お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

62 / 293
5組予約があっても、5人全員分を描写するとは言っていない。


第62話 マッサージをしよう - 松本 乱菊 -

「……来ないんだけど」

 

 伊勢さんに続いてもう一人、計二人分のマッサージをどうにか終えました。

 

 ……が、三人目が来ません。

 

 もう予約時間を四半刻(三十分)はとっくに過ぎているのに……!

 

 ある意味では一番楽しみにしていたのに!

 

 

 

 え? 伊勢さんが四半刻(三十分)くらい早く来てたから帳尻は合う?

 合わないわよ!

 後の人たちに「四半刻(三十分)早く来てください」なんて連絡してないし!

 そもそも二人目は予約時間通りに来たし! 

 なにより向こう(お客様)の都合もあるのにコッチ(お店側)の都合で勝手に予定を繰り上げられないでしょう!?

 

 

 

 ……こほん。

 

 このままだと、後の予約者たちにも迷惑が掛かっちゃうのよね。

 一人に時間を掛けすぎると、その分だけ後ろにしわ寄せが行っちゃう。

 個人営業店の悲しさよ……

 

 ……別に本業じゃないんだけどね

 ……いえ、ある意味ではこれこそが本業で死神は副業……!?

 

 というか、こんな馬鹿な脳内漫才を繰り広げている場合じゃないわよね。

 予約者の名前と連絡先はわかってるんだから、伝令神機で連絡を……

 

 呼び出し音が鳴って……

 

 コール中……コール中……

 

 ……………………………………でない……

 

 ……あ、でた!

 

「もしもし? 突然の連絡申し訳ありません。四番隊の湯川藍俚(あいり)と申します。そちらは――」

 

 まずは自分の名前と立場を名乗ってから、相手の様子を確認します。

 ……って、向こうから聞こえてきた声の様子が……ああ、そういうオチなのね……

 これは……うん、キレそう……落ち着きなさい私。

 

「――はい、そうです。予約は受理されてます。ええ、そうです、今日です。予約時間はもう過ぎてますので、ご連絡を……そうです、もう四半刻(三十分)は既に過ぎています……そちら、ご自宅ですか? え、違う? そこからここまで移動されるとなると開始がもっと遅れて、そうなると後の予約者様にもご迷惑となるので、申し訳ありませんが今日の分は中止ということでまた後日ということで……は!? 今から来る!? え、ちょっと……もしもし、もしも……!!」

 

 ――切れた。

 

「ふ、ふふふふ……」

 

 ……これはちょっと怒って(キレ)もいいわよね?

 

『拙者をキレさせたら大したものでござるよ!!』

 

 射干玉!! ステイ(黙れ)ハウス(失せろ)!!!!

 

『も、申し訳ございませぬ……(というか藍俚(あいり)殿、目がマジでござるよ……あ、でもこういう藍俚(あいり)殿も素敵でござるなぁ……あの目で睨まれながら躾けられたいでござる……)』

 

 

 

 

 

「あはは~、ごめんねぇ藍俚(あいり)さん♪ すっかり忘れちゃってたわぁ♪」

 

 通話連絡からおよそ半刻(六十分)くらいは経過したでしょうか?

 悪びれる様子も無くやってきたのは、十番隊の松本(まつもと) 乱菊(らんぎく)です。

 

 死神勢力の分かり易いお色気担当キャラ、とでも言えば良いでしょうか?

 

 基本的に黒目黒髪の者が多い尸魂界(ソウルソサエティ)では珍しい金髪碧眼、僅かにウェーブの掛かったふんわりとしたショートヘアの美人さんです。

 加えて男の情欲を滾らせる扇情的で肉感的な身体の持ち主。

 性格はサバサバした男勝りというべきか、それとも雑でいい加減な気まぐれな猫みたいな印象というべきでしょうかね。

 タチの悪いことに自分の肉体という武器の強さを熟知しているので、男性隊士を色仕掛けしたりからかったりで、手玉に取ることもままあります。

 

 それを後押ししているのが、この格好ですね。

 死覇装をラフに――ラフ過ぎるくらいラフに着崩しており、胸元をがばっと大きく開けて谷間が丸見えという……男性隊士たちの目と股間に悪すぎる格好をしているので、これはもう俺のことを誘ってるんだと勘違いする男性隊士が後を絶たないとかなんとか。

 

 率直に言ってしまえばエロエロなナイスバディのお姉さんですね。

 

 ……ほんと、一人で歩いてたらいつ犯されても不思議じゃないわよねこの人……

 

