お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第44話 こっちも黒髪メガネの委員長キャラ

「は、初めまして! 伊勢(いせ) 七緒(ななお)です!」

「初めまして。四番隊の副隊長、湯川藍俚(あいり)です」

 

 目の前の幼女に軽く自己紹介します。

 彼女も黒髪で眼鏡で生真面目そうな顔をしていますね。学級委員長タイプです。

 髪型だけはおさげではなく短めですが、それでも十分に可愛らしいです。

 

 というか背が低い……ホントに低いですね。

 

 一応私今、膝を折ってしゃがみ込んでいるのですが……それでも私の方がちょっとだけ高いような……

 どれだけ幼女なんですか……

 

「リサ、この子って……?」

八番隊(ウチ)の新人や。なんと真央図書館の名誉会員や」

「名誉会員!! この子が!?」

 

 思わず目の前の幼女の顔をじーっと覗き込んでしまいます。

 名誉会員とは年間の貸出冊数が千冊を超えた者に贈られる称号です。

 毎日通っても一日平均三冊借りないと無理です。それだけでも大した物ですよ。

 

「は、はい……名誉会員が縁で、京楽隊長や矢胴丸副隊長とも知り合えました!」

「そして私とも知り合えたってわけね……こんな可愛い子と知り合えたなんて、本の縁に感謝かしら?」

「そんな……瀞霊廷通信でも取り上げられていた湯川副隊長とお知り合いになれるなんて、こっちの方こそありがとうございます!!」

 

 有名人と知り合いになった、みたいなキラキラの表情をしていますね。かわいい。

 

『あの、藍俚(あいり)殿……』

 

 なによ射干玉、どうしたの? とうとう真性(ロリコン)になった?

 

真性(ロリコン)!? いえいえ、そうではなく……この目の前の幼女を見て、気付きませんか?』

 

 ……え? 何が……??

 

『この子はその……えーっと……そう! 名前持ち(ネームド)でござるよ』

 

 なによそれ、どこの強敵…………え、待って。

 …………ああっ! そうよ、そうじゃない! 確か京楽隊長と一緒にいたはず!!

 

『ほ、本気で気付いていなかったのでござるか……?』

 

 だってこの子って出番少なかったし、目立ってなかった(おっぱい小さい)し……

 

『それは……いや、何でもないでござりましゅる……というか藍俚(あいり)殿! サイズの大小に貴賤無しだったはずでは!?』

 

 貴賤はないけれど、目立つかはまた別問題でしょう!! あとゴメンね七緒ちゃん。忘れててホントにゴメンね!!

 

「あの、湯川副隊長……」

「……あ、ごめんなさい。ぼーっとしてたわ。どうかしたの?」

「湯川副隊長は滅却師(クインシー)との戦いで、治療だけでなく剣でも目覚ましい活躍をしたと先輩から聞きました!」

「あ、あらら……随分と大げさに伝わってるのね……」

 

 目覚ましい活躍というのはさすがに言い過ぎですね。

 まあ確かに頑張りましたけれど、なんだか噂に尾ヒレが付いてませんか?

 

「その、実は私は斬術が苦手で……もし宜しければ、私に斬術を教えて頂けませんか!?」

「え?」

 

 これはまた、まさかのお願いですね。

 

「(リサ、あなたの仕業?)」

「(しらんしらん、あたしも予想外や)」

 

 恨みがましい目を向ければ、手を軽く横に振りながらそんな風に目で訴えてきました。

 

「私、浅打を自分の物に出来なくて……死神としてはやはり、斬拳走鬼を全て会得しないと駄目だって思って……!!」

 

 なるほど……そういうことね。

 

「伊勢さん、良く聞いて」

「は……はい!」

「私はまだまだ修行中の身、あなたに剣を教えることは出来ないわ」

「そんな……!」

 

 だって毎月定期的に卯ノ花隊長に殺されかけてますからね。

 せめて隊長から一本取れるくらいには強くなればなんとか……

 それにこの子、原作登場キャラなんでしょう? だったら私が教えなくっても強くなるわよね? だから――

 

「それに、あなたはまだ死神になったばかりでしょう? 苦手なことがあっても、気にすることはないわよ」

「で、ですが……!」

「それに教わるのなら、まず京楽隊長やリサ……矢胴丸副隊長からが筋なんじゃない?」

「せやな、師匠の言う通り。ウチの隊長はよくサボっとるから、倒れるまで振り回したれ」

 

 予想外なリサの援護射撃が飛んできました。

 ……それ、面倒だからって押し付けてない? サボるのはともかく、気に掛けてはあげなさいよ? 後輩なんだから。

 

「なにより、時間が掛かっても当然なの。卍解まであっと言う間に辿り着く死神もいれば、始解を覚えるのに百五十年も掛かった死神もいるんだから」

「百五十年……ですか?」

「ええ、湯川藍俚(あいり)って言う死神なんだけどね」

 

 そう告げると、一瞬二人は動きを止めました。

 

「え……えっ!?」

「……ってそれ、師匠の名前やん! え、師匠ってそうなん!?」

「意外だったかしら?」

 

 そう尋ねると二人はこくこくと頷きます。

 

「聞いていたお話からてっきり、すごく才能を持った上級貴族の方だと……」

「全然違うわよ。そもそも生まれも流魂街だし……死神になっておよそ五百年……霊術院時代には八番隊(おたく)の隊長の先輩だったわ……」

 

 遠い目をすると、なんとなく二人の私を見る目が優しい物になったような気がしました。

 

「なのに……まだ卍解も覚えられないの……」

「す、すみません私! 私、そんなつもりじゃ……!!」

 

 慌てて謝られましたが、むしろ謝れるとコッチがいたたまれない気持ちになるので止めて貰えますかね。

 

「気にしないで。言いたかったのは、私みたいなのでも頑張れば副隊長になれるんだから、そんなに気負いすぎないでってこと。得意なこと不得意なことは人それぞれなんだから、もっと気楽に考えてもいいじゃない?」

「はい、ありがとうございます!!」

 

 うん、初対面の時よりも良い笑顔になったわね。

 

「というか、伊勢さんと知り合えたのは嬉しいんだけれど……リサ、なんで私に紹介してくれたの?」

「そら師匠にも本好き仲間として紹介したかっただけや」

「私って、リサや伊勢さんと比べたら全然読書してないわよ?」

「師匠は色んな本を知っとるから問題あらへん」

 

 ……そう言う物なのかしら?

 

 この後、ちょくちょく真央図書館でオススメの本の紹介とかするようになりました。

 

 

 

 

 

 

 まあ、それはそれとして。

 

「こんなのもあるわよ? これ、ちょっとアクの強い作品なんだけれど……」

「おおー……っ……」

「男女が逆転しただけでも、色んな描写が新鮮に見えるでしょ? ほらここなんて、女性の方から男を誘って……」

「なんやこれ、世界にはまだこんなもんが眠っとるんか……」

 

 

 

「あれ、矢胴丸副隊長? 湯川副隊長? どちらですか?」

 

 まだ小さい伊勢さんをほったらかしてエロ本を読む私たちは、どう考えても尊敬されるような人間じゃないと思いました。

 

 いや、ちゃんと面倒は見てるのよ! ただちょっと姿を眩ますことがあるだけで……

 




●伊勢七緒
ちゃんと原作読めば「ああ、京楽隊長とラブラブ斬魄刀した子ね」と気付けたのに……
あ、でもルキア奪還時に山本総隊長に睨まれて漏らしていた(過剰表現)ので。それで覚えていた可能性がありましたね。

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