お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第55話 マッサージをしよう - 志波 空鶴 -

「アルハラって知ってますか?」

「なんじゃそれは? ほれ、いいから呑まんか! 主賓が歓待を受けぬのは失礼じゃぞ?」

 

 あれよあれよという間にお持てなしの準備が終わりました。

 気付けば――夜一さんのところと比べると豪華さは落ちますが――心が沢山籠もっていそうな料理が何品か、それとお酒が私たちの前へあっと言う間に並びました。

 とはいえ私はお酒は苦手なので、なんとか断ろうとしたのですが夜一さんが許してくれません。確かに歓待を受けないのは失礼なんですけど……

 あなた私が飲めないの知ってますよねぇ? まあ、一杯くらいならギリギリお付き合いしますけれど。

 

「わかりました、一杯だけですよ」

 

 そう前置きしてから、お猪口を手に取りちびちびと飲んでいきます。一気飲みなんてしたら一発で倒れますからね。

 ゆっくり時間を掛けて、ようやく飲み干しました。

 

 ……ああ、飲んじゃった……もう今日仕事できない……

 

「良い呑みっぷりじゃのう! ほれ、もう一杯」

「あっ……!」

 

 ようやく空けたと思ったらもう注がれました!!

 

「だから、もう無理なんですって! ……ひっく」

「いらねぇってんなら、おれが呑む!」

「空鶴!」

「だってよ兄貴、藍俚(あいり)は呑まねぇなら無駄だろ? ならおれが呑んだ方が酒も幸せってもんだ!」

「おお! それもそうじゃのう!! ほれ空鶴、ぐーっとやらんかぐーっと」

「へへ、悪いな」

 

 夜一さんがわざとらしい態度でお酒を渡せば、空鶴は一息でそれを飲み干しました。

 

 ……怪しい。

 

『なにやら夜一殿がわるーいわるーいことを企んでいそうでござるよ……お腹の中まで真っ黒でござる』

 

 あんたは頭の天辺からつま先まで全部真っ黒じゃない。

 

『おお、なんと! これは一本取られましたな!! このままでは拙者、ソウルがジェムって魔女になってしまうでござる!!』

 

 まあ何にせよ、これ以上お酒を飲まなくて良いのはありがたいです。こっちはこっちでお料理を頂いておきましょう。

 ……あ、この山菜の煮物美味しい。後で作り方聞こうかしら。

 

「すまねぇなぁ、馬鹿騒ぎに付き合わせちまって」

「海燕さん……いえ、大丈夫ですよ」

 

 二人の美女が酒盛りしているのを横目に、海燕さんが頭を下げてきました。

 

「妹もあれで喜んでんだ。何せ家のことはあいつが率先してやってるからよ。俺もついどっかで頼っちまってたんだ」

 

 家のこと――それは家事ではなく、志波の家に関係することってことですよね? お兄さんが死神やってるから、別の角度から助けたい。家の些事は任せておけ。っていう兄を思う気持ちのことで良いんすよね?

 失礼ですけど妹さんが炊事洗濯万事OKってイメージがこれっぽっちも湧かなくて……

 この料理だって金……銀? なんとか彦の二人が用意してましたし。

 

「んで、俺も感謝してんだ。まあほれ、一杯やってくれ」

「あの……」

 

 さっきからずっと弱いって言ってますよね? なのになんでまた注ぐんですか……? あ、でも注がれたけれど量が半分以下ですね。これならなんとか。

 

「いただきます」

 

 ……明日は二日酔いかなぁ……

 

 二人のどんちゃん騒ぎを尻目にそんなことを考えていると。

 

「まて空鶴! さすがにワシらは騒ぎすぎじゃ! まだ病人が寝とるのにこれはいかん!」

「あん? そう……か?」

「なんだ夜一? お前がそんなこと言うなんて……明日は雨でも降るんじゃねぇか?」

 

 なんでしょうか、夜一さんのこの三文芝居のような唐突な切り出し方は……あ、ようやく二杯目が飲み終わった。うー……きくわね……

 