 付け加えるなら。

 私の「どうしても登ってみたい(揉んでみたい)お山(おっぱい)」の一角であり、本来ならこの機会は諸手を挙げて歓迎したいんですけれど……

 

「いやぁ、今日お休みでしょう? だからついつい呑み過ぎちゃって……」

 

 もう昼だっていうのに、この人は呂律の怪しい口調と千鳥足に加えて、お酒の匂いをぷんぷんさせています。

 

 はい、そうです。

 お察しの通り、飲み過ぎの酔っ払いです。

 今日が予約の日だってことを忘れて、前日からずーっと呑んでいたみたいです。

 昨日から! ずっと!! 呑んでて!! 伝令神機で電話したときから酔っ払いの声で忘れてたって言って!! 挙げ句の果てにこんな時間に来て!!

 

 コイツはめちゃ許せんよなぁ……!!

 

「あの、乱菊さん……もう時間が足りませんので今日は……」

「あっはっはっは、ごめんなさいねぇ! でも、急いでやれば間に合うでしょう?」

「…………」

 

 急いでやれば間に合う……と来ましたか……

 

 よし、決定。

 ちょっと、報いを受けてもらいましょうね。

 

 ち・な・み・に♪

 一人当たりの予定時間は一刻程度(約二時間)なので、残り時間は既に四半刻(三十分)を切っています。

 

 つ・ま・り♪

 二時間分を三十分に詰め込めば良いのよね。楽勝じゃない♪

 本人もそれで良いって言ってるんだから、文句はどこからも出ないわ♪

 

 大丈夫、全然怒ってないから♪

 

「わかりました」

「へ?」

 

 玄関先で酔っ払い特有の謎の馬鹿笑いをする乱菊さんの首根っこをグワシッと猫の首を持つように掴み、彼女に向けてにっこり笑顔を向けます。

 

「では、超最短コースで行かせて貰いますね。なお、そちらから言い出したことですので、もう取り消しは不可能ですよ」

「あ、あら~……?」

 

 なにやら私の笑顔に不信感を抱いたようだけどもう後の祭りよね。

 そのまま有無を言わさずズルズルと引っ張って、家の中へ引き摺り込んでやりました。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「はいここに寝る!」

「きゃっ!! ちょ、ちょっと……!?」

 

 施術室まで連れ込むと、そのまま施術台(おふとん)の上に無理矢理寝かせます。

 着替えは時間が掛かって手間なので、服は着せたままです。

 腕力任せに無理矢理押し倒したのと大差ないので、死覇装には変なシワが出来ました。

 

「はい、それじゃあ始めますね」

「あ、あのぉ~……ご、ごめんね? やっぱり止め――」

「いえいえ、お気になさらずに!」

「――わぷっ!? な、何これ……?」

 

 今さら謝られても、それを言うのは一時間遅かったわね。

 手に取ったマッサージオイル(射干玉の体液)を彼女の顔面に擦り付ければ、急に顔に塗りたくられたヌルヌルした液体の感触に戸惑ってるみたい。

 

「施術に使う油ですよ。今からこれを使って按摩をします」

「按摩って……ど、どこを……?」

「どこが良いですか?」

 

 怯えきってるわねぇ……

 今から自分が何をされるか、本能的に理解してる。

 そりゃあ、私が笑顔で丁寧に(・・・)対処してれば嫌な予感の一つや二つ当然よね。

 

「時間もないので、評判の良いところを集中的にやりますね」

「それって例えば……どこなのかな~……って……」

「例えば……胸、とか」

「ひゃっ!?」

 

 大きな胸に手を掛ければ、彼女は少女のように可愛らしい声を上げました。

 

「そ、そんなところ、本当に人気なの……?」

「ええ、そうですよ。左右の大きさや形を整えたり、単純に大きくする効果もありますから……まあ、乱菊さんに後者の方は不要かもしれませんけれど」

「ん……っ……!」

 

 乱菊さんの胸は、私の手でも持て余すくらいの巨乳です。

 片手をいっぱいに広げても掴みきれないくらいその大きさは、今までマッサージしてきた人間の中でも文句なしでトップの大きさね。

 死覇装から今にもこぼれ落ちそうなお山(おっぱい)は、彼女の頭よりも大きくて、手で掴んだだけでもその迫力に圧倒されます。

 服の上からこの巨大な肉の塊を揉んでいますが、柔らかいです。それでいて彼女が身体をよじるたびにふるふると波打ちます。

 

