「ズルいです!」
「な……何が……?」
一角・阿散井君・吉良君・更木隊長と死闘を繰り広げてから数日後、雛森さんに突然詰め寄られました。
壁を背にしているので逃げられず、しかも彼女は頬を膨らませて恨みがましい目で睨みながら"私不機嫌です"と目一杯主張しています。
『これが俗に言う壁ドンでござるな! なんでも代行のバイトもあるとか!!』
……それ、何か違うのが混ざってない?
「先生は先日、吉良君たちと一緒に稽古をしたと聞きました」
「え、ええ……」
「その後で、吉良君を家に泊めたとも聞きました」
「すごく疲れてて、寮まで持たなそうだったから……」
「ズルいです!!」
「何が!?」
「私も先生と一緒に稽古したりお泊まりしたいです!」
……え! それが理由なの!?
『ちなみに、先日
……それ、私知らないんだけど。
『知らぬは亭主ばかりなり、と昔から言うでござります!!』
えーと……とにかく、それが不機嫌の原因だったら……
「じゃあ、雛森さんも吉良君みたいに稽古する?」
「はい! お願いします!!」
さっきまで不機嫌そうだったのに、一瞬で満開の笑顔になったわ!
なにこの可愛い生き物!!
やっぱり藍染なんかに絶対渡さない!! この子はウチの子!!
曇った笑顔が似合うとかそんなの知らない!!
『異論は認めないというやつでござるな!! 拙者も応援させていただきますぞ!!』
ええ、お願いね射干玉!!
『がんばれ♥ がんばれ♥
ホントに応援だけ!?
さて、吉良君のように稽古とは言いましたが。
まさかあの更木隊長と一緒に楽しいお稽古なんて不可能です。この子には刺激が強すぎて気絶するかも知れません。
なのでぐぐっとグレードを落として、私と一緒にお稽古です。
場所も流魂街から離れた原っぱです。
「ごめんなさい。吉良君たちのと比べてなんだか貧相になっちゃって……」
「いえ、そんなことはありません!!」
非番の日の予定を合わせて、二人だけのお稽古の時間ですよ。
「先生と一緒にいられるだけで、私幸せです!!」
「そ、そう……」
私がいうのもなんですが、もっとこう……あるんじゃないですかね? 非番の日の過ごし方が。年頃の娘さんなんだからさぁ!!
慕ってくれるのはとってもとっても嬉しいんですけどね。髪型もずっと私とお揃いにしてくれちゃって! ちょっと気恥ずかしいけれど嬉しいじゃない!!
「じゃあ、まずは基礎となる霊圧を向上させる特訓から。その後は――」
「その後は!?」
「鬼道や歩法を重点的に鍛えましょうか。剣や拳は、雛森さんは苦手な部類だからね」
雛森さんに阿散井君と同等の剣術を覚えろ、みたいなのはかなり難しいです。そこまで到達は不可能ではありませんが、肉弾戦は体格も結構重要なので。
……
なので彼女には技巧面や正面からではない戦い方を伸ばしておきましょう。
ただ、訓練メニューを告げた時になんだかちょっとだけ残念そうな顔をしたのは何故かしら?
「破道の三一 赤火砲」
たった一つの詠唱で、十を超える火炎を撃ち出して見せます。
空へ向かい放たれた無数の火球を、雛森さんは口を開けたまま呆然と見送っていました。
「どうかしら? これが、疑似重唱。鬼道に霊圧を編み込むことで、複数回詠唱したのと同じ効果を発揮させるのよ」
「……すごいです……」
「霊術院生には、危なっかしくて教えられないのよね。只でさえ霊圧の消費が大きくなるし、失敗すると暴発して最悪命に関わるから」
「そうなんですか!?」
「でも雛森さんは霊圧の制御も上手だし、そこまで難しくはないはずよ。じゃあ、まずは一桁台の鬼道からやってみましょうか?」
そう告げると、素直に疑似重唱の練習を始めました。
しかし流石ですね。これで今年霊術院を卒業したばかりとは思えないくらい上手よ。
……私、あっと言う間に追い抜かれないかしら?
