お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第54話 恥ずかしい家に行こう

藍俚(あいり)! 藍俚(あいり)はおるか!?」

 

 綜合救護詰所の玄関の方から知ってる声が聞こえてきました。

 書類仕事の手を止めて、とりあえず声のした方向を向きます。

 

「この声って……どうしてかしら、嫌な予感しかしないわ……」

 

 思わず頭を抱えますが、それはそれ。

 作成途中だった書類をキリの良いところまで仕上げてから、副官室を後にしました。

 

「おお、おったか! 緊急事態じゃ、お主の力を借してくれ!!」

 

 向かった先には予想通り、夜一さんがいました。

 なにやらよほど緊急事態なのか、詰所内に上がることもせずに玄関の前で立って待っています。

 

「夜一さん……また大前田副隊長からかくまって欲しいという相談ですか?」

「違うわ馬鹿者! そう何度も何度も同じ事を頼んだりせんわ!!」

 

 前に何度か緊急避難場所として四番隊(ウチ)を利用したことありますよね? 大前田副隊長から隠れてましたよね? 五大貴族の当主に頼まれたものだから必死で「自分は知りません」って大前田副隊長相手に涙目でシラを切っていたウチの隊士のことを忘れたとは言わせませんよ?

 

「そもそもあやつなどとっくに撒いてやったわ!」

「胸を張って言うことじゃないですよね、それ……」

 

 今の夜一さんは隠密機動の軍団長の正装をしているので、肩やら脇やら背中やらががばーっと思いっきり空いています。

 普通にしているだけで脇乳が見えるというドスケベ衣装です。

 そんな格好で胸を張ったものですから……ほら、ウチの新人隊士が顔を真っ赤にして凝視してます。

 男の子だもんね、仕方ないよね。役得だったと思って目に焼き付けておきなさい。

 滅多に見られない皆大好き褐色巨乳よ。

 

「そうではなく、お主に緊急の治療の依頼じゃ!」

「え!!」

 

 驚きました。

 まさかそんなマトモな理由で四番隊(ウチ)に来るなんて。

 

「まさか二番隊か隠密機動のどなたかが!? 患者の人数によっては四番隊からも人を出しますから……」

「そうではない! ……ええい、まどろっこしい! いいから黙ってワシに付いて来い!!」

「え、ちょ……!? 夜一さん!? て、手を引っ張らないで!!」

 

 私の手を掴んだかと思えば、有無を言わさず引っ張りながら走り出しました。

 

 ちょちょちょちょっと!! 理由、せめて理由を言ってください!!

 じゃないと途中でお仕事サボったことになっちゃう!! そうしたら卯ノ花隊長に怒られる!! そんなことになったら……

 

「誰か! 説明を!! 卯ノ花隊長に説明しておいてええええぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ……物凄い勢いで移動しながら、せめてもの抵抗とばかりに四番隊の隊舎に向けて叫んでおきました。

 誰か気の利いた子が隊長に説明してくれるといいんですが……

 

 一応、最悪の場合に備えての覚悟もしておきましょう。

 

『覚悟の準備をしておいてください! でござるな!?』

 

 はいはい、色違い色違い。

 

 とはいえどこに連れて行かれて、何をやらされるのやら……

 

 

 

 

 

 夜一さんに連れられて瀞霊廷を走り抜け、白道門(はくとうもん)を通り過ぎて。向かった先は西流魂街でした。

 どこか璃筬(りおさ)を思い出すような街の通りを駆けて行き……あれ? 付いて行ったら辺りの風景が物凄い殺風景なものになってきました。

 野原になっていて、家なんて全くないです。

 夜一さーん、これ"一地区"を超えてますよ? こっちの方角に進むと流魂街からも外れちゃうはずなんですけど……もしかして道に迷ってますか?

 

 そう言い掛けて、どうやら間違っていないということに気付きました。

 

「なにあれ……?」

「おお、見えたか」

 

 向かう先から見えてきたのは、巨大な……なにあれ……えっとエビ……? ……じゃない、(しゃちほこ)だアレ!!

