好きな勝負師キャラで雀卓を囲ませてみた   作:ゾネサー

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中【うずまき】

 南二局……! 親はアカギ……! 先程の局で1位のネウロから直撃を奪い、持ち点は26700……! 28600になったネウロ、27800のあおいに追随……! 

 

(さすがに魔人なんてものを見せられて、人間を警戒するほどひねてはいなかった……。ならば狙いは……)

 

(え!?)

 

 アカギの第一打は1筒。序盤に整理されやすいヤオチュー牌。しかし後ろで見ていた治は内心かなり驚いていた。

 

「ポンッ」

 

 2巡目。あおいが整理した字牌の西をアカギは早々にメンゼンを崩して奪い去り……

 

「ポン……!」

 

「むっ……」

 

(索子の混一色……? ドラも東だし跳満を狙いやすくて、あり得るのだ)

 

 4巡目。カンチャン待ちの8索は引けずとも、7索に接続する6索を引き入れあおいは9索を切った。するとその牌も鳴かれ、あおいは中張牌も遠慮なく捨てられている萬子や筒子を見て混一色を警戒する。

 

(う……また順番を飛ばされた。この人は隙が見当たらない……手が整ってないのに無理に鳴いたりはしないはず。配牌からある程度完成形が見えてたんだ。……となれば……)

 

(ターンスキップのおかげでドローをする機会が増えた……。デュエリストにとって手札とは可能性。それが広がったならば、相手のトラップを警戒しつつも、前へ進むべきだ!)

 

 弥子と遊戯もアカギの手を考慮しつつも、手を進めていく。しかし順番に恵まれない弥子に対し、遊戯は東四局であおいがアガったピンフの形を目指して着実に手を進めていった。

 

「リーチだ!」

 

(ここは下手に様子見に回るより、流れに身を任せた方が上手くいきそうだもんね)

 

 8巡目。ドン、と効果音が響きそうなほど勢いよく遊戯はリーチ棒を場に投げ払った。

 

(むむむ……)

 

 8筒切りのリーチにあおいは鳴くべきかどうか考え込む。しかし鳴くことで打ち出される6索が混一色気配のアカギ、リーチをかけた遊戯に怪しく、逡巡してしまう。

 

(鳴いても2萬のカンチャン待ち……イッツーのみで値段も安い。ちょっと厳しいのだ)

 

 結局鳴くことはせずに彼女はツモへと移る。すると引き寄せたのは3枚目となる7索だった。

 

(……! よし……。ここは安全を買いつつも、ツモ次第ではあおいが掻っ攫えるのだ)

 

 遊戯の捨て牌に1萬も3萬もあることを確認し、彼女はひとまずカンチャンの整理を優先した。

 

(……えっ?)

 

 捨てられた1萬に治が違和感を覚えたのも束の間、アカギは有効牌を引き入れてみせる。するとノータイムで5索が手出しされた。

 

(5索は現物じゃないのだ……!)

 

(いかにもな危険牌を……!)

 

「フッ……やるな」

 

「ククク……どういたしまして、と言っておこうか」

 

(リスクがあっても通す価値があった、となればこれで混一色のテンパイと見るべきなのだ)

 

『通ると分かっていたんですか?』

 

『いや……ただの推測さ。確信を持てるような捨て牌じゃない』

 

『ここで一発で振り込めばラスもあり得るのに……』

 

『最後はどれだけ自分の考えを信じられるかどうかさ。一発の有無で揺らぐようなら、博徒としてはそこまで……』

 

(他の誰かが言うなら結果論のようにすら感じられるのに……。アカギさんが言うと、とてもそうは聞こえない……)

 

『さて……俺達の狙いがデッキにどれだけ残っているか』

 

『今僕達からは計7枚あるように見えるね』

 

『0では無いと信じたいが……』

 

 自らが構築したデッキではない山札に幾許かの不安を抱えながらも、自らの決断まで揺らがせることなく彼は牌を引き抜いた。

 

(……引けないか。容易くは終わらないようだな)

 

(でもまだチャンスはあるよ。狙いの一方はこれまでの感じを見るに溢れやすそうだし)

 

(そうだな。しかもそちらは4枚だ。たとえ出さずともアガるのは簡単じゃない)

 

 遊戯からも5索が切られると、あおいの手からは3萬が、弥子からも手出しで5索が切り離された。そうして遊戯の次のツモアガりも成されず、あおいのツモ。

 

(……! ここで5索とはね……。どうするあおい? 私なら正直それを切るが……)

