好きな勝負師キャラで雀卓を囲ませてみた   作:ゾネサー

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白【フェアプレー】

 東四局が終わってすぐのこと。遊戯がネウロを挑発している最中、治はアカギと話をしていた。

 

『対面の女の子もイケイケでしたけど、あっちの男の子もヤバイっすよ! なんスか! あの無茶苦茶な裸単騎……! まるで……そう! アカギさんみたいな……!』

 

『クク……随分な言い様だな。だが、違うな。見事だった。彼は実はさほど無茶はしていない』

 

『いやいやいや! どうしたらそんな風に見えるんスか!」

 

『今の戦術で肝要となる部分は二つ。まず一つはタンヤオを匂わせて、あたかもテンパイのように見せたこと』

 

『速攻で1位の親蹴り……それ自体はまあ、何もおかしくないですけど。あの4牌が北なんて。揃ってたならやるか、やらないなら落とすか……普通はそうしませんか?』

 

『だが、あの状況での普通は違った。治……お前はアレを見て、どう思った?』

 

『どうって……勿論テンパイだと思ったので、ちょっと厳しいなと思って防御に……ああっ!』

 

『そうだ……。もし先にカンをしてドラが乗れば良いが、そうでなかった場合。あの手に守りに入ることはないだろう』

 

『確かに……自風牌のみですし、もし振り込んでも2000点払って親蹴りなら悪くないですから』

 

『それが大事だった。つまり早めのテンパイで、かつ少なからず高い可能性をよぎらせた。となればお前のように手を諦めるか、あるいは……手の完成を急ぐだろう』

 

『急ぐって……あっ! 上家の女の子ですか?』

 

『そうだ。彼女は萬子の混一色であのテンパイ気配を察してから7萬をポンし、9萬を捨てた。そしてもう一つ……序盤のことだ。3萬を鳴かれ、彼女は少なからず動揺が顔に出ていた』

 

『えっ。そんなに驚いてましたっけ?』

 

『お前も含め、殆どは下家のポンに気を取られていたからな。気付かないのも無理はない。が……オレからは見えた。つまり彼女の手にはチー可能な牌があったんだろう。捨て牌に付属する牌は無いから、あの時も手にあった。しかし鳴かれた3萬の入手は難しいと思っていたはずだ』

 

『ええ……。僕も、もうこれは誰かの面子に使われてそうだなって』

 

『だから彼女はチー可能だったどちらかの牌を対子にしてから動きたかったはずだ。そうしてもう一方を捨てれば、残るは恐らく7・7・8・8・9……』

 

『うっ……! 6-9待ちにシフト出来る……!』

 

『クク……アガればハネ満だ。良い手じゃないか。だが彼女は手を急がされた……自分の意思では無く、場の状況によってな。テンパイにはなっただろうが、アガりやすさは代償になった。彼はその状況が欲しかったんだ』

 

『つまり……時間が欲しかったんですか?』

 

『ああ。彼がカンをしても問題ない牌を手に入れるまでのな。もし手に入らないのであれば、4枚も安牌があるんだ。見た目ほど無茶じゃないだろう?』

 

『そ、それはそうですが……。カンをしても問題ない牌って言われても。南が出る保証なんて』

 

『あるさ……。それが二つ目。ここまでの戦いで見せた彼女……上家のクセ。彼女は振り込めないと思えば、自風牌をとりあえず切る……』

 

『……言われてみれば何回か、そうしてましたね。で、でも! カンした結果、ドラが乗らなかったら……!』

 

『関係無い。彼女にはもう一人振り込めない相手がいたからな』

 

『あ……ああっ! 親の女の子……!』

 

『そう。彼女は前の局でも振り込んでいるし、一番警戒していたのは親の方だろう』

 

『でも……もし、親が降りちゃったら……』

 

『彼女の第一打は東だ。手は良かった。子が降りる理由になるハッタリのタンヤオも、安めの可能性と彼女の性格を考えればこの時点でのオリは無い。……ここまではいいな?』

 

『はい……。それは、僕もそんな気がします』

 

『なら後は簡単だ。ドラが乗らなければ好形の親が攻める。そしてタンヤオでのテンパイを警戒して手を急いだ下家。分があるのはどちらだ……?』

 

『それは……流れも良いですし、少なくとも下家のアガりよりは親のテンパイの方が早い気がしますね』

 