「そうそう、そうやって歩法を」
「こ、こうですか?」
「うーん……ちょっと違うわね」
続いて歩法の稽古です。
砕蜂から流出した隠密機動の技術をちょっとだけ。気付かれにくくなるような歩法を教えています。
こっちも鬼道や霊圧制御に関連する技巧なので、雛森さんにはそこまで難しくはない……はずなんですが……
「こうですか?」
「そうじゃなくて、こうやって……ちょっと失礼するわね」
彼女に身体を密着させて、動きのお手本を教え込みます。
ちょっと窮屈だろうけれど、我慢してね。
「こうでしょうか!?」
「それだと出掛かりで気付かれるから、もっと優しく……こうやって……」
なんでこんなに失敗してるんでしょうか?
『失敗すれば密着して教えて貰えるでござるよ』
……え? それが狙いだったの!?
この子ってば案外、したたかなのね。
「ほらほら、雛森さん。はやく治してくれないと私、死んじゃうわよ」
「はいっ! もう少々お待ちください!!」
ついでなので、回道も実地訓練をさせます。
やり方はとっても簡単。怪我人を用意して、それを治すだけですよ。
卯ノ花隊長にさんざんやらされました。
隊長の時と違って、怪我をするのは私ですけどね!!
雛森さんをぶった切って「早く治さないと死にますよ」みたいな真似なんて出来るわけないじゃない!!
自分で自分を斬って、怪我を治させています。
『自分の怪我を治せないと他人の怪我など治せないという理屈を無視しておりますし、あなたのせいで私は死んでしまうかも知れない。と精神的に追い立てているので、ある意味では
……なるほど。そういう捉え方もあるわね。
だからさっきから、雛森さんは泣きそうな顔をしてるのね。
大丈夫よー、このくらいで瀕死になってたら私、とっくの昔に死んでるから。
「もう日も暮れそうだし、今日はここまでにしましょうか」
「はい……」
雛森さんは大分お疲れみたいね。
「……んー……ごめんなさい、雛森さん。ちょっとだけ、寄りたい所があるんだけど良いかしら?」
「寄りたいところですか?」
「疲れているところに申し訳ないんだけど、久しぶりに流魂街まで来たからついでに顔を出しておこうと思って。あ、雛森さんが嫌なら帰って貰っても全然構わ――」
「行きます!」
「――ないんだけ……そ、そうなのね……」
ホント、ぐいぐい来るわね。
ということで、疲れた身体を引き摺って移動する雛森さんを連れて北流魂街は一地区にある、おなじみのお店に。
「こんばんわ」
「……あっ!! 湯川のねーさん! 珍しいですね、来て下さるなんて!!」
「今日はちょっと流魂街に来ていたから。久しぶりに顔を出しておこうと思って。二人分なんだけど、席は空いてる?」
「勿論でさぁ!! ささ、どーぞどーぞ!!」
皆さんは覚えてますかね?
寄ったのは、私がまだ霊術院にすら入れなかった頃――
大将にも女将さんにも大変お世話になりました。
『まだ拙者が
お腹の中とか言わない!!
……こほん。
とはいえお世話になっていたのはずーっと昔のこと。
さすがに時間が経ちすぎていて、もうあの二人はいません。
とっくに現世へ転生しました。
ただお店だけはずっと残っていて、徒弟制みたいに弟子入りした方が代々継いでいってます。
今のご主人は、私がお世話になっていた頃から数えて……八代目だったかしら?
とにかくお世話になったお店なので、こうして死神になってからもちょくちょく顔を出したり出さなかったりしています。
ただ、大将と女将さんの死に目というか、別れる時に立ち会えなかったのだけがちょっと心残りですね。流魂街の人が現世に行くのまでこっちには知らされませんから。
――ということを、雛森さんにも説明しました。
「先生の原点みたいなお店なんですね……」
「でも雛森さんにもあるでしょ? そういう場所が」
「そうですね。私は西流魂街の
「
「はい! 皆さん、良い方ばっかりで――」
「おおっ! ホントだ、湯川の姐さんだ!!」
「いいから来いって!! 湯川さんだぞ!!」
彼女の話を遮るように、お店に続々と人が集まってきました。
さっきも言ったようにちょくちょく来たり来なかったりしてるので、もうすっかり顔馴染みというか。私がいるとき限定ですが、死神を前にしても自然体で接して来ます。
「姐さん! 今日こそ俺の酒を呑んで下さい!」
「だから私はお酒はやらないって言ってるでしょ!」
「姐さん! 結婚してください!!」
「そういうのは他に相手を見つけてください!」
「ありがたやありがたや」
「拝むのならせめて私の目を見なさい!! 顔よりも下に視線が行ってるのが丸わかりなのよ!!」
……ね? 自然体でしょう??
