イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
ゆるキャン△劇場版、もうすぐで公開ですね!
僕は一足先に完成披露上映会にお邪魔してきましたが、
一言でいうと最高な何度も観に行きたい作品でした!!公開後も観に行きます!
今回は短めですが、新章突入です!
第十三話 「さん付け禁止!」
「今年も終わりやな〜」
隣を歩くあおいが言う。
今年最後のバイトを終えた俺と彼女は寒空の下を、手を繋ぎながら家を目指し帰っていた。
あおいさんの手には先日のクリスマスキャンプでプレゼントした手袋が、そして俺は当人から贈られたマフラーを首に巻いている。
「明日からあおいさんは高山だっけ?」
元日から3日まで休みを貰ったあおいとあらたは各々冬休みの予定が入っていた。
「せやでー。家族で親戚の家に遊びに行くんや」
「いいよね。飛騨高山」
「リンちゃんもグループチャットで同じ事言うとったな」
「そっか。他のみんなもお休みなんだっけ?」
「あー、あきだけ元日から4日くらいまでフル出勤なんやて」
「oh…」
言われてみれば、挨拶事が行われるお正月にとって、大垣さんが働く酒屋さんは稼ぎ時でもあるからしょうがない。
「でも、初日の出は見に行けるんだよね?」
「そうみたいや。その後にバイト行く言うてたわ」
「でも良かったのかな。俺やひかりまで一緒しちゃって」
あおいからもお隣さんである、あらたとひかりの兄妹も有難い事に初日の出を見に行く事に誘われていた。
「もちろんや。なんならあきもそのつもりだったみたいやし、もうあらたくんも同じ野クルの仲間やん」
前回のクリスマスキャンプで正式に野クルとして迎えられた俺はこうしてあおいさんだけでなく、他の野クルのメンバーとの交流が増えてきたのだ。
だが、今回は残念ながら各務原さんが浜松に帰ると言う事で、メンバー全員が揃うわけではなかった。
「ありがとう。ひかりもあかりちゃんと初日の出見るの楽しみにしてたから、妹さんから大きい車まで借りて運転してくれる鳥羽先生にも感謝しないとね」
「快く引き受けてくれて良かったわ〜」
初日の出を見に行くメンツは小牧兄妹、犬山姉妹、大垣さんに鳥羽先生という中々の人数のため、先生が普段使用している車とは違う車で外出する事となっていた。
クリスマスキャンプといい、今回といい、鳥羽先生は本当に生徒想いの優しい方である。
「6時頃に先生が迎えに来てくれる言うてたから、うちの前集合でええかな?」
「うん、分かった」
今日はこの後家に帰って夕飯を食べ、明日に向け早く寝るつもりだ。
ぼーっとする事が多いひかりの準備を手伝うのが大変な事を考えると、余裕を持っていた方がいいだろう。
「あらたくんは正月に家族でどこか出掛けたりはせんの?」
家が見えて来たところであおいが言った。
特に出掛けるという事はなかったが、来客がある事を伝えていなかった事を思い出す。
「うん。親戚はみんな東北で親も休みが元日だけだから、ゆりな…従姉妹が遊びに来る事くらいかな」
家を前にして彼女の足が止まった。
「あおいさん?」
急に足を止めた彼女を心配し声をかける。
家までもう少しだというのに、どうしたのだろうか。
「従姉妹…って、女の子?」
「え、うん。そうだけど」
「いくつなん?」
「同い年、だけど…?」
「ふーん。そうなんや」
すると、あおいは口を尖らせて再びスタスタと歩き始める。
なんだかさっきまでより、少し歩くスピードが早いような。
「あのっ、あおいさん?もしかして、何か怒ってます?」
「別にー」
「いや、怒ってるよね!声に感情がこもって無いんですけど!?」
ピタッと足を止めて振り返るあおいさんには、怒りマークの様なものが見えた気がした。
顔は笑っているのになんか怖いです!
