お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第43話 黒髪メガネの委員長キャラ

 ついに完成しました! 霊圧吸収部屋!!

 浦原喜助の謹製です! こんなもんサラッと作っちゃう辺り、とんでもないですね。

 ……あ、一応ちゃんと材料費も出したんですよ……夜一さんが半分以上持ってくれましたけれど。

 

 ということで、年頃の乙女(五百年くらい死神やってるお婆ちゃん)としては、お洒落や甘い食べ物よりも修行です。

 

 今日は非番の日ですから。朝から修行しちゃいますよ。

 副隊長になって借りたお家のお庭の片隅に作られた霊圧吸収部屋に入ります。

 中身はほんとに掘っ立て小屋というかボロ小屋というか。

 飾りも素っ気も無いですね。

 デザイン性とか全部無視して、性能と整備性に特化して! と注文したので当然なわけですが。

 

「では、起動!」

 

『ポチっとな!』

 

 ……おお……周囲の霊圧がなくなっていくのがわかります。

 減圧部屋とかってこんな感じなんですかね? なんとなく息苦しさを感じます。

 

 射干玉、そっちはどんな感じ?

 

『そうでござるな……こう、まったりとしていてしつこくなく、それでいてコクがあるのにキレがいい。すっきり爽やか喉越し爽快! のような……』

 

 つまり、よくわからないって事ね。

 

『そんな殺生な!! こう見ても拙者、少しでも藍俚(あいり)殿に貢献しようと必死でポイントを稼いでいるでござるよ!!』

 

 はいはい、ポイントカードはお餅ですか。

 

 ……そんなこと変な気を遣わなくても、傍にいてくれるだけで嬉しいんだから……

 

『まさかのデレ期到来!?!?』

 

 あら失礼ね、私はいつだってデレデレの甘々よ。

 

 ……と、馬鹿話は――

 

『ちょっ!?!?』

 

 ――このくらいにしておいて。

 

 性能はピカイチですね。

 試しにほんの少し霊圧を放出してみたところ、身体の奥からごっそりと霊力が抜けていくような感覚が襲ってきました。

 

 うわぁ……一気に来るのね、これ……

 

 つまり、こうやって身体に覚えさせていけば、逆に霊圧を無駄に漏らす恐れがなくなる!! それは効率化に繋がるということです!!

 

 この部屋は漏れ出た霊圧こそ吸い取りますが、体内の霊圧には無反応です。そして血装(ブルート)を使う際には、体内に霊圧を通し循環させることが肝です。

 ならばここで修行すれば無駄な霊力消費を極限まで抑えて、更に効果を上げることが可能になるはずです。

 エネルギーロスを極限まで減らして、今まで無駄に消費していた分も力にする。凡人がハリベルやバンビエッタという終盤の敵を相手に登山を試みる(おっぱいを揉む)ためには、このくらいしないと無理ですからね。

 

 そしてもう一つ。

 

「うわぁ……これ、効くわね……体重が百倍になったみたいだわ……」

 

 血装(ブルート)を発動させる際に力を込めすぎると負荷になること、修行の効率が良くなっているかも知れないことは以前にもお話したかと思います。

 より効率的に霊圧を込めすぎることで、強烈な負荷として利用します。

 そこをもっと突き詰めると、このようになります。

 全身をギチギチと締め上げられるような感覚に襲われ、マトモに動くことすらできません。この状態で剣を振るうとかもうそれは、どんな拷問ですかと尋ねたくなるくらいです。

 

「でも、最近はもう、これくらいないと……修行って気がしないのよね……」

 

 日々の鍛錬だと軽すぎて物足りませんからね。

 

 この部屋でたっぷりと鍛錬すればきっと、夢に手が届くはず! 夢をこの手に掴むことができるはず!!

 

「あぐっ……す、吸われた……」

 

 この吸収もそう考えれば耐えられる!!

 

 耐えられ……耐え…………

 

 

 

 

 午前中までが限界でした。

 まあ、初回はこんな物かしら……?

 

 

 

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「何か面白い新作が入っていると良いんだけど……」

 

 軽く汗を流してもまだ時間があったので、午後は真央図書館に行きました。

 鬼道を楽で強力に使う方法についてはもうほぼ諦めています。

 ある程度は見つかったんですよ、そういう手法そのものは。ただ見つかったのは、手間が掛かるワリには詠唱破棄以下の威力だったり、強力にはなるもののたっぷりと時間を掛けて下準備をしてからでないと使えない物であったり……

 

 お手軽簡単で強力、なんていいとこ取りの手段は見つからないと思ってます。

 

 なのでもう今は、新たな娯楽を求めて図書館通いしてます。

 副隊長――いやさ四席になった頃からずっと忙しくて、頻度ががくっと下がってますけどね。たまに返却期限を忘れかけて怒られたりしてます。

 

「えーと、新作の陳列棚は……あら?」

 

 書架を見て回っていたとき、ふと一人の死神が目に止まりました。

 閲覧席で集中して本を読んでいる女性死神――彼女から何故か目が離せません。

 

 どこかで見たことあるような……

 

 思わず本探しの手を止めて、どこで見たのか思わず凝視してしまいました。

 

「……なんや? あたしに何か用でもあるんか?」

「あっ、ごめんなさい。別に何か用があるわけじゃなくて……」

 

 さすがに気付かれますよね。

 本から視線だけをこちらに向けてきたので、とりあえず謝っておきます。

 

