お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

421 / 428
原作知っている人は、途中まで読み飛ばして構いません。
(アウラが登場するまで、ほぼ一緒なので)



第418話 現世のお母ちゃん

 尸魂界(ソウルソサエティ)で涅マユリ主導の作戦が繰り広げられていた頃。

 檜佐木修兵は現世へと赴いていた。

 

 目的は、自身が執筆予定の霊王護神大戦に関する取材。

 浦原喜助への直撃取材は当然のこと、大戦時に現世ではどのような様子だったかを調べて回るため――えっと、一応、そういった取材がメインだったハズなのだけど……

 

 いえね、現世の様子を調べるために駐在している死神から話を聞くのはちゃんとやっていたんですよ。

 ただ、浦原の所への取材が……ね……

 

 檜佐木は浦原から借金して現世の品物を色々と買っていたので、支払いをもう少し待ってくれませんか? と泣き付くのがメインになっていたり。

 その借金の期限延長の際に浦原から売り込みを掛けられて、逆に借金の額を増やしたりと、取材そっちのけの「取材ってなんだろう?」状態になってたわけですが。

 

 あ、でも一応はちゃんとそれっぽい話もしたんですよ。

 産絹彦禰(ひこね)に関する情報を大量に持っていて、それを浦原に話した見返りとして、借金の利率を下げて貰ったり。

 

 閑話休題(それはそれとして)

 

 そうやって会話を繰り広げていた時のことだ。

 不意に、空座町全体が隔離された。

 浦原の知識を以てしても即座には看破できない『何か』に包み込まれたかと思えば、さらには店そのものにも曲者が迫っていると浦原は言う。

 そんな中、何の前触れも無く姿を見せたのは完現術者(フルブリンガー)の雪緒・ハンス・フォラルルベルナだった。

 

 数ヶ月前。黒崎一護が死神としての力を失った際に一悶着あった後、完現術者(フルブリンガー)たちの居場所を作ると公言して去っていた少年。

 その後は音沙汰もなく、死神たちも浦原としても特別親しい交流があったわけではない――彼らの動向については、独自のルートで調査していたが――程度の間柄である。

 

 「何が目的か?」と、巫山戯た態度を交えつつ問いただす浦原に対して、雪緒が答えたのは「一緒に来て欲しい」との言葉だった。

 だがその問答の最中、浦原商店に複数の人間が群れを成して襲ってきた。

 それも完現術(フルブリング)によって強化され、同時に相手への弱体効果も兼ね備えるという特殊な存在だった。

 不思議なことに檜佐木のみ狙いを定めて襲いかかってくる人間たちを相手に戦いながら、彼は思わず叫んでいた。

 

「ったく! 俺は今日は取材に来てる側だってのに! 突撃取材には事前に予約を入れろってんだ!!」

 

 苛立ち混じりに口にしながら大きく跳躍し、足下の霊子を固めて空中に静止して眼下の人間達を見下ろした。

 その刹那――下げた視線の先から、声が響いた。

 

「驚きました……」

「……ッ!」

 

 ぞわり、と、檜佐木の説示に震えが走る。

 

「取材、ですか……尸魂界(ソウルソサエティ)にもジャーナリスト――いえ、記者と言った方が分かり易いでしょうか? そのような職業があるのですね」

「あ……? な、なんだアンタ……?」

 

 聞くだけで脳味噌を蕩かせるような囁き声に、檜佐木は一瞬我を忘れかけた。

 だがあまりにも場違いな声色と、何より霊圧の無い場所から声が聞こえてきたことが逆に警戒心を呼び起こす。

 檜佐木の目に映ったのは、見目麗しい一人の若い女だった。

 凜々しさと艶めかしさを併せ持つ雰囲気のビジネススーツを身に纏っており、周囲にどことなく神秘的な色気を振りまいている。

 

「死神……(ホロウ)……滅却師(クインシー)……どれも違う。なら完現術者(フルブリンガー)か?」

「その通りですよ……いえ」

 

 女性が言葉を止めて視線を下に向けた瞬間、まるで霧散したかのようにその姿が消えた。

 まさか幻影か何かかと思いかけるが、気付けば檜佐木は自身の上半身に何者かの腕が絡みついている事に気付く。

 