「別にあらたくんが、私の事はさん付けで、そのゆりなちゃん?って子の事を呼び捨てにしている事なんてぜーんぜんっ、気にしてへんよ〜」
いや、絶対気にしてるじゃないですか。
と、心の中で思いつつも、これ以上怒らせない為に口にはしなかった。
「ゆりなとは幼馴染でもあるからさ。あとは親戚ってだけで、別に何かあるってわけじゃ」
「へー、じゃあ、いつになったら私の事は呼び捨てで呼んでくれるんやろな〜」
ズイッと一歩前に出るあおい。
あらたはそれに少し気をされながらも、頭の中で色々と考えていた。
初めてあおいさんと会った時。というか、女性は基本さん付けで、苗字呼びだし、下の名前で呼ぶなんて家族やゆりなを除けばあおいさんだけなんだけど、どうやらそういう問題でも無さそうだ。
「あおい…ちゃん?」
ぷいっ。
え〜、そっぽ向かれたんですけど。
「その従姉妹の子が呼び捨てなら、私も呼び捨てにしてくれんと嫌や」
顔を背けてはいるが、頬が少し膨らんでいるのが分かった。
その可愛さに思わずほっぺたを突きたくなるが、余計に怒られそうなのでここは我慢する。
「じゃあ、…あおい」
こっ恥ずかしい気持ちになりながらも、ボソッと彼女の名前を口にする。
「…………」
しかし、一向に彼女はこちらには向き直ってはくれない。
「あおい?」
「…………」
「……あのー、そろそろこっち向いてくれないかな?」
もう一度名を呼んでみても反応がないので、手を添えて耳元で聞こえるように言うと、ようやくこちらに振り返ってくれた。
しかも、顔が真っ赤だ。なんだ、ちゃんと聴こえているじゃないか。
「機嫌治った?」
「……うん」
こくりと頷く彼女。
そんなあおいの姿を見て、思わずぎゅと抱きしめる。
「あらたくん!?」
自分でもいきなりこんな事をしてしまうなんて思わなかったが、自然とそうしていた。
胸の中で恥ずかしそうに声をあげる彼女を無視してそのまま頭をぽんぽんと撫でてやった。
ほんと俺の彼女可愛すぎる。
「いきなりハードル高い事させられたお返し」
「…だって、あらたくんが付き合い始めてからもずっとさん付けやから。……ほんまやったらちゃん付けでも嬉しかったんやけど、ゴニョゴニョ…」
と、少しずつあおいさんの……。いや、あおいの声が小さくなっていく。
普段冗談を言う事があたり前の彼女がたまにこうなるのを見ると、いつものお返しに少しいじめたくなってしまう。
そんなギャップも俺は好きなんだけれど、それは本人には内緒だ。
◇◇◇◇◇
「うーん……むにゃむにゃ」
「おーい、ひかりー。そろそろ起きろー」
年を越して朝を迎えないうちに出掛ける時間が近づいて来ていた。
夕飯を食べて少ししてから俺よりも早く寝ていたひかりは、今も夢の中にいる。
そんな妹の肩を揺すって声をかけ続けた。
時刻は朝の5時45分。
もうすぐであおい達と約束していた時間となろうとしていた。
「早く起きないと初日の出見に行けなくなるぞ〜」
「…初日の出〜?」
そこでようやく身体をむくりと起こし目を擦りながら言葉を話し出した。
「あ〜、ポチこんな所にいたんだね。ヨシヨシ」
「誰がポチだよ」
そう言いながら、ベッドの横に膝をついていた俺の頭を撫でてきた。
完全に寝ぼけてるなこれは。
ちなみにポチというのは、ひかりが愛用している犬の抱き枕の事である。
どうやら、夢の中でポチと遊んでいたらしい。夢の中はなんでも有りだからな。生命の宿ったポチとでも遊んでいたのであろう。
その本体はというと、ひかりの横にベターッとくたびれていた。
「ひかりー。頼むー、起きろ〜」
「んー?」
肩を揺すりながら、ほっぺたをぷにぷにとしてやると、ようやく重たい瞼が開かれる。
「あ〜、お兄ちゃんだ〜」
「うん、やっと起きたな。そろそろ迎えが来るから準備するぞ。初日の出見に行くから」
「そうだった〜。初日の出〜」
珍しく行動が早い(完全に寝坊してたけど)。
ひかりは立ち上がって顔を洗いにパタパタと洗面所を目指してかけて行った。
「父さん達寝てるから静かに、って聞こえてないよな」
俺が言葉を言い切る前に、ひかりが階段を降りていく音が聞こえた。
なら、先に玄関で待ってるか。
そうして、着替えに部屋へと戻ってきたひかりに声を掛けて一度外へ出た。
「さむっ!」
まだ日が昇っていないために冷えた外の空気が一気に身体を包み込む。
カイロや上着で対策をしてはいたけれど、外の寒さはそれを上回っていた。
「お兄ちゃん、お待たせ〜」
予想よりも早く、ひかりが玄関のドアを開けて外へ出てきた。
「おー、早いな」
「えへへ、あかりちゃんも一緒だから楽しみ」
俺は少し乱れたひかりのマフラーを直してやりながら褒める。
ひかりも今日の初日の出は誘われた日から楽しみにしていたのかワクワクとした表情を浮かべていた。
再び立ち上がって家に鍵をかけてから、あおいの家の前へと移動する。
第2章は原作&オリジナルを半分半分といった感じでお送りしていく予定です!