 

 彼女のツモは赤ドラ、山に残された最後の5索だった。これにより5・6・7・7・7でアタマとシュンツが完成し、8筒待ちのテンパイが視野に入る。

 

(問題はこれが通るかどうか……。通りさえすれば、8筒は男の子兄ちゃんの現物……ポロッと出て、イッツードラドラの満貫なんてことも)

 

 同様に赤ドラである5筒に目をやりながら、あおいが指をかけたのはカンチャン整理をしているうちにやってきた2索だった。

 

(5索が切られている以上、男の子兄ちゃんには通る……はず。腹ペコ姉ちゃんは比較的序盤に1枚切ってるし平気。問題は冷房兄さん……)

 

 既に混一色テンパイであると読み、しかも自分の手中に後半側の索子が集まってきていることから、あおいには2索がいかにも危険牌のように思えてしまう。手はやがて5索へと伸びていった。

 

(……いや……! あれだけ早い仕掛け。腹ペコ姉ちゃんが2索を切った時点で鳴いたっておかしくないのだ。鳴けない2索の単騎待ちとかそういう線はあるけど、最も怖い2-5待ちはもう消えてるのだ。推測でしかないけど……。安全だけを買う者に運は味方してくれないのだ!)

 

 その手がツモ切りに移りそうになったところで、あおいは胸中に浮かび上がった不安を薙ぎ払い、2索は通るという読みを信じて自信満々の表情で打ち出した。

 

「ククッ……そこを出すか」

 

「……!!」

 

「悪くない判断だ……」

 

「……! あ、あったりまえなのだ! あおいは世界一の勝負師なのだ!」

 

「また随分大きく出たね……」

 

 2索はそのまま引っかかることなく包囲網をくぐり抜けていった。そのことにあおいは表情には出すまいとするも、正直なところ緊張が走った表情が一瞬安心に彩られ、その後また自信満々になるという忙しない表情筋の動きを見せた。

 

(……! ようやく来た……!)

 

 そうして回ってきた弥子のツモ番。早々に一つの役に狙いを絞っていた彼女の狙いが皆に遅れながらもようやく成就していた。テンパイに至った彼女はどちらを切るべきか一応悩んだものの、答えは既に出ていた。

 

「えっ! 3索切りなのだ……!?」

 

 あおいは最後の5索の行方を知っていたので3-6待ちではないことは承知の上だった。しかし知る由も無い彼女が、他の可能性も十分ある生牌の3索を切っていく様に驚嘆していた。

 

(あなたの狙いはこれじゃない……)

 

『……まずいかもな』

 

『えっ?』

 

(先を歩く者と後を追う者。牽制出来る前者が優勢と見れなくもないが、追従する者の利が背を刺すか……)

 

 アカギはそのまま3萬をツモ切りすると、遊戯は3索をツモ切りし、あおいの番へと回る。

 

(来るのだ〜! ここで引いてしまえば、一気に1位フィニッシュが見えてくるのだー!)

 

「……!」

 

(7筒……!)

 

 あおいが引き当てたのは生牌の7筒。すぐにはツモ切りとはいかず、手牌の上に置かれる。

 

(選択肢は三つだ。7筒を切るか。9筒を切るか。降りるか。……降りると言っても、2・3巡すれば怪しくはあるが……)

 

(ここで降りるくらいならさっき通したりはしないのだ。あおいの信じる道は常に前進! 問題はどっちに進むべきなのか……)

 

 7筒を落とせば変わらずイッツー狙いの8筒待ち、9筒を落とせば役無しで索子の4-7と筒子の7の3面待ちへと変わる。しかし9筒も同様に生牌だった。

 

(空腹姉ちゃんが筒子の混一色……にはちょっと見えないのだ。そういえば男の子兄ちゃんは8筒切りリーチ。近い9筒を持っている可能性は十分にあるのだ。8・9での7のペンチャン待ちとか……。そう考えると8筒をもう1枚持ってたからここまで出ない……?)

 

 色々と脳裏によぎったあおいだったが、ドツボにハマりそうな気がして考えを中断すると自らの直感に委ねた。

 

(親以外への振込みをあんまり恐れても良くないのだ。混一色の冷房兄さんには通る以上、タンヤオがつかない9筒なら痛手は考えづらい。7筒もまだ生牌。ここは待ちを広げた上で——)

 

「——リーチ!」

 

(あおいがささっとアガってしまえば良いだけの話なのだ!)

