に、一家を除いた五大貴族の当主と当主代理の四名が揃いました。

 ……あ! もしかしたら「五大貴族なのに四名って一人足らないんじゃ?」とお思いでしょうが、これは「万が一にも全員揃ったところを襲われると困るから、当主全員が同一の場所に集まったら駄目だよ」という掟を、過去の中央四十六室が定めたそうです。

 その掟は現在も続いていて、その場には朽木家・四楓院家・綱彌代家――それと、除外されたはずの志波家の当主が集まりました。

 

『四楓院家は夜一殿が出席しているので、正確には当主代理でござるよ!!』

 

 まあ、ねぇ……現当主の夕四郎君じゃあ、若すぎるし……

 それと会議の発起人の綱彌代家が「夜一さんを連れてこい」って言ったそうよ。

 

 何はともあれ、そうして開催された会議の席で交わされた議題というのが「志波家を復活させて五大貴族に戻そう」というものだったそうです。

 志波家は、分家だった一心さんが出奔したことでお取り潰しにされたことは皆さん御存知かと思います。

 けれど、彼の息子の一護が大活躍しました。

 藍染惣右介の撃破に加えて、先の霊王護神大戦でもユーハバッハの討伐に多大過ぎる貢献をしたこと。

 勿論、現在の当主である海燕さんだって護廷十三隊の死神としての活躍もめざましく、十三番隊の隊長に就いた。

 これらの功績は志波家の汚名を濯ぐのに十分すぎる。

 

 ――というのが、会議の大まかな内容だったそうなんですが……

 

 

 

「聞いていますか湯川殿!?」

「ええ、勿論聞いていますよ朽木隊長。ところでお茶のお代わりはいかがです?」

「……頂きます」

 

 応接室の机に荒々しく拳を叩き付けながら叫ぶ朽木隊長に同意の意を示しながら、私は空になった茶碗に新しくお茶を注ぎます。

 そんな私たちの光景を、夜一さんはニヤニヤと笑いながら見物していました。

 ……援護の言葉一つ言わないなら、今食べているお茶請けの和菓子、返してくれません?

 

「どうぞ」

「どうも」

 

 濃いめに淹れたお茶を差し出すと、朽木隊長はそれを一気に呷ります。

 ……熱くないのかしら?

 かと思えば、お茶請けのお漬物をガリガリと乱暴に囓り始めました。

 

『白哉殿は甘い物が苦手でござるからな! よって夜一殿にはお菓子を! 白哉殿にはお漬物を! それぞれお茶請けとして出しているでござるよ!! 藍俚(あいり)殿の心遣いでござる!!』

 

「いやぁ、まさか白哉坊がこれだけ荒れた姿を見られるとは……くははっ!! 陰気な会議じゃったが、出た甲斐はあったわい」

「笑い事ではないだろうが!!」

 

 再び机の上に拳が炸裂しました。

 あの、天板が凹むから止めて欲しいなぁって……

 

 …………

 ……あ! えっと、現在はこんな状況です。

 

藍俚(あいり)殿! 多分ですが、これで理解しろというのは酷でござるよ?』

 

 そう、よね……

 冒頭で言ったように、綱彌代時灘が主催して五大貴族の会議が行われました。

 とはいえその会議はもう終わっていて、彼ら二人はその帰り……なんですけど……

 自分たちの隊や屋敷に帰らず、その足で四番隊(ウチ)まで来ました。

 予定にない突然の来訪――それも四大貴族の二人が揃って来たから、四番隊(ウチ)の子たちが凄く腰が引けてました。

 

 何事かと思いつつも応接室で二人を出迎えたところ、先ほどのような事情説明をされました。

 まあ、それだけなら良かったんですが……

 

「あの男……言うに事欠いて緋真を侮辱するなど……」

「いい加減落ち着かぬか」

「私は十分落ち着いている!!」

 

 え……? その状態で……??

