よく考えてみたら、ルキアさんが一緒に来る理由が無いわよね。
だって現在の編成だけ見ても――
海燕さん:自分の妻なので、そりゃ追う。自分で解決したい。
浮竹隊長:逸る部下を諫める役目。しかも元気で健康面も問題ない。
おまけ :ガッツリ治す。腕を失っても再生させる程度には治す。
――と、副隊長二人に隊長一人の三人パーティよ?
ゲームで言うと勇者(男)と勇者(男)と僧侶(女)よ?
しかも全員が高レベルなのよ? 魔王と戦えるくらいは腕前があるのよ?
……うん。
ここにどうやってルキアさんをねじ込めばいいの?
ルキアさんも優秀なんだけど、彼女が入り込む理由も隙間もないわね……
そもそも相手は未知の
あの子、まだ若いし。
一応「ルキアさんは都さんを慕ってる」という理由はあるけれど。
でも、そもそも都さんは十三番隊だとかなり慕われてるから。慕ってるのはルキアさんだけじゃないから。皆さん慕ってるから。特別視する理由もない。
そりゃ「お留守番しててね」って言うわよね……
『はじめてのおるすばん!?』
何が!?
「湯川、場所は!?」
「もうです、もう見えてます! あそこ!!」
ということで三人パーティで謎の
相手が逃げてからものの五分と経たずに追跡を開始したので、距離なんてあってないようなものです。
瞬く間に追いつきました。
私が指し示した先には、都さん――の身体を乗っ取った
「くっ!! もう来おったか死神共!!」
抜き身の刀を手にしながら焦った様子で、こちらを恨みがましく睨んで来ます。
「どうします? 全員で一気に……」
「いや、待ってくれ湯川。俺一人で行く……いいですよね、隊長」
「……ああ」
気持ちはわかります。
奥さん相手ですからね。自分の手で何とかしてあげたいって気持ちがあるんでしょう。
気持ちは分かりますが……
「海燕さん……危なくなったら、入りますからね」
「おーよ。そんときゃ頼んだぜ」
自ら前に出て行く彼の背中に向かって声を掛けましたが、こちらを振り返ることすらせずに片手を上げただけでした。
「ひひっ! ひっ! まずはお前からか! え!? 小僧! 一人で来るとはよほどの馬鹿か!? 間抜けか!?」
「ざけんな!! 都の顔で! 都の声で! くだらねぇことをほざいてんじゃねぇぞ!! 都をこれ以上、弄ばれてたまるかよぉっ!!」
「いひひひひひっ!!」
そりゃまあ、そうよね。
相手からすれば三対一だと思っていたのに、一対一になってるんだもん。
なら、それを逃す手はないわよね。
挑発して、怒らせて、冷静な判断力を奪うのは当然。
上手く捕まえれば人質が増えて、さらに有利になるんだから。
しかも今は海燕さんの奥さんの姿をしているとなれば、そりゃ底抜けのバカでもない限りは有効活用するわよね。
「おおおおおっっ!!」
「ひひっ! ひひひひっ!!」
怒りの声を上げながら斬りかかった海燕さんですが、その動きはどこか精細さを欠いており、都さんに容易に受け止められています。
「どうした? 剣が鈍いようだな? 遠慮せずに儂を斬ってよいのだぞ!?」
「くっ……!!」
自分の奥さんを斬るなんて、旦那さんには出来ませんよね。
どんなに理解していても迷いが生じて剣が鈍るのも当然です。
「わかっているぞ! この娘の中から儂だけを引きずり出す方法を考えておるのだろう!?」
「……ちっ!」
海燕さんの顔が苦々しく歪みました。
「だがそれも無駄だ!! ほれえぇっ!!」
「うおおおっっ!?」
うえええっ!? う、腕が変化して大量の触手を生み出したわよ!?
グロい! 都さんが美人だから、ミスマッチしててなんともグロい絵だわ!!
生み出された触手はそのまま海燕さんの身体に向かい濁流のように激突しました。強烈な衝撃に押し流されつつも、ですが触手を前にしても闘志は萎えていないようです。
海燕さんは手にした斬魄刀で触手を攻撃しようとして――
「な……っ!」
「なん、だと……!?」
「斬魄刀が!?」
――消えた!?
