(アウラが登場するまで、ほぼ一緒なので)
檜佐木修兵は現世へと赴いていた。
目的は、自身が執筆予定の霊王護神大戦に関する取材。
浦原喜助への直撃取材は当然のこと、大戦時に現世ではどのような様子だったかを調べて回るため――えっと、一応、そういった取材がメインだったハズなのだけど……
いえね、現世の様子を調べるために駐在している死神から話を聞くのはちゃんとやっていたんですよ。
ただ、浦原の所への取材が……ね……
檜佐木は浦原から借金して現世の品物を色々と買っていたので、支払いをもう少し待ってくれませんか? と泣き付くのがメインになっていたり。
その借金の期限延長の際に浦原から売り込みを掛けられて、逆に借金の額を増やしたりと、取材そっちのけの「取材ってなんだろう?」状態になってたわけですが。
あ、でも一応はちゃんとそれっぽい話もしたんですよ。
産絹
そうやって会話を繰り広げていた時のことだ。
不意に、空座町全体が隔離された。
浦原の知識を以てしても即座には看破できない『何か』に包み込まれたかと思えば、さらには店そのものにも曲者が迫っていると浦原は言う。
そんな中、何の前触れも無く姿を見せたのは
数ヶ月前。黒崎一護が死神としての力を失った際に一悶着あった後、
その後は音沙汰もなく、死神たちも浦原としても特別親しい交流があったわけではない――彼らの動向については、独自のルートで調査していたが――程度の間柄である。
「何が目的か?」と、巫山戯た態度を交えつつ問いただす浦原に対して、雪緒が答えたのは「一緒に来て欲しい」との言葉だった。
だがその問答の最中、浦原商店に複数の人間が群れを成して襲ってきた。
それも
不思議なことに檜佐木のみ狙いを定めて襲いかかってくる人間たちを相手に戦いながら、彼は思わず叫んでいた。
「ったく! 俺は今日は取材に来てる側だってのに! 突撃取材には事前に予約を入れろってんだ!!」
苛立ち混じりに口にしながら大きく跳躍し、足下の霊子を固めて空中に静止して眼下の人間達を見下ろした。
その刹那――下げた視線の先から、声が響いた。
「驚きました……」
「……ッ!」
ぞわり、と、檜佐木の説示に震えが走る。
「取材、ですか……
「あ……? な、なんだアンタ……?」
聞くだけで脳味噌を蕩かせるような囁き声に、檜佐木は一瞬我を忘れかけた。
だがあまりにも場違いな声色と、何より霊圧の無い場所から声が聞こえてきたことが逆に警戒心を呼び起こす。
檜佐木の目に映ったのは、見目麗しい一人の若い女だった。
凜々しさと艶めかしさを併せ持つ雰囲気のビジネススーツを身に纏っており、周囲にどことなく神秘的な色気を振りまいている。
「死神……
「その通りですよ……いえ」
女性が言葉を止めて視線を下に向けた瞬間、まるで霧散したかのようにその姿が消えた。
まさか幻影か何かかと思いかけるが、気付けば檜佐木は自身の上半身に何者かの腕が絡みついている事に気付く。
「……!?」
直接触れられている感触はない。
霊圧知覚を働かせても、そこには何もないと告げている。振り払うように腕を動かしても、虚しく宙を切るだけだ。
だが彼の目には、確かに何者かの細腕が映っている。
檜佐木の身体を背中側から軽く抱き寄せる形で存在しているのだ。
「この場合、
「……!!」
相手への警戒度が一瞬にして最高まで跳ね上がった。
その「
……あれ? 戦いましたっけ……?