「肌を綺麗にする効果もあるので、普段から見せびらかしている乱菊さんにはこっちの効果の方が重要ですかね?」

「あん……っ! だ、だってぇ……! 大きさが合わないんだから、仕方ないでしょう……?」

 

 その気持ちは私にもちょっとだけわかります。

 が、手は緩めませんよ。

 

 ぐいっと胸元をはだけさせれば、男性隊士を魅了してやまない白い山肌が全容を見せました。

 そこにオイルを塗るべく手を這わせれば、柔らかい肉に指が沈み込んで、隙間や手の平からむにゅりとこぼれ落ちます。

 まるでつきたてのお餅のような柔らかさ。肌質も細やかで、指に吸い付いてくるみたい。なんていう触り心地の良さなのかしら……

 

「な、なんだか、手つきが……やらし……ああぁん……!」

「そりゃあ、そのものズバリ胸を揉んでいるわけですからね。ですが、変な気はありませんよ。まあ、乱菊さんくらい大きな胸は初めてなので驚いてはいますけれど」

 

 さらっと大嘘を吐きながら、胸元のマッサージは続きます。

 

 天辺には、この大きな胸と比較すれば小ぶりな突起がありました。少しだけ色素が沈着したそこは、けれども色が濃い分だけ肌の白さと相まった蠱惑的なコントラストを見せつけてきます。

 

「~~~ゅぅっ!!!」

 

 オイルを塗り込むのが目的でもあるので、こちらも当然。

 どこまでも指が沈んでいきそうな柔らかさと比べれば、こちらは芯のある堅さですね。ちょっと固めに炊いたお米みたいな感じ。

 指の腹で軽く撫でると、少女のような可愛らしい声が上がりました。

 

 さて、最後に。

 

 指をお山(おっぱい)の外側から内側へ――つまり、大きな山と山の間にある、これまた立派な深い深い谷間へと指を突き入れます。

 

「~~っ、く……っ!」

 

 一瞬だけゾクリとしたような反応を乱菊さんが見せました。

 片目をキツく瞑り、背筋をビクッと震わせます。そして連動しておっぱいも可愛らしく震えました。

 

 おそらく、男性隊士のほとんどが顔を埋めたいと思っていることでしょうその谷間に入った指は、左右からの肉で押し潰されそうです。

 柔らかい壁が両方から迫ってきていて、少し指を動かすだけでも所狭しと擦れます。谷底の胸板は周囲と比べれば固めで――それでも充分柔らかいのですが――ツンと押し込むとほどよい弾力が返ってきます。

 もうこれは突っ込んでるのと変わりませんね。

 山の奥まった部分だけあってか、谷間には熱が籠もっています。

 まるでこの中だけ、熱気や湿度が違うみたいに熱いです。実際乱菊さんの肌はうっすらと上気していて、肌も軽く火照っています。

 身体の中から溢れ出てきた熱がこの谷間に集まっているんでしょう。

 

「……ん……っ……く……ぅぅっ……はぁ……ぁん……」

 

 そしてこのオイルです。

 ヌルヌルで保湿力や保温力もたっぷりのこのオイルを胸に余すところなく塗られたワケですから、身体の内側は凄いことになってると思いますよ。

 熱が籠もっていて、そしてヌルヌルした感触が押し寄せているわけですから。

 

 外から見れば、白い肌がオイルでテカっていて、愁いを帯びたような表情は微熱によってうっすらと赤く染まっています。加えて男を誘うような甘い吐息を何度も何度も漏らしています。

 トドメに死覇装は中途半端に纏ったままで、胸元周辺を強引に脱がされているだけです。

 

 こんなの上げ膳据え膳以上のお持てなしですよ。

 誰でも見た瞬間に獣になりますよ。

 ……普通ならね。

 

「そうそう、お尻も人気なんですよ」

 

 ですが今の私には通じません。

 最初に言ったように、四半刻(三十分)で全部やるんですよ。

 そして時間はもう半分を切っています。

 まだまだ怒りが上回っているので、そんなことやってる暇なんてありません。

 

 布団の上で誘っているような様子を見せていた乱菊さんを俯せにすると、今度は袴を一気に持ち上げてお尻を丸出しにします。

 

「ひゃっ!! ちょ、ちょっと!?」

 

 抗議の悲鳴を上げますが、受け付けはとっくに終了しています。

 

 めくり上げた袴の下からは、白く艶やかなお尻が出てきました。

 胸と同じように大きくて肉感的な、けれどもぷりんとしていて吸い付きたくなる魅力を秘めて――

 

 って、あらすごい。

 

 こんなのどこで買ったの!? って聞きたくなるような、きわどい紐パン履いてますよこの人。上はノーブラだったくせにどうしてこんなスケベな下着付けてるんですか!!