「ごめんね雛森さん。うるさくしちゃって……」
「いえ、そんなことは――」
「ああっ! こっちにもべっぴんさんの死神が!!」
「ホントだ!!」
「ひっ!」
「はいはい、囲まない! この子は
「おお新入りさんか! 頑張ってくれよ!! まま、お近づきの印に一杯!」
「ズルいぞ! 俺も一杯おごらせてくれ!! さあ遠慮せずに!」
「え、え……!?」
「コラっ! 無理に呑ませないの!!」
「いえ大丈夫です。せっかくですし、私も少しくらいなら……」
「良く言ったお嬢ちゃん! 湯川のねーさんは酒をやらないのだけが欠点だ!!」
……大丈夫かしら……
「えへへー……お空がぐるぐるしてます……」
「そうねー綺麗ねー」
案の定、彼女はベロンベロンになってしまいました。
完全に出来上がってしまった雛森さんを背負いながら、帰路に就いています。
帰りしな、斷蔵丸師匠に「私の娘です」と冗談を飛ばしたらとんでもなく驚かれました。こんなこと言うなんて、私も雰囲気に酔っちゃったかしらねぇ……
『(お酒の匂いを近くで嗅ぎまくっていたので、それでかなり弱ってるだけでござるよきっと……)』
そんなこんなで自宅に戻りました。雛森さんを背負ったままで。
「おーい、雛森さーん。起きてる?」
「ふにゃああ……」
まだ正気に戻りませんね。
「これ、このまま寝かせるのも問題よね……女の子だもんね。大汗かいて、汚れたままっていうのは問題よね」
昼間はずっと稽古してましたからね。汗がだくだくです。
明日は普通に日常業務もありますし、そこで汗臭い子とか有り得ないわよね。
だってウチは四番隊! 清潔でいる義務がある!!
一応、稽古を終えてから川の水と手拭いで軽く洗いはしましたけれどね! ちゃんと洗わないとね!!
「だからこれは不可抗力! 上司として当然の行動よね!」
ふふふ、ちゃーんと隅々まで洗ってあげるわね。
『グレーゾーンの匂いがするでござるなぁ……』
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「はい、まずは腕から洗うわね」
「ふぁい……」
すっごく眠そうな雛森さんをお風呂場に連れ込み、身体を洗います。
当然私も彼女も裸です。
そしてちゃんとスポンジにボディソープで洗っていますよ。
腕から肩、そして脇の下は特に念入りに。
「えへへ……くすぐったい……」
敏感な脇の下を丁寧に洗っていくと、少しだけ恥ずかしそうに身を竦めました。
そしてその振動で、胸元がふるんと揺れます。
身体も小さめで幼い印象を受ける雛森さんですが、これでなかなか……
おっぱいが大きいのよね。
というよりも、大きく見える。と言うべきかしら?
身体が小さいから、相対的にこう……
乱菊や勇音は文句なしに大きい! でもそれとは違う、細身だからこその……こう……わかるでしょう? 言わんとしていることは!!
「はい、次は胸元よ」
ほんのりと日に焼けかけた白い肌が、泡に包まれています。大事なところを隠すように泡にまみれています。けれども、見えないからこそ想像の余地があって、興奮を煽りますね。
そんな想像でしか補えなかった部分に、遠慮なく手を入れます。
正面から鷲づかみにするようにして……
あら、あららら。
見ていてわかったけれど、これは中々のボリューム。
ふっくらとしていて、それに若い子特有の肌の張りがあるわ。
これは汗をかいて汚れるわね!
谷間とか! 下乳の部分とか!
だからちゃんと念入りに洗ってあげないと!
遠慮しないでね、サービスだから!!
「や……っ……! ふあ……あぁ……っ!! せ、先生……」
「ごめんなさい、力が強かった? 痛かったかしら?」
「そ、そうじゃなくて……ん……っ!!」
え? 変なことをしてるんじゃないかですって?
