お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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前話で「(つまづ)いた砕蜂を藍俚(あいり)が正面から受け止めてラッキースケベ」が入れられた事に今気付きました……
しくじりました。


第59話 マッサージをしよう - 砕蜂 -

「あ、ああああああの! ふ、ふつつか者ですが! よろしくお願いししししま……」

「どうしたの砕蜂さん!? 落ち着いて!!」

 

 家の前までついて来たと思ったら、砕蜂が突然妙なことを言い出し始めました。

 

『何を言っているのかわからねーと思うが、拙者自身もよくわからんでござるよ!! 超スピードだとか催眠術などではなく、これ以上無いってくらいにテンパりまくってるでござる!!』

 

 はいはい、ジャンピエールジャンピエール。

 

 隊舎内の副官室に泊めるのは問題がありそうだったから自宅に連れて行ったんだけど、家の前に着いた途端に言い出したのよ。

 顔を真っ赤にして精一杯勇気を振り絞ってるみたいな、そんな状態だったわ。

 道中、何か話を振っても上の空だったのが急にこんな状態になったら、そんなの驚くに決まってるじゃない。

 

 なんとか(なだ)(すか)して家の中まで連れて行ったけれど、それでもずーっと緊張しっぱなしのガッチガチ。

 落ち着かせようと思って客室でお茶を出してみたけれど、効果はなかったみたい。

 

 この反応って、多分アレよねぇ……

 

 ……私はただマッサージをしたい(おっぱいを揉みたい)だけなのに。どうしてこうなっちゃったのかしら?

 

「あの、砕蜂さん……もしかして、取って食われるとか思ってる?」

「と、ととととと取って食われ……あ、あうぅ……」

 

 何か良からぬことでも想像したのか、茹で上がった様に全身が真っ赤になったわ。

 

「もしかして勘違いさせちゃったかもしれないから先に言っておくけれど、あなたにちょっと按摩をしたいだけなのよ」

「え……あん、ま……ですか!?」

「ええ、そうよ。長時間の稽古をして身体が疲れているだろうから、解してあげようと思って」

「按摩……」

 

 いつまでも変な勘違いをさせるのも問題かと思い、そのものズバリ言ってしまうことにしました。

 その時の落ち込み振りと来たらもう!

 一体全体、何を想像していたのかしらねぇ? 私にはさっぱりわからないけれど、若い子って元気いっぱいなのね♪

 ね、射干玉もそう思わない?

 

『ある意味では砕蜂殿が想像していた通りの事態になるでござるなぁ』

 

 ニヤニヤしないの。

 

「結構評判も良いんだけれど……もしかして嫌だった?」

「い、いえっ! そんなことは決して!! 平気です! 按摩大好きです!! 今すぐにでもお願いします!!」

「そ、そう? じゃあ、施術室に行きましょうか? 準備とかあるからちょっと待っててもらうけれど」

 

 こっちが引くくらいの物凄い勢いで食いついてきたわね。

 

『必死すぎワロタ、でござるよ!!』

 

 

 

 

 

 さて、どうにか隣の部屋で着替えをするよう砕蜂を言いくるめてから、私は私でマッサージの準備を終えて彼女が来るのを待っています。

 そろそろ向こうの着替えも終わるころかしら?

 

「あの、湯川様……こ、これでよいのでしょうか……」

 

 そう言いながらやってきたのは、紙製の下着に身を包んだ砕蜂でした。

 身体は若々しさと躍動感に満ち溢れています。一目見ただけでわかる、ぴちぴちのお肌というやつですよ。

 胸回りや腰回りは薄い方なのですが、そこはそれ。むしろ色気がないのが逆に良い。

 まだ若い今現在の彼女が纏う雰囲気にピッタリの身体です。

 彼女の真面目な性格が下着の付け方にも現れているようで、上も下も結び目をキツくキッチリ縛っています。

 なので肌に思い切り密着していて、ボディラインが一目瞭然です。

 

 砕蜂本人は、このように肌を露出させる格好に抵抗があるみたい。

 両腕で自分で自分を抱き締めるようにして胸や腰回りを視線から必死で隠そうとしていました。

 真っ赤になった顔には、照れやら恥ずかしさやらが入り交じり、そこにほんの少しの期待を加えるという何ともそそる表情を浮かべています。

 

