お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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困った時のアニメ版


第94話 都さんを嫁にしたい

 霊術院で"天才"と持て囃されていたあの小さい小さい小僧は、十番隊へ行きました。

 びっくりしたわぁ……アレって日番谷冬獅郎だったのね。そんなこととは露知らずに「アンタがもっとしっかりしてれば雛森さんはあんなことにならなかったんじゃないの!」とか思いながらシゴいちゃったわ藍俚(あいり)ちゃん失敗失敗テヘペロ。

 

『カケラも悪いとは思ってないでござるな……』

 

 

 

 

 ま、そんな子はどうでも良いの。

 

 

 

 

「十三番隊から緊急連絡です!! 隊士の一人が容態不明となり、直ちに応援に来て欲しいとのことです! 繰り返します! 十三番隊から――……」

 

 四番隊でお仕事をしていると、緊急入電のアナウンスが入りました。

 

 ……うん、ちょっと違和感を覚えるかも知れないけれどね。でも技術は発達してるので、こういう設備もあるんですよ。連絡が来て隊内に周知のアナウンスする設備とか。

 いつまでもずーっと江戸時代みたいな技術水準じゃないのよ。十二番隊だけが突出して凄い設備いっぱい持ってるように思うけれど、それ以外の隊も持ってるのよ。

 

 それはそれとしても。

 

「十三番隊、かぁ……」

 

 そろそろ当たり、かしらね?

 

 前にも言いましたが"海燕さんがなんだかこう、大変なことになる事件"が起きることだけは覚えていました。ですからこうして、十三番隊に異変が起きる度に注意を払っています。

 まあ、大概が外れ。

 海燕さんとは全く関係ない事件なんですけどね。

 

 ルキアさんに「海燕さんが危険そうな任務を請け負ったら連絡して」って言えれば楽なんですけどね。でもそんなこと言えるわけないじゃない!! それとなく「いつでも連絡してね」と伝えるくらいが関の山だったわ。

 なので小さい出来事であっても首を突っ込んで確認しています。

 

「出動はどの班? 私も行くわ」

「え!! 副隊長もですか!?」

「容態は不明なんでしょう? 万が一があってからじゃ遅いのよ?」

「わ、わかりました! おーい、副隊長も一緒に行ってくれるって!!」

「え!? 副隊長も!? じゃあ人数は少なくて良いな?」

「容態不明が一人って話だから、二人付ければいいか?」

 

 出動準備をしている子たちに声を掛けて、強引に同行を取り付けます。

 権力によるゴリ押しってやつですね。

 

「おや藍俚(あいり)、また出動ですか?」

 

 出掛けに卯ノ花隊長に呼び止められました。

 うーん……最近ちょっと出張るのが多くなってるから、不審に思われてますかね?

 

「はい。何もなければ隊士の子たちに任せてすぐに戻ってきますから」

「十三番隊といえば、あなたが気にしていた朽木家のあの子が入隊していましたね。月並みな言い方ですが、あまり特定の相手に入れ込みすぎるのはよくありませんよ?」

「……?」

 

 ……あ、そういうことですか。

 

 ちょっと前の"朽木緋真様ご出産おめでとうございます"からこっち、私は"朽木家に尻尾を振る犬"みたいな目で見られることもあったりしました。

 そんな時期に十三番隊へ多めに顔を出す――ルキアさん繋がりで、何かよからぬことを考えているのではないかと思われてもしかたないかもしれません。

 

 こういう忠告をちゃんとしてくれるのも、隊長なんだなぁって思います。

 

「別にそういうつもりはありませんよ。節度は弁えているつもりです」

「ならばよいですが……」

「ご心配頂き、ありがとうございます。それでは行って参ります」

 

 隊長らに見送られながら、十三番隊へ向かいます。

 外を見ると、もうほとんど日が沈みかけていました。何事もなくっても、戻りは夜になっちゃうかしらね。

 

 

 

 

 

「あれ、先生!? 先生が来て下さったんですか!?」

 

 十三番隊の隊舎へ行ったところ、ルキアさんが出迎えてくれました。

 

「容態不明と聞いていたので、万が一に備えて。それで、患者はどこに?」

「こちらです!」

 

 彼女に案内されて向かった先には――

 

「湯川、か? なんでここに!?」

「海燕さん。いえ、連絡があったので」

「なに!? 誰だ、四番隊に連絡を入れたのは!?」

「わ、私です……」

「まあまあ、浮竹隊長。そう怒らないであげてください。これも四番隊の仕事ですから。ルキアさんは何にも悪くありません」

 

 いや、本当に。怒らないで。

 彼女は最高に良い仕事をしてくれたんだから。

 

 思わず抱き締めてキスの一つでもしたくなる気分よ。

 なんだっけ、こういうときに言う言葉……エサクタ! だっけ?