 お城の天守閣に乗せられているみたいに、雄雌一対の(しゃちほこ)が向かい合って……ないわね。背中合わせ、って言って良いの? とにかく二匹が完全に逆方向を向いています……

 そしてその二匹の尻尾を結ぶようにして"志波空鶴"と書かれた旗が掛かってます。

 

 あー、なるほど。こう来ましたかぁ……

 

「どうじゃ?」

「どうじゃ、と言われましても……」

「本来なら向かい合うところを敢えて逆向きにしておくことで、見た目上は不仲そうに見えるが、実は細くとも確かな絆でしっかりと結ばれておる。ということらしいぞ」

「……すみません。私、無学なので芸術はちょっと……さっぱりわかんないです……」

 

 オブジェの向こう側には、平屋の日本家屋も見えます。とはいえその家は銭湯の煙突みたいなでっかい大砲を背負っています。

 

「わからんかったら後で本人に直接聞くと良いぞ! なんでも答えてくれるじゃろう」

「……あの芸術品はさておいて、あの家に患者がいるということでいいんでしょうか?」

「そういうことじゃ! さて……」

何奴(なにやつ)か! ……むむ、あなたは!!」

「夜一殿!? どうしてこちらへ!?」

 

 目指す家の玄関から、二人の大男が門番よろしくぬっと出てきました。どっちも濃い顔で、筋肉質な体格をしてます。

 ……こんなのいましたっけ? 覚えてません。

 

「邪魔するぞ、金彦(こがねひこ) 銀彦(しろがねひこ)。空鶴らは家におるか?」

「それは……」

「その必要はねぇよ!」

 

 金彦に銀彦って名前なんですね……言われればこんなのもいた、ような……?

 というかこの二人って双子なんでしょうか? 顔がそっくりです。

 今は名前の通り金色と銀色の服を着ているので見分けが辛うじて見分けが付きますが……二日後くらいにジャージ姿とかで出会ったら、金彦なのか銀彦なのか、はたまた幻の三人目が登場したのか、見分けが付かない自信しかありません。

 

「聞こえてんぞ、夜一!! 何しに来た!?」

「ご挨拶じゃのう、空鶴や。せっかく助っ人を連れてきてやったというのに」

「助っ人だぁ……?」

 

 金彦と銀彦を押しのけるようにして、一人の女性が出てきました。

 あ、この人は知ってます。

 

 志波空鶴。

 姓からもわかる通り五大貴族の一角、志波家の人間です。

 私の記憶が確かならば、男勝りで姉御肌な性格……姉御どころか兄貴と呼んでも良いくらい豪快な性格だったはずですが、どうやらその認識でよさそうですね。

 格好は赤を基調とした肌を露出させまくった服をしていますが――服って呼んで良いのこれ?

 袖のない薄羽織に腰巻きだけの格好で、下着とかは付けてません。しかもこの人もかなりの巨乳、夜一さんより大きいくらいの巨乳です。

 そんな人がこんな妖艶な格好をしているわけですから、深い深い胸の谷間が思いっきり見えてます。脇からも前からも見放題、ちょっと動いたら間違いなくこぼれ落ちますよ。

 目のやり場にとても困ります。

 

 さすがにジロジロ見たりしませんが……さっき夜一さんの脇乳を見て興奮してた新人隊士の子がコレを見たらどんな反応するんでしょうね。

 

『みwなwぎwっwてwきwたwああぁぁぁぁっ!! 野生の馬並みハッスルハッスル濡れまくりでござるよ!!』

 

 ……まあ、きっと多分こんな反応になるのは間違いないわね。

 

『あ、あの新人殿は藍俚(あいり)殿のおっぱいもガン見しておりましたぞ!!』

 

 うん、知ってる。視線にはばっちり気付いていたから。

 

