「あの、失礼いたします……」
やや遠慮がちな表情をしながら、アウラさんがやってきました。
私は彼女の顔を見て、まず安心させるようににっこりと微笑みます。
「いらっしゃい、良く来てくれたわね。ささ、まずは座って座って」
「はい」
目の前の座布団を勧めれば、彼女はゆっくりと腰を下ろしました。
「まずは、ごめんなさい。無理を言って来て貰って。それと、
「いえ、事前のお話にもありましたので」
不安そうに胸元へ手を当てながら、彼女は質問してきました。
「あの、ところで私はどうして呼ばれたのでしょうか? それも、
「ええ、まずはそのことについて説明をさせてもらうわね」
ここは四番隊の診察室の一室です。
そんなところに一人で来てくれと言われたら、なんとなく不安になっても仕方ありません。なので私は、彼女を刺激しないように注意しながら口を開きました。
「アウラさん、あなた
「え……? はい……確かに、変化しました……
つまりは歳を取りにくいし、霊圧を補充することで生きていけるようになったわけです。
おそらく
本当に
「ええ、そうね。原因は不明。でも私が気にしているのはそこじゃないの」
「と、仰いますと?」
「今のところは何も異変は無いみたいだけど、一応調べておきたかったのよ。現世でいう健康診断や定期検診みたいなもの。万が一にも不調があったら困るでしょう?」
聞き馴染みのある“健康診断”や“定期検診”という言葉を使ったからか、彼女の表情から僅かにあった険が消えました。
「ああ、なるほど。そういうことでしたか」
「
「……お心遣い、感謝します」
説明を聞いて得心がいったのか、深々と頭を下げてきました。
私は気にしないでとばかりに手を軽く振り、気負わないように伝えます。
「そんな、頭を上げて。半分は仕事みたいなものだし、何より好きでやっていることだからね」
「ですが……」
「本当に気にしないで。それよりさっそく診察するから、服を脱いでもらえるかしら?」
服を脱げという言葉に、アウラさんは一瞬だけぽかんとします。
「……! そ、そうでしたね。えっとでは……」
いそいそとスーツのジャケットを脱ぎ、畳の上に置きました。
ブラウス姿だと彼女の
そんなボタンの一つ一つに彼女の細い指先が掛かり、彼女の白い肌が露わになっていきます。やがて色素を忘れたかのような白くて艶やかな肌、下着の中に窮屈そうに納められた
「これで、よいのでしょうか?」
「ええ、勿論。それじゃあ少し触るわね」
ベージュ色の下着に包まれた
彼女の胸元に、そっと手を当てます。
ブラジャーの上からでも指先はふわっと埋まっていき、
「あの、聴診器は……?」
「弱い霊圧を照射して、体内の様子を見ているの。動かないでね」
現世の医者なら聴診器を使うのに、私の場合は手を当てたことが不思議なのでしょう。
簡潔に説明の言葉を言いながら、さらに胸元に指先を当てていきます。
「うーん……」
アウラさんの
バンビエッタちゃんやキャンディスちゃんと比べても、大きいくらいですね。
両手の指先を当てて触診するように
男だったらこの揺れる
「あ、あの……先生……?」
「心臓や鎖結、魄睡周辺は問題なし、と」
思わず鷲掴みにしたくなるのを我慢しながら手を放し、検査結果を伝えます。
「本当ですか?」
「ええ、勿論」
一応言いますが、この検査結果は本当のことですよ。
診察は診察で手は抜きません。
「ただ、ちょっとだけ気になることがあるの。だから――」
診察室の隅に敷いてある布団に目を向けながら続きを口にします。
「今度は下も脱いで」
「えっ……下も、ですか……?」
「ええ。全身をくまなく検査しておきたいの。あっ、といっても裸にならなくて大丈夫だからね」
今度は両手を当てて謝意を表しつつ申し訳なさそうな表情を浮かべて、さも今気付いたように伝えます。
「恥ずかしいかもしれないけど、検査の為だから。我慢してもらえる?」
「い、いえ……わかりました!」
少しだけ覚悟を決めた様な表情を見せると、アウラさんは立ち上がり残った服を脱いでいきます。
ベルトに手を掛けてストレートパンツを下ろせば、白く艶やかな足が見えました。
パンティはブラジャーと同じベージュ色をしていて、けれども少しだけ色っぽいデザインをしています。彼女の肌と合わさって透明感を出しており、不思議な色気を放っています。
続いて脱ぎかけだったブラウスを取り去って完全に下着姿となったところで、彼女は気恥ずかしいのか胸元を片手で押さえつける様に隠しました。
けれども彼女の大きな胸をあの細腕で覆いきれるわけもなく、むしろ潰れた
きゅっと締まったウェストに大きなお尻が突き出ていて、シルエットだけでもスタイルの良さは隠しきれません。宗教法人XCTUIONの信者は彼女の美貌に惹かれて集まったと言われても信じてしまいそうです。
「あの……どうしてそんなに……?」
「……あっ! ごめんなさい。アウラさん美人でスタイルが良いから、つい見とれちゃって」
「そ、そんなことは……」
私の視線が肌に突き刺さるのを感じたのか、不思議そうに尋ねてきました。なのでそう答えれば、彼女は頬を真っ赤にしながら無意識に身体をねじり隠そうとします。
「ううん、事実よ。もしも今のアウラさんの姿を男の人が見たら、絶対に放っておかない。保証するわ」
「そんな……」
男の人という言葉に誰のことを想像したのやら。頬が赤いのはそのままですが、彼女の表情はほんの少しだけ柔らかくなりました。
「でも今は診察が優先ね。それじゃあ次はそこへ横になって」
「はい……」
素直に布団の上に寝そべりました。
……うわぁ、すごいわね……
ブラジャーのおかげもあるけれど、横になっても
触りたい……今すぐ
「全身を触っていくわね」
そう断りを入れてから、彼女の身体の全体に手を触れていきます。
白く美しいアウラさんの肌は表面を滑り、まるで引っかかりません。もちもちとした瑞々しい感触に加えて無駄な毛穴が一切開いていないのもあり、肌に吸い付くようです。
「ん……っ……」
そんな彼女の肌を手のひら全体で撫で回しながら触診していけば、気持ちが良いのか形の良い唇から小さな嬌声が時折漏れ出てきました。
そっと目を閉じて私にされるがままになっている姿……もうこのまま襲っても良いんじゃないかしら?