「ええ、問題ないわ。着方もわかったでしょう?」

「は……はい……ぃ……ですけれど、その、こんな格好なんて……」

 

 声はどんどん小さくなり、顔や肌は感情が昂ったのか更に赤さを増していって、本当に可愛いです。

 

 ……刑軍の男たちはこの姿を見ただけで「新しい長は砕蜂で決定! 異論無し!!」って叫びそうなくらいに、ぐっと来るわね……

 目にも身体にも悪いわよこれは……

 

「着たままでも良いんだけど、それだと洗濯が大変だからそれに着替えて貰ってるの。さ、それじゃあ始めましょう。ここにうつ伏せになって」

「はい……」

 

 未だ声は小さいですが、素直に横になってくれました。

 

「それじゃあまずは肩からね」

 

 砕蜂は緊張しているようなので、まずは軽いところから手をつけて行きます。

 マッサージ用のオイルをたっぷりと手に塗して、肩や首筋、二の腕の辺りをじっくりと揉みほぐしあげます。

 

「んっふ……あっ……あっ……」

「どう、気持ちいい?」

「は……はいぃ……こんなの、初めてで……す……っぅ……」

 

 やっぱり昼間の稽古で疲れていたみたいね。

 ゆっくりと時間を掛けて揉んでいくと、砕蜂の口からは魂まで蕩けきったような甘い声が漏れ出てきました。

 嘘みたいでしょう?

 この子、ちょっと前までは緊張して全身の筋肉がガチガチだったのよ。

 それがあっと言う間にこんなに安心しきった無防備な姿を見せてるの。

 

「首筋とかはどう?」

「んにゃあ……っ……気持ちいぃ……です……」

「背中はどう? 肩甲骨の辺りとか」

「そ、そこもいいですぅ……」

「背骨の辺りは?」

「そこも好きですぅ……湯川様、そ、その、もうちょっと……」

「もう少し強くした方が好き?」

「……はい」

 

 首筋を指でそっと撫で上げると、猫のような可愛い鳴き声が。背中をゆっくりと揉んでいくと、ぞくっと気持ちよさそうに肩を震わせます。

 背骨にそって指先で少し強めに押し込むと、もっともっととお強請(ねだ)りするような声を媚びた声が上がりました。

 

 しかし、本当に肌が若々しいわね。

 元々引き締まっている陸上競技のアスリートみたいな肉体なのに、触れても固くないの。ぷにっとした柔らかな感触が指先に伝わってくるわ。

 きめが細かくて、肌質も良い。手に吸い付いてくるみたい。

 

 今は背中から腰回りをマッサージしているのだけれど、本当に凄いわ。

 腰がきゅっと括れていて、強く触れたら折れちゃいそうなくらい細い。肉付きも薄いんだけれど、未成熟な魅力っていうのかしら?

 熟するのを待っていられない、今すぐにでも飛びつきたくなるような色気があるわ。

 

「あ……っ……! ふ……ふああぁっ……!!」

「痛かった?」

「ち、違います……ただ、気持ちよくって……ふ、う……っ!!」

 

 若い肉体を堪能するように、脇腹の辺りを指先で何度もなぞり撫で回していくと、砕蜂の声がじわじわと熱を帯びたようなそれに変わっていきました。

 指先はお腹の外側を上から下に沿って腰回りまで撫でています。

 身体と布団に挟まれて、ほんの少しだけはみ出ている胸の辺りを軽く擦るようにして撫でていくと、身悶えするようにヒクッと肢体を震わせました。

 

「少し、油を足すわよ?」

「ん……ふあぁ……な、なんですかこれ……? とろっとしてて、ぬるぬるしていて……」

 

 腰からお尻に掛けて、オイルを垂らしながら手で馴染ませていきます。

 ぬるぬるした感触でお尻を撫で回されて、砕蜂は驚いたように顔をこちらに向けてきました。

 

「嫌い?」

「……い、いえ……その、嫌いでは……ありません……」

 

 恥ずかしそうに枕に顔を埋めてしまいました。

 なのでここからはたっぷりと揉んであげましょう。

 

 お尻は小ぶりで、肉体同様に未成熟な青い果実みたいな印象です。

 少し撫でるとぷるぷると小刻みに震えて、まるで誰かに食べられるのを待っているようにも見えました。

 そんなお尻を手の平で覆い、なでなでと優しく動かしながら撫で回していきます。

 