失礼ね! 天辺の辺りを指先で丁寧に洗ってるだけよ。
垢や汚れが溜まると問題だから。
「それからおへそも綺麗にしましょうね」
「ひゃあっ……! やっ、先生……! そこは駄目ですってばぁ!!」
本当にこの子、スタイルもいいわよね。
お腹からおへそまでがすーっと一本線みたいになってて。
腰周りも、肉付きは薄いんだけれどちゃんとあって、それがこの子の魅力を増大させているのよね。
もう少しで女になるのが手に取るように分かるっていうか、男が「この
……結構この子、魔性よね。
特に声が。
なんでこんなにドキドキさせられるのかしら。
「はい、次は足よ。指の間も一本一本丁寧に洗うから。くすぐったくても我慢してね」
「あはははははっ! む、無理です先生っ! く、くすぐったい!! あはははっ!!」
なんだか胸の高鳴りを抑えられなかったので、一旦小休止の意味を込めて。
足の指の間を丁寧に擦って、足裏は指圧も込みで綺麗にして気持ちよくしてあげて、そのまま臑から膝の裏、太腿へと手を伸ばします。
「雛森さんって、足が綺麗よね。こっちも丁寧に洗ってあげるわ」
「あ……だ、駄目です……先生、駄目ですってばぁ……っ!!」
太腿もむっちりする直前――脂が乗って色気が出てくる直前というんでしょうかね。
良い感じに太くて、それが逆に心に火を付けてきます。
はいはい、こっちも丁寧に洗ってあげるからね。
特に今日は歩法をみっちりやったから、足が随分疲れたでしょう? 指圧とマッサージ込みでよーく解しておいてあげるわ。
手で直接触れるとまた一段とよく分かります。
少女と女の中間みたいな感触が……それがこの吸い付くような肌と合わさって、ずっと撫で回したくなるわね。
もうスポンジとか忘れて、素手でたっぷり洗ってやったわ。
そして最後に……
「ふああぁ……っ……! せ、先生! そこ、そこは駄目、本当に駄目ですっ……! んん……っ!!」
両脚の付け根の部分をゆっくりと撫でるように洗います。
お尻はちょっと小さめだけど、ある程度の存在感があって洗っていると飽きなかったわ。
そのままお尻から添うようにして、彼女のツルツルな――……うん、駄目ね。
これ以上はアウトだわ。ちゃんと表現しようと思ったけれど、これはアウト。
ただ、ちゃんと念入りに洗ったのだけは伝えておくわ。
ん? これって……うん、これはボディーソープね。
ちょっとボディーソープが漏れてきただけよ。
さて、これで終了。
雛森さんも疲れているみたいだし、お布団を敷いてさっさと寝ちゃいましょう。
夜中に急に起きたら心細いでしょうし、万が一に備える意味でも並んで寝ましょうか。
「~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
夜半過ぎ、雛森は布団を頭まで被り声にならない声で身悶えしていた。
よく「酔うと記憶を無くすタイプ」や「前後不覚なくらい酔ってもしっかり覚えているタイプ」がいると言うが、彼女の場合はどうやら後者だったようだ。
風呂場でじっくりたっぷり念入りに洗われた、その一部始終をしっかり覚えており、酔いが冷めて意識がハッキリした途端、その時の感情が一気に襲い掛かってきたようだ。
「うう……どうしよう、もうお嫁に行けないよぉ……」
同性――実情はともかく――同性相手とはいえ、あれだけ好きにやられたのだ。
顔は耳まで夕日のように真っ赤に染まり、その時のことを思い出すだけで、恥ずかしさと同時に何故か得も言われぬ興奮が湧き上がってくる。
ただ、同性として。目指すべき指標として憧れていただけなのに。
この気持ちは一体なんなのだろう――そう自分に問いかける。
「せ、先生がいけないんですからね……! こ、このくらいは……」
自己弁護のように自分に言い聞かせると、彼女は隣で眠る女性の頬に唇を押し付けた。
まるでこの人が自分の物だと主張するかのように、強く強く。
刻印を残すかのように。
酔った人間をお風呂に入れるのは止めましょう。
血行が良くなって更に酔います。
●雛森
休日なのに上司にしごかれて一日潰す。
休日なのに上司の行きつけのお店に連れて行かれ、酔い潰れる。
休日なのに上司の家に泊まらされる。
休日なのに上司に丸洗いされる。
……こうやって書くとロクでもないですね。
●雛森の声
単純に私が、なんかエロく感じたので。
(なんだったら乱菊とかよりもずっと)