「たしかお主の部屋はここからも離れておったな? あそこなら騒いでも問題なかろう! ということでホレ! 行くぞ!!」

「うわっ! ちょ、夜一! ひっぱるな!!」

「おいおい!」

藍俚(あいり)! お主もじゃ!!」

「えっ……!? なんで!?」

「よいではないか! なんでも現世ではこうして、女子(おなご)同士で愉しむそうじゃぞ? 女子会? とかいうそうじゃ!」

 

 女子会って……随分と時代を先取りした言葉を……

 

「ということじゃから海燕、この二人は借りていくぞ!」

「お、おい夜一! ……ま、静かでいいか」

 

 海燕さん! そこで諦めないで!! 立ち上がり掛けたのに座り直して手酌で飲まないでっ!! 料理に箸を付けないで!!

 

 あ、そのお魚美味しそう……

 

 

 

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「あの、夜一さん……もう今日は帰るの諦めましたから、寝かせて貰えますか? お酒飲んじゃったから眠くて眠くて……ひっく」

 

 空鶴さんの部屋? に連れて行かれるなり、私はそう切り出しました。

 だって視界が結構ふらふらしてますし……ああ、お酒飲んだからしゃっくりまで。

 

「いかん! それはいかんぞ藍俚(あいり)! お主にはもう一働きして貰わねばならん!!」

 

 えーっ……もう眠いのにぃ……やだ、かーえーるー……

 

「空鶴にも是非とも、お主の按摩を体験させてやりたくてのう、どうじゃ? できるか?」

「は、按摩? おれがか?」

 

 眠気が吹っ飛びました!! 大丈夫です、まだ酔ってますが眠気はありません!!

 射干玉!! 起きてる!?

 

『聞くまでもなかろうよ!! でござる!! ここで眠る馬鹿はおりませぬ!!』

 

 寝てる場合じゃないし、笹食ってる場合じゃねぇ!!

 

「できます、大丈夫です。けれど、大きめのツボか何かありますか? 最悪、からっぽの花瓶とかで構いません。何か器をください」

「む、少し待っておれ」

 

 そういうと夜一さんは徳利を一本手に持ってそのまま一気にゴクゴクと……

 

「ぷはーっ! ほれ、これで良いか?」

「はい、これなら……って、どこからそれ出したんですか!?」

「ん、ああこれか? なに、少し肴にして呑もうかと思っての。あの場からくすねておいたんじゃ」

 

 懐から徳利を取り出したかと思えば一気飲みして、それでもほんのり頬を染めたか染めないか程度とは……お酒強いなぁ。

 じゃなくて、これで器が手に入りました。それじゃ射干玉、ちょっとだけ具象化と能力使うわよ。

 

『お任せくだされ!』

 

 徳利の口に手を当てて、そこに具象化させた射干玉をとろとろ~っと流し込んでちょっと細工をすれば……

 はい、これで完成! マッサージ用のドスケベオイルです!!

 いつもの道具は家に置いたままですからね、こうやって代用します。代用とは言っても勝手知ったる自分の道具ですから、成分から効能から見た目に至るまで完全に同じ物ですよ。

 

「おい、さっきから聞いてりゃ人の意見を無視しやがって……というか、按摩だぁ? そんなもんに頼るほど、おれは別に疲れちゃいねぇぞ?」

「むふふふふ、そうは言うがな空鶴よ。これで藍俚(あいり)の按摩は死神の間でも評判なのじゃ! この前ワシも……」

「ワシも?」

 

 おっと、顔を若干赤くしながら一瞬言葉に詰まりましたよ。

 

「……ワシも体験したが、凄かったぞ! 一度試すだけの価値は充分にある!!」

「けど……」

「まどろっこしい、女は度胸と言うじゃろう!! 文句を言う前に少しだけでも体験してみんか!! ワシも手伝ってやる!」

 

 あれ、度胸は男で女は愛嬌だったような……? 