「あ……っ……! は……っ……ぅぅ……っ!!」

 

 小さなお尻は私の手で簡単に掴めました。なので指全体に手の平までを使って、ゆっくりゆっくりと揉み解します。

 少し力を掛けると、筋肉の張りが指を押し返してきました。

 

「ひゃっ!! あ、あ……ん……っ! ……っ……ぅぅ!!」

 

 その弾力が心地よくて、ついつい手に力が入ってしまったわ。

 砕蜂は何度も小刻みに熱の籠もった悲鳴を上げて、それでも我慢しようと両手でシーツをぎゅっと掴んでいました。

 握りしめられたのでシーツに皺が寄っていて、握った辺りがうっすら濡れています。

 手に汗握るとはまさにこのことね。

 

 ふむふむ、それならば。

 

「はい、そろそろ足の方もいくわよ」

「ひゃっ!!」

 

 一旦指を離し、少しでも油断するのを待ってから今度は太腿を撫でます。

 オイルでヌルヌルになった指で撫でられると、油断していたこともあってか甲高い声が上がりました。

 

「あら、やっぱり隠密機動なのね。足の方は凄く疲れているみたい」

「きゃ……っ!! ん……っ! ~~~~っ!! んんんっ!!」

 

 太腿から膝裏、そしてふくらはぎから足首までを、ゆっくりと揉んでいきます。

 揉みごたえは少ないですが、肌はすべすべでずっと撫でていたくなりますね。

 

 ゆっくりと揉み、筋肉を弛緩させるようにマッサージをしていきます。

 凝った部分には指を強く押し込んで指圧を施し、柔らかくしていきます。

 

 儚い抵抗を試みるかのように足を閉じようとしますが、そこを割って入るように内腿に指を這わせると、腰がビクンと跳ね上がりました。

 苦しそうでいながら気持ちよさそうな声を耳にして、さらにゆっくりと揉んでいきます。

 

「あ、あの湯川……さまっ……! わ、私、なにか、変な感じ、で……っ!!」

「大丈夫、それは按摩が気持ちいい証拠だから。だから変に我慢しないで素直になっちゃって平気よ」

「そ、そうなの……~~~~~~ぅっぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」

 

 内腿から足の付け根辺りを強めに撫でると、声にならない悲鳴が大きく上がりました。

 全身をびくびくと震わせて、肩で荒く呼吸を繰り返しています。

 

 うーん、これは……

 

 気持ちよくなって貰えたみたいね。よかった、よかった。

 

「ごめんなさい砕蜂さん。お疲れのところ悪いんだけど、まだ半分しか終わってないのよ」

「ふえ……はん……ぶん……?」

「力が入らないみたいだから、こっちでちょっと動かすわよ」

「ふ、ふえっ!?」

 

 まるで小さな子供のように呂律の回らない言葉で聞き返してきましたが、はてさて頭で理解しているのかどうか。

 なので、返事を待たずに彼女を動かして、強引に仰向けに寝かせます。

 

「あ、あの……はんぶんということは……その……まさか……」

「そう、そのまさかよ」

 

 さすがにひっくり返されれば、これから先に何が起こるのか想像がついたのでしょう。

 恐る恐る尋ねてきた砕蜂に、私はにっこりと頷いてマッサージを再開しました。

 

「まずはお腹から」

「ふ……ああぁっ……そ、その……出来れば優しく……優しくお願いしますっ!!」

「あらどうして? さっきは少し強めが良いって言ってたのに」

「そ、それはその……」

 

 軽くお腹――下腹の方を撫で回すと、切なそうな声が上がりました。

 強くしろと言ったり弱くしろと言ったり、砕蜂はワガママみたいね。

 まあ、仕方ないわよね……今はちょっと敏感になってるだろうから。

 

「わかったわ。弱めに、ね?」

「あ……っ……」

「まだ強かった?」

「い、いえ……その……なんでもない、です……」

 

 そうして触れるか触れないか、羽毛のような指使いをすると、くすぐったいようなもどかしいような、そんな不満げな声を漏らしました。

 どうやら今度は"もう少し強く"して欲しいようですね。

 でも、自分で口に出したことだからか、言い直すのが恥ずかしいようで。両手で顔を覆いながら口籠もってしまいました。

 

「……っ、く……ぅ……っ!!」

 

 その間にも、優しいマッサージは続きます。

 下腹部から腿に掛けて、リンパの流れを意識するようにつつつーっと指を這わせると、その動きに追従するように砕蜂の身体は小刻みにビクビクと震えます。

 

 ホントはもっと強く乱暴にしてほしいのよね、これはきっと。

 うーん、だったら……えいっ!