 

 ……とまあ、こんな具合で朽木隊長が激怒しています。

 激おこです。いえ、激おこスティックファイナリアティぷんぷんドリームです。

 

藍俚(あいり)殿そんな古いネタ良く覚えてますな……』

 

 原因は、会議の席で時灘に緋真さんを侮辱されたからです。とはいえ、朽木隊長の口から語られただけしか聞いていないので、実際にどんなことを言われたのか私は知らないんですけどね。

 でも、今の朽木隊長と夜一さんの様子を見るに、何を言われたかはなんとなく想像が付きます。

 

『股を開いて上手いこと上級貴族に取り入ったとか、暖衣飽食に塗れた薄汚い女とか、己の立場を死守するために為に妹を切り捨て処刑しようとしたとか、大体そんな感じのことを言われた気がするでござるよ』

 

 処刑って……藍染の時のアレね――って、あの時は朽木家総出で助命嘆願してたでしょ!! 藍染が仕事に忙殺されるくらいの勢いで!!

 

『それも多分ポーズだとか言われたのでは? なにしろ難癖を付けようと思えば幾らでも付けられるでござるよ』

 

 その結果が今の朽木隊長ご乱心です。本人は至って冷静だと言っていますが……

 

「正気を失っていれば、あの場で斬り捨てていた!!」

「お主……(はらわた)が煮えくり返っていたじゃろうとは思っておったが……」

「冷静だからこそ、部下達の前で醜態をさらすような真似は避けているのだ!!」

 

 ……それって、私になら醜態を見せても平気って事……? 

 六番隊に戻ったら、不機嫌すぎて八つ当たりとかしそうだから……? ストレス発散の場を私に求めた……?

 

藍俚(あいり)殿、めっちゃ信頼されてるでござるからなぁ……』

 

 ま、まあ確かに……朽木隊長とは色々あったからね……具体的には殴ったり……

 

「やれやれ、強引にでも藍俚(あいり)の所に連れてきて正解じゃったわ……」

 

 夜一さんがそう零しました。

 あら、四番隊(ウチ)に誘ってきたのは夜一さんだったのね。

 けど納得ね。朽木隊長なら一人で来そうだし、そうでなければ一人で抱え込む可能性もあったから。

 

「それ、良い判断だと思いますよ」

「ええ……口惜しいですが」

「お主、口惜しいとはなんじゃ口惜しいとは!!」

「まあまあ。何よりこんな姿、緋真さんには見せられませんからね」

「それもあってこのような……その分、湯川殿にはご迷惑をおかけして申し訳ございませんが……」

「何を今更。それが医者の役目ですよ」

 

 お茶とお漬物のお代わりを差し出しながら、そう言って宥めます。

 このくらいで落ち着いてもらえるなら、安いものですからね。

 

「それに緋真さんに余計な心労を掛けたくない、弱い姿を見せたくないという男心も理解できますからね。私で良ければどうぞ存分、ご自由に発散して下さい」

「重ね重ね、ありがとうございます……湯川殿には忙しい中で身重(みおも)の緋真のことも気に掛けて下さっているというのに……」

「そういえば、そろそろかの?」

「ええ、あと二ヶ月くらいですね」

 

 夜一さんの言葉に頷きます。

 緋真さんのお腹には、朽木隊長のお子さんがいます。滅却師(クインシー)たちが襲ってきたときが妊娠八週目くらいで、そこから半年ほど経過しているので。

 そう伝えると、夜一さんがなんだかそわそわし始めました。

 

「――で?」

「で? とは?」

「じゃから! 男だとか女だとか! 名前は決まったのかとか、あるじゃろうが!! 儂に言うことがあるじゃろうが!」

「ああ、そういうことですか。女の子ですよ」

「名は真桜(まお)と名付けた。緋真と共に色々と考えていたが、やはりこれだろうと先日ようやく決まった」

「色々考えてましたからねぇ……けれど、おめでとうございます」

 

 そっかそっか、ようやく決まったのね。

 結局今回は緋真さんの名前から一文字取ったのかぁ。緋真さん(あのひと)「今度は白哉殿の白か、蒼純様か銀嶺様から一文字を……」って、ずっと遠慮してたからねぇ。

 

『ちゃんと桜の文字が入っているのでパパの斬魄刀の中の人こと千本桜殿も花丸にっこり大満足! まぢルンルン御機嫌丸でござるよ!! めっちゃイイ笑顔で大通りをスキップしてたのはこれが原因だったんでござるな!!』

 

 少しだけ気が楽になったわ……

 あとは出産日当日に、私が取り上げられるかだけが心配……産婦人科の復習をしておかないと……

 

 ……あら? 夜一さんがなんだが不思議な顔をしてるわね……?