 

 彼女の中で7筒切りも十分に考えられたが、待ちを広げてツモアガりを狙いやすい9筒切りの方が彼女の感覚に合っていた。

 

(どうだ……? 通ったか?)

 

「それを待っていたぜ! ロン……!」

 

「うっ……! 東がアタマのピンフなのだ!?」

 

 しかし切られた牌は遊戯の6-9待ちへと飛び込んでしまった。リーチ・ピンフ・ドラ2の7700が彼女に突き刺さる。

 

(しまった……。赤ドラが2つ来てたし、南場だからドラ関連は薄いと思ってたけど……アタマに使うパターンが抜けてたのだ……!)

 

 対面が使ってるとばかり思っていた東が顔を覗かせ、あおいは自分の中に潜んでいた思い込みに気付かされていた。

 

「……悪いな。頭ハネだ……! 混老頭・対々和・三色同刻……!」

 

「何っ!?」

 

「えっ!? 混老頭なのだ!? だって、第一打は……」

 

 しかし、さらなる驚きが彼女を襲った。混一色と思い込んでいたアカギの手は西・9索×3に加え、1萬×2、9萬×3、9筒×2+1……のヤオチュー牌のみからなる混老頭(ホンロウトウ)だった。さらに対々和(トイトイ)三色同刻(ドウコウ)を加え、18000の直撃……!

 

「あなたは最初から混老頭を狙っていた……。だからこそ、最初に1筒を落とした。最後の、この瞬間のために」

 

「……! やはり……」

 

「ロン……! ドラ2七対子です」

 

「ええっ!? まさかなのだ!?」

 

 これ以上の驚きは無いとすら思ったあおいだったが、そんな彼女はさらに驚くハメになった。東を含めた弥子の9筒待ち七対子にも刺さり、計算上6400の直撃となる。

 

(うっ。暗刻の2索を落として七対子一点狙い……やたら生牌が多かったのはこれだけ対子だったから……)

 

(……6のシリンダー牌が重なっている。7枚となれば引けそうな気がしていたが、下手をしたらデッキにいないこともあり得たのか。奥が深いな……)

 

(この待ちは明らかに俺の手を読んで、頭ハネを狙ったもの……。やってくれる)

 

「……もしかしたら、とは思ってたけど。私もまさかだよ……」

 

「……? どういう意味だ?」

 

「あっ。ええと、頭ハネっていうのは同時にロンがあった場合、振り込んだ人から見て一番ツモが近い人にアガりの優先権があるというルールです」

 

「つまり彼女がアガり……というわけか」

 

「でも三人同時の場合はそうじゃなくて……三家和(サンチャホー)流れ……先程の九種九牌のように流局の扱いになるんです」

 

「……! なるほどな……。三人に対して一人が得点を全て払うのは酷というわけか」

 

「……あ……危なかったのだ……!」

 

「まさか飛び込んだ先が台風の目とはね……。運が良いんだか、悪いんだか」

 

「全てが運では無いさ。そっちの嬢ちゃんに感謝するんだな」

 

「ありがとなのだ〜!」

 

「さっきの干し芋のお返しかな? ……なんて。私も親にアガられると困るからだったりするんだけど」

 

「ふっふっふ。けれどあおいは恩を仇で返すタイプなのだ! 覚悟しておくのだ!」

 

「おおよそ自称したくないタイプだね……」

 

「あはは……お手柔らかにお願いね」

 

 こうして南二局1本場へと突入し、各々配牌へと勤しんでいく。

 

『今のはさすがに危なかったね』

 

『……一生分の冷や汗をかいた気がするのだ」

 

『それでも君が行くと言うなら、私はその背中を押すよ』

 

『頼むのだ。守りに入って勝てる相手じゃないのだ。勝てるチャンスがあるとすれば、運をも味方につけての……』

 

『……!?』

 

 配牌が終えられ、再び親のアカギから牌が切られていく。7巡ほど動きが見えず、水面下で場が動いていた中……

 

「チーなのだ!」

 

(……タンヤオ、か? ドラが出せなくなるが……)

 

(親を終わらせるための策……なのかな?)