えっと……カットされたけど、戦ってました……
――フィンドール・キャリアスの口癖だ。
つまり階級などは無論のこと、過去も含めて檜佐木の事を知っていることになる。それも、特殊な結界内での戦いの詳細を。
それに加えて気配すらなく副隊長へと肉薄したことも含めれば、決して侮ることの出来ぬ存在となっていた。
故に檜佐木は、一切の油断をしない。
「よく知っているじゃねぇか。なんだ、もしかして俺のファンか?」
たとえ彼女が、檜佐木の心を揺さぶるような蠱惑的な女性だとしても。
「ええ、そうですね……貴方のことを知ってから、お近づきになりたいと思っていた……そう言ったら、信じて下さいますか?」
「…………!?」
たとえ彼女が、檜佐木の心を揺さぶるような声で、魅惑的な言葉を発したとしても――
「そ、そそそそそんな言葉! 信じるわけねえだろうがそんなの!!」
割とギリギリ……ひょっとしたら爪の先くらいはアウトだったかもしれないが、檜佐木は理性を保ち、その場から大きく飛び退きながら斬魄刀の柄に手を掛ける。
どうやら数日前の
二人きりの食事をしただけで舞い上がりすぎだと思われるかもしれないが、彼は大体こんなものである。
「大丈夫っスかー! 檜佐木さーん! ハニトラには気をつけてくださいね-!」
「だーっ! なんですかそれ!! ひっかかるわけないでしょ!! 俺、一応これでも副隊長っすよ!?」
下から聞こえてきた、浦原のありがた迷惑な忠告に半泣きになりながら叫ぶ檜佐木であったが、女はそんな檜佐木に向けて冗談とも本気ともつかない言葉を投げかけた。
「あら、残念ですね。色仕掛けで戦いが回避できるなら、それはそれで楽だったのですが」
「……ッ!!」
妖艶な微笑を浮かべて、小首を傾げながら檜佐木を睨め付けてくる。
その視線によって湧き上がる衝動を心の中で必死に押さえ込みつつ、同時に内心の焦燥を表に出さないように努め、クールを装って言葉を返した。
「……残念だったな。あんたは確かに魅力的だが、俺を誘惑したけりゃ乱菊さん並にあられもない格好をしてくるか、さもなきゃ湯川先生くらい甘やかすんだな!」
「檜佐木サーン! 全然キマってませんよー! むしろお二人から怒られても知りませんよー!?」
「ええっ! だ、駄目でしたか!? ……じゃなくて! お、俺は一体何を……!?」
「それで誤魔化すのはどう頑張っても無理っスよー!!」
耳まで真っ赤にしながら周囲に視線を泳がせる檜佐木であったが、そこでふと気付いた。
「湯川……ですか……それはひょっとして、死神の湯川
「へ!? あ、ああ……そうだぜ……」
つい先ほどまで妖艶な雰囲気で檜佐木を誘惑していたはずの彼女が、今はまるで真逆の――怒りや嫉妬のような負の感情を身に纏っていた。
聞こえてくる声音も、蠱惑的なものから一転して低く抑揚のない声になっている。
「
「ヒコネサマって、まさか産絹
「おや、どうして貴方がその御威名を? それに時灘様まで……いえ、そんなことは構いません」
お互いがお互いとも、まさか知っているはずがないと思っていた「まさかの名前」を出されたことで、二人の間に一気に混乱と緊張が走る。
そして、先に口火を切ったのは女性の方だった。
「
「へ……?」
予想だにしてない、食事の様子のことを尋ねられて檜佐木の思考が一瞬止まる。
だがその一瞬後には再起動して、なんとか言葉を捻り出していた。
「いや、施薬院で傷だらけで錯乱状態だった
「それで……?」
「そしたら落ち着いて、美味そうに食べてたぞ……あと、去り際に礼も言ってた……」
「去り際に、お礼まで……」
「お、おい……?」
今度は幽鬼のように気の抜けた様子を見せる女性の姿に、檜佐木はもはやどう反応して良いのか解らなかった。
がっくりと肩を落としていたかと思えば、少しして彼女は再起動する。
「……お恥ずかしい所をお見せしました、檜佐木修兵様。遅くなりましたが改めまして……
「あ、ああ……」
自身の名を名乗り、優雅な所作で手を閃かせながら一礼をする。
それだけで一種の美しさが感じられた。
……まあ、直前のやり取りで色々と台無しだったりするのだが。
「で、なんで湯川先生の名前を知ってたんだ? いや、俺のこともなんで知ってるのかも併せて聞きたいんだが……」
「先ほど、お近づきになりたいと思っていたと申しましたが。檜佐木様と共に、そう思っていた方の一人
「……でした? なら、今は違うのか?」
過去形の言い回しに気付いた檜佐木が尋ねる。
するとアウラは、あっさりと肯定する。
「ええ、そうです。それも過去のこと……今は……そうですね……会ってみたいですが……最初にそう思った時と感情は真逆、でしょうか……」
みしり、と明後日の方向から音がした。
それがアウラが処理しきれない感情の発露によるものだと、檜佐木は気付かなかった。
現世とか檜佐木の回りは、原作通りなので大体こんな感じで。
●道羽根アウラ
黒髪でスーツの似合うナイスバディのお姉さん。巨乳。
真面目で堅物そうな表情が似合う。エッチな巨乳。
死神で例えるなら大人っぽい色気のある巨乳の七緒ちゃんでしょうか?
その他、些細な情報として
・大雑把に言うと、時灘に利用されている。
・愛着のある物を持たない
・産絹
・宗教法人XCUTIONの代表として、
などがある。
彦禰に手料理食べさせる役目、取られちゃった……私が先に料理を作ってあげようと思ったのに……美味しいって言われたかったのに……
●俺を誘惑したけりゃ乱菊さん並にあられもない格好をしてくるんだな
原作小説で檜佐木が口にした名言。
これに絡ませたかった結果、藍俚殿がここ数話ほど頑張ったという裏話。
ぶっちゃけ「今回はこれが言いたかっただけだろ」と言われたら反論できねぇでござるよ……
(どうでも良いんですが。
原作のアウラさんが、十年後くらいに「このような格好がお好きと仰っていたので……いかがでしょうか……?」って言いながらエロい格好で檜佐木の所に来てたら面白いかなって思いました)