「ふふふ、聞いて驚け……なんと医者じゃ!!」

「医者? こんなガキがか?」

 

 事態はイマイチ飲み込めませんが、夜一さんが自信満々に私を紹介してくれました。

 うわぁ……物凄い胡乱げな目で見られてる……

 あと多分、あなたの方がガキですよ。

 

 その後も二人はギャーギャーと騒ぎ合っていたので、要点をかいつまんで説明すると――

 

 ・先日、空鶴さんのご両親が倒れた。わりと危篤な状態。

 ・空鶴さんと交流のある夜一さんがそれを知った。

 ・空鶴さんと夜一さんは友達なので助けたいと思った。

 ・なので救急箱代わりに私を連れてきた。治療しろ。お前なら出来るだろ。

 

 ――ということを、後から合流してきた志波(しば) 海燕(かいえん)三席が聞き出してくれました。

 

「すみません、海燕さん。お手数掛けました」

「面倒かけたな湯川副隊長。ったく……空鶴! それに夜一もだ! お前らがバカやってたら話が進まねぇだろうが!!」

 

 海燕さんとは同じ死神同士ですから、実は顔合わせはとっくに済んでいます。

 まだ新人だった頃の彼を治療したこともありますよ。霊術院を二年で卒業した天才が来たって、四番隊がちょっと騒ぎになったりもしました。

 

 とはいえそれも昔のこと。

 現在の彼は十三番隊の三席と言う立場です。実力は副隊長クラスなのですが遠慮して三席の座を固持している。ということをウチの患者や隊士が言っていました。

 

 個人的にお話したこともありますが、この人も面倒見が良い兄貴肌な性格です。

 志波家の長男に生まれて、既に家督も譲り受けているらしく五大貴族の当主なのですが、それを感じさせない親しみ易さがあります。

 そうでなくても整った二枚目な容姿なので、女性隊士によくキャーキャー言われてます。強くて性格が良くて気配りも出来る気さくなイケメンですから、そりゃあモテますよね。

 

 なにこれ、どこの完璧主人公?

 

 海燕さんは空鶴さんの兄で長男ということは知っていましたが、この関係性を見るに夜一さんよりも年上なんですかね? 貴族の当主という立場も同格だからか、二人に物凄い勢いで説教しています。

 正座して反省させられている夜一・空鶴という珍しい光景を見られました。

 

「じゃから、ワシが説明しようと思っておったのじゃ! 空鶴は死神ではないから藍俚(あいり)の腕を知らんからな……それを空鶴のやつが!」

「んだと夜一! おれが悪いってのか!?」

「黙ってろ! 言い訳してんじゃねぇよ!!」

 

 二人の頭に仲良くゲンコツさんが落ちました。

 

「いててて……てか兄貴、なんでここに?」

「自分の親が危篤だってのに、呑気に仕事なんざしてられるか! 隊長から許可貰って飛んできたんだよ!」

「ちなみに、自分が連絡を入れさせていただきました」

 

 金彦がこっそりと挙手しながら答えます。その手には携帯電話、もとい、伝令神機が。

 

「そうだった! 私も今のうちに、せめて隊長に状況だけでも伝えておかないと」

 

 ということで、伝令神機がついに実用化しました。

 携帯電話ですよ携帯電話! これで文明人の仲間入りです!!

 なのでメールでちょっと今の状況を卯ノ花隊長に伝えておきます――

 

 "湯川です。

 突然消えてしまい申し訳ありません、四楓院隊長に有無を言わさず連れて行かれました。行き先は西流魂街の志波家でした。

 こちらに怪我人がいるので、治療を終えてから戻る予定です。

 

 追伸。

 文句は四楓院隊長宛でお願いします"

 

 ――こんなものでいいかしら。

 これを送信して、っと……便利な世の中になったわねぇ。

 

藍俚(あいり)殿の知識的には骨董品みたいなものでござりますが! ですが時代的には最先端を超えてオーパーツレベルという摩訶不思議!』

 

「海燕さん。お説教とここに連れ来られた経緯はともかく、内容はわかりました。そういうことであれば患者さんの容態を確認したいんですが……」

「ん? ああ、悪い! そうだったな、すまねぇ。厚意に甘えるみたいになっちまって……ま、とにかく入ってくれ」

 

 そうして海燕さんに促されるままに家に入ります。

 

 ああ、空鶴さんの胸の谷間を見ていたら思い出しました。

 そういえばこの家って確か地下しかなかったような……?