「……!?」

 

 直接触れられている感触はない。

 霊圧知覚を働かせても、そこには何もないと告げている。振り払うように腕を動かしても、虚しく宙を切るだけだ。

 だが彼の目には、確かに何者かの細腕が映っている。

 檜佐木の身体を背中側から軽く抱き寄せる形で存在しているのだ。

 

「この場合、正解(エサクタ)と言うべきですか? 九番隊の副隊長さん」

「……!!」

 

 相手への警戒度が一瞬にして最高まで跳ね上がった。

 その「正解(エサクタ)」という言い回しは、かつて檜佐木が戦った破面(アランカル)、フィンドール・キャリアスの口癖……

 

 ……あれ? 戦いましたっけ……?

 えっと……カットされたけど、戦ってました……正解(エサクタ)とかも言ってました……きっと……

 

 ――フィンドール・キャリアスの口癖だ。

 つまり階級などは無論のこと、過去も含めて檜佐木の事を知っていることになる。それも、特殊な結界内での戦いの詳細を。

 それに加えて気配すらなく副隊長へと肉薄したことも含めれば、決して侮ることの出来ぬ存在となっていた。

 故に檜佐木は、一切の油断をしない。

 

「よく知っているじゃねぇか。なんだ、もしかして俺のファンか?」

 

 たとえ彼女が、檜佐木の心を揺さぶるような蠱惑的な女性だとしても。

 

「ええ、そうですね……貴方のことを知ってから、お近づきになりたいと思っていた……そう言ったら、信じて下さいますか?」

「…………!?」

 

 たとえ彼女が、檜佐木の心を揺さぶるような声で、魅惑的な言葉を発したとしても――

 

「そ、そそそそそんな言葉! 信じるわけねえだろうがそんなの!!」

 

 割とギリギリ……ひょっとしたら爪の先くらいはアウトだったかもしれないが、檜佐木は理性を保ち、その場から大きく飛び退きながら斬魄刀の柄に手を掛ける。

 どうやら数日前の藍俚(あいり)とのデート――当人はそんな気は一切無いが、檜佐木の中で割とそんな感じ――などで甘やかされた経緯もあってか、理性の抵抗力が随分とガバガバになっていたようである。

 二人きりの食事をしただけで舞い上がりすぎだと思われるかもしれないが、彼は大体こんなものである。

 

「大丈夫っスかー! 檜佐木さーん! ハニトラには気をつけてくださいね-!」

「だーっ! なんですかそれ!! ひっかかるわけないでしょ!! 俺、一応これでも副隊長っすよ!?」

 

 下から聞こえてきた、浦原のありがた迷惑な忠告に半泣きになりながら叫ぶ檜佐木であったが、女はそんな檜佐木に向けて冗談とも本気ともつかない言葉を投げかけた。

 

「あら、残念ですね。色仕掛けで戦いが回避できるなら、それはそれで楽だったのですが」

「……ッ!!」

 

 妖艶な微笑を浮かべて、小首を傾げながら檜佐木を睨め付けてくる。

 その視線によって湧き上がる衝動を心の中で必死に押さえ込みつつ、同時に内心の焦燥を表に出さないように努め、クールを装って言葉を返した。

 

「……残念だったな。あんたは確かに魅力的だが、俺を誘惑したけりゃ乱菊さん並にあられもない格好をしてくるか、さもなきゃ湯川先生くらい甘やかすんだな!」

「檜佐木サーン! 全然キマってませんよー! むしろお二人から怒られても知りませんよー!?」

「ええっ! だ、駄目でしたか!? ……じゃなくて! お、俺は一体何を……!?」

「それで誤魔化すのはどう頑張っても無理っスよー!!」

 

 耳まで真っ赤にしながら周囲に視線を泳がせる檜佐木であったが、そこでふと気付いた。

 

「湯川……ですか……それはひょっとして、死神の湯川藍俚(あいり)の事でしょうか……?」

「へ!? あ、ああ……そうだぜ……」

 

 つい先ほどまで妖艶な雰囲気で檜佐木を誘惑していたはずの彼女が、今はまるで真逆の――怒りや嫉妬のような負の感情を身に纏っていた。

 聞こえてくる声音も、蠱惑的なものから一転して低く抑揚のない声になっている。

 