「ふむふむ、なるほど」
「何か、解りましたか?」
「まあね。一通り触診しながら検査して解ったんだけど……」
わざと勿体ぶって、ちょっとだけ不安を煽ります。
「少しだけど、身体のあちこちに澱んでいる部部があるみたい」
「え……っ……! そ、それは……何か悪いのでしょうか?」
「んー、そうねぇ……霊力の流れがちょっとだけ……」
これも事実です。
ただし、言うなれば身体が変化したばかりで馴染んでいないだけ。身体がまだ慣れていないだけ。時間が経てば自然と解消するから、気にする必要も無い。
澱みと言っても、その程度です。放置しても何にも問題ありません。身体が勝手に解決してくれます。
「大丈夫、この澱みは治療できるから。それとアウラさん、
「疲れですか? そうですね、そう言われれば……母親なんて私の今までの人生には縁がありませんでしたから……」
「それじゃあ、疲労回復の意味でもその疲れも一緒に解消しておくから」
そう告げると、彼女の両肩に手を置いて按摩を行います。
「ふあぁっ……! あ、あの今のは……?」
「按摩よ按摩。現世風に言うならマッサージ。これで疲れを取るし、澱みも治すから。ジッとしててね」
声が出たことに驚き、目を白黒させるアウラさんに微笑みながら、私はさらにマッサージを続けます。
「あっ……! や……あぁ……っ! こんなの……私、知らな……っ……!!」
「気持ちいい? 声を出してもいいわよ。ココは個別診療用に離れた場所だからね。誰もアウラさんの声に聞き耳を立てる人なんていないから」
声を出しても誰も聞いていない――そう囁きながら、まずは彼女の肩から腕を揉みます。
こういった部分の霊力の流れがちょっと鈍いのも本当だからね。手の平全体を使って丁寧にマッサージを続けて、彼女の手を握って撫で回します。
細長い指先にすべすべでふわふわの手は、撫でているだけで私まで興奮しそうです。
「あの……手、手も……」
「末端の部分は意識を抜きがちだからね」
しばらく指を撫で回すと、今度は胸元に触れます。
まずは肩から脇、そして横腹からおへそ周りを揉んでいきますよ。
スレンダーな見た目の印象通りのほっそりとした腰回りだけど、ほんの少しだけ肉付きがあって、体温はちょっと低めなのが逆にグッときます。
「あっ……! だ、駄目です……っ……! そ、そんなところ……っ……!!」
脇の辺りをマッサージすればくすぐったいのか、布団の上のアウラさんは切なそうな吐息を吐き出しながら、男を誘うようにくねくねと身体を捩らせます。
その仕草が可愛くて、私は指先にもう少しだけ力を込めました。
「ひゃっ……っ!? あ、はあ……ぁぁ……っ……!」
吐息は更に大きくなり、彼女の肌にうっすらと汗が浮かび上がります。
そこで一度手を離し、今度は下腹から太もも周りを撫でていきます。
「ッッッ!? そ、そこも……ですか……?」
「ええ、そうよ。女性は腰回りは重要でしょう?」
有無を言わさず断言しながら、下腹をゆっくりと指の腹で撫で回します。同時に太ももを空いた手で撫で回していきます。
少しだけ力を込めて、身体の奥の内臓にまで刺激を届かせるようにしながら。
「ッ! ……ッ!?」
お腹の奥からの刺激に驚いたのか、アウラさんは必死に歯を食いしばって声を漏らさないように堪えます。
けれども腰がびくびくと震え、太ももは引きつったように力を入れているのが指先から伝わってきました。
気持ちが良いのを我慢してみるみたいね。
「ほら、力を抜いて。リラックスしてね。じゃないと効果が出ないから」
「こ、効果……です、かぁ……?」
目を細め、僅かに瞳を潤ませながら質問してきました。その問いかけに私は首肯しながら、マッサージを続けます。
「あっ、はぁ……っ……んっ、く……ぁぁ……っ……!」
太ももの裏側から足の指先までを丁寧に揉みほぐしていくと、彼女は身体を丸めながら懸命に抵抗をします。
両目をぎゅっと瞑りながら戸惑ったように声を漏らすアウラさんの姿は、実年齢よりもずっと若く、可愛らしく見えました。
「それじゃあ、最後に」
「あんっ……!」
それまで意図的に避けていた
これまでの全身マッサージで身体は昂ぶっていて、