 

『そして坊主はお経でござるな!』

 

 あれよあれよという間に布団が敷かれました。

 

「よし、脱げ!」

「なんでだ!!」

「素肌に直接手を触れるから着物は余計なんじゃ! それにお主、普段から裸みたいな格好をしとるじゃろうが!」

「否定はしねぇがお前にだけは言われたくねぇな!」

 

『いえいえ、だからこそ嬉しいのですぞ!! 拙者、ここに来てから眼福と言う言葉を何度口にしたやら、もう数えきれませぬ!!』

 

 ……妹があんな格好してるのって、海燕さん(おにいちゃん)的にはどうなんでしょうね? 本人の自主性を尊重しているのか、はたまたもう諦めてるのかしら? 入れ墨までしちゃってまぁ……

 

「む! ははぁ……さてはお主、恐いのじゃろう?」

「あぁん!?」

「すまんすまん、まさか親友がこんな意気地無しじゃとは思っとらんかったわ。藍俚(あいり)、スマンの。無駄足になりそうじゃ」

「ってめぇ……上等じゃねぇか!!」

 

 明らかな挑発なのに、空鶴は分かり易く怒りマークを頭に浮かべながら来ている物を勢いよく脱ぎ捨てました。

 なんて男らしい脱ぎっぷり!

 

 チョロいわぁ……ホントにチョロいわぁ……

 

藍俚(あいり)殿もチョロかったでござるけどな!』 

 

「オラ、これでいいのか!?」

「え、ええ……ではそこに寝てください。まずはうつ伏せから」

「ん」

 

 ドスッと男らしい感じで寝ました。

 こういう反応は、今までに無かったタイプですね。

 

「ほほう、こういう風に見えるのか。これはなかなか新鮮じゃのう。白い背中が目に鮮やかで眩く……むっ、おっぱいが潰れておるではないか! これはなんとも悪目立ちしとるのう!!」

「夜一! 馬鹿な事を言ってんじゃねぇよ!!」

 

 ……ああ、なるほど。何を企んでるのかと思えば、それがしたかったんですね。

 見学(けんがく)――というより見物(けんぶつ)ですか。だからさっきも"肴にして呑む"とか言っていたのか。

 

 まあ、いいです。

 私は私で仕事をする(たのしむ)だけですから。

 

 ということで、たっぷりとオイルを手にして、まずは――

 

「ん……っ」

「ほほう!」

 

 ――足裏から開始です。

 どうにも空鶴は猜疑心を持ってますからね。なのでまずはじっくりと慣れさせて、身を委ねても問題ないと覚えさせないと。

 とろりとした油を足裏に塗りながら指先でゆっくりと指圧をしていきます。強すぎず弱すぎず、ちょうど気持ち良さを感じる程度で。

 

「へぇ……結構いいじゃねぇか……」

「にひひ、そうじゃろうそうじゃろう。ほれ、もう少し強くしてやれ」

「そう言ってるけれど、どうする空鶴?」

「ああ、構わねぇぜ」

 

 お許しが出たのでもう少し強めに。

 足の指を間を一つ一つ丁寧に擦り上げながら、ツボを押していきます。足裏に触れただけでも、かなりの健脚だというのがわかります。

 

「……っ!」

「ごめんなさい、強すぎたかしら?」

「いや、平気だ……なんていうんだ、これ……痛いけど気持ちいい、みたいな……」

「この辺とかですか?」

「おっ……! いいぜ、熱い風呂に入ったときみたいで……くぅー……っ……んっ!」

 

 ツボを刺激していくと、ちょっとだけ声が甘い感じになってきました。

 それを聞きつけたのでしょう、夜一さんの顔が少しずつにやにやしてきます。

 

「それじゃこのまま上に行きますよ」

 

 そう言いながら太腿からふくらはぎに掛けてオイルを垂らし、足首から上へ上へと揉んでいきます。

 太腿に触れると、とても柔らかかったです。肌の張りがあって、指で捏ねるとくすぐったようにひくひくと身体を震わせていました。

 

