茶番をしているところに
今、あの子……
そんなことが、出来るわけが……――
……考えてみたら、それほど意外でもなかったわね。
浮竹総隊長の双魚理みたいな、吸収する能力の亜種みたいな斬魄刀かもしれないし。
うん。結論、普通のことだったわね!
『その考えはどうかと思うでござるが……結論を出すのが早すぎるでござるよ!!』
だってこの子が持っているのって、
ほら、朽木響河の持っていた村正って斬魄刀があったでしょ? アレは対死神に特化していたし。十分アリでしょ?
「……誰だよ、お前」
「あ、あれ? 時灘様に言われて来たんですけど……銀城さんたちは……」
私の方はこのくらいにして、
ルピが質問したんだけど、
言葉通りなら、どうやらここで茶番をやっていた人たちを探しているみたいね。
「……あ! いました! 初めまして。自分は産絹
とはいえ特に霊圧を隠蔽していたわけでもないので、少し探せばお目当ての人たちはすぐに見つかります。
あの子は銀城君たちに無邪気な笑顔を見せながら挨拶をしました。
「それと、
「む……あ、ああ……」
続いてウルキオラにも、やはり屈託のない微笑みで挨拶をしました。
うわぁ……あまりにも場違いな態度にウルキオラが毒気を抜かれて、困惑してる……
「ところでグリムジョーさんはどうしたんでしょうか?」
そして最後に、すぐ近くにいたグリムジョーのことを心配そうに見上げます。
えっと……グリムジョー、どうしたの? 毒でも受けた? 全身麻痺しているみたいだけど……
「おい。お前は誰だって聞いてるだろ? 答えろよ」
「はい? えっと……申し訳ありません、どちら様でしょうか? 時灘様から教えて頂いていませんので……」
「あ……? ボクの名前、知らないんだ……グリムジョーは知ってるのに……」
あ。今ルピがもの凄くイラァッとしたわね。
『それ、誰でも解るでござるよ』
グリムジョーは知っててルピは知らないって、そりゃあ怒るわよねぇ……
同じ六番目だったものねぇ……ライバル視してたからねぇ……
「そろそろ落ち着きたまえ」
「ちょっ! 何するんだよドルドーニ!?」
今にも襲いかかりそうだったルピの肩を、ドルドーニが掴んで止めます。
「見て解らないのかね? その少年――いや、少女かね?――は、今回の目的だ」
「目的……? あー、そういえばそうだったね……ごっめーん、忘れてたよ」
「そうか……ならば、少年が手にしている斬魄刀をよく見ておきたまえ……忘れぬうちに……」
そう告げるドルドーニの表情からは、なんとも言えない恐ろしさを感じているのが窺えました。
忠告に従ってルピも
不気味な白色の中に、不気味な黒色を浮かび上がらせている斬魄刀とでも形容すればいいのかしら……?
斬魄刀から漂ってくる気配は、私が直感的に感じた「
「湯川……」
「ウルキオラ? 来ていたとは聞いていたけど……」
「なんだよあの斬魄刀……圧倒的なのに、ちっと懐かしさを感じるってのはどういうことだ……? あんた、何か知らねえか?」
「おそらくだけど、
「
「なるほど。その見立ては間違いないだろうな」
「どういうことだ!?」
どうでもいいけど、なんだかこの二人、ちょっと仲良くなったのかしら?
銀城君の質問にウルキオラは答えます。
「以前、この子供が
「なんだそりゃ……おいおい浮竹、そりゃちょっと聞いてねえぞ……」
銀城君の額に、僅かに汗が浮かび上がっていました。
「よお、ナックルヴァール。やっぱり生きてたか」
「ん? リルトットかよ」
私たちから少し離れた場所では、遅れてやってきたバンビーズの子達がアスキンとの再開を果たしていました。
「というか、生きてたかって言い方はないだろ……」
「ぬかせ。お前が死ぬわけねえだろ」
「
「え? 死なないのってボクの役目でしょ? コイツ初見だと危ないよ」
リルトットに続いて他の子達も会話に混じります。
え? バンビエッタちゃんはどうした? キャンディスの背中に隠れてるわね。人見知りかしら?
「けど、耐性を得て生き伸びちまったのがちょいと恨めしいぜ。今もこうやって、あのマッドな死神にコキ使われる羽目になっちまったからな」
「なんなら食い殺してやろうか?」
「やめとけやめとけ。死んでも蘇生させられてコキ使われるんだよ。ナジャークープって実例があるからな。なら生きて人権を主張できる方がまだマシだ」
あらら、なんだかブラックな会話をしてるわね。
「んで、お前らはどうなのよ?」
「こっちだってコキ使われてるぞ?」
「けどま、メシは美味いからな」
「そこそこ楽しくやってるって思うの」
「ボク……もうやだ……」
『
「ま、今回の件で
え、ちょっと待ってリルトット!? その話、私は聞いてないんだけど!?
なんで確定しているの!?