 私なんて未だにもっこ褌ですよ! ……あれ、あんまり変わらない……?

 

「席官になると事務仕事が多くなりますからね、自然とお尻周りもくたびれるんですが……あら、これは……乱菊さん? お仕事、ちゃんとやってますか?」

 

 軽くお尻を指先で突くと、むにゅううっと沈みながらも強く押し返してきます。張りがあって、こっちも指に吸い付きます。

 形も崩れていないぷりんぷりんなお尻は、座り仕事をサボってる証拠ですねこれは。

 

「それは……あ、あははは……」

「笑ってごまかさない」

「ひいっ!」

 

 お尻を軽く叩けば、スパーンっとやたらと小気味良い音が上がりました。

 同時にお尻から太腿に掛けてがぷるんっと誘うように揺れます。

 

「ちゃんとお仕事はすること、遅刻したら謝ること、自分の都合で無茶振りしないこと! わかりましたか!?」

「はいっ! ご、ごめんなさい!!」

 

 もう一度叩けば、乱菊さんは子供みたいに素直に謝ってきました。

 これで少しは反省してくれればいいんですけどねぇ。

 

「はい、よろしい。それと、叩いてすみませんでした」

「あ、んん……っ!」

 

 叩かれたせいでうっすら赤い手形が付いている辺りを中心的に撫でます。

 乱菊さんはお尻も太腿もムッチムチで、本当にずっと何時までも撫でていたくなります。飽きないんですよね。

 少しでも力を掛ければお尻の方から跳ね返してきて、その弾力が楽しくて楽しくて。

 

 ……はっ! いけないいけない。

 マッサージもちゃんとしますよ。お尻全体にオイルを塗り込んでいって……むちむちのお尻がテカテカになっていって……

 

 なにこの光景、もう犯罪よこれ……

 

「おっと、そろそろ時間ですね」

 

 危ない危ない、これ以上は問答無用でアウトだったわ。

 名残惜しいけれどそろそろ次の人のために準備しないと。

 と言うことで――

 

「はい、どっぽーん」

「きゃああぁ!?」

 

 ――ヘロヘロになっていた乱菊さんを担ぎ上げると、そのままお風呂に投げ込みました。

 

 マッサージの後はお風呂で汗や老廃物を流して貰うようにしています。

 しているのですが、今回はもう時間が無いので着たままお風呂に沈めました。

 

「着替えと身体を拭く物は用意しておきますから、ご安心くださいね。私の普段着ですが、裾や丈が足らない心配はないはずなので」

「ちょっと! これは酷くない!?」

 

 流石にお湯に投げ込まれれば正気に戻ります。

 水面から顔を出しながら、乱菊さんは抗議してきました。

 

「別にお金なんて取っていませんし、そもそも時間が足らないから今日は諦めて欲しいと事前に説明しましたよね?」

「そ、それは……」

「そこを無理矢理やってきて、挙げ句本来は一刻程度(約二時間)は掛かるのを四半刻(三十分)でやってくれと言われたら、他を乱暴なくらい手短にしないと間に合わないんですよ。何か反論はありますか?」

「……うっ! け、けれども……もう少し、あるじゃない! 扱い方ってものがさぁ!! それにさっき謝ったじゃないの!!」

「はぁ……いいですか乱菊さん?」

 

 

 

「――ちゃんと扱って欲しかったら、時間くらいは守りましょうね?」

「……ッ!!!!」

 

 ちょっとだけ霊圧を込めながら注意すると、乱菊さんは心底震え上がったように息を飲みました。

 

「わかりましたか?」

 

 無言でコクコクと頷いている所を見ると、どうやらわかって貰えたみたいですね。

 

「次からはちゃんと、予約した時間を守ってくださいね」

 

 さて、四人目の準備をしないと。

 忙しい忙しい。

 

 

 

 余談ながら。

 この日以来、乱菊さんは少しだけ大人しくなったそうです。

 





●念願の松本乱菊さんでしょ? こんなのでいいの?
ギャグ寄りというか、勢いでバーッとやってそのまま終了です。
(シラフで普通にやると、そのままおっぱじめてしまいそうだったので)

こんな弱い私を許してください。何でもしますから。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。