忙しいです。
いえまあ、普段も忙しいんですよ。
これでも副隊長なので普通にお仕事がいっぱいあります。
そこに加えて趣味のマッサージを個人でやっているので、休日は大体潰れます。
あと、定期的に卯ノ花隊長と稽古したり自主的に修行もしてます。
なので休日なんてあってないようなくらい予定はあるんです。
ですが、最近はそれ以外にも用事が増えました。
例えば――
「おら
「一角、また来たのね」
「ちゃんと予約したろうが!! 時間通りだろうがコラァ!!」
「はいはい、わかったわよ……ごめんねみんな、
「テメェ、毎回毎回いい度胸だな……!! 俺を
とまあこんな感じです。
一角がやたらと挑戦してくるようになりました。お灸が効きすぎたんでしょうかね?
毎日ってワケではありませんが、大体週に一度くらいのペースで来ます。
無論、その都度返り討ちにしていますが……
でも段々と手強くなってきてますね。この辺は流石です。
ちゃんと強くなって、更木隊長を満足させられるだけの対戦相手になって、私から興味を逸らすのよ。
回復だけはしてあげるから。
あと、毎回毎回律儀に次回対戦の予約をしていきます。
最近なんてもう、回数が多すぎて「おい、
ホントに偶にですけれど、差し入れを持ってきたりするくらい馴染んでます。
他隊の隊士の中では、二番目に四番隊のことを知ってるんじゃないでしょうか?
え、一番?
そりゃ当然、浮竹隊長ですよ。
最近は元気になってますが、昔はよく来てましたから。下手な隊士よりも内情を知ってて救護技術もあります。
あの人の場合は全部実体験(受ける側)での知識ですけどね。
他にも――
「卍解!
おそば屋さんでの約束通り、砕蜂との修行を再開したのですが……
さすがに絶句しました。
知識としては知っていましたが……実際に目にすると良くも悪くも圧倒されますね…
始解は暗器みたいなサイズだったのに、卍解すると一変して巨大に。
金色をした単発式のミサイルランチャーみたいな形状になりました。
サイズも砕蜂二人分くらいはあって……
何コレ!?
個人でトマホークミサイルを撃つためだけの卍解なの!?
あ、でもミサイルのデザインはなんとなく蜂の針みたい。名残は確かにあるのね。
「ど、どうですか……」
「これが……砕蜂の卍解……なのね……」
なんて声を掛けたら良いのかしら……
事前に"馬鹿みたいな威力がある"と知っていたので、被害が出ないように流魂街の外れの外れ――私が卍解会得時に射干玉とバラエティ番組を延々とやってたあそこ――まで移動したのですが。
無言の続く中、人のいない原っぱに一陣の乾いた風が吹きすさびました。
「やっぱり駄目ですよね……隠密機動の総帥でもある私が、どうしてこんな派手な卍解を……」
「そ、そんなことないわよ!!」
ととと、いけません。
ここで砕蜂を落ち込ませてどうするんですか私!
あの時に愚痴を聞いたからこそ、改善のためにもまた一緒に修行をしようって誘ったんじゃないですか!!
「殲滅戦とかには向いているし、何より凄い威力なんでしょう!? だったら、その破壊力を見せつければ敵は萎縮して、味方は鼓舞させられるわ!!」
「ですけど……以前にもお話ししたように、一度放つと二日は休息が必要なくらい疲弊してしまって……」
「大丈夫!! 昔は半年に一回しか使えないくらい強力な卍解の使い手もいたのよ!!」
「は、半年に一度……ですか!?」
やっぱり、刳屋敷隊長のことなんて砕蜂は知らないか。
「ええ、あまりにも強すぎて瀞霊廷内では絶対に使うな! って厳命されたくらい強力なのよ。それに比べれば、二日くらいどうってことないわ!!」
「確かに……そのお話を聞いていたら、なんだかやれそうな気がしてきました!!」
こういうのは、勢いも大事です。とにかくやる気にさせないと。
「その意気よ砕蜂!! 卍解は覚えてからが本番! 更に修練を積んで使いこなせれば、大化けするわ!!」
「はいっ!! 頑張ります!!」
……ほんと、素直な良い子よね。
「で、ではその……私のことを抱き締めていただけますでしょうか……?」
「え? なんで……?」
「それはそのっ! 放つと反動が強すぎて、自分一人では吹き飛ばされてしまって……で、ですので!! 吹き飛ばないように
くっ! その上目遣いは反則でしょう!!