 

「~~~っ!! なんで! お主ら! 儂に! それを! 言わんのじゃ!!」

「…………?」

「…………??」

「くわーっ!! そろって惚けた顔をしおって!!」

 

 珍しい。夜一さんが振り回される側に回ってるわ。

 

『白哉殿に気を遣った結果がコレでござるからなぁ……』

 

「ぜいぜい……まあ、よい。慶事にケチを付けるのもなんじゃからの。それにしても……」

 

 肩で息をしたかと思えば、今度は一転して優しい表情で朽木隊長を見つめます。

 

「あの白哉坊がもう二人の子持ちとはのぉ……」

「…………フッ」

「そういえば夜一さんのご予定は? あ、私にはもうバンビエッタちゃんという子供がいますので」

「それはお主が勝手に引き取った滅却師(クインシー)の名じゃろうが!! あと白哉坊!! お主、その目はなんじゃ!!」

「いや、あの会議の席で見目麗しいと褒められていたことを思い出して……くくっ……」

「やめんか!! あんな男と夫婦になるくらいなら藍俚(あいり)と祝言を挙げた方が数千倍もマシじゃ!!」

「でしたら、お相手は私よりも砕蜂はいかがです? あの子、とってもよい子ですよ」

「冗談でも言って良いことと悪いことがあるじゃろうがぁぁっ!! というか、冗談でもそんなこと言えるわけがなかろう!! 時と場所を弁えんか!!」

 

 時と場所って……

 朽木隊長の溜まった鬱憤を吐き出させるために、四番隊(ウチ)まで引っ張ってきたんですよね……??

 むしろ、今だからこそ言えるのでは?

 

『というか藍俚(あいり)殿? 百合の勧め方が雑すぎでござるよ。もっとこう、プラトニックな感じから……』

 

 えぇ……プラトニックな段階はもうとっくに過ぎてるでしょう?

 まあ、夜一さんを揶揄って遊ぶのはこの辺にしておきましょうか。

 

「ところで話を戻しますけど。志波家を五大貴族に戻すって本当なんですか?」

「ええ。腹の底で何を考えていたかは不明ですが、少なくとも本気で復活させようとしてはいるようでした」

「お主ら、なんで突然真面目な話を……ええいっ! 儂も同じ意見じゃ!」

 

 ふむ……二人揃って同じ意見……

 

「海燕さんなら部下や流魂街の人たちから慕われていますし、あまりおかしな事ではないのでは? というか、海燕さんもその場にいたんですよね?」

「ああ、彼奴も元は五大貴族じゃからな」

「なんて言ったんですか?」

 

 私の問いかけに答えてくれたのは朽木隊長でした。

 

「すぐには決められない、と言っていました」

「儂も彼奴も、綱彌代時灘と顔を合わせたのも初めてじゃった。じゃがあの男からは、なんとも言えぬ胡散臭さが漂ってきておったわ。提案の奥から漂うロクでもなさを感じ取って、保留としたのじゃろうな」

 

 ついでにあの会議場に足を踏み入れたのも初めてじゃったわい、と付け足しながら夜一さんも口を開きます。

 ……京楽隊長や浮竹総隊長からもある程度聞いていたとはいえ……なんとも危険そうな人物みたいね……

 

「ところでその肝心の海燕さんは? 今のお話からすると、夜一さんが一緒に連れてきても良さそうですけど……」

「それが彼奴め、現世に行きおっての……」

「え……?」

 

 なんで現世に……? しかも隊長が行ったんですか!?