「あとあの
うん、そっちについては聞いてる。でもアスキンは知らないんだけど!?
「グリムジョー! 湯川……!?」
「あーっ!!
悪いことは重なる物、というべきなのかしら?
それともいっそ、盆と正月みたいに一遍に来てくれたから手間が減ったと考えるべきなのかしらね……
『現実逃避はそのくらいにしておいた方が……というか来ることは知っていたはずでござるよ?』
うん、知ってたけどね……
グリムジョーたちの霊圧を追ってきたのでしょうね。現場の直上に
『空から
遊戯王のカードでしょそれ! 手札が六枚になるってやつ!! けど実際のカードになったときはそんな効果じゃなくなったみたいよ!?
でも表現的な意味でそれくらい嬉しいって意見は大いに認めるわ!!
「ハリベル! チルッチ! 来てくれて嬉しい、んだけど……今は……」
そう。今はちょっとだけ問題なのよね。
「……あっ! あのガキ、性懲りも無く!」
「この霊圧……グリムジョーはどうしたのだ? それにルピにドルドーニだと……? 彼奴らがどうして生きているのだ……?」
悩んでいる間にチルッチは
まあ、涅隊長が死体を蘇生させて手駒にしているからです。なんて結論には、そうそう辿り着かないわよねぇ……
「うわぁ、
「はぁ!? アンタ何を言って……な、何よその斬魄刀……」
そして敵意剥き出しだったチルッチは、手にしていた斬魄刀の存在に気付くと気後れしたように語気を弱めました。
「これですか?
いえ、確かに
そこになんで、巴の文字まで足したの!? 誰よ、そんな面倒な名前を付けたのは!!
『今、遠く遠く天の上の方で、誰かがクシャミをした気がするでござる』
それって、零番隊!? それとも霊王様!?
あと時灘様から頂いたって……碌でもない匂いがプンプンしてきたわねぇ……
【……嘆カワシヤ】
「え……?」
【見カケヌ顔ダガ、貴様ラハ面ヲ砕キシ同胞 ダガ同胞ノ霊圧ガ、コノ程度トハ】
しゃ、喋った……!?
『斬魄刀が……斬魄刀が喋るなんて!!
突然主張しないでよ……いや、喋れるのは知ってるからね……
えっと、今のは
ですけど、別に驚く程のことではありません。
今の射干玉みたいに、斬魄刀が持ち主に語りかけてくることはありますし――
『美味い……美味すぎる……そう、風が語っているでござるよ……』
…………
『放置プレイ……ハァハァ……拙者に向けられた、その冷ややかな視線……拙者だけの宝物……』
あと、卍解を会得する際には斬魄刀を具象化します。
その時には、普通に喋りますからね。
ん……? ということは具象化しているの? それとも能力として自我や会話を自在にする……?
【バラガン ハ ナニヲ シテイル!? 我ト同ジヨウニ封ジラレテイルノカ!?】
「バラガンだと!? その名を知っているのか!?」
「え、でもアイツもう滅んでるでしょ?」
【ソウカ……
チルッチの言葉に、
……えっと、どういうこと? どんな因縁があるって言うのよ!?
……よし! 解らないから直接聞いてみましょうか!
「
「湯川さん! はい、何でしょうか!?」
ほら返事が返ってきた! やっぱり知ってる本人に聞くのが一番よね!
『割と前代未聞の行動でござるなソレ』
伊達に手懐けたワケじゃないもん! あと
「その斬魄刀って何なの!? 喋れるの!? ひょっとして
「ええ、そうなんです! 最近喋れるようになったんですけど、口が悪くって……それから、
『便利でござるなぁ……』
大昔の
【然リ! サレド我ハ斬魄刀ニアラズ! 我ハ……我ハ……オノレ……我ガ名ヲ……】
「ほら
無邪気な言葉だけど、挑発的よねぇ……
グリムジョーがまともだったら、一瞬で沸点を超えてたと思うわ。
そのまま斬魄刀を構えると、
「
その瞬間、霊圧が竜巻のように吹き上がりました。
『どうしたでござるか
これ、私知ってる! アニメとかで、巨大ロボットとかを召喚するシーンの演出よね!?
竜巻が吹き上がって術者の姿を覆い隠して、土煙が晴れるとロボットの肩に操縦者が乗ってて、コクピットに乗り込む!
みたいな感じの演出!! 昔、そんなのを見たことがある気がするわ!!
『
ほらほら見て見て! 竜巻が晴れたわよ!
そこにいたのは――
「なんだよ、ありゃ……」
銀城君の声が聞こえてきました。
他の皆も、息を呑む声や絶句しているのが伝わってきます。
そこにいたのは
召喚されたのは、そんな感じの生き物でした。
あと、私の予想はちょっと外れちゃいましたね。
惜しいことに
ちょこんと乗ってはいますけど、召喚された
……そういえば、グリムジョーは?