 と思っていたら普通の家でした。

 見た目通りの平屋で木造建築のお家です。五大貴族の屋敷にしては物凄く質素なので、それが異常と言えば異常ですが。

 なるほど、あんな変な家を作ったらそりゃお兄さん(海燕さん)に怒られますよね。

 

「でもあのオブジェは許されたってこと……?」

「ん、ああ。アレか」

 

 思わず口に出てしまった言葉を拾われました。

 

「まあ、妙ちくりんな物だってのは理解してるが、それでも空鶴の趣味みたいなもんだからな。あって邪魔になるものでもねえし、あれは許してんだよ」

 

 ……充分邪魔だと思いますが。

 

「妙ちくりんはひでぇな! かーっ、芸術オンチな兄貴はこれだから!!」

「誰が芸術オンチだ!! 今すぐあの妙な物体ぶち壊してもいいんだぞ!!」

「……仲の良い兄妹なんですね」

「うむ、歳も近いからな。ワシも弟はおるが、歳が離れすぎていてイマイチつまらん」

 

 弟!? そんなのいたんですか……

 

「っと、この部屋だ。親父、お袋、俺だ。入るぞ」

 

 さほど広くもない――貴族の屋敷という意味では――家を歩き、その一室のふすまを開けます。

 そこには二組の布団が敷かれ、一組の夫婦が並んで寝ていました。

 目を閉じて眠っているようですが、その顔色はお世辞にもよくありません。視診した限りですが、片方は病気による衰弱。もう片方は過労のようですね。

 見た目はどちらもそこそこお歳を召しており、今は病のこともあってか大分くたびれた容姿をしています。ですがさすがはこの兄妹の親ですね、それでもなお美男美女です。

 

「寝てんのか……」

「はい。薬草を煎じた物を飲ませていますが、お二人とも日に日に食が細くなっていまして……」

「この数日で急に具合が悪くなっちまって……兄貴に知らせるのが遅れちまったんだ……すまねぇ!! この通りだ!!」

 

 ガバッと勢いよく空鶴さんが頭を下げて謝りました。

 こういう竹を割ったみたいな思い切りの良い性格は好感が持てますよね。

 

「ってことらしい。元々そこまで身体の丈夫な方でもなかったんだが、どうやら見ての通りらしい……なんとかなるか?」

「どれどれ、少し失礼します」

 

 掛け布団をどけて、寝間着の上から二人を少し触診。顔色なんかを見つつ、同時に霊圧照射で身体の内側を調べます。

 体温、脈拍、心音なんかも……ふんふん、こんな感じね。

 

 結構危険で厄介な状態ね。

 でもこれなら……あ、射干玉も少しは協力しなさい。

 

『ええー、そちらの未亡人風な女性ならともかく。こっちの結構ダンディなおじさんには最低限のやる気しか出ないでござるよ……』

 

 最低限で良いから、それを出せって言ってるのよ!