 

「ポンなのだー!」

 

 遊戯が手放した3索を鳴いたあおいは2・4の索子と一緒に横に払うと、そのすぐ後の弥子がツモ切りした発を鳴いて一気に2フーロとしていた。

 

(なるほどな。これならドラが含まれる可能性が出てくる。混一色は……見た感じ無さそうだが)

 

(無いとは思うけど……緑一色なんてことも、あるのかな)

 

 7索など複数の索子が早めに切れていることから混一色は予想しづらかったが、赤色を含まない純然たる緑の牌……2・3・4・6・8の索子と発によって構成される役満、緑一色の存在がチラつく。

 

(……彼は緑一色は知らないだろう。となれば混一色の警戒を消せば、鳴きやすい。あり得ないとまでは言い切れないが……)

 

 しかしアカギは別のことに思いを巡らせていた。捨て牌を改めて見渡し、ツモった牌を手中に収める。

 

(これほどの巡目なら字牌整理は済んだはずだ。そして明らかに対子場……。となれば、まだ場に出ていない白の持ち主は……)

 

 アカギが収めたのは字牌の中。白・発・中の刻子を作ることで成り立つ役満、大三元を警戒しての行動だった。

 

(うっ……とうとう引いちゃったのだ)

 

 そして、10巡目。ツモに顔を顰めつつあおいがそのまま切ったのは6索。自ら緑一色の可能性を大幅に断つ一打だった。

 

「ポン!」

 

 すかさず鳴きを入れたのは遊戯。先程アカギが成した対々和から対子・刻子のみでの構成がアガりの条件……役になることを察しての判断だった。

 

(さすがにそろそろ何人かはテンパイ……だからこそ、邪魔なら……)

 

 次に引いた3索をもはや開き直るように堂々と出したあおいは、むしろ安アガりと警戒を解いてもらえるのではないかと期待した。

 

(死神に魅入られてしまったか。さっきの局で天から恵まれた牌で仕留められなかった代償ってところだな)

 

(アカギさんはどっちを残すんだろう。……えっ!?)

 

 するとアカギは次にツモった牌も手に残し、四暗刻単騎待ちのテンパイを崩してしまう。

 

(発を鳴かれたのに滞りが……。誰かと手が被ってる? それなら……ここは仕掛け時だ!)

 

「リーチ!」

 

「……! ポン……!」

 

 その次巡。弥子のリーチ牌をすかさず遊戯が鳴いて真っ向から勝負に打って出た。

 

(リーチなら……中が出るかもなのだ)

 

 あおいの待ちは2萬と中のシャンポン待ちだが、2萬は既に2枚切れているため、実質中待ち。そう、大三元にのみ狙いを絞った待ちだった。恐る恐る切った牌はなんとか二人の間を通り抜けていく。

 

(ここは引くわけにはいかないぜ!)

 

 遊戯のツモ切りは6萬。危険牌ではあったが、弥子はそれに当たることは無かった。

 

(げっ……! ドラの1萬を引いちゃったのだ……)

 

 するとあおいが引き当てたのは生牌のドラ。なんでも切るつもりでいた彼女だったが、さすがに易々とは切れず、勢いよく振り払ってしまいたい気持ちを抑え込んで考え込んだ。

 

(……2萬は4つ見えてるから、1萬がピンフで狙われるってことはないのだ。親の対子崩しがいかにも2つあるうちの1つ崩した感じだけど、それ狙いは無さそうなのだ)

 

 とりあえず最も恐れるべき親からは平気とあおいは判断した。残るは二人。

 

(腹ペコ姉ちゃんは嫌に2萬の出が早いのだ。1・1・2だとしても1・1・2・3なり、1・1・1・2なりで必要になる可能性があるのに。ドラなのにペンチャン整理をすぐさま敢行してたまたま重なったってのは不自然……よし、無いと見るのだ!)

 

 所持していればかなり持っていかれることが予測される弥子に対しても、今回リーチまでに結構時間がかかっていることを加味してあおいは待ちでは無いと読んだ。

 

(問題は男の子兄ちゃん……正直、ちょっとありそうなのだ。北鳴いてるし、混一色じゃ無さそうだし、まず対々和……ドラを含んでのって可能性はあるのだ。にたっち風に言うならあり寄りのありなのだ)

 

 自分のテンパイ寸前で捨てられた2萬、その時点ではメンゼンであったことも考えると、彼女はいかにもありそうに感じられていた。

 

(……ここは2萬切りで小三元にして、3萬のペンチャン待ちに受けるのが丸い……? 冷房兄さんに怪しくなるけど……)

 

 曲げての振込みは彼女が最も嫌うところだった。皆が口を挟むことなく静かに決断を待つ中、あおいはとうとう判断を下した。

 

(……1萬を対々和に振り込んでも満貫辺り。それを恐れて役満を失うなんて、ごめんなのだ。降りず、折れずに……ここは初志貫徹! 勝負を決めにいくのだ!)