 

『(exacta(エサクタ)は"正解"でござるなぁ……多分、suerte(スエルテ)を"ラッキー"と言っていたアレのことでござりましょう……)』

 

 

 

 一室に寝かされていたのは、志波(しば) (みやこ)さんでした。

 

 

 

 都さんとは、顔を合わせたことがあります。

 話もしたことがあります。

 なんだったら回道を掛けたこともあります。

 丁寧な喋り方と柔らかい物腰で、男だったら話をしただけで大抵はコロっと行きます。

 死神としても強くて、十三番隊の三席なんですよ。

 ルキアさんが「先生とは違うタイプですが凄い人です。憧れます」みたいなことを嬉しそうに言ってました。

 

 そして海燕さんの所に嫁入りしてます!

 奥さんなんですよ!! 人妻ですよ!! だから志波の姓なんですね!!

 くーっ! 同じ職場で同じ部隊で、しかも副隊長と三席とか!!

 なにそれ羨ましい。

 というか夫婦のイチャコラ現場を見せられる十三番隊の人、可哀想……

 

 そんな都さんですが!

 

 私……この人をマッサージしたことないんですよね。

 ほら、前に空鶴をマッサージした時を覚えてるかしら?

 あの時は最終的に、夜一さんと一緒に三人で正座させられてお説教されたでしょう? あれから海燕さんのガードが堅くなって。

 都さんとの接触は握手くらいが関の山でした。

 

 ……くっ!! あんな包容力と母性の塊のような人のおっぱいを揉めないなんて!!

 

『拙者も都殿を見ているとムラムラしてくるでござるよ!! ああ、海燕殿が羨ましい!! あのお尻を思う存分に揉んで揉んで揉み倒してやりたいでござる!!』

 

 と、こういうことを考えるから、警戒されてるんでしょうね。

 自分の嫁だもんね。自分で守らないとね。

 

「……要救護者は、都さんですか?」

「ああ、そうだ」

「えっと、何があったんでしょうか?」

「それについては俺が話そう。実はだな――」

 

 海燕さんに代わり浮竹隊長がお話してくださった内容によると。

 

 ちょっと面倒な(ホロウ)を見つけたらしく、都さんたちに先行偵察の任務が与えられた。

 今日の朝早くに出発して、異変が起きたのはその日の夕方。

 都さん一人だけが戻ってきた。他の者は不明だが、おそらく全滅したと思われる。

 十三番隊で医術の心得のある者が軽く都さんを診たが、怪我はしているものの命に別状はない模様。

 ただ意識不明で目を覚まさない。

 

 そこに"ルキアさんが一応念のためにと四番隊を呼んだ"の一文が追加されるわけです。

 彼女が四番隊(ウチ)に連絡を入れた時にはまだ都さんの容態は不明でしたし。

 

「なるほど」

「あの副隊長、なら僕たちは来なくてもよかったんじゃ……?」

「そうですよ。特に大きな外傷もないようですし、後は十三番隊に任せましょう」

 

 一人納得している私と対照的に、部下の子たちがおずおずと申し出てきました。

 

 ええ、気持ちは分かるわ。

 本来なら私たちの出番なんてないもんね。とっとと帰りたいわよね。

 

 でもね、偵察に出ていたのにこの程度の怪我で戻ってきたって変じゃない?

 都合良く意識不明っていうのもおかしくないかしら?

 

 仮に応援を呼びに戻って来たとしても、三席の彼女が来るかしら? 都さん、責任感も強いし上位席官よ?

 部下が応援を連れて戻ってくるまで残って時間を稼ぐとかしそうなんだけど?