『そうだ……。親からリーチ棒が出て、そのツモでアガれなかった瞬間。彼女から南が弾き出されるだろう。……な。大した無茶じゃないだろう?』

 

『ほ、本当だ……。そんなところまで、考えられていたなんて……』

 

『ククク……。彼は機に従っただけさ。ドラが乗ったのは偶然。しかし……偶をも感じ取ったのかもな。勝負勘ってやつだ』

 

『アカギさん……』

 

『この勝負……。あの男は一つ保証した。1位の者には帰還を望む権利を与えると。ひとまずあの言葉を信じるとするなら……オレ達三人が協力する、そんな手もある。だがそれでは意味が無い。彼が強者であれば意味を成さない、というだけでなく。それ以前にこの権利はヤツの納得により成り立つからだ』

 

『……! さっき打つ前に相談した時に、言っていましたね。経緯はどうあれ、彼らとは勝負しかないと』

 

『だからオレは全員の様子を窺った。これから先の勝負、情報がモノを言う場面が必ず出てくるからだ』

 

『あっ……! まさか七対子が悪手っていうのは……』

 

『そう……彼は無知であることには無防備だ。あの手は後半戦。重要な局面で切り出すべきだった。それはオレ達にとって攻撃だけでなく、防御にも影響してくるからだ』

 

『ううっ! なるほど……』

 

『南場からは間違いなく彼の仕掛けは増えるだろう。東場とは様相が変わってくる。……あの男も出てくるみたいだしな』

 

『え? ……ああっ!』

 

『ハハハ……。挑発でもしたようだな』

 

『笑ってる場合じゃないっすよー! あのまま余裕こいて後ろにいてくれたら良かったのに……』

 

『いや……彼がやらなければオレが引き摺り込む予定だった』

 

『え?』

 

『後になればなるほど、情報を一方的に奪われるだけだ。出るタイミングはせめて同じでないとな……。……代わろう、治』

 

『あ……お願いします! アカギさん!』

 

「さて、南場を始めるといたしましょう。そちらの方も準備はよろしいですか?」

 

「……ああ。問題ない」

 

 こうしてメンバーが入れ替わり、南場へと突入した。まずは先程の局で使用した牌が裏側表示でシャッフルされると、山が築き上げられる。今回はあおいの山から順番に牌が引き抜かれ、そして各々手牌が見やすいように整理を進めていく。

 

(うわっ! 酷い配牌。うう……本当にあるのかな、流れってやつが。……え?)

 

 ネウロの配牌はお世辞にも良いとは言えず、弥子は先程の自分の振り込みのせいかと自責の念に苛まれていた。しかし手牌を見るネウロの目に気付いた弥子は思わず困惑する。

 

(謎を食べ終えた後の犯人を見る目に似てる……。興味が無い?)

 

 すると次の瞬間。彼女は信じられないモノを目にしていた。声をかける間も無くネウロの声が、周りに響き渡る。

 

「ダブルリーチ」

 

「なにっ!?」

 

「またなのだ!?」

 

 配牌時のテンパイを意味するダブルリーチの宣言にどよめきが場を満たしていく。しかし、それだけでは済まなかった。

 

「……九種九牌だ」

 

(ん……?)

 

「そんな……また起こったのだ!?」

 

 東三局を再現するかのような展開を入れ替わったばかりの二人が起こし、あおいは混乱を抱えて驚愕していた。

 

「いや。黒が限りなく混じったグレーな謀略さ……」

 

「どういうことなんだ?」

 

「『燕返し』だ」

 

「うっ……。イカサマしてたのだ!?」

 

「燕返しとは?」

 

「手牌と自分の山をそっくりすり替える技なのだ! ……でもあおいが練習した時には、良くても3秒はかかったのだ!」

 

「そう……。だが理牌に気を取られた瞬間、それは行われた。もっともオレ自身、見えなかったがな」

 

(私は後ろから見てたのに、動きが見えなかった。ネウロが本気で動いたんだ……)

 

「じゃあ。イカサマだって言い切るのは良くないのだ」

 

「……。つまりわたくしが燕返しをしたと断定した別の理由があるのですね?」

 

「その通り。さっき嬢ちゃんの山から牌を取った際に、山の下段の1牌の向きを少しだけ逸らしておいた……」

 

「ええっ!? そんな動き見えなかったですけど……」

 

「山の死角を利用させてもらった。そちらからは牌を引き抜く動作にしか見えないだろう。それに気付いたところで、偶然当たった程度にしか思わないくらいの差さ。オレがそこの違いを注視していたことそのものに気付かなければな……」