 

『仕方ないにゃあ……でござる』

 

「回道を使います。まずは旦那さんの方から」

 

 気を取り直して。霊圧を放ち、全力で回道を唱えます。

 海燕さんらの言うように、元々あまり身体が丈夫ではない。罹病しやすい方だったみたいね。だから病気でも結構一気に症状が出たみたい。

 病魔そのものも結構重いものではあるんだけれど、これは治せるから問題なし。

 

 ただ根本的に対処するためには病気対策だけじゃなくて、体質改善も必要になるわね。

 だから射干玉、最低限でいいから協力しなさい。

 拒否権はないわよ。

 

 っと、こんなものね。一通り回道を使って病気を治しました。

 

 奥さんの方も同じです。

 こちらは割と普通の身体ですが、旦那さんを気遣い過ぎているのが主な原因ですね。むしろ精神的に弱い人だから、旦那さんが弱るとそのまま悪影響を受けやすい。そこでさらに看病に気を遣いすぎるのでダメージを普通より多く受けて過労で倒れちゃう。

 といったところでしょうか。

 

 なのでこっちも回道を――と、こんなものですね。

 

「終わりました」

「えっ!?」

「なにっ!?」

「「もうですかな!?」」

「流石は藍俚(あいり)じゃな」

 

 一瞥すれば、それまでの白い顔が嘘のように頬が赤みがかっています。

 苦しそうだった寝息も規則正しい落ち着いたものになっていて、素人目に見てもわかるくらい元気になってますね。

 

「親父、お袋……!」

「兄貴! おれにも見せて……本当だ……」

 

 兄妹もそれがわかったんでしょう。

 両親の顔を見比べながら安堵の笑みを浮かべています。

 

「病魔は取り除いておきました。ただ、旦那さんの方は元々の病弱さが、奥さんの方は身体が疲弊しきっていたのが災いしているので二、三日は安静に。起きたら食事と軽い運動をさせて少しずつ元気を――わっ!?」

「……すまねぇ! 藍俚(あいり)って言ってたよな!? 疑ったりしてホントにすまねぇ!!」

 

 よっぽど感激したんでしょうか? 空鶴さんは両手(・・)で私の手を掴むとぶんぶん振り回して感謝の意を示してきました。

 なお、勢いよく振り回しているから胸元も大変な事になっています。

 

「く、空鶴さん!? わかりましたから、手を……」

「水臭ぇな! 大恩人相手に"さん"付けで呼ばれたんじゃ擽ったくて仕方ねぇ!! 空鶴って呼んでくれ! おれも藍俚(あいり)って呼ぶぞ?」

「オメーはよぉ……恩人相手ならお前の方が"さん"付けで呼ぶべきだろうが……」

 

 さらにブンブン手を振られます。

 海燕さんもほっとしてますね。怒っているように見えますが、目がちょっと潤んでいるのがわかります。

 

「あの、それよりも。聞きたいことがあるんですが」

「なんだ?」

「確かに大病でしたが、これなら瀞霊廷の医者に頼めばなんとかなったのではないかと……そっちに頼むことは出来なかったんですか?」

「あー、そのことか……」

 

 どうしたものか、といった様子で海燕さんは頭をボリボリ掻きました。

 

「まあ志波家(ウチ)は五大貴族なんて大層な呼ばれ方こそしてるが、他の家からはどうにも嫌われててな。顔も知らない先祖が流魂街に家を建てたのを始めに色々と所謂(いわゆる)"貴族らしくない"んだ」

「"貴族らしくない"ですか……」

 

 なんとなくはわかりますね。この二人だけを見ても、自由奔放ですから。

 ……あれ、それに負けず劣らず奔放な人もいますよね。そこの褐色のドスケベな人。

 

「そのせいでちょいと目を付けられててよ。扱いなんて下級貴族以下なんだぜ?」

「え……と……つまり、それが原因で?」

「そういうこった」

「べつにおれたちだけなら問題はねぇけどよ。下手にちゃんとした医者を呼ぶと、今度はそいつが目を付けられちまう。そんなことになったら申し訳が立たねぇんだよ!」

 

 貴族同士の面倒なやりとり。

 関係者にそのしわ寄せが行かないように気を遣っていたってことですか。

 やたら男前な空鶴さん……いえ、空鶴の言葉を頷きながら聞きます。

 

 ……ん?