「一夜毎に一度だけの能力だ! その夜、最初に儂の触腕に触れた者は斬魄刀が消滅する!!」
なんという死神限定のメタな能力!
私も浮竹隊長も海燕さんも、驚きを隠せません!!
……ん?
そんな特定相手だけにメタすぎる尖った能力を普通の
え、じゃあまさかコイツって……!? そういうことだったの!? アレが関係してるの!?
「斬魄刀を失った死神が、はたして儂を倒せるかのぉ?」
「うるせぇっ!! 都の身体を斬らなくて済むだけ、素手の方がよっぽど都合が良いぜ!!」
すっごい強がってます。
「ひひひひ! 馬鹿めが!! その考えがそもそも間違っておるのだ!!」
「あぁっ!?」
「人間の身体に入り込んだのとは訳が違うのだ!! 儂も霊体、この娘も霊体。霊体同士の融合だぞ!? 永劫、解けることはない!!」
な、なんですって……!!
融合……それも霊体レベルでの融合……!? それはつまり、人間でいうと細胞レベルで同化してるってことよね……
そんな……そんなの……
『なんて羨ましいことをやってるでござるかあの
うわ、びっくりした!!
でもまあ……ホントよね……その意見だけは賛成。
『
私で我慢しときなさい、ね?
『ぐぬぬぬぬ……でござる!!
色々と文句を言いたいところはあるけれど、けど許せない気持ちは一緒よ。
だからさ……アレ、面倒見られる?
『少々お待ちを……!! ふむふむ……あ、頑張ったらいけそうでござる』
いけるの!? かなり無茶振りしたつもりだったんだけど!?
『当然でござるよ!! それよりなにより都殿という良い女を助けられないとか、それもうただの阿呆でござるよ!! ここで頑張らねば、いつ頑張るというのでござりましょうか!? ここでやらねばゴムボールの名が廃るでござる!!』
そ、そうよね!!
(……てか、あんたの自称はゴムボールでいいの!?)
『もしも拙者が都殿以外に頑張る時があるとすれば、それはピンチの相手が――乱菊殿か織姫殿かハリベル殿かバンビエッタ殿か夜一殿か空鶴殿か砕蜂殿か勇音殿か卯ノ花殿かリサ殿か曳舟殿か七緒殿か雛森殿か九条殿かたつき殿かネリエル殿かチルッチ殿か毒島殿かリルトット殿かミニーニャ殿かキャンディ殿かアウラ殿か――……』
多い多い!! 物凄いたくさん機会があるわね!? あと、何人か知らない名前があったんだけど誰それ!?
『むう、まだ半分もいってないでござるよ……? というか、そこに
わかった、わかったから!! いけるのね?
『然り! それもこれも
わかったわ。よし、行くわよ!!
「海燕さん、今行きま――」
「待て、湯川!!」
行こうとした途端、浮竹隊長に止められました。
……なんで?
「海燕に、あいつにやらせてやってはくれないか……?」
「は? 何を言ってるんですか!? 海燕さんは既に斬魄刀を……!」
「それでもだ! あいつは今、誇りのために戦っている。妻の誇りのために、何よりも奴自身の誇りのために!! ……つまらん意地と思ってくれて、構わん……」
……うん、それはまあ……
「なるほど、わかりました……と言うとでもお思いですか?」
……わかるかそんなもん!!
「お、おいっ!」
浮竹隊長の制止を無視して飛び出しました。
それにしても浮竹隊長って、動きが鈍いのね。
絶対、無理矢理にでも止めてくると思ったのに。あっさりと抜けられたわ。
油断してたのかしら?
「破道の七十八!
「な、今頃になって……!? うおおおっ!!」
斬魄刀から円状の刃を生み出して、触手を切り落とします。
そこにすかさず第二撃を放ちます。
「縛道の七十九!
九つの黒い玉を生み出して相手の動きを封じる鬼道です。
これで都さんの身体の自由を少しの間、縛らせて貰いますよ!
「湯川!? 馬鹿野郎! 何しに来た!!」
「何って、助けにですよ?」
私、ちゃんと言いましたよね?
危なくなったら入るって。それを海燕さんは了承しましたよね?