彦禰(ひこね)様と接触して、食事を振る舞ったという……?」

「ヒコネサマって、まさか産絹彦禰(ひこね)のことか!? なんで現世のアンタがその名前を……まさか綱彌代時灘の手下か……!?」

「おや、どうして貴方がその御威名を? それに時灘様まで……いえ、そんなことは構いません」

 

 お互いがお互いとも、まさか知っているはずがないと思っていた「まさかの名前」を出されたことで、二人の間に一気に混乱と緊張が走る。

 そして、先に口火を切ったのは女性の方だった。

 

彦禰(ひこね)様は湯川様の食事を食べたのですよね!? その時、どのようなご様子でしたか……!?」

「へ……?」 

 

 予想だにしてない、食事の様子のことを尋ねられて檜佐木の思考が一瞬止まる。

 だがその一瞬後には再起動して、なんとか言葉を捻り出していた。

 

「いや、施薬院で傷だらけで錯乱状態だった彦禰(ひこね)に、湯川先生が持っていた菓子を口に放り込んで……」

「それで……?」

「そしたら落ち着いて、美味そうに食べてたぞ……あと、去り際に礼も言ってた……」

「去り際に、お礼まで……」

「お、おい……?」

 

 今度は幽鬼のように気の抜けた様子を見せる女性の姿に、檜佐木はもはやどう反応して良いのか解らなかった。

 がっくりと肩を落としていたかと思えば、少しして彼女は再起動する。 

 

「……お恥ずかしい所をお見せしました、檜佐木修兵様。遅くなりましたが改めまして……道羽根(みちばね)アウラと申します」

「あ、ああ……」

 

 自身の名を名乗り、優雅な所作で手を閃かせながら一礼をする。

 それだけで一種の美しさが感じられた。

 

 ……まあ、直前のやり取りで色々と台無しだったりするのだが。

 

「で、なんで湯川先生の名前を知ってたんだ? いや、俺のこともなんで知ってるのかも併せて聞きたいんだが……」

「先ほど、お近づきになりたいと思っていたと申しましたが。檜佐木様と共に、そう思っていた方の一人でした(・・・)……だから調べていたのです……」

「……でした? なら、今は違うのか?」

 

 過去形の言い回しに気付いた檜佐木が尋ねる。

 するとアウラは、あっさりと肯定する。

 

「ええ、そうです。それも過去のこと……今は……そうですね……会ってみたいですが……最初にそう思った時と感情は真逆、でしょうか……」

 

 みしり、と明後日の方向から音がした。

 それがアウラが処理しきれない感情の発露によるものだと、檜佐木は気付かなかった。




 現世とか檜佐木の回りは、原作通りなので大体こんな感じで。

●道羽根アウラ
 黒髪でスーツの似合うナイスバディのお姉さん。巨乳。
 真面目で堅物そうな表情が似合う。エッチな巨乳。
 死神で例えるなら大人っぽい色気のある巨乳の七緒ちゃんでしょうか?

 その他、些細な情報として
 ・大雑把に言うと、時灘に利用されている。
 ・愛着のある物を持たない完現術者(フルブリンガー)
 ・産絹彦禰(ひこね)を作った一人。彦禰(ひこね)からは母と認識されている。
 ・宗教法人XCUTIONの代表として、完現術(フルブリング)で奇跡を見せたり、現世の人に「あの世には尸魂界(ソウルソサエティ)があってぇ」とネタバレした。
 などがある。
 彦禰に手料理食べさせる役目、取られちゃった……私が先に料理を作ってあげようと思ったのに……美味しいって言われたかったのに……
●俺を誘惑したけりゃ乱菊さん並にあられもない格好をしてくるんだな
 原作小説で檜佐木が口にした名言。
 これに絡ませたかった結果、藍俚殿がここ数話ほど頑張ったという裏話。
 
 ぶっちゃけ「今回はこれが言いたかっただけだろ」と言われたら反論できねぇでござるよ……
 
(どうでも良いんですが。
 原作のアウラさんが、十年後くらいに「このような格好がお好きと仰っていたので……いかがでしょうか……?」って言いながらエロい格好で檜佐木の所に来てたら面白いかなって思いました)
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。