「凄いぞ空鶴、お主の腿が油に塗れて光っておる! そこに藍俚(あいり)が指でむにむにと揉むものじゃから、尻まで揺れておる!」

「うるせぇ……ぞっ!」

 

 文句を言いたそうですが、身体が快感を受け入れ始めているみたいですね。

 太腿から足の付け根を重点的に揉んでいくと、声が蕩け始めました。

 

「ん、く……ぁっ……!」

「にひひ、良いものじゃろう? ほれほれ、もっと素直になって快感を受け入れておけ! お楽しみはこれからじゃぞ!?」

 

 というと夜一さんは手酌で一杯やりました。

 

「くーっ、こんな光景で呑むというのもなかなかオツなものじゃ!!」

「てめ……ぇ、あと……でぇっ!?」

 

 恨みがましい言葉は、私が指でお尻を思いっきり強く押し込んだことで途切れました。

 

「ああ、この辺も凝ってますね」

 

 大きなお尻を両手で鷲づかみにして、ぐっと揉み解します。

 手に収まりきらないほどボリューム満点のお尻を揉みしだくと、お尻の辺りがほんのりと熱を帯びたように桜色に染まっていきました。

 

「ほうほう、指の間から尻の肉がはみ出しておるぞ? これはもう、ワシが男なら放っておかんな」

「ですよねぇ、すごいですよこれ」

「……ん、ひぅ……っっ!」

 

 夜一さんのリクエストに応えるように、何度も何度もお尻を揉んでいきます。

 ぷるぷるとしたお尻が揺れる度に空鶴の腰周りが小刻みに震えて、手の平でお尻を撫でればぷるんっと波打つようにして緩やかに形を変えました。

 

「なかなか面白そうじゃのう? どれ藍俚(あいり)、ワシにも少しやらせては貰えんか?」

「なっ、夜一!?」

「いいですよ、ではまずはここに手を当てて……力加減はわかります?」

「安心せい! お主にやられたときのようにすればよいのであろう? ふむ、こんな具合か?」

 

 見ているだけでは我慢できなくなってきたんでしょうね。

 夜一さんは身を乗り出しながら空鶴のお尻を掴むと、慣れた手つきで揉み始めました。

 

「良い感じですよ、ただもう少し丁寧に」

「む? こう、かの?」

「う……くぅ……」

「良い感じです。身体の奥の凝りを意識するようにしてあげてください」

「任せておけ!」

 

 うーん、私のそれよりも夜一さんの手つきの方がエッチですね。そのせいか空鶴が良い声を漏らし始めました。

 見ているコッチからすると、雪山のように白いお尻に褐色の指が食い込んで、その二つがオイルでぬらぬらと濡れて妖しく輝いているわけです。

 見ているだけで頭がクラクラするほどの色香が漂ってきます。

 

「じゃあ下半身は夜一さんにお任せして……」

「ふ……っ……な、なんだ?」

 

 空鶴の背中にとろーっとオイルを垂らし、背中や腰回りを重点的に揉んでいきます。

 こちらも白い肌が油に塗れて、艶っぽい雰囲気がぐーっと跳ね上がりました。

 

「私は背中から腰回りをやりますね」

 

 そう告げながら背中、肩、腰を刺激していきます。

 凝りを解すように指で押し込み、身体を柔らかくするように揉み解していきます。

 

「ん……くっ……ひっ……ああ……っ!!」

 

 お尻から太腿に掛けては夜一さんが情熱的にマッサージをしていき、腰から肩に掛けては私が真面目にマッサージをしています。

 気持ちよさと気持ちよさが全身から絶え間なく襲い掛かってきているためか、空鶴はもう我慢を忘れたように甘い吐息を口から漏らし続け、全身をビクビクと震わせます。

 ほんのり赤みがかりうっすらと汗をかいたその背中はなんとも言えない魔性の魅力を放っていました。

 

「ひゃ……うっ……んっ!!」

 