それになによりも。
「都さんの姿をした相手を討てますか?」
「そ、それは……! けど、お前がやることじゃねぇ!! それは、俺が……! 俺がやらなきゃいけねぇんだ! 手を出すな!!」
「斬魄刀を失い、相手を傷つけられない。海燕さんの敗北は濃厚、それでも他の人の手は借りたくないんですか? 死ぬと理解してもですか?」
「ああ、そうだよ! わかってんだ、つまんねぇ意地だよ! けどそれでも、都は俺一人の手で……俺一人の力だけで……!!」
「……都さん、助けたいですよね?」
「当たり前だろうが! でも、融合したものをどうやっ……――ッ!?」
言い掛けて、海燕さんの動きが止まりました。
そして「いやいや、まさか……嘘だろお前?」みたいな顔で私を見ているのは、今まで信頼を積み重ねた結果ですかね?
「できる、のか……?」
「それをこれから調査します。成功したら、一生恩に着てくれて構いませんよ?」
さて、期待は裏切れないわよね。
全力で行きましょうか、射干玉!!
「卍解……射干玉三科!」
卍解を使い、黒一色の刀を手にします。
『いやぁ、
はいはい、行くわよ射干玉!
まずは、下準備からね。
「
「なんだ!? 闇が……!?」
私の足下から生み出された闇が大地を覆い尽くし、周囲をドーム状に包み込んでいきます。その異様な様子は、海燕さんがビビるほどですね。
と、大層な名前をつけていますが、やってることはただの目眩ましです。
真っ黒な壁で四方を囲って、万が一にも"これからやること"を見られなくするために。
現代風に言うならば、電波を遮断して監視機器を無効化する部屋を用意したってところかしら。
多分監視していたであろう、どっかの
そうしている間にドームは完成しました。
今この中にいるのは、私と海燕さんと浮竹隊長。そして都さんと融合している
「都さん、聞こえていますか? 四番隊の湯川です! これからちょっと手荒い真似をしますよ!!」
「すまねぇ……任せる! 頼むぞ!!」
「ぐ……娘が!! 何を、する気かは、知らん……!! が、無駄なことだ……!」
へー。
ふーん。
そうなんだー。
その態度、いつまで続くかしらね?
射干玉、どう? 解析は済んだ?
『お任せ下され! ばっちりでござるよ!!』
なるほどなるほど。
それじゃあ行ってみましょうか!
さて、ここで問題。
コーヒーとミルクを混ぜるとカフェオレが出来ます。
ではカフェオレをコーヒーだけにするには、いったいどうすればいいでしょう?
前にもこんな質問したんだけど、覚えてる?
尤もあの時はミルクとコーヒーに分けるにはどうすればいいか? だったけれど。
今回はもう少し簡単な問題。
グラスの中をコーヒーのみで100%に出来れば良いの。
じゃあ、どうすれば実現出来ると思う?
やり方は、色々あると思うけれど……今回の場合の正解はね……!!
「が、ぐ! おおおおおっっ!?!? な、なんだ!? 儂の、儂の身体が……!!」
「都!?」
「馬鹿な! 信じられん……湯川は一体、何をやってるんだ?」
同じ成分のコーヒーをグラスの中にガンガン注ぎ込んで、ミルクの成分を全部外に押し流してやればいいのよ!!
吹き飛びなさい!! いつまでも未練がましくへばり付いてるんじゃないわよ!!
「馬鹿な!! は、弾き飛ばされる……!?」
「
「無茶苦茶だ……だが、これなら……!」
射干玉が都さんの細胞だけを解析して複製、増殖を繰り返す。
続いて増殖させた細胞を元々存在していた都さんの細胞と再融合させていく。
同時に、異物である
その繰り返しの結果、外からはまるで
今回の場合、
とんでもない力技をしているってのは分かっているけれど、今回は時間も無いの!
