「セーニャーもう行くわよー」
「えーもうちょっと待ってよ姉ちゃん」
「あんた...それ何杯めのパフェよ。腹壊すからいい加減にやめなさい。全く、そのちっこい体のどこにその量が入るのよ...」
「姉ちゃんも食ってただろ?それも2杯もね」
「う、うるさいわね。今日中にホムラの里につかないと勇者達に合流できないでしょ!」
「はいはい、今行くよ姉ちゃん」
俺ことセーニャには前世の記憶がある。
前世の俺は男でドラクエが好きだった。その中でもドラクエⅪが一番のお気に入りだった。だが、ベロニカが死ぬのだけは許せなかった。過去では生きているとはいえこれだけは許せなかった。
セーニャは回復呪文が得意だったはずだ。ベロニカを守れるように回復呪文を使えるようにならないといけない。
俺はベロニカと特訓をして原作以上の力をつける必要があると感じていた。
目標は命の大樹にたどり着く前にウルノーガを始末することだ。
そのためにはグレイグを何とか説得し、協力してもらう必要がある。
10歳のある日、俺はベロニカを守る力をつけるためにベロニカと呪文の特訓をしていた。
「メラ!」
「バギ!」
ベロニカがメラを放ち俺がバギを放った。
ベロニカのメラは俺のバギによって完全にかき消され、ベロニカの肌を浅く切り裂いた。
「く、やるわねセーニャ」
「姉ちゃん!大丈夫⁉︎」
やってしまった。俺はベロニカの体に傷をつけてしまった。
「あんたの呪文は厄介ね...あたしの呪文が全部かき消されちゃうじゃない」
「ホイミ」
俺は傷つけてしまったベロニカの体を癒すためホイミを唱えた。
「ごめんね...姉ちゃんの体を傷つけてしまって」
「もう!セーニャ!あたしに対して必要以上に過保護になるのはやめなさいといつも言ってるでしょ!」
「あたしはセーニャのお姉ちゃんなんだから...」
ベロニカが顔を少し赤くしながら呟いた。
俺はこのベロニカの様子を見て決意した。
この命に変えてでも絶対にベロニカを死なせはしないと。
物語の始まる一年前
俺達姉妹の遊び場であり、拾われた場所である静寂の森で今後の展望について考えを巡らせているとベロニカがやってきてこんなことを言い出した。
「セーニャ?なんかあたしに隠しごとしてるわね?」
「ね、姉ちゃんなんでそう思うんだ?」
いつも通り鋭いベロニカに動揺した返事を返してしまったがもう遅い。
「あたしはあんたのお姉ちゃんよ?妹に何か困ったことがあったら手を貸すのは当たり前でしょ」
「ごめん姉ちゃんそれは話せないんだ...」
原作知識は話すことによって原作との剥離が生じる恐れがあった。
そんな危険な橋を渡る勇気は俺にはなかった。
「セーニャ...あんたにとってあたしはそんなに信用ないの?
妹であるあんたに助けられてばっかりであたしにも少しは協力させてよ!!あんまり心配かけないでよ!!」
ベロニカが肩を震わせて涙を滲ませながら訴えた。
「姉ちゃん...」
後悔した。ベロニカにここまでの心配をかけているとは思わなかったのだ。俺は話せる原作知識をベロニカに話すことにした。
「ごめんね姉ちゃんそこまでの心配を掛けているとは思わなかったんだ。俺の今話せる知識を聞いてほしいんだ」
「ふん!最初からそう言えばいいのよ!これからはこのベロニカさまに遠慮なく頼るのよ!」
話す内容はデルカダール王がウルノーガに憑依され意識を失っていること、ベロニカがデンダという魔物に子供の姿に変えられること。最後に主人公こと勇者が悪魔の子と言われ始めた時点でホムラの里に行けば勇者に会えるということを伝えた。
ベロニカが旅の途中で命を落とすかもしれないと言うことは伝えなかった。ベロニカが不安を感じると思ったからだ。
それにベロニカは俺が守ると決めている。
「ふーん、あんたの話によればあたしはデンダとかいう魔物に魔力を吸い取られて子供の姿に変えられるのね」
「姉ちゃんは疑わないのか?俺が嘘をついているかもしれないって」
「最初は当然嘘だと思ったわよ。でもセーニャの真剣な表情を見て真実だと気づいたわよ。それに妹の言うことは信じてあげないとね」
「出発するわよセーニャ!そのデンダとかいう魔物はこのベロニカさまがぶっ倒してやるわ!」
俺はそんな姉ちゃんの様子を頼もしく思いつつも同時に危なっかしくも思っていた。
「わかったよ姉ちゃん、脅威は少しでも減らしておくに限るしね」
大丈夫だ。俺たち姉妹は原作のこの時期よりもとても強くなった。
デンダ程度に遅れをとることはないとこの時は楽観的に考えていた。
こうして物語が始まる一年早く、俺たちはラムダの里を旅立つことになった。
続くかは未定です