 脇腹を揉むようにしながら、胸元で潰れたおまんじゅうをこっそり指で軽く繰り返し擦ると、乙女のような可愛らしい声が聞こえてきました。

 

「やるのぉ藍俚(あいり)! じゃがワシも負けんぞ!」

「ま、待て夜いち……ぃっ!!」

「ほれほれ、どうじゃどうじゃ? ワシの術も捨てたものではなかろう!」

 

 その光景に刺激されたらしく、腿の内側へと指を這わせました。

 オイルを肌に染み込ませるようにしながら、付け根から膝までの間を何度も何度もじんわりと指で往復させていきます。

 内腿から登ってくるゾクゾクとしたような刺激に屈したらしく、空鶴はゾクリと腰を跳ね上げさせました。

 

「そろそろ前にいきますよ」

「おお、そうじゃな。そっちが本番じゃのう!」

「……っ、は……ぁ……っ! はぁ……ま、まえ……?」

 

 嬉しそうに反応する夜一さんと、それとは対照的に空鶴は呆然とした様子で言葉を絞り出します

 

「当たり前じゃろう? 背中側が済んだら次は腹の方じゃ! むしろそっちが本番じゃぞ! そらっ! ……おおっ!」

「もう……夜一さん……あらら……」

 

 楽しそうな表情を浮かべながらごろりとひっくり返すと、私たちは思わず驚きの声を漏らしました。

 

 だってそこには、昼間見た男勝りの姉御な姿などどこにもいない、無垢な乙女のような空鶴がいたのですから。

 気持ちよさと恥ずかしさが同時に襲ってきていて、感情の処理が追いつかないのでしょう。顔を真っ赤にしていて、瞳はうっすらと涙で潤んでいます。

 額には前髪が汗で貼り付き、全身からもほのかに湯気のような熱気が立ち上っていて、匂い立つような色気を醸し出していました。

 もどかしさに全身を小刻みに震わせ、けれども無言で抗議するように少しだけ頬を膨らませて、むくれた表情を浮かべています。

 

 その小動物のような様子が普段の空鶴のイメージとギャップを産んでいて、見ている方も驚くほど心が惹かれます。

 

「いいのぉ、仕上がってきたのぉ!! さて、まずはこの油じゃな?」

「夜一さん!? ああ、もういいです……引き続き下半身をお願いしますね」

「うむ! 任せておけ!!」

 

 とうとう私の許可も取らずに、オイルの入った徳利を掴むと中身をだばぁっと一気に垂らしました。

 下腹から太腿にかけてのラインが艶やかに光り始めます。

 

「ぬひひ、どうじゃ? このぬるぬるとした感触がたまらんじゃろう? ほーれほれ」

「ん……や、やぁっ……やめ……ろ……ぉっ!!」

 

 手の平で揉むようにして、下腹の辺りを揉んだり指で押し込んだりしていますね。

 鍛えられている肉体なので、だらしない脂肪とかはありませんが、それでも女性らしい丸みは充分にあります。

 そこを指でぐーっと押しているのですから、自然とその下腹の奥が刺激されるわけです。おへその下辺りを何度も指で刺激されて、なんとも熱の秘められた声が聞こえてきます。

 

 これは負けてはいられません!

 

 なので私は上半身を。

 先程と同じ要領で手の平からオイルを生み出して、空鶴に塗り込みながら揉んでいきます。上半身担当なので、肩から腕を、そして胸回りを。

 

「ふ、ぐ……ぐぅ……っ! ~~~っっ!!」

 

 仰向けに寝てもほとんど形が崩れないんですね。これはマッサージのし甲斐があります。大きなお山を上からむにっと掴んで、形を整えるように揉んでいきます。

 手の中でぷるぷると恥ずかしげに震えながら、けれどもしっかりとした弾力ですぐに元の形に戻ります。お山のてっぺんには桜色がしっかりと主張しています。

 

 奥歯をぐっと噛み締めて堪えていますが、完全に耐えるのは無理なようで顔を真っ赤にしながらされるがまま、必死で声を押し殺そうとしています。

 

