好きな勝負師キャラで雀卓を囲ませてみた   作:ゾネサー

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筒【かこむ】

『ヤコ。お前が座れ』

 

『え……!?』

 

 前触れもなく、望んだだけで他のグループと会話が遮断される。そのことに驚く間もなく、それ以上の驚きが私を襲った。冗談でしょ……?

 

『ちょ、ちょっと待ってよ! 私麻雀なんて、一回しか打ったことないよ!』

 

『ちっ……。ルールを貴様の脳に捩じ込もうと思っていたが、いらないのか』

 

 ネウロが取り出したネジのような道具の使い道は考えないようにし、私は話を続ける。

 

『しかも家族で打った程度で……』

 

 昔運良く……いや、悪く? お父さんのプライドをズタズタにしてしまった時の苦々しい思い出が私の脳を駆け巡る。あと、その時のお父さんの凄い表情も。

 

『問題ない。ハナから貴様に技術の期待などしていない』

 

『大体アンタが打てばいいでしょっ!』

 

『ダメか……?』

 

『ダメに決まって——』

 

『ダメか……?』

 

(打たなきゃ……殺す気だ!!)

 

 押し問答は一瞬にして露と消え、私はただただ押し切られた。いつもこうだ……。

 

「おっ。聞こえるようになったのだ」

 

「あ……えと、よろしくお願いします……」

 

「よろしくなのだ〜!」

 

「あおい。相手は超常的誘拐犯の一味だ。馴れ合わない方が良い」

 

(うっ……。私も化け物に数えられてる……)

 

 私と同じくらいの年の女の子が左隣に座っていた。名はあおいというらしい。そのことに安堵を覚えたのも束の間、相手からすれば私もネウロとなんら変わらないことを思い知る。そして私は脱力感を覚えてしまった。あえて起こったことをそのまま言うなら、お腹の音が鳴っちゃったんだ。

 

「およ? お腹空いてるのだ……?」

 

「はい……。本当は食事にありつける予定だったんですけど……」

 

「ふぅむ。随分と間抜けな誘拐犯なのだ」

 

「あはは……」

 

「ほれ。干し芋を分けてあげるのだ〜」

 

「え……?」

 

 私が乾いた笑いを漏らしていると、あおいさんが私の口に干し芋を差し出して来た。お腹が空いていた私は思わず口を開いて食べてしまう。

 

「うまいっ……! これは向日葵堂のっ!?」

 

「おお〜。食べただけで分かるとは只者じゃないのだ」

 

「あおい……!」

 

「安心するのだ九十九。あおいはこう見えて人を見る目はあるのだ。この姉ちゃんはどうも悪者じゃなさそうなのだ」

 

「わ、分かってくれますか……!?」

 

「それなら、私達を元の世界にすぐに帰してほしいものだけどね……」

 

「うう……ごめんなさい。あの鬼畜男が満足するまでは、いくら私が進言しても無駄なんで……ギャ——」

 

「おや。また途切れたのだ」

 

「……なんだか、この世のものとは思えない断末魔が一瞬聞こえたような気がするね」

 

(やはりな。後ろのあの男こそが……)

 

(まずは彼を引っ張り出すところからだね)

 

 俺達は正面に目をやりながら、男に強く意識を向けていた。そうしていると先程干し芋を頬張っていた女性が戻り、ようやく左隣も会話が聞こえるようになったところで全員が卓についた。

 

(あれっ。あのアカギって人じゃないんだね)

 

(ああ……。意外だな)

 

(うう〜っ! どうなっても知りませんからね!)

 

「……準備は整ったんだろう? 配牌を始めようぜ」

 

(おっと。待たせておいて随分と挑発的な言い草なのだ)

 

「ええ。配牌は2牌ずつ山から手動で取り出す形式で、親から子へと反時計回りの順番で行わせていただきます。……ほら、先生」

 

「わ、分かったよ」

 

 ……助かったな。どうやら牌という物を用いるゲームのようだが、俺達は取り出す規定の枚数を知らない。ふむ……取り出した枚数は14、13か。親からの順番という説明だけで成立している以上、親は一人。となれば子は三人のはずだ。ならば俺も13枚取り出せばいいだろう。

 

 ——こうしてゲームが始められた。ルールの説明が終了した今、不思議なほどの沈黙の中で牌が引かれ、捨てられていく。

 

(なんだ? この文字が書かれた牌は……)

 

 遊戯達は手元の牌のほとんどは1〜9の数字を指していること、どうやらそれらは1つのみ存在するのではないこと。この二つをひとまず把握していた。が……それでも分からないことだらけだった。ちょうど今引いた字牌。それにゲームの勝利条件。

 

(……デッキの中に入れられる同じカードの上限は3。このゲームにも上限があるかもしれない。そして複数枚の投入が指すのは、手札への加えやすさだ)

 

 少ないヒントを足掛かりに遊戯は重なった牌は保持しようと考えた。そのため他の人の真似をするように、ツモった字牌を河にそっと置いた。

 

(……ええい! アカギさんは好きにやっていいって言ったんだ。なら、もう好きにやっちゃお!)

 

「ポンッ……!」

 

(なにっ!?)

 

 アカギの代わりに席に座る治の行動に遊戯は目を見張った。自身が捨てた牌を彼が拾い上げると、自身の中から倒した同種の二牌……南を合わせて、三枚セットにして横に置いたのだ。そして手元から4つの筒が描かれた牌が切り落とされる。

 

(ポンと宣言することで相手の牌のコントロールを奪えるのか。同じ種類であることが発動条件のようだな)

 

(この異様な状況。迂闊な鳴きはしづらい。好きに打てと言われて素直に打てるのはある種才能かもな……)

 

(後のことはアカギさんに任せられるんだ! とにかくやれることをやるぞ!)