『ロリの頃から知ってる故、破壊力が抜群でござるな!! これが、雀蜂雷公鞭の真の能力!! 間違いないでござるよ!!』
「問題ないわ。手伝うって言ったのは私なのよ。しっかり受けとめてあげる」
『
当たり前でしょう? この身体で軽いとか有り得ないって。
「ありがとうございます!! よろしくお願いします!!」
「はい、これでいい?」
後ろからギューッと抱きしめます。
「(ああああああ柔らかいのが柔らかいのが一面に!!なんだか良い匂いもしてきました!!これはもう夫婦といっても間違いないのではないでしょうか?落ち着け落ち着きなさい私狼狽えない隠密機動は狼狽えない!!)では行きます! 雀蜂雷公鞭……発射!!」
ミサイルが天高く放たれて……うわ、すごい反動ね。
両脚に力を込めて全力で踏ん張ってるのに、ちょっと身体がグラつくわ。
そしてミサイルの方は飛んでいった先で大爆発を起こしました。これだけ見ると花火みたいでちょっと綺麗かも。
でもこれ、やっぱり個人で使う卍解じゃないわよね。
無策だと吹き飛ばされるくらい反動が大きくて、サイズそのものが巨大だから取り回しも不便過ぎる。
「ど、どうで……しょうか……」
おまけに一発撃つだけでこんなに疲れるんだもの。
大粒の汗を幾つも浮かべ、肩で息をしながら聞いてきた砕蜂の顔を見ると、疲労具合がよくわかります。
始解と卍解で遠近両用、個人も不特定多数も殺せる万能型と取るべきか。はたまた、マクロとミクロにそれぞれアホほど振り切った両極端な能力と取るべきか。
判断に悩んでしまいます。
「とりあえず、霊圧を回復させるわね」
「ん……っ!
「霊圧が回復して身体も落ち着いたら、もう一度撃ってみましょうか? 卍解を制御できるように意識しながら、ゆっくり焦らず続けていきましょう」
結局この日は、空に何発ものミサイルが打ち上がりました。
成果は、ちょっとだけありました。ミサイルを二連装に出来ました。
あとは――
「おっ、丁度良いところにいるじゃねぇか!
「え、ちょっと更木隊長!? あの、私まだ仕事が!!」
「いいから来い! 一角とはやり合ってんだろうが!!」
「あ、あいりんだ! 来てくれたんだね!! あいりんの所の隊長さんからも、誘ってあげなさいって言われてるんだよ!!」
「ちょ、ちょっと卯ノ花隊長!? どういうことですかそれぇぇ……!!」
……うん、まあ……その……怪我はなかったわよ……お互い……
『回道で治してしまいますからなぁ。それにザラキーマ殿も力尽きる寸前で見逃してくれるのですから、ありがたいと思っておきましょう!!』
でも更木隊長も凄いわよね。
私と闘うためだけに、十二番隊に"絶対に壊れない木刀"を作らせるんだもの。
確かにアレなら斬れないわよ。
斬れないんだけど、硬いから物凄い痛い……
あともう一つ。
更木隊長がアホほど強い理由がなんとなくわかったわ。
ううん、頭ではわかっていたはずなんだけど。身をもって思い知ったというべきかしら?
あの人は、戦いを心の底から楽しんでるんだもの。
好きこそ物の上手なれ、を地で行ってるのよ。
愉しい戦いの為なら死んでも良いって常日頃から微塵も疑ってない。
霊圧の底が見えないくらい高いから、強いんじゃない。
罪悪感の一切無く戦って、躊躇うこと無く相手を傷つけて自分も傷つけられるから強いのよ。
仮に更木隊長と同じだけの霊圧を持った死神がいても、そいつが虫も殺せないような性格だったら恐怖なんて微塵も感じないでしょうね。
反対にこの人は、仮に自分が最低クラスの霊圧しかなくっても嬉々として戦い続ける。
間違いなく、ね。
むしろ自分より強い相手が大勢いるって大喜びするに違いない。
だから強い。
そんな相手が、たまたま霊圧まで高いんだから……嫌になるわよね。
それと。
更木隊長からこんな風に誘われることが多くなった代わりに、卯ノ花隊長との稽古の時間は減ってるわ。
なんでかしら?
