イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
超超超お待たせ致しました!!
ここ半年程プライベートが忙しく、中々描く時間を設けられていませんでした。
今後はゆったりと更新していく事になると思いますが、改めてよろしくお願いします。
電車に揺られてどのくらい経っただろうか。
外が寒かった事もあって、車内の暖房のおかげでだいぶ眠い。
俺たちは今、山中湖へ向かっていた。
野クルの部長である大垣さんの企画で決まった山中湖キャンプ。
今日は、そのキャンプ実施日なのだ。
「あらたくん、大丈夫?」
「ん、何とか」
かくん、と頭を揺らしたところで隣のあおいに声をかけられる。
「暖かくて少し眠くなっちゃっただけだから」
「大丈夫だぞ小牧」
2人で話していると、あおいの隣から大垣さんがひょこっと顔を出す。
「恵那はあっという間に、夢の中へと旅だったからな」
前に屈みながら一番端に座る斉藤さんを見ると、眼を瞑りスースーと、息をする彼女の姿があった。
「恵那ちゃんはマイペースやなぁ」
そんな話をしながら少しすると、目的地の駅に到着する。
「富士山駅…」
『ついたーっ!!』
駅を出てすぐの所で皆両手を挙げて天を仰ぐ。
「でっかい鳥居がシブいぜー」
前に出てスマホのカメラを向ける大垣さん。
入り口に聳え立つ大きな鳥居の前で、ちゃっかり俺も左右にいる斉藤さんとあおいと共にピースをしてシャッターに収まる。
そうして、俺たちは足を進めた。
「くしゅん!!」
あおいが横でくしゃみをする。
「ちゅうか、むっちゃ寒いなぁ」
「昨日また雪降ったみたいだし着込んで来て良かったね」
「あらたくんはそこまで寒くなさそうやけど」
「え、俺?」
あおいの言う通り、あらたは他の三人に比べれば、そこまで苦な表情を浮かべてはいなかった。
「まぁ、もともと東北の方に住んでたし、それなりには我慢できるよ。それに、あおいから貰ったマフラーもあるし」
俺は首元に巻いたマフラーに触れながら言った。
「あらたくん…」
「おーおー、朝からお熱いじゃねーか。お二人さん」
「こっちが照れてしまいますなー」
2人を横目に千明と恵那はニヨニヨとした視線を送る。
「それはそうと、あきちゃん。ここからはどうするの?」
「おう。周遊バスが出てっからそれに乗っ…てぇっ!?」
瞬間、前を歩く大垣さんが踏み潰した雪に、脚を取られる。
「むわっ!!」
気づけば、ずるっ、と盛大に宙を舞い。
がしっ。
「ふわっ!?」
「あおい!!?」
上着の袖を掴まれたあおいが前に倒れそうになる。
そんな彼女の腰の辺りを、俺が瞬時に掴んだ。
だが、
「うおっ!?」
助けに入ったあらただったが、彼もまた脚を取られ足腰に力が入り切らず、前のめりに倒れそうになる。
ピタッ。
どうにかこうにか、三人縦に並んだ形で身体は留まり、ケガに至ることは無かった。
が、この体制はキツい。
「え、恵那。たすけてくれ」
「ふふっ」
カシャ。
唯一巻き込まれなかった斉藤さんは、そんな俺たちをシャッターに収めるのだった。
◇◇◇◇
「山中湖行きフリーパスでお願いします」
「はい。一人1340円ね」
千明の案内により、バスの乗車券を購入しに来た一行。
「へぇー、二日間乗り降り自由かぁ。キャンプ場行く前に山中湖観光できるやん」
「だね。俺、山中湖行くの初めてだからすごい楽しみ」
大垣さんから手渡されたパスには、あおいの言う通りお得な情報が記されていた。
「まてまて、時刻表を見てみろお前ら」
「えっ」
それを聞いて、窓口の横に張り出された時刻表を見る。
「山中湖右回りが4本。左回りが5本……」
「これ、ちょっと降りてフラフラしてたらすぐ最終バスだね」
「ゆっくり…ってわけには行かなそうだね」
「だろ?」
あまりにも予想に反するバスの本数に、少々不安を覚えた。
「まぁ、あたしに任せとけって。バッチリ決めて来てっから」
そんな俺たちとは裏腹に、大垣さんは余裕の表情で親指を立てる。
なんと頼りになる佇まい。
「さすが部長だね」
「そうだろうそうだろう。…ってもうバス来てんじゃん!?」
うん、ごめん。前言撤回だ。
窓から見えるバス停には、すでに俺たちが乗る予定のバスが停車していた。
「急げお前らっ!!あれに乗り遅れたら、一時間待ちだぞっ!!」
「今バッチリて言うたばっかりやーん」
なんとかダッシュでバスへと乗り込んで、一番後ろの席に四人で腰を下ろす。
「で、これからどうするの?」
「ああ」
落ち着いた所でバスは出発し、斉藤さんが今後の予定を大垣さんに尋ねる。
俺とあおいも斉藤さん同様、今後の予定をまだ聞かされてはいない。
「まずカリブー富士吉田に寄って、次に山中湖の温泉に行く。んでスーパーで買い出ししてキャンプ場に到着。明日は山中湖観光だ」
『おー』
バタバタしたキャンプの始まりだったが、聞かされた今後の予定は、どうやらしっかりとしているようだ。
個人的にも楽しみな観光が、最後にあるというのも、なんだか乙な感じがする。
「温泉を外さない所がナイスやで、あき!」
「あたぼうよ!!」
「けど、なでしこちゃんもリンちゃんもバイト。先生も用事で来れんなんてなぁ」
「働いてると休みが合わなくなるし、仕方ないよ」
「人が働いてる時にするキャンプほど、楽しいもんはねーぜ」
クックックッ、と悪い笑みを千明が浮かべる。
「キャンプ場着いたら写真送ってやろーwケケケケ」
「ほんま悪いヤツやで」
「うん悪いヤツや」
キャンプ好きの二人からしたら、それなりのダメージなんだろうなぁ。ほんと悪いヤツやな大垣さん。
「でも、バイト決まって良かったよね。なでしこちゃん」
「今度みんなで寄ってこか」
今日のキャンプの楽しみを胸に、おしゃべりをしながら俺たちは、最初の目的地であるカリブー富士吉田店を目指した。
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
こんなに楽しいキャンプが、まさかあんな事になるなんて、思っても見なかったんだ。