ぐずぐずしていたら相手が都さんの細胞と完全に融合して取り込で手遅れになったり、はたまた都さんを殺してまた別の相手に取り憑くかも知れない。
だから一番手荒だけど即効性の高い手段を取らせて貰ったわ。
「お察しの通り、無理矢理引き剥がしてるのよ! 肉体レベルでしか融合できなかったのが仇になったわね!!」
「ば、馬鹿な!! 融合を無理矢理引き剥がすだと!? そんなことが、できるはずが……ぐがあああああぁっ!!」
「う……く、う……あ、あああああああぁっ!!」
徐々に引き剥がされていく
ただの肉塊のような見た目で、なにより
そして、
今さらながらこの方法、問題もあって。
無理矢理引き剥がしているので、都さんも徐々に意識が覚醒していきます。
しかし意識を取り戻しているということは、力ずくで身体を引き裂かれるような痛みも同時に襲ってきているということです。
正直、とてつもない激痛だと思いますが、耐えて下さいね!
……私も今、耐えてますから!!
『おほおおおおっっ!! 気持ち悪いでござるよ!! この
引き剥がしの当事者たちには、かなりエグい光景が幻視できています。
真っ黒い海がぶわーっと広がっていって。
その黒い海に無数の触手があっと言う間に飲み込まれて。
かと思えば触手が海面から天に向かって伸びて。
その触手は真っ黒い油にでも塗れたみたいに、ヌルヌルのテカテカで。
振り下ろされた触手が海面に叩きつけられるんだけど、そこがまた油と油のせめぎ合い。柔らかくしなる触手が、まるで身体中に油を塗りたくるみたいな動きをしていて。
でもその海も意志を持ってて。
にゅるりと音が聞こえそうな動きで触手に絡みつくと、そのまま触手を水底へ引き摺り込んでて。
チラチラ見えるのは、多分この触手の根元。タコみたいな本体なんだけど。
そのタコの内側に黒い海が潜り込んでいって、そのたびにタコが身悶えするの。
何て言ったら良いのかしらね……南海の怪獣大決戦?
……あ、そうだ。良い激励の言葉があったわ!
射干玉! 今のあんた、都さんと一つになってるわよ!!
『……ッ!! そ、そうでござった!! ならば目的は九分九厘達成したも同然!! あとは残る邪魔者を排除すれば!! ここはパラダイス!! エロドラドはここにあったんだ!!』
エロドラド……? ああ、エルドラドね……間違ってないわ。
『都殿の膝の裏側ペロペロでござる!!』
すっごいマニアックな部分を攻めるわね……
とと、いけないいけない。
やる気になったお陰で形勢が傾いた!
「海燕さん! そろそろ剥がれます!! 仕留める準備を!!」
「お、おう!! 任せとけ!!」
「ぐががががががああああぁっ!! おのれ死神めが!! こ、こうなれば!!」
激痛に耐えながら何をするのかと思えば。
なんと
このまま無理矢理引き剥がされるよりは、自分から抜け出た方がマシと考えたんでしょうか!?
「なにっ!?」
「海燕ッ!!」
分離して、無数の肉の筋のようになった
まずい! なんだか知らないけれどこれはまずい!!
でも今の私は引き剥がし作業で手一杯!! 海燕さんは意表を突かれて反応が鈍いし、浮竹隊長はなんでまだ手伝ってすらいないの!?
「破道の、十二……
「うおっ!? な、なんじゃとぉぉっ!?」
伏火は霊圧を蜘蛛の巣のように伸ばして敵を捕らえる鬼道です。
間髪入れずに唱えられたその術は
「今のは……?」
いえ、私が唱えたものではありません。
海燕さんでも、勿論浮竹隊長でもありません。
唱えたのは――
「はぁ……はぁ……お前は、さっきまで私だった……! なら、何をするかくらい、手に取るようにわかります!!」
「都っ!!」
――都さんでした。
そしてなけなしの力を振り絞り、海燕さんのピンチを救ってくれました。
「お前ごときに! 海燕はやらせない!!」
肉体的にも精神的にもボロボロのはずですが、大見得を切ったその姿はなんとも美しく凜々しいものでした。
お見事、これが内助の功! 妻の鑑ですね!