――とまあ、こんな感じ。
正直に言って、自分のためだけに使える自由な時間がかなり少なくなってるのよね。
うう、もう少しでいいから時間が欲しい……
『ですが、こんなことを言うと更に忙しくなるフラグが立つわけでござるよ!!』
止めて! 言わないで!!
『無理でござるよ! このメタい現象については、探蜂殿の大手術をした際にも経験しているでござるでしょう!?』
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「あぁ!? 四番隊の言うことを聞けって言うのか!?」
「そ、そうです!! 外ではともかく、ここでは言うことを聞いてください!!」
綜合救護詰所内の一角から、そんな声が聞こえてきました。
「ふざけんな!! 前線に立たない雑魚の四番隊なんざ――」
「四番隊なんざ……? なに、どうかしたの?」
威勢良く言っていた彼の口が、突然止まりました。
私がちょっと、彼の頭に手を置いて――更木隊長と全力で斬り合いしているときの霊圧を放って思い切り威嚇しつつ――尋ねただけなのに、どうしたんでしょうか?
まるで大病を煩ったかのように全身を真っ青にして、額からは滝のように脂汗を流しています。生まれたての子鹿のように膝を震わせるその姿は、今にも倒れてしまいそうなほど心細いものでした。
「あら、病気かしら? 私が看病してあげましょうか? ――付きっ切りで」
「……ヒッ!!」
「あ、ああああああ
そっと耳元で囁いてあげれば過呼吸でも起こしたように呼吸を乱し、そこに慌てて十一番隊の隊士の子が割って入ってきました。
「俺の方からよーく! よぉーーーっく言って聞かせますから!! ですからどうか!! どうかご容赦を!!
「せ、先輩……!?」
床に額を擦り付けて謝る先輩隊士の姿に、目を白黒させています。
一部の隊士は私のことを
このやりとりといい、十一番隊って何時からヤのつく自営業に転職したのかしら?
「まあまあ、頭を上げてください。私もちょっと強く注意しただけですから。後の事はそちらにお願いしますね」
「はいっ! お任せください!! ……オラっ!! お前、こっちこい!! 謝れ!! 頭を下げて謝るんだよ!!」
「な、なんでですか!?」
「良いから! 謝るのと更木隊長に殺されるのと斑目さんにぶっ飛ばされるのどれがいいんだコラァ!? 俺の責任問題にもなんだぞゴルァァッ!!」
とまあこんな感じのやりとりが、少し前からチラホラ見られるようになってきました。
十一番隊に殴り込んで"誠意ある説得"をしたのも、今は昔。
年月が経過して新人隊士が入ってくれば、その子たちはあの大騒動を経験しておらず。それどころか、知らない子もいます。
そういう子の躾が行き届いてないみたいです。
なので、今日みたいなことが起きたりします。
当時のことを知らない子が調子に乗ってしまうんですよ。
大抵の場合は"私が脅して素直になる"か"先輩隊士が止める"の二択です。
前に一角が挑戦の予約に来てる時に調子に乗ってるところを見つかった隊士がいたけれど……あの子どうなったんだっけ?
泣きながら土下座して謝ってきたのを治療してあげたのまでは覚えてるんだけど……
とにかく、一度教育を受ければ時と場合と場所を弁えてくれるんですけどね。
「副隊長、ありがとうございます」
「平気平気。それよりもしっかり言い返してて偉かったわよ。あとで何か奢ってあげましょうか?」
「そ、そんな。それは副隊長がいてくださったからで……」
「しかし、じわじわ目に付くようになってきたわね。新人隊士の数が多くなると教育が行き届かなくなってくる……当たり前だけど」
「そうですね。せっかく副隊長が頑張ってくださったのに……」
「いっそ、霊術院時代から教育した方が良いのかも知れないわね」
「
あのやりとりから一ヶ月くらい後。
朝のお仕事を開始する直前、隊長から突然そんなことを言われました。
――特別任務。
この言葉を聞いた途端、猛烈に嫌な予感しかしませんでした。
「……あの、隊長……その特別任務というのは一体……?」
「百聞は一見に如かず、と言います。まずはこれを読みなさい」
そう言いながら隊長はなにやら書類の束のような物を差し出しました。
……って、前にもやったわよこの流れ!! 手抜きなんじゃないの!?