 

「現世の重霊地――ああ、といっても空座町ではないぞ? もっと西の別の場所じゃよ――で、なにやら騒動があったらしくての。しかも間の悪いことに、一護の妹たちがそこにいるそうなんじゃ」

「黒崎君の!?」

「さらに娘の危機を聞いて志波一心殿が黒崎一護を連れて向かったらしく……会議終了後、志波隊長にその連絡が来たのです。我々はその内容を漏れ聞いた程度ですが、海燕殿はかなり焦った様子でルキアも連れて現世に向かうと……」

 

 なるほどねぇ……ルキアさん、十三番隊の副隊長だもんね……そりゃあ、連れて行くわよね……

 で、ルキアさんが関係しているので、六番隊の阿散井君も勝手に動いて一緒に行っちゃったみたいです。

 朽木隊長が最後にボソッと付け足すように零していました。

 

 ……あら? 現世の重霊地って言えば……

 

「それってまさか……少し前に十番隊の日番谷隊長が現世へ調査に行った場所、じゃないですよね……?」

「さあ、そこまでは……」

「のう? まさかとは思うが……この事件……」

 

 冗談めかした口調で夜一さんは言いますが、その言葉のウラには拭いきれない疑念が込められていました。

 

「誰かの手で、意図的に起こされた事件だと……?」

「でも黒崎君に海燕さん、日番谷隊長にルキアさんに阿散井君もいるんですよね? だったら……」

 

 ……うーん……自分で言ってて、改めて不安になるメンバー構成……

 

『というか大体漫画とかで主役のメンバーでござるな! しかも現世ということは織姫殿たちが巻き込まれても仕方ないでござるよ!!』

 

 ……つまり、何か起こるってことでしょそれ!

 だ、大丈夫かしら……? 四番隊(ウチ)からも吉良君とか桃を派遣すべき……?

 いえ、織姫さんがいるから大丈夫だとは思うけど……

 

「ええい! 今更言っても仕方あるまい。それより儂らは今、綱彌代時灘の件に注力すべきじゃ!」

「そうですね……浮竹総隊長たちが裏で色々と動いていますから……」

「それ実は、儂も借り出されておっての……おかげでここ数日忙しくて……」

「あはは……実は私も、何やら役目を割り振られているんですよ……」

 

 やや疲れた溜息を、二人で吐き出します。

 

「いっそ、全てが片付いたら厄払いの意味を込めて号外でも出すかの? 綱彌代家どころか五大貴族全体を見渡しても、在任期間が最短だった当主の誕生という見出しで――」

「檜佐木君なら喜んで書きそうですね……けどそれなら、朽木家第二子誕生の方が良いんじゃありませんか? 明るい記事の方がずっと良いでしょうし――」

「ならばルキアと恋次の祝言を――」

「あ、でも檜佐木君は回顧録の取材で現世にいるはずですし――」

 

 そんな感じで、応接室での会話は弾んでいきました。

 どうやら朽木隊長の鬱憤は晴れたようです。

 




 やっと2巻です。
 (正確には「原作1巻の終わりから、2巻の最初のくらい」でしょうけど)

●このときくらいの原作の時系列
 (彦禰(ひこね)が大怪我して戻ってきた日から)
 数日後、五大貴族の会議が発生。
 ほぼ同じ頃、檜佐木が現世に行こうとしたり。マユリ様が悪巧みの計画を練ってた。
 
 で、檜佐木の現世の取材シーンや、マユリ様が悪巧みを実施した日までに、数日(どれだけ少なくとも1日?(半日??)ある。

 早い話が、1巻と2巻の間に、1日くらいは時間の経過があると思っています。
 (間違ってない、と思うんですが……)

 別に気にしなくてもいいんでしょうけどね。

●結局何が言いたいかというというと
 白哉と夜一が藍俚(あいり)殿のところで愚痴を言うシーンが書きたかったんです。
 (「愚痴を言うくらいの時間的な余裕はあるよ」という理由付けなだけ)

●朽木家の第二子のおさらい
 千本桜が泣いて頼んだので"桜"は確定(緋色と白色で桜色)
 (第一子の鴇哉(ときや)が白哉から一文字なので)緋真の真の文字を足して。
 よって名前は真桜(まお)です。
 女の子です。

 (ただ、以降で二回くらい名前が出てきたら御の字ってレベルですが)
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