 

「ああああぁぁっ!!」

 

 すっごい良い声が出ました。

 ほんのちょっと、下腹の真ん中辺りを指で強めに押し込んだだけなんですけどね。

 

「ごめんなさい、痛かった!?」

「い、いえ……その…………っと……」

「え? ごめんなさい、良く聞こえな――」

「もっと、もっと強くお願いします!!」

「――くて……わ、わかったわ」

 

 悲鳴みたいな声で大胆にお強請りされちゃったわ。

 言ったものの、物凄く恥ずかしかったんでしょうね。全身が変な汗でびっしょり濡れてて、耳の先まで真っ赤になってる。

 これはもう、期待に応えてあげないと。

 

「それじゃあ強めに……これくらい?」

「んっ! あ、ああっ……っ!! は、はいっ……!!」

 

 吹っ切れちゃったわねぇ。

 遠慮無く声を上げながら、背筋を仰け反らせています。

 まるで全身の感度が数倍になったみたいに、どこに触れても嬌声を上げてるわ。

 

「それじゃあ最後に」

「ひゃっ……!! そ、そこは……」

 

 胸に手を掛けました。

 おっぱいはまだ小ぶりで、夜一さんなんかと比べるととても慎ましやかです。

 手の中にすっぽり収まるほどの大きさですが、彼女に限っては大きさが魅力とはなりません。胸回りは新雪が降ったように清らかな白さを放ち、そして頂きにはまだ穢れを知らぬ薄桜がほんのりと彩りを添えていました。

 

「形を整えるためにも、ね。ちょっとだけ我慢して……」

「がまん……がま……無、理で……す……っ!!」

「あ、あら? ちょっと砕蜂さん……!?」

 

 そして控えめな分だけ感度は抜群みたいで、少し触れただけでも電気が走ったような反応を見せてくれます。

 優しくマッサージをしていると、もどかしくなったのでしょう。

 なんと彼女は私の手の上に自分の手を重ねて、ぎゅっと力を入れてきました。

 

「んんっぅ!! ……っむぅぅっ!!」

 

 シーツの端を猿ぐつわ代わりに口で噛み締めて声を押し殺しながら、乱暴に揉んでいきます。そのたびにくぐもった声が聞こえ、そして……

 

「んむぅ~ぅっぅぅぅぅぅぅぅぅ~~っ!!!!」

 

 再び、声にならない悲鳴が大きく上がりました。

 先程のあれよりもずっとずっと大きな反応を見せて、全身をぞくぞくと震わせています。呼吸は荒く、虚ろな瞳は涙を浮かべながら焦点の合わない様子でした。

 

「……若い子って、本当に凄いのね」

 

 この反応は予想外でした。

 

 

 

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「ぁぅ……ぁぅぁぅ……」

 

 藍俚(あいり)宅の風呂場にて。

 湯船に首まで浸かりながら、砕蜂は言葉にならない声を上げ続けていた。

 顔は茹で上がったように真っ赤になっており、願わくばこのまま湯に溶けて消えてしまいたいと彼女は胸中で何度も願い続けていた。

 

 彼女がそうなってしまった原因の一つは、言わずもがな先程のマッサージである。

 

 欲望に流されて、藍俚(あいり)の前で粗相をしてしまった。しかも自ら手を掴み、強引に。それだけでも恥ずかしくて恥ずかしくて、どうしたらいいのかまるでわからないほどだった。

 

「お湯加減はどう?」

 

 そして原因の二つ目は、藍俚(あいり)の存在だった。

 

「へ、へいきです……」

 

 彼女は、砕蜂と一緒に入浴していたのだ。

 マッサージの途中で意識を失いかけた彼女を介抱して、風呂場まで運んでくれた。その上で砕蜂の背中を流してくれて、更には一緒に湯船に浸かっている。

 文字通り、裸の付き合いというわけだ。

 

「そうなの? 赤くなってるから熱いのかなって思って」

 

(熱くなってるのは湯川様のせいです!!)