『もうこれは3とP! 3という文字とPという文字が奇跡の悪魔合体でござるよ!! ペルソナってる場合じゃねぇ!!』

 

 あらら、いつもは大人しい射干玉が珍しい。

 こっちも我慢しきれなかったみたいね。

 

「やるのぉ藍俚(あいり)! ワシも負けてはおれん!! 確か、この辺の付け根の辺りを……こう、じゃったかな?」

 

 体験したリンパの流れをそのまま試すように、下半身をぐっと揉んでいきます。それだけでビクビクと全身を小刻みに痙攣させて反応を見せてくれます。

 夜一さんも中々やりますね。

 では私も、この大きな胸の下の方から上に向かって、天辺を指の腹で軽く擦るようにしてマッサージしていきますよ。

 

「お……っ……んんっ! や、やめ……夜一っ!! 藍俚(あいり)もっ!! 本当に、やめ……ぇぇっ!! がま、ん……が……っ! で、出……~~っっ!!」

 

 とうとう切羽詰まった叫び声が空鶴の口から響いた、その時でした。

 

「オイ、うるせぇぞ!! 女同士だからってもう少し静かに……し、と……け……」

「あ」

「あ!」

「あ……?」

 

『あ! でござる!!』

 

 ガラッと襖が開き、そこには不機嫌な海燕さんが。

 ですがこの光景は予想外だったのでしょう。何度も目をパチパチさせています。

 

「悪ぃ、邪魔したな……じゃねぇよ!! 何やってんだお前ぇらぁ!!」

 

 そっと襖を閉じかけて、思い直したように再度ガラッといきました。

 

 

 

 

 

 

 三人揃って物凄く怒られました。

 

 連帯責任ってやつです。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 と、マッサージはここで終わりなのですが。

 お話自体はもう少し続きまして。

 

「……はぁ!? あの、海燕さん……もう一回言って貰えますか?」

「だから、弟が生まれたんだよ」

 

 若干照れくさそうに言う海燕さんですが、二回聞いてもその内容は変わりませんでした。

 

岩鷲(がんじゅ)って名前でな。こうして弟が無事に生まれたのもお前のおかげだ! あの時もそうだが、改めて礼を言わせてくれ!!」

「そ、それはどうも……」

 

 お礼を言われましたが、はてさてどう反応して良いのやら……

 

 ご両親を治療した後も三ヶ月くらいは、暇を見つけては海燕さんから容態を聞いたり家を訪ねて直接問診したりしていました。

 その結果問題なしと判断して、それ以降は特に何かするわけでもなかったのですが……

 

 まさかこんなオチが待っていたなんて……

 病気の時に調べた限りでは全く妊娠なんてしていなかったので、ということは完治した後に作ったってことですから……

 

 ちょっと元気にさせすぎましたかね?

 

「今度暇があったら、弟を抱きにでも来てくれよ!」

 

 あ!

 あの時のことは両成敗というかなんというか、お説教が終わったのですっかり水に流されています。こういうスッパリとした性格なのも二人の魅力ですよね。

 なので志波家との関係は良好です。

 まだ赤ん坊の弟を"抱きに来い"と誘われるくらいには。

 

 ……まあ、何度か顔を出すくらいはしておきましょうか。

 

 ちなみに。

 空鶴はあれから恥ずかしがってマッサージはさせてくれなくなりました。

 

 ちょっと残念です。

 




●実況・解説・助手:四楓院夜一
お仲間を増やしたかった模様。

●お説教
妹に手を出されたら、そりゃまあ怒られますよ。

●何かおかしくないですか?
Q.岩鷲ってこのタイミングで生まれたの?
  だとすると原作では病人が子供作ったことになるよ?

A.(原作で描写がないので)わかりません。
  なので「(原作では)岩鷲が生まれてから病に親が倒れた」や
  「(オリ主がいなくても)海燕のツテで何とか治せた」と可能性は無限です。
  そんなことより空鶴さんのおっぱいだ。

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