 なにより強い(ホロウ)と戦ったなら、もっと酷い怪我くらいあるでしょう?

 

 つまり、端的に言って怪しすぎる。

 調べないという選択肢はありえないわね。

 

「一応、私も診ておくから。それから帰りましょう」

「何も無いと思いますよ」

 

 彼女を診た十三番隊の人がそう言いますが……

 さてさて、鬼と出るか蛇と出るか。

 彼女の身体を調べて……

 

 …………

 

 ま、まあ記念だからね。診察しつつ軽いお触りくらいはしておきましょう。

 彼女の胸元に手を翳して、霊圧照射で探りながら、ついでに軽く鷲づかみ……おお、これはなんと。大きさはそこそこだけど、なんとも上品なお山で……――って!!

 

「ッ!!」

「なんだ、どうした!?」

 

 しくじった!! 油断してたわ!!

 こんな分かり易い反応しちゃうなんて、私も人のこと言えないわね!!

 

 ……いたのよ、内側に。大きな異物が!

 (ホロウ)が潜んでいる!!

 気付いた瞬間、思わず電気に触れて弾かれたみたいな反応しちゃった。

 

「皆さん下がって!! 海燕さん、すみません!!」

「は? そりゃどういう……」

「縛道の三十! 嘴突三閃(しとつさんせん)!!」

「おい湯川!! おまえ何やって――」

 

 制止の声を上げながら私の肩を掴んで止めようとしてきましたが、それを無視して縛道を放って動きを止めようとします。

 

「ちぃっ!!」

 

 ですが今まで気を失っていたはずの都さんが勢いよく身を起こし、縛道から逃げました。

 その身のこなしと反応速度は、とてもではありませんが今この瞬間に意識を取り戻した人のそれではありません。

 もっと前から、外部の様子をつぶさに窺っていなければまず不可能です。

 

「都!?」

「都殿!?」

「なんだ!? 何が起こっている!?」

 

 十三番隊の面々は混乱の極みのような反応ですね。

 

「都さんは(ホロウ)に操られています……多分、体内に潜むような形で……!」

「馬鹿な! そんな痕跡どこにも!?」

 

 結果論だけどルキアさんが呼んでくれたのは超グッジョブね。

 十三番隊の診断した人には後でゲンコツをあげましょう。

 

「くっ! 女ッ!! どうやって気付いた!?」

 

 声色は都さんのもの。

 ですが口調や内容は、彼女が言ったとは思えないほど口汚いものです。

 多分コレは、潜んだ(ホロウ)が喋らせてますね。

 

「せっかくこのまま忍び込み、死神どもを殺し、喰ろうて遊んでやろうと思っていたのが、すべてパァよ!! 忌々しい真似を!!」

「テメエ!! 今すぐ都から離れろ!!」

 

 海燕さんを筆頭に、数名の十三番隊の隊士たちが抜刀して都さんを取り囲みました。

 

「ひ……ひひひひ……! ひひひひひひひ!!」

「何がおかしい!」

「あなた……やめて……」

「っ!! み、都!? 都なのか!? 正気に戻ったのか!!」

 

 都さんが突然しおらしい顔と表情を見せ、それを見た海燕さんの動きが鈍りました。

 

「馬鹿めがっ!!」

「う、おおおっ!!」

「ちっ!! そう上手くは行かぬか……!!」

 

 油断した隙を突いて、瞬時に刀を抜いて斬りかかってきた都さんでしたが、なんとか反応した海燕さんが打ち払いました。

 つまり今のは演技、彼女の記憶でも探ってるんですかね?

 情に訴えかけるとか、憎らしいけれど効果的ね。

 それにあの斬撃速度……三席は伊達じゃないですね。その肉体を自由自在に操っているわけか……ちょっとだけ問題ね。

 

「縛道の六十一! 六杖光牢(りくじょうこうろう)!!」

「おおっと!!」

 

 これも避けた!? 隙を狙ったはずなのに!!

