いやはや、さすがに疲れますね。
あの後、乱菊さんはちゃんと着替えて帰って行きました。お風呂に叩き込んでから私もちょっと冷静になったので、謝っておきました。
そして四人目の施術も無事終了しまして、今日は残り後一人です。
体力的にはまだまだイケますが、精神的にはもうお腹いっぱいです。
やっぱり一日に五人も予約取るのは無理でしたね……でも、たまにやっちゃうんですよねぇ……
大丈夫! イケるイケる!! って謎のノリで受け付けちゃって……
「えっと、最後の一人は……あら、この子だったのね」
予約表に書かれた名前を見て、思わず声を上げてしまいました。
なるほどね、まさかこの子だったなんて……なんというか、因果みたいなものかしら?
「ごめんくださーい。予約していた者です」
「はーい、お待ちしていました」
そんなことを思っていたところで玄関から声が掛かったので、応対に出ます。
現れたのは、十三番隊に所属している
姉とは違って小柄な体型。
金髪のショートヘアに勝ち気な容姿をしています。
性格も姉と対照的で、活発で押しが強くて良く喋る活発な子です。活発という表現を二回使っちゃうくらいには活発です。
そして何よりもこの子を現す言葉があるとすれば"浮竹隊長大好き"ですね。
たまに十三番隊に出向いたときに、もう一人の男性死神――名前なんだっけ?――となにやら浮竹隊長のことで喧嘩しているのを見かけます。
そして何よりもこの子、実は回道の成績が抜群に良かったんですよ。
勇音とセットで四番隊に入隊させたかったくらいです。
まあ、それは以前にもお話したように、決定寸前で山本総隊長が"浮竹の身体を治せるように回道の使い手を世話役として置いておきたい"という理由で流れてしまいましたが。
そんな子なんですが……原作に登場……してましたよね……??
勇音の妹なら、登場していても不思議では無い筈なのですが……
いたような、いないような……覚えがないです……どこかで活躍の場面ありましたっけ……?
『あの、
うわ……射干玉の台詞に"!"が無いって事は、ガチのトーンね……
この子が気遣ってるとか、相当のことなのよ……
「湯川副隊長?」
「ああ、ごめんなさい。虎徹さん……いえ、清音さんの方が良いかしら?」
「うーん、そうですね。姉さんと被っちゃうので、名前で呼んでください」
「ええ、わかったわ。それじゃあ清音さん。上がって頂戴」
施術室まで案内します。
伊勢さんみたいに早く来すぎて緊張することも無ければ、乱菊さんみたいに無茶苦茶でもない。
極めて普通ですね。
でも今はそれが何よりも有り難いです。
「さて、と。清音さん、着替えは終わったかしら?」
「お、終わりました……」
施術室の隣、更衣室で着替えを終えた清音さんは、恥ずかしそうに入室してきました。
紙製の下着に身を包んだ彼女ですが、うーん……普通ですね。
失礼なことを言っているのは重々承知しているのですが。というよりも、今日担当した人たちのアクが強すぎたと言うべきなのかもしれませんが。
背丈は普通で、体つきも普通です。
胸元は程よく控えめ、邪魔にならない様に膨らんでいて、肉付きは薄め。
お腹周りはスッキリ細くて、括れもあります。
なのでスレンダーなアスリート体型と言えなくもないですが、そう表現するにはもう少し足りないんですよね。
……あ、だから活躍の場がなかったのかしら?
「はい、じゃあここに寝て頂戴ね」
「は、はい」
「寒くない?」
「大丈夫です……あ、俯せで良いんですか?」
「そのつもりだったけれど、仰向けが最初でもいいわよ?」
そう尋ねると少しだけ逡巡した後に、そのまま俯せになりました。
「じゃあまずは腰回りからね。ちょっと冷たいけど、我慢してね」
「きゃっ!? な、なんですかこれ……?」
「特製の油よ。塗ると肌が綺麗で瑞々しくなって、感度も良くなるの」
「そうなんですか……? あ、なんだかヌルヌルしてて、ちょっと気持ち良いかも……」
腰回りから順にマッサージをしていきます。
ふむふむ、流石と言うべきですね。
まだお肌も若くてハリがあります。活動的で良く動いていますね、少し日に焼けたその肌は健康的な色気を醸し出しています。
腰を揉んでいくと、やっぱりちょっとだけ疲れていますね。なので凝りを重点的に解消するように、力を少し込めてぐーっと解していきます。
「ん……っ……そこ、いいです……」
「この辺、凝ってるものね。もう少し集中的にやった方が良い?」
「お願いします」
なのでリクエストに応えてぐーっと力を込めて。
「あ……あぁ……すごい、楽になっていきます……」
そのまま太腿から足首までを揉みます。
こちらもほどよく鍛えられていて、肉付きは少ないですね。
なんていうのかしら、部活を真面目にやってるけれどレギュラーにちょっと足りない女の子みたいな感じ?