 

 あおいの最終判断は危険を省みず、1萬切り。

 

(さあ、どうなるのだ……!)

 

(よ、よくドラを切るなあ……。すごい度胸)

 

「……この場合でも」

 

「むむっ……?」

 

「カンは、出来るんだよな」

 

「「「……!」」」

 

「……ええ。望むのであれば、出来ますよ」

 

「なら、遠慮なくやらせてもらうぜ」

 

(道理で生牌だったわけなのだ……!)

 

「暗カン……ツモで4つ揃えた時と違って、こちらは明カンと呼ばれています。メンゼン……鳴きなしの状態が崩れる他、新たなドラ表示牌は打牌後に開かれます。また、今回の場合大明カンの責任払いが発生する可能性がありますね……」

 

(……さすがにその可能性は考えてなかったのだ)

 

「良ければ説明してもらえないか?」

 

「簡単に説明すると貴方が嶺上開花によりアガった場合、ツモアガりになりますが、カンをさせたあおいが全て支払うことになります」

 

「なるほど。ロンと同じような処理になるわけか」

 

「そういうことです」

 

(ドラも4つになったし、ここで引ければ多分1位になれるね)

 

(ああ。勝負の瞬間は逃さなかったようだぜ)

 

「頼むのだ〜。勘弁なのだ〜」

 

「引いても恨みっこなしだぜ」

 

(……さて、我が輩に何を見せてくれよう。奇跡か、あるいは……)

 

「……ドローッ! ……!?」

 

 引き抜いたリンシャン牌は……中。

 

「……少し、考えさせてもらうぜ」

 

「ふ、ふぅ……助かったのだ〜」

 

 予想以上のピンチからひとまず脱したことにあおいが安堵する中、今度は遊戯達がどうすべきか考え込んでいた。

 

(ここまで来たら攻めたいところではあるけど……)

 

(攻めの瞬間こそ隙が生まれるものだ……。一旦落ち着いて考えてみようぜ)

 

(そうだね。その牌はまだ場に出てない……。しかも3つ揃えると得な牌だよね)

 

(ああ……。問題は今この牌がどれだけ危険か、だが……)

 

(どうしたの?)

 

(……いや尽きている方角の牌に対して、残り3つの牌がどれも生きているなと思ってさ)

 

(……! そういえば……)

 

(このゲームはかなり奥が深いようだ。俺達の知らない可能性をまだまだ秘めている……。そこにはある程度の法則性が感じられる。……俺はこの感覚を信じるぜ!)

 

 遊戯の決断は……ドラ4を諦めての降りだった。半端に未練を残さずに、既に1枚河に見えていて安牌の可能性が高い対子の南が叩き落とされる。

 

(げっ。ダブ南だったのだ!? 読みが甘かったのだ……)

 

(ほう……素晴らしい……。知識は無くとも、自らの知恵で唯一の正解を導いたか……)

 

 実は弥子と遊戯はどちらも1索の対子を持っており、切ってしまえば振り込みが決まっていた。

 

「確かここで開くんだったな」

 

 ドラ表示牌が開かれるとそこにあったのは南だった。遊戯はアガり牌を引き当てられなかったことになんとなくの納得を得る。

 

(で、でも手出しの南ってことは降りなのだ。まだ大三元のチャンスは残ってるのだ)

 

 続くあおいが6萬をツモ切ると、弥子が引き抜いたのは2筒だった。

 

「……! ツモ……!」

 

「うっ……!?」

 

「ほう……。三暗刻を成立させたか」

 

 唯一彼女に残されていたアガり牌が引き抜かれ、高々とツモアガりが宣言された。大物手の不発にあおいはさすがに焦りを顔に浮かべる。

 

「裏は発と……9索! よしっ。リーチ・ツモ・三暗刻・裏ドラ2、1本場も入って6100・3100……!」

 

「やられたぜ……」

 

(カンをしてアガりを逃すと代償があるもんだな……。しかしあそこは行ってよかったはずだ)

 

『ううっ……。蹴られた上に親被りまで……。これで僅差からだいぶ離されちゃいましたね』

 

『……ふっ、地獄行きの切符を切るよりは大分マシさ』

 

『え?』

 

『この世の終わりみてえな顔をする局面じゃねえってこと』

 

 そう言うとアカギは手中に残された中と共に、白も闇へと葬り去ったのだった。

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