 

 そう叫びたいのをぐっと我慢する。

 

 なにしろ藍俚(あいり)は、まるで小さな子供と入浴するときのように砕蜂を自らの膝の上へ乗せ、彼女を後ろから抱き締めるようにして入浴しているのだ。

 藍俚(あいり)と砕蜂とでは、身長差が一尺(三十センチ)以上ある。

 そのため砕蜂が少しでも身体を動かせば、背中から首筋、後頭部の辺りが藍俚(あいり)の胸に当たる。そして当たる度に砕蜂は、今まで経験したことのない心地よい柔らかさに襲われる。

 

(おかしいです! 今の状況は絶対におかしいです!!)

 

 そう全力で主張したいものの、下手に声を荒げればこの温もりを――柔らかさを手放してしまいそうで出来なかった。

 抗いきれぬ感情に屈して、欲望の赴くまま少しだけ身体を後ろに動かそうとしたときだ。

 

「ごめんなさい」

「……ふぇっ!?!?」

「さっきの按摩のこと、ちょっと調子に乗り過ぎちゃったみたいで……」

 

 思わず自分の欲望がバレたのかと思い、緊張で身体を硬直させた砕蜂であったが、藍俚(あいり)の口から出てきたのは全く違う内容だった。

 

「い、いえっ! 悪いのは私で……湯川様は何も悪くありません!!」

「庇ってくれるなんて、砕蜂さんは本当に優しい子なのね。でも、あれは私が……」

「で、でしたら!! でしたら両方が悪かったということで!! だからあの話はこれ以上なしで!!」

「……ふふ、そうね。そうしましょうか」

 

 一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、やがて藍俚(あいり)はそう頷いた。

 

(わ、私が絶対に悪いのに……なんで湯川様はこんなことを仰るのだろう……)

 

 それは彼女の目的が山を登る(おっぱいを揉む)事だからである。

 万が一でも砕蜂の機嫌を損ねないようにと、自分が悪いと反省して「次からは気をつけて下さい」といった要旨の言葉を引き出そうとしている。

 次回へと繋げようとしているからだ。

 裏事情を知らぬ砕蜂からすれば、恥を晒した相手を庇って非は自分にあると言っている様にしか見えなかった。

 それでは藍俚(あいり)の考えを理解できるはずもない。

 

 知らぬが仏とはよく言ったものである。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、おやすみなさい」

「お、おやすみなさいませ!!」

 

 お風呂から出て、夕食を済ませ、就寝へとなった。

 藍俚(あいり)の私室に布団を二組敷くと、二人並んで横になる。

 

 ただ一緒に寝るだけ、それだけなのに砕蜂の胸は早鐘を打ち鳴らし続けていた。

 一つ屋根の下で、一緒に寝る。

 

(これはもう……これはもう……!! ふ、ふふふ夫婦なのでは!?)

 

 思考がぐちゃぐちゃになってしまい、上手くまとまらない。

 

 いや、違う。

 考えていることはたった一つだけだ。

 

「あの、湯川様……もう寝てしまいましたか?」

 

 すやすやと寝息を立てる藍俚(あいり)に向けて、砕蜂は遠慮がちに尋ねる。

 とはいえ既に寝入っている確信を得ているため、これはポーズでしかないのだが。

 

 彼女も伊達や酔狂で隠密機動として修行を積んでいるわけではない。

 藍俚(あいり)が見ただけで相手の具合を看破出来るように、寝息を聞き分けて相手が狸寝入りか本当に寝ているのか看破することなど、彼女からすれば朝飯前だ。

 

「し、失礼いたします……」

 

 砕蜂は自らの心の赴くままに、藍俚(あいり)の布団へと潜り込んだ。

 




砕蜂は可愛いから、優遇しちゃうのは仕方ないことなんです。
稽古をつけてあげて、技も教えて、ご飯も作ってあげて、マッサージもする。
優遇のレベルを超えてますね。

●ラストの続きは?
添い寝! 添い寝だけですから!! それ以上は一切ありません!!



???『三人称視点だと拙者の出番がないでござるよ……ただでさえマッサージの回は集中してご覧いただけるようにと、気を遣って拙者は口数を減らしているというのに。砕蜂殿と一緒にお風呂! そして一緒のお布団で寝たというのに!! 溢れるリビドーを一言も伝えられぬとは!!! ……ですがこれはこれでプレイを見ているようで興奮いたしますなぁ!!』

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