「は、はぁ……一体何が……?」
前は手紙だったなぁ、と思いながら書類を読んでいくと――
「隊長、これは有り得ないです。辞退させてください」
「駄目ですか?」
「駄目です! いくら何でも断固抗議させていただきます!!」
書類に記載されていた内容を要約すると「卯ノ花隊長から推薦を受けたから、霊術院の非常勤講師として働いてね。現役隊士の指導が新入生たちの良い刺激になることを期待していますよ」といった物でした。
つまり、霊術院で働けということです。
毎日ではないとはいえ、定期的に授業をしろってことです。
この自由時間が無いとぼやいている中で、更に仕事を増やされたわけです。
ありえませんよ! 大体教員免許なんて持ってませんし!!
『ちなみに、まだ
そういう意味でもないのよ!!
「そもそも、どうして教員になんて推薦したんですか!?」
「少し前に言っていたでしょう? 新人は霊術院時代から教育した方がいい、と」
「ああああああっ!!」
思わず天を仰ぎます。
言いましたよ!! 確かに言いました!!
でもそういうことじゃないんですよ!!
大体アレって隊長はまったく絡んでなかったじゃないですか!! 一体どこから聞きつけたんですか!! ネタの振りが雑になってきてない!?
ああ……もうこれからは貝のように口を閉ざして生きた方が良いのかしら……
『酒と熱を加えれば簡単に開きますな! あ、バターとかも捨てがたいでござる!! ボンゴレビアンコなども……これは迷いますなぁ!!』
くっ! コイツはコイツで他人事だと思って……!
『グフふふっ! ザクくくっ! ドムむむっ! ゲルググぐっ!
世界一甘いって噂の甘味料じゃない! アレよりも甘いってどういうことよ!?
『非常勤とはいえ、霊術院の講師になるということは! うら若き女学生と永続的に触れ合えるということではありませぬか!! 向こうからホイホイやってくる乙女を誑かし放題でござるよ!? キャッキャウフフし放題を見逃すなどありえませぬぞ!!』
「……やります」
「は?」
「申し訳ありませんでした、卯ノ花隊長! 不肖、湯川
「が、頑張ってくださいね」
突然すぎる手の平返し。そのくるくるっぷりには、卯ノ花隊長もドン引きですね。
「新入生の皆さん、霊術院へようこそ」
あれからしばらくの間、霊術院側と細かい授業形態や教育内容などを打ち合わせました。授業準備は多分万全になりました。
やがて春が訪れ、霊術院に新入生たちが入ってきました。
「私は今年から非常勤講師を務めます、
学院生たち全員が入る大講堂にて、壇上に立った私は全員に向けてそう挨拶します。
一度言葉を切り、端から端までざっと見渡して全員の顔を軽く見回せば、皆さん初々しい方ばかりですね。
「さて――……さっそくですが皆さんには、私と殺し合いをして貰います」
大講堂中が、一斉にざわつきました。
『ところで
え、女教師といったら眼鏡でしょう? だから買ったのよ。
何か間違ってた?
『異議なし!! でござる!!!!』
●眼鏡
タイトル通りです。ですが最も重要な要素です。
【挿絵表示】
(あとは何が必要ですかね? 黒スト?)
●いきなり教師って、ありえないでしょ?
気にしないでください。
あの藍染さんも眼鏡掛けてた頃は、霊術院で特別講師として講義とかしてます。
藍俚の場合はそれがちょっと、定期的で長期間になっただけです。
●雀蜂雷公鞭
鍛えれば多連装ミサイル砲くらいには出来ると思います。
蜂が大群で刺す、みたいに。
ミサイルポッドから大量のミサイルが板野サーカスで敵に襲い掛かる。
あと頑張ったらスナイパーライフルとかも出来ると思います。
根拠はありませんが"残火の太刀でゾンビ復活!"よりは現実的だと思います。
……でもミサイルポッドにすると一撃必殺からはかけ離れますね……