他の人たちは全員、
……あ。いた。召喚の余波で吹き飛ばされて、シャルロッテに回収されてるわ……
アレはアレで相当屈辱でしょうねぇ……
「ねえ、ハリベル……あのガキ、あんな解号じゃなかったわよね……?」
「そもそもこんな能力ではなかっただろう、もう忘れたか……?」
チルッチたちは一度
「……詳しく教えてくれる?」
「前回、
「つまり斬魄刀が進化している? いえ、あるいは……」
思い出して……初めて
あの時に持っていた斬魄刀はどんな感じだったかしら……!? その時の霊圧と比較すれば、ある程度は絞れるはず……
「――! ――――――――!!!!!!!!!」
そう思ったのですが、どうやら思い出すだけの余裕はありませんでした。
巨大な
声なき声のような絶叫は大気を震わせ、震えた大気は殺意に満ちた竜巻を何本も生み出しました。
竜巻たちは、その全てがまるで意思を持ったかのように私たちへと襲いかかってきます。
「くそがっ! なんだよこれは!」
「知るか! あっちがやるってんなら、こっちもやるっきゃねえだろうがよ!!」
「こいつは致命的だぜ……」
「決め台詞言ってる場合じゃないってば! ボクもう逃げていい!?」
「えっと逃げられないと思うの……」
「おいおい……なんだよこれ? いつから巨大ロボットアニメになったんだ?」
「銀城、キミロボアニメとか見るのかい?」
「ガキの頃に見てたんだよ……うぉっ!?」
「うっわぁ……何あれ、ムカつくなぁ……」
「こんなもの……被害が前回の比ではないぞ……」
「別にいいでしょ!
「仕留めようと動いたグリムジョーは正しかったな……問題は実力差を見抜けなかったことだが……俺も
あーあー、あっちこっちで蜂の巣を突いたような大騒ぎね。
それでも竜巻は、私を狙う動きは見せないみたいだけど……死神は狙わないって事かしら……って、危ない!?
巨大な
大きくて動きが緩慢に見えるけれど、あの巨体がアレだけの速度で動いているってことは、相当なスピードなのよね……
ああっ! 縮尺がおかしくって頭がヘンになりそう!!
『こうやって見ていると、狛村殿の卍解って凄いんでござるな……』
本当にね……
……ん?
いえ、よく見えないんだけど……
「……あ」
目を凝らせば頭頂部の
その札を見た途端、大慌てで叫びます。
「
【アヤツノ安否ナド知ッタコトデハナイ ……ダガ今ハ従ッテヤロウ】
……自動納刀システム?
『イマイチ格好が悪い気もするでござるよ……時代劇の最後は、チンと音を鳴らしながら納刀することで、斬られた悪党が倒れて終わるでござる!!』
殺陣の演出としては、それでいいんだけどね……
巨体から降りた
「もうしわけありません! 皆さんの御相手よりも優先しなければならない大切な用事ができてしまいました! 急がねばなりませんので、今日はこれで失礼します!!」
「「「「……はぁ!?」」」」
ほぼ全員が声を揃えてツッコミを入れたわね……
けど無理もないわよね……ここから大立ち回りだ、と思ったらコレだもの……
「皆さん、せっかく本気で戦っていただけると思ったのですが、誠に申し訳ございません! 自分は時灘様の"本殿"に向かいますので、ご納得が出来ない方は、そちらまでお越し下さい! 納得するまで自分は戦いますので!!」
その中へと身体を躍り込ませると、去り際にもう一度頭を下げました。
「それから銀城空吾さん! 王になるのは自分ですので! 負けませんから絶対に来て下さいね!!」
「……何がだよ……」
「っていうかさぁ……逃がすわけないよねぇ!!」
ルピが
ですがそれが当たるよりも早く、
「向こうの私から連絡が入ってネ。綱彌代――いや、名も無き時灘という男に逃げられたそうだヨ」
「涅隊長……!?」
すっかり閉じた
「向こうは
「向こう……? 浮竹総隊長たちも、時灘を逃がしたんですか!?」
「そう言ったつもりだヨ。まさかその程度のことも考えられぬほど察しが悪かったのかネ?」
うわ、この言い回し……
でもどうやら、この事態は浮竹総隊長らが想像以上に引っかき回してくれた結果なんでしょうね。
だから
「フン。まあ、いいさ。まだ機会はあるからネ。新しい総隊長殿に睨まれぬように、精々私も粉骨砕身させてもらうとするヨ」
……え? 涅隊長がそんなことをいうなんて……
……いえ、涅隊長が……そもそも準備時間が数日はあったはずなのに、獲物を逃がした……!?
でも、その割には全然焦っていない……様に見えるんだけど……
どういうのことなのかしら……?
●撤退が早い
あっちが原作よりもスムーズに行っている関係上、どうしてもこっちの撤退も早くなってしまうわけです。
●
上手いことボケられなかったんですけど、なんて言うのが正解だったのかしら?
カオナシとか例えれば良かったのかなぁ……