 案外素早い!! それとも手加減しすぎたかしら……

 

「こんなところで捕まるわけには行かぬ!!」

「くそっ! 待てっ!!」

 

 部屋の壁を乱暴に壊しながら都さんは逃げていきます。

 

「うおっ!! なんだ!? 壁が砕けたぞ!!」

「志波三席!? どうしたんです!?」

「馬鹿! さっき連絡があっただろ、気を抜くな! 構えろ!!」

 

 遅れて外に出てみれば、十三番隊の隊士たちのそんな声が聞こえてきました。

 どうやらさっきの騒動を浮竹隊長が他の人たちへ事前に周知したみたい。

 でなければ、都さんの乱心を知らず、通り魔的に何人か斬られていてもおかしくなかったわね。

 やがて追手(おって)の気配を察知した都さんは再び逃走しました。

 

「都! 都おぉっ!! ……隊長、俺は追いますよ!! 止めても無駄ですからね!!」

「待て海燕!! 相手がどこにいるかも……」

「縛道の五十八 掴趾追雀(かくしついじゃく)! ……見つけました!」

 

 掴趾追雀(かくしついじゃく)は相手の居場所を捕捉する術です。

 さっきのドサクサで相手の霊圧まで覚えましたからね。

 このくらい見つけるのは軽い軽い。

 

「ありがてぇ! 湯川、どこだ!?」

「すぐそこです! 案内します!」

「待て! 四番隊のお前に首を突っ込ませるわけには……」

「もう私も立派に当事者ですよ。それに都さんの中に潜む相手に気付いたのは私ですよ?  場所を調べたのも私ですよ? お役に立てると思います」

 

 一気に追いかけて都さんを力ずくで捕まえちゃっても良かったんだけどね。

 ただ、それをやると海燕さんが泣くと思ったから自重してました。

 今回は出来るだけ裏方に徹しておきましょう。

 

「何より救護役は必要でしょう?」

「……くっ! わかった、だが俺も行く!!」

 

 こうして、私・海燕さん・浮竹隊長の三人で追うことになりました。

 他の人はお留守番と、万が一に備えて警戒とか戦闘指揮を取ることに。

 

「朽木、お前は残っていてくれ! 他の者たちと共に警戒を頼む!」

「はい! 隊長、海燕副隊長。どうかご無事で……!」

 

 ……あれ? この追跡部隊にルキアさんもいたような……?

 

 私の記憶だと、本当ならここで彼女が泣くような目に遭うはずなんだけど……

 

 

 

 あっれぇ!? なんで彼女は見送り側に立ってるの!?

 




●志波 都
ちゃんとアニメ(該当の話)を見ました(原作だと描写がないので)
すごい美人でした……海燕さん羨ましい……

そして……
彼女が三席だったことに書いてる途中に気付きました。
じゃあ清音と仙太郎は彼女が亡くなったから席が上がったの?

●アニメ版
このエピソードですが。
アニメ版は
・都(と他四名)でメタスタシアの先行偵察に行く。
・浮竹と海燕(とルキア)が「連絡ないね」とか言ってると、急報が入る。
・偵察隊が戻ってきた。都は(命に別状ないが)怪我で意識不明。他は全滅。
 都が意識を取り戻してから話を聞こうということでその場は落ち着く。
 (実際はメタスタシアに乗っ取られており、暴れるチャンスを待ってる)
・夜中、気絶していた都が起き上がり行動を開始する。
 近くにいた十三番隊の隊士たちを片っ端から斬っていく。血の海を作る。
・異変に気付いてやってきた海燕が声を掛けると都が止まり、その場から逃げる。
 (コレは相手を誘い込むための演技?)
・嫁さんのことなので、海燕が追う。浮竹とルキアも同行する。

といった感じの流れ(以降は漫画と大体同じなので省略)
上半身だけで戻ってきた原作と比べて、都さんが大暴れです。

アニメ版でないと絡められそうになかったので、苦肉です。

●相違点
・ルキアが一応連絡しておいた。
・乗っ取られに即気付いたので被害者が出ない。
・被害者がいないので、即座に追える。
・ルキアが追跡組にいない。

というか、原作はなんでルキアが同行したんでしょうか?

明らかにヤバそうな匂いがプンプンな案件ですよ?
(当時は多分まだ下っ端だった)ルキアを連れて行くのはどうなの!?
いくら海燕や浮竹の近くにいたとしても! ルキアが都を慕っていたとしても!!
荒事の予感しかしないのだから、連れて行くにしても清音とか仙太郎クラスを!!

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