緋真さんといい、妻って凄いわ……
「おのれっ! おのれぇぇぇっ!! 死神ごときがどこまでもっ! 食い残しの分際で、儂の邪魔をするなどおぉぉっ!!」
「あん……? テメー、今なんつった……?」
蜘蛛の糸に捕らえられ、ゴロゴロと芋虫のように転がりながら怨嗟の言葉を吐き出す
「都の身体を乗っ取って、挙げ句が食い残しだと……? 随分とまあ、偉いんだなテメーは……!! 覚悟は出来てんだろうなぁっ!!」
「ひ、ひひひひいいっ!!」
「……っ……ぅ……ょ……っ!」
おや? 海燕さんがなにやら小さく呟いていますが……あ! この詠唱は……!!
「破道の九十!
怒りと共に放たれた鬼道によって、黒い柩が生み出されました。
「が! ぎ、あああ!! ぐ、ぶ、え、えええええぇっ!! だ、だじゅげ……!!」
柩は
ですがそれも一瞬のこと。
「……終わりだ」
すぐに柩は霧散し、悲鳴は聞こえなくなり、辺りは静寂を取り戻しました。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「都! 都っ! 本当だな、本当にお前なんだな!?」
「ええ……正真正銘、私ですよ海燕……ただいま……それと、ありがとう……」
既に黄泉比良坂は解除しており、辺りは普通の空間に戻っています。
夜の闇が辺りを支配する中、海燕さんと都さん。夫婦は互いが互いの無事を確かめ合うように抱き合っています。
「あの
「湯川……すまねぇ、お前には昔から……ほんと、すまねぇ!!」
「湯川副隊長、私からもお礼を言わせてください。助けて頂き、誠にありがとうございました」
「いえ、当然のことをしただけですから」
そうは言いますが、実際はかなりの大仕事でした。
残った細胞を全部浄化して、都さんを動けるようになるまで回復させて。
短時間で無茶しましたからね。どこかに変な悪影響がでていないか心配です。
緋真さんのときみたいに、経過観察が必要ですかね? 十二番隊に協力を依頼しても良いかもしれません。
あの部隊って細胞の調査とか凄く得意そうだから。
「それと海燕?」
「お、おう?」
あれ、都さんの言葉にちょっと怒りが混じってますね。
海燕さんもそれに気付いているので、腰が引けてます。
「私のことを思ってくれたのは嬉しかった。でもね、それと同じくらい辛かったわ。私のために、もしかしたらあなたまで失ってしまうかもしれない。そう思うと、とてもとても恐かった……自分をもっと大切にして!!」
「け、けどよ! 俺は、お前のために……!」
「ええ、その気持ちは嬉しかったわ。でも、命を掛けるような真似は謹んで! 今回はたまたま上手く行っただけかもしれない。次に同じようなことがあったら、今度は失敗するかも知れない。それなら……生きる道を選んで欲しかったわ!! 生きていれば、立ち上がることもやり直すこともできたはずです! 死んでしまったら、誇りを守ることも新しい誇りを持つことも、何もできなくなるのよ!」
悲痛そうに都さんが叫びます。
「……だそうですよ、浮竹隊長?」
「う、うむ……」
要するに"誇りなんて後でなんとでもなる、まずは生きろ"と言ってるわけですから。
先程の浮竹隊長の言葉を、なんと当事者が全否定です。
聞いているだけでも針のむしろ状態です。なんとも居心地悪そうな表情でした。
というか。
本当に、私がいなかったらどうなってたんでしょうね?
私の代わりにルキアさんがいて。
多分海燕さんが出て行って、でも都さん相手に攻めあぐねて、ピンチになっても浮竹隊長は「手を出すな。誇りを守ってやれ」って言ったんでしょうか?
あ、そんなこと言ってたらなんとなく原作の流れを思い出してきました。記憶って、何かを思い出すと連鎖的に思い出しますからね。
そうそう、こうやって海燕さんが乗っ取られて浮竹さんが咳き込んで最終的にルキアさんがトドメを……
……浮竹隊長……駄目でしょそれは。
人間、生きてさえいればそのうち折り合いを付けられるものですから!
海燕さんが死んだら空鶴と岩鷲君が可哀想じゃない!
残された家族の気持ちはどうなるのよ!!
事情を知らない志波家は、都さんと海燕さんを一度に失ったわけよね!?
そりゃあ岩鷲君もやり切れないわね。
しかもたしか、ルキアさんが志波家に行ってるわよね!?
そんなことさせられたら病むわ!