 

「うっ……!」

 

(そうか……人の心理が絡んだ作戦。それじゃあ感情が理解出来ないネウロには読み切れない……)

 

「……つまり、今の山……とやらは」

 

「違うな。配牌終了時と、今現在では」

 

「……なるほどな。相手のイカサマを確認したからこそ、お前も燕返しにより望んだ手へと入れ替えたわけか」

 

「……気付いていたのか」

 

(すり替えに気付いてからやったとはいえ……ほんの1秒でやれたんだがな)

 

「ああ……。ヤツが何をしてもいいように警戒していた。もっとも肝心の相手が見えず仕舞いだったがな」

 

「俺も現場は見えなかった……。よって普通の状況であれば、水掛け論にしかならない」

 

「わたくしが自主的に認めると?」

 

「アンタの牌……そっちの嬢ちゃんの前局での最終形だろう?」

 

「なっ! あおいのを盗んだのだ!?」

 

「潔白を証明したいなら見せてもらうのが一番、というわけか」

 

(……なるほどな。定向進化か……)

 

「ああ〜! 完全に同じなのだー!」

 

 ネウロの手は高目なら三色同順がつく索子の2-5-8待ち。アタマも同じく6萬だった。あおいは公開された手を見ると、指を差して訴える。

 

「泥棒なのだー! そんな手で勝とうなんて卑怯なのだ!」

 

(……あおいもイカサマ有りの人間だということは胸の内に秘めておこう)

 

「いや……それも違う。彼のことを見誤っている」

 

「えっ?」

 

「アガる時にどちらにせよ手は公開されるんだ。嬢ちゃん。アンタなら手をそのまま奪えるなら、誰を狙う……?」

 

「そりゃあ……男の子兄ちゃんのなのだ。配牌と同時に天和なのだ」

 

「そうだ。なら何故嬢ちゃんの牌を奪った?」

 

「……むー。勝つつもりならしない……なんて言っても、勝つこと以外を目的にしたイカサマなんて……」

 

「……そうか……。試したんだな。ゲームに招き入れた者として、同じ場に座る資格があるかどうかを」

 

「ククク……。そうだろ? そろそろ化けの皮を剥がして、見せたらどうだ? 怪奇な本性を……!」

 

「……素晴らしい。それでこそ……我が輩の脳髄の空腹を満たし得る」

 

「……! な……なんだ……これは」

 

「顔が……鳥さんみたいになったのだ!?」

 

 彼らの返答に心の底から満足げに笑ったネウロは魔人としての本来の姿を見せた。山羊のようなツノと鳥のようなクチバシを持った生物への変化に、この場にいる全員が呆気に取られていた。

 

(ネウロが本来の姿を見せた……。この人達に、強い興味を持ったんだ)

 

「……さすがに度肝を抜かれたよ。不可思議な力はその異能によるものか」

 

「その通り。我が輩は魔人……魔界よりこの世界へとやってきた」

 

「ま、魔人? 良くわかんないけど、喋り方も変わって……猫被ってたのだ!? あおいとも被ってるのだ!」

 

「……あおい。今は口を挟まない方がいいよ」

 

「魔界か……聞いたことない世界もあるもんだな。だが、時に時間や空間を超えて世界は交わっている……今も尚」

 

「そういうことだ。さて……人智を超えた力を有していることを今更隠すつもりはない。我が輩、やろうと思えば一瞬のうちに全部の牌をヤコに食らわせることもできる」

 

「やらないでよ!?」

 

「だがそれでは勝負そのものが成り立たぬ。我が輩としても目的を果たせない。今後我が輩は勝負に支障を来す真似はしないと約束しよう」

 

「……良いだろう。だが、覚えておくんだな。もしそのルールを破ったら……」

 

「……!」

 

 遊戯……正確に言うのであれば彼の中に眠るファラオの魂。彼の意思でパズルの千年アイテムとしての力が解放されると、額にウジャト眼の紋様が浮かび上がった。

 

「運命の罰ゲームが待ってるぜ!」

 

「……ふふ。味わってみたいところだが、やめておこう。それより味わいたいものがあるのでな」

 

 ネウロが魔人としての姿を現したことで、遊戯も闇の番人としての扉を開いた。こうして約束が交わされたところで勝負再開。混迷の最中、迷路の出口への道標となる牌が配られていくのだった。

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