下半分を包み込んでいたブラの位置が僅かにずれて、綺麗な桜色が隙間から見えていました。
手の平で頂点を擦り上げるようにしながら、
「あの……む、胸も、ですか……?」
「そうよ。鎖結と魄睡に近いから重点的に施術を施さないと。それと、胸の形を整える意味もあるの。だから、ちょっとだけ我慢してね?」
「あ……っ……!!」
きゅっと手の平いっぱいに
体内の霊力や血液の流れを意識させるべく円を描くように
「ひっ……こ、これが……マッサージ……なの、ですか……!? わ、たし、知らな……不勉強で……んんんんっっ!!」
仰け反った背中から腰をがくがくと揺らしながら、さらに甲高い嬌声を上げます。
全身は汗でじっとりに濡れていて、腰回りには特に濃い染みが出来ていました。
アウラさんの
下着の上からでも解るくらい柔らかくて、けれども強い弾力があります。指先に力を込めれば内側から押し返してきました。
「あ……あの……あのっ! わ、私……もう、もう……ッッ!!」
「はい、お疲れ様」
このままずっと
シーツを引き千切らんばかりに強く握り、切なげな表情で
「……え……?」
「どうかしら? 疲れも取れて、身体も軽くなったと思うけど?」
少しだけ恨みがましい視線を向けてくるアウラさんに対し、私は施術の効果を確認するように告げます。
その言葉に彼女は、上半身を起こすと確かめるように軽く腕を動かします。
「そ、その、確かに……楽になっています……ですけど、その……」
「ん?」
「む、胸の……先が……」
モジモジと何かを訴えたそうにしているアウラさんの様子を見ながら、私は何も解らないといった表情を浮かべます。
それを見て、彼女は僅かに思案顔になりました。
「い、いえ……その……なんでもありません……」
ですがやがて諦めたのか、周知で顔を真っ赤にしながら下を向いてしまいます。
「そう? それじゃあ、診察はコレで終了。はいこれ、手ぬぐいね。汗を拭いて、着替えたら、もう帰っても大丈夫よ。後始末は私がやっておくから」
清潔な手ぬぐいを手渡すと、自分がいては邪魔でしょうからとばかりにアウラさんに背中を向けて診察室を出て行きます。
去り際、ちらりと見えたアウラさんの表情からは、女の色気が漂っていました。
「あの、ご迷惑をおかけしました」
「何言ってるのよ。最初にも言ったけど、半分仕事で半分はお節介なの。だから気にしないで」
数分後。
診察室から出てきた彼女を送りながら、綜合救護詰所を並んで歩いていた時でした。
「あれ、先生? それにアウラも?」
けれど、会う予定は無かったんでしょうね。彼は私の顔とアウラさんの顔を見ると、驚いたように声を上げます。
「あ、ああ……」
「ん? どうしたアウラ?」
ばったりと出会った檜佐木君の顔を見るなり、アウラさんは顔を紅潮させながら動きを止めました。
その様子が気になったのか、檜佐木君はアウラさんの顔を心配そうに覗き込みます。
「――み、見ないでくださいっ!!」
「お、おい!?」
その仕草に耐え切れなかったみたいですね。アウラさんは一目散に走り出してしまいました。
残った私たちは、どちらともなく言葉を交わします。
「俺、何かしました?」
「うーん……どちらかというと、アレはアウラさんの問題だから。気にしないであげて」
「? はあ……」
檜佐木君はイマイチ納得できていないみたいですが。
アウラさんのあの反応……あれは、男に見られて恥ずかしくなったんでしょうね。
何しろ彼女の生い立ちは、子供から無関心を経て、母親になったわけで。女というモノを意識する機会が無かったんだと思います。
完全にゼロではないと思いますが、それよりも無関心の感情の方がずっと強かった。
普通の生活を送っていれば学生時代には意識するはずの気持ちが、未体験のままだった。
そんな時に私のマッサージで女を意識してしまい、男の檜佐木君の存在に耐え切れなくなってしまった……感情の処理を仕切れなかった……
多分ですが、そんなところだろうと思います。
「けどアウラ、美人になってましたね。いや、今までも美人だったんスけど、なんていうか……」
「そうね。頑張ってね」
「へ?」
私の言葉に、檜佐木君は首を傾げました。