「どこかで見たことがあった気がしたので、つい見ちゃったのよ。読書の邪魔をするわけじゃないから、安心してね」

「そうなん? ……ん? いや、そういうあんたの方こそ、どこかで見たような……」

 

 あれよあれよと、今度は私が凝視される番になりました。

 完全に本から顔を上げてじーっと見つめられます。しばらく無言で見られていたかと思えば、やがて彼女は得心がいったような表情を見せました。

 

「ああ、そうや。滅却師(クインシー)殲滅作戦のときの、四番隊の……えーと……名前は……」

「湯川藍俚(あいり)と申します」

「そうそう、そんな名前やったな。あたしは八番隊の矢胴丸(やどうまる)リサ。これでもあんたと同格、副隊長や」

 

 腕章はしてへんけどな――と言いながら少しだけ笑います。

 彼女だけでなく、副隊長なのに腕章しない死神って結構いるんですよ。私の場合、ただでさえ軽く見られている四番隊なので、少しでも分かり易いように腕章は付けています。

 

 というか、矢胴丸リサ。その名前で思い出しました。

 原作では仮面の軍勢(ヴァイザード)の一人として出てきた死神ですね。その時は黒髪お下げに眼鏡を掛けていて、しかもセーラー服で見た感じは凄く真面目そうな容姿をしているという"どこかの学校の学級委員長?"といった感じの出で立ちでした。

 それは今も変わらず――時間軸的にはコッチが基本なのでしょうが――黒髪でお下げですね。顔立ちも真面目でクール系な感じ。

 ただ、死覇装を身に纏っていますがこれが……下がミニスカートみたいになってます。太腿とか丸見えなんですけど、大丈夫なのそれ……

 

『いやいや藍俚(あいり)殿!! これはサービス、サービスですから!! だからまず舐め回すようにガン見して落ち着いて欲しい。このフトモモを見た時、拙者はきっと言葉では言い表せない"ときめき"みたいなものを感じたでござるよ!!』

 

 はいはい、ご注文はバーボンですか。

 

 でもま、射干玉の気持ちもわかるのよね。

 これは男性隊士から見られてるわよね、絶対に。でも八番隊は女性隊士が多いから、そういうのに鈍くなっちゃうのかしら?

 

「あんたも読書好きなん?」

「ええ、まあ。仕事が忙しくて中々時間は取れないけれどね」

「そんな仕事なんて隊長や部下に押し付けて、適当にやっとったらええやん。あたしはそうしとるよ」

 

 隊長に押し付けて…………(ぞくっ)

 

『おや、今は真冬でしたかな……? 背筋に言い知れぬほどの寒気が……』

 

 うん……考えないようにしましょうね。まだ命は惜しいから。

 

「八番隊って京楽隊長でしょう? あの人も遊んでる印象があるけれど大丈夫なの?」

「知らん。副隊長が仕事せんのは隊長の責任、隊長が仕事せんのは隊長の責任。ほら、なんも問題ない」

「いやいや、矢胴丸副隊長……それは不味いですって……」

 

 さすがにそれは駄目だって……まあ、他隊のことなので、四番隊(ウチ)に回ってこなければそれでいいやもう……

 

「ええってええって、てか同格なんやしリサでええわ。その代わりあたしも藍俚(あいり)って呼ぶからな」

「それは勿論、構わないわ。よろしくねリサ」

 

 ……そっか。今まで自覚が薄かったけれど私も彼女も副隊長なんですよね。

 

 これからは隊首会とか行われたら、私が卯ノ花隊長のお伴とかして……

 副隊長同士で知った顔とかと交流とかするんだ……あれ、なんだかワクワクしてきた。

 

『オラ、ワクワクすっぞ!』

 

 はいはい、ワクワクを思い出してね。

 

「せや。藍俚(あいり)はなんか面白い本知らんか? その代わり、あたしもオススメの本を紹介したるから」

「オススメ……えーっと……」

 

 本、好きなのね彼女。

 そういえば原作でも、本を読んでいたような……あれ!? でもその読んでる本がエロ本にしか思えないんだけど、どうして!?

 彼女エロ本読んでいたんだっけ?

 

『ここはもう直感に従ってオススメのエロ本を紹介いたしましょう!!』

 

 なんで!? あと別に私、オススメとかないから!!

 ……まあ、いいか。

 

「そうね……じゃあいっそのこと、思い切り奇をてらって……」

 

 そう前置きして、艶本や色本を何冊か紹介してあげました。

 

「これなんかオススメね。こう、軟体生物で腕が何本もあって、その無数の腕で――……あ、こっちはお爺さんなんだけど精力絶倫で――……この横恋慕する話――……」

 

 伊達にエロ本読んでませんよ。

 リサも最初は嫌がっていましたが、それも最初だけ。というよりも嫌がっているのは只のポーズでした。

 あっと言う間に食い入るように読み始めました。

 

「……師匠」

「は?」

「師匠と呼ばせてください!」

 

 なぜか、こうなりました。

 

 ……なんで???

 




●霊圧吸収部屋
某サイヤ人の重力100倍修行みたいイメージにしか見えない……

●矢胴丸リサ
一応原作よりも昔なのですが、この時点からエロ本好きなのでしょうか?
ちょっと考えて出した結論は「……嫌いじゃないけれど(興味津々ではある)」
くらいの物ということにしました。
こう、中学生がエロ本をサンドイッチして買うような精神。
(――そんな彼女を桃色に引き込んでしまった藍俚)

むしろ方言の喋りが難しい……13キロさんとか無理だってアレ……

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