――我ながらわかりにくいとは思うけれど、触った感触はそうなのよ。
ピチピチと新鮮ではあるんだけれどそれだけ、みたいな。お刺身をお醤油抜きで食べるみたいな、プリプリ感はあるけれど旨味がちょっと足りない、みたいな。
「ちょっと痛いかも知れないけれど、我慢してね」
「え、ちょっ! 痛いんです……かぁっ!?」
続いて足裏のツボを刺激します。
「あっ! わっ! ちょっ!! あいたたたたたた……!!」
まずは内臓に効くツボを中心に幾つか指圧していくと、少し大げさなくらい痛がっていますね。
あらら、この辺を痛がるってことは暴食でもしてるのかしら?
うーん……というよりもこれは……
「結構身体中が疲れている感じ、かしら? どう、清音さん?」
「あ、はい。あってます」
マッサージの手を止めて尋ねると、彼女は素直に頷きました。
「触った感じ、疲労が蓄積してるのよ。気疲れみたいな。お仕事が大変なの?」
「そうなんです。浮竹隊長のことは心配ですし、仙太郎は五月蠅いですし……」
「なるほどねぇ……」
なお、話を聞いている最中にはお尻をマッサージしていました。
こちらもピチピチですがボリューム感は今ひとつですね。形の良いぷりんとした小ぶりの可愛らしいお尻です。
奥の方に凝りがあったので、力を込めて押し込んで解してあげました。
そのまま背中全体から肩、二の腕までを揉んで解していきます。
「はい、半分終了。それじゃあ今度は仰向けになって貰える?」
「わかりました」
素直に仰向けになりました。
ですが……うん? 気のせいか、なんだか様子が違うんですよね。
マッサージを受けに来ているのには違いありませんが、なんとなく意識が明後日の方向を見ているような……どこか心此処にあらず、みたいな……
この違和感がなんなのか気にはなりますが、まずはお仕事が先です。
まずはお腹周りから揉んでいきます。
「くすぐったくない?」
「あ、平気ですよ。もっと力を込めても……ひゃっ!?」
「このくらい?」
「あは! あっははははははっ!!」
どうやら力を入れても良いと言われたので、もういっそ脇腹を擽ってあげました。
お腹に線が一本すーっと通っているような整った腹筋から、腰回りが括れています。その辺は評価すべきポイントなのですが……
夜一さんとか砕蜂とかを体験してしまった私としてはもう……
我ながら贅沢になったものね。
「それと最後に胸周りをちょっと揉むわね」
「え……!? む、胸もですか!?」
「ええ、勿論よ」
あたふたしている清音さんを余所に、彼女の胸元にそっと手を触れます。
うん、お手頃サイズですね。
このくらいの方が軽くて運動する分には良いと思います。
発育途上――じゃないわよね、
手の中にすっぽり収まるくらいの大きさ。
けれども確かに柔らかいです。
「ん……っ……!」
下からすくい上げるようにして揉むと、恥ずかしそうに小さく喘ぎました。
「恥ずかしいと思うけれど、我慢してね。形を整えたり、胸を大きくする効果があるから」
「お、おっきくですか!?」
「ええ……まあ……こ、個人差はあるけれどね……」
やたら食いついてきましたね。
やっぱり姉と比較してコンプレックスを少なからず感じてるんでしょうか?
反応が可愛いです。
「でしたらどうぞ! 思いっきりどうぞ!!」
と思ったら私の腕を取ってそのまま自分の胸に押し付けるようにして来ました。
もの凄い必死じゃない……
形も良くて柔らかいけれど、大きさという点では今ひとつよね。
美乳ではあるんだけれど。
とりあえず、不自然ではない程度に揉んでおきました。
おおきくなーれ、おおきくなーれ。
そして大きく育ったら、また私に揉まれに来てね。
「ふぅ……さて、これで終わりよ。最後にお風呂で油とかを流して貰うんだけど……って、清音さん!! どうしたのそれ!?」
マッサージは何事もなく終わり、さあもう終わると思った矢先。
気がつけばなんと、彼女は土下座をしていました。
「湯川副隊長の按摩を受けて、ようやく確信が持てました!」
「一体なんのこと!? と、とにかく頭を上げて!!」
「お願いです!! このお願いを聞いてもらうまでは、私は頭を上げられません!!」
お、お願い!? 一体何のことなの……!?
「どうかこの按摩を、浮竹隊長にも施してください! お願いします!!」
……は?
このまま何事も無く終わると思ったのに! 最後の最後で、とんでもない爆弾ぶち込んできたわねこの娘……!!
この子はどう扱えばよかったんでしょう? 私には答えが出せませんでした。
●虎徹清音
「浮竹隊長を慕っていて、なんかコンビでいるキャラ」くらいの認識。
「これだ!」という見せ場がないんですよね、この子。
(姉は卯ノ花隊長の最後とかで目立ってて可愛いんですが)
むしろオマケ漫画(カラブリとか死神図鑑とか)の方が目立ってる印象です。
浮竹と仙太郎がいないとイマイチ輝かない……というか輝かせられない……
ならもう、こうする(浮竹隊長を絡める)しかない。
(ちょっと追記)
この子、獄頤鳴鳴篇でエラい目にあってたんですね。
大変申し訳ございません。自らの浅学さを恥じるばかりでございます。
まさかリョナ枠だったとは……