 

「チー!」

 

(むっ……!?)

 

 4のシリンダー牌は重ねにくいはず、そう思った遊戯はツモった牌を見分けがつきやすいように適当に分けたグループの中に入れると、自身の手から同様の牌を切った。すると思わぬ発声に再び眉がひそめられる。そんな彼をよそに、あおいは456の筒子を横へと払った。

 

(連続した3つの数字か……なるほどな。しかも左の奴にしなかったということは、チーは前の番の者にしか出来ないというわけか)

 

 遊戯は早くも麻雀の要領を掴みつつあった。3がキーワードと思った彼は、同じ牌を3つ重ねる・連続した3つの数字を作る。この二つを要点に手を仕上げつつあった。だが、彼はまだ知らないことがあった。

 

(この時、牌は14。3で割り切れる数字ではない。残り二つの牌で求められる工夫はなんだ……?)

 

 彼はツモった6の索子をそのまま切る。するとあおいは目を光らせた。

 

「チー!」

 

(またか……。これで……三回目だ)

 

(ふふ……好戦的な博奕猫だな)

 

 ニャアニャアと猫の鳴き声すら聞こえてくるような鳴きっぷりにアカギはさりげない笑みを浮かべる。

 

(前進するタイプか……)

 

「ロンッ!」

 

「なっ……!」

 

 赤ドラを全てに含ませた三色同順を完成させたあおいだったが、最後の捨て牌……危険牌と予感しながらも切った2萬を掻っ攫われてしまう。

 

「南混一色イッツー。7700……!」

 

(俺が奪われた牌をチラッと見たな。ナンは南のことか。字の書いてある牌と萬が書いてある牌のみで構成されている……。しかも……)

 

 遊戯は治が鳴いた南と789の萬子に目をやり、再び公開された手牌に目をやった。

 

(手を公開したということはロンは決め手なんだ。彼女の二萬と書いてある牌を合わせて1〜9が揃っている。これらは……)

 

 治の頭上に浮かんでいる25000という数字が32700となり、あおいは逆に25000から17300へと変化したことで、遊戯達は確信に至った。

 

(決着時の点数を高める効果があるんだ。そしてロンされた相手はその点数分手渡さなくてはならない……)

 

(そういうこと、だね。後はその決着の条件だけど……あの人の手を見て)

 

(俺も気になっていた……。西が2枚重なっている。俺達に割り振られている方角だから、他の者には使えない可能性も考えていたが……。なるほどな。あれが最後の条件!)

 

(うん! 3枚組を4セット、同じ牌を2つ重ねた組を1セット……! これが決着の条件だ! 全体的に龍札(ドラゴン・カード)に似ているね)

 

(つまり勝つ為にはこの決着により点数を奪い、戦いが終わる瞬間に最も高い点数を保持していればいい!)

 

(今の決着でランプが次の人に移った……)

 

(誰かがゲームを終わらせると、次に移るということか……。これを繰り返すわけだ。光明が見えてきたぜ!)

 

 

『危なかったー。混一色だと思ったから萬子と字牌は残しておいたんだよねー。良かった良かっ……ぶっ!』

 

『このゾウリムシが』

 

『相変わらず微生物から抜け出せないっ!』

 

『奴はただ役通りに手を進めただけだ。あの程度の狙い、我が輩でも読めるぞ。ワラジムシめ』

 

『我が輩ですらって……そりゃアンタなら読めるでしょ』

 

『この程度であればな』

 

『……?』

 

『今は様子見しようと構わぬ。が……その代わりよく見るのだ。分かったな』

 

『う、うん。分かった』

 

 

『8巡目の1萬切り……あれは怪しかったのだ! やっちまったのだ〜!』

 

『78が揃って両面待ちだったところをわざわざ鳴いたしね。その巡目で2萬をツモってしまったのは、アンラッキーだった』

 

『うう……その時は我慢できたのに、最後まで直感を信じられなかったのだ〜! チーせず手直しするべきだったのだ!」

 

『まさに後の祭りだね。……まだ勝負は始まったばかりだ。平常心を失ってはいけないよ』

 

『うむ! あおいらしく、ガンガン攻めていくのだ!』

 

『……まあ、それが君の平常心なのかもしれないね』

 

 

『や、やりましたよアカギさん!』

 

『一度の勝ちで浮かれすぎじゃないか?』

 

『浮かれますよ! だってあの何してくるか分からない人達の親をまず蹴れたんですから!』

 

『今回は何も出来なかったんだ』

 

『え?』

 

『捨て牌を見れば分かる。フラフラと迷った挙句、最後はベタオリだ……。闘う気配も無い』

 

『た、確かに……言われてみれば』

 

 アカギにそう言われ、治は弥子の捨て牌を確認する。実は手の整え方も甘く、弥子は相手に関係なくアガりの形からも遠かった。手としては筒子の混一色を目指せそうだが、字牌を捨ててピンフ・タンヤオのつく好形にも移れそう。そんな迷いが浮かび上がるかのような捨て牌だった。例えるならそう……二つの宝が記された地図を持ったチンケな海賊! とりあえずその辺りには向かっては見たものの、一向に辿り着けない。難航! 膠着! 停頓! 嵐とも言えぬそよ風に怯え、退却!

 

『なんだあ。そうだったんですね』

 

(浮かれていい、という話でもないが。今はまだ序盤も序盤。正体・頭角を現す瞬間を見逃してはいけない。……他の奴らも含めて)

 

『よーし! このまま波に乗りますよ〜!』

 

 先制はアカギ・治陣営。流れが良いまま親番が回ったことで勝利の波に乗ろうとやる気を出す治に対し、アカギは遠いさざ波の音に耳を澄ませるのだった。

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