「まあまあ、都さん。文句は山のようにあるかもしれませんが、それは後回しにして。今日はもう帰りましょう。十三番隊の皆さんも心配してるでしょうから、元気な顔を見せてあげてください」
「そうですね。すみません、お気を遣わせてしまって」
「た、助かった……」
「海燕と浮竹隊長には、日を改めてしっかり言わせていただきますからね」
「「いいっ!?」」
どうやら
とまあ、そんなこんなで。
ほっと胸をなで下ろしつつ、戻り支度を始めたところでまた別の事件が起きました。
「……斬魄刀がねぇ!!」
海燕さんの悲痛な絶叫が夜空に響き渡ります。
「そういえば、さっきの
「嘘だろオイ! ね、捩花!? 戻ってくるのか!? こねぇのか!? 都、何か知らねぇか!?」
「ごめんなさい、私にもはっきりとは……ただ、多分だけどもう二度とは……」
「は、はは……マジかよ……」
斬魄刀を消滅させる能力。
ターン終了時まででも充分強力な効果なのに、よりによって永続効果ですか?
一時的とはいえ乗っ取られていた関係上、ある意味で一番詳しくであろう都さんの言葉ですから、信憑性は高いでしょうね。
ずっと消えたままですか……
「隊長、どうしましょう……」
「斬魄刀を失った死神……そんな前例、あったか? だがおそらくは、その……すまん、海燕……」
「死神は廃業……ッスかねぇ? はははは……まあ、いいか……都が助かっただけで丸儲けだよな……」
そうは言いますが、がっくりと肩を落としています。相棒を失ったわけですから、そりゃ落ち込みますよね。
私だって、射干玉がいなくなったらと思うと……
『拙者も
と思っていたら、都さんがそっと申し出てきました。
「海燕、その……もし良かったら。私の斬魄刀、使ってくれないかしら?」
「なにっ……!? いや、いいのか……!?」
「隊には副隊長のあなたが残った方がずっと良いでしょうし……それに、ほら。私はその……妻として家庭に入ってあなたを支えるのも良いかなって考えていたの……」
ん? 都さん、今なんで一瞬私を見たの?
私に何かあるとすれば……
……あ!
まさかアレ!? 朽木家に続いてまた私が立ち会う羽目になるの!?
「
都さんってば、おしとやかな顔をして斬魄刀はやけに男前な名前なのね!!
……いや、男前でもないか。
ヴィッカースの跳ねっ返り娘とかが頭をよぎるわ……
『帰国子女デース!! ヘーイ! ヨロシクオネガイシマース!! でござるな!』
もう金剛って聞くと
「いいのか都……? というか、良いんですか隊長!?」
「まあ、良いんじゃないか? というか、良いことにしてみせる。今回、お前たちには何もしてやれなかったからな。せめてこのくらいはさせてくれ」
浮竹隊長のギリギリ隊長っぽいお言葉でした。
だって今回、良いところ無かったものねぇ……
●メタスタシア(アニメ版ではテンタクルス)
肉体レベルでしか融合できなかったことが敗因。
(乗っ取ってから元の姿に戻る模様。
その際、融合した死神を喰って自分を再構築しているようなので。
となれば自分を再構築して元の姿に戻れる以上、付け入る隙があると解釈)
この後、虚圏で再構築してアーロニーロに食われるはず。
●誇りはどうなる?
知らんがな、犬にでも食わせとけ(わんわん)
志波家(五大貴族)の本家の長男を結果的に見殺しにした形の浮竹さん。
まだ若い部下(ルキア)が全部泥を被る結果となった。
(志波家に謝りに行ったのもルキアでしたよね)
そりゃ後に白哉の「部下の見殺しは慣れてるだろ」な言葉も仕方なし。
お義兄ちゃんもキレますよ。
●斬魄刀を消す能力
永続なのか、一日(一晩)限りなのか? 色々詳細不明。
藍染ならずっと消す能力を作りそうなので、永続にしておきました。
●斬魄刀を受け継ぐ(&金剛と言う名前)
東仙が歌匡から斬魄刀を受け継いでいたし。
名前はこう……ノリ。
(艦これ・アズレン・アルペジオ・ぶちギレ金剛etcお好きなのをどうぞ)