 

 ……ちょっと待ってください。

 

「……あの夜一さん?」

「なんじゃ?」

「この事情って、夜一さんもご存じでしたよね?」

「うむ!」

 

 うむ! じゃないでしょうが!!

 腕組みしながら胸を張って自慢げに言うことですか!!

 

『ですが腕組みのおかげで、褐色の素敵なおまんじゅうがむにゅっと潰れておりますぞ!! いやぁ、眼福眼福! コレを見ることが出来ただけでも充分許せますな!!』

 

 ……一瞬同意しかけた自分が恥ずかしい。

 

「じゃがお主なら何も問題はあるまい? そういった権力争いとは縁遠いし、何よりお主のところは隊長があの卯ノ花じゃぞ? 何を心配する必要がある? なぁに、それでも不安じゃったら四楓院家(ワシの家)で守ってやるわい」

「……四番隊の他の隊士は関係ない、私個人が勝手に動いたこと。ということで話をつけておいてください。そこさえハッキリして貰えれば問題はないです」

 

 仮に暗殺者が何人来ても一瞬で返り討ちに出来る自信はありますけれど、四番隊の皆に迷惑をかけるのだけは駄目、絶対に駄目。

 

『らめぇ、絶対!』

 

「任せておけ! と言いたいが、心配せんでも大丈夫じゃろ! これは家としてではなく、あくまで個人間の知り合いが動いた結果じゃからな! まあ目は光らせておくが……」

「その辺の事情は詳しくないので、お任せします」

 

 一応、そういう目算もあったしアフターケアもしてくれる予定だったのね。

 ならこれ以上の文句も無いわ。

 

「では、治療もお話も済んだので私はこれで。あとはご家族でゆっくりと……」

 

 お(いとま)しようと立ち上がると、兄妹に大慌てで止められました。

 

「おいおい待て待て!! せっかくの恩人をこのまま帰すわけには行かねぇよ!!」

「このまま礼の一つも出来ねぇんじゃ、おれの気が済まねぇ! 金彦、銀彦! もてなしの準備だ!!」

「「はっ!!」」

 

 という感じで、二人はあっと言う間に消えていきました。

 

 それどころか夜一さんまでもが私の肩をガシッと掴み――

 

「そうじゃぞ、泊まっていかんか! 今夜は帰さんぞ?」

 

 ――そう言った夜一さんは、すっごく悪い笑顔を浮かべていました。

 




海燕に怒られてションボリ正座してる空鶴と夜一。
なんとなく良い絵になりそうですね(苦笑)

●志波家と夜一さんの関係
まあ、大貴族同士ですから。普通に知り合いになったんだと思います。
同性で歳も近くて性格もウマが合いそうですから。
(夜一さんが屋敷を抜け出して志波家で空鶴と酒飲んで馬鹿騒ぎして、海燕に怒られる。そんなパターンがいっぱいあったんじゃないかと妄想)

●志波空鶴
原作でも
「この人死神やってたの?」「なにやら零番隊と絡みがあるの? どういう関係だったの? 五大貴族のご先祖様繋がり?」「なんで隻腕なの? 何かあったの?」「その格好エロすぎませんか?」「そのおっぱいは素晴らしいですね。登場時点では夜一さんが人間になる前だったから、絶対お色気枠でレギュラーになると思ってたのに」
と謎だらけの人。

とりあえず拙作中では――
「死神にはなっていない(兄貴が死神やってるし、なるつもりもない)」
「死神ではないが生来霊圧が高くて結構強い(+自己流(喧嘩等)で鍛えてる)」
「志波家の秘伝の技術や鬼道が使える(代々受け継がれてきた物がある)」
(鬼道は死神と同じ物を知ってる+それ以上に色んな術を使える≒下手な席官より強い)
「(今のところ)隻腕ではない」
「流魂街の顔役ではあるが、あのオブジェが原因で微妙に敬遠されてる」

――としています。
(本文中で上記を表現しきれなさそうだったので備忘的に記載)

●誰か足りませんよね?
気のせいです。
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