イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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超超超お待たせ致しました!!
ここ半年程プライベートが忙しく、中々描く時間を設けられていませんでした。
今後はゆったりと更新していく事になると思いますが、改めてよろしくお願いします。


第十八話 「富士山駅」

 

 

電車に揺られてどのくらい経っただろうか。

外が寒かった事もあって、車内の暖房のおかげでだいぶ眠い。

 

俺たちは今、山中湖へ向かっていた。

 

野クルの部長である大垣さんの企画で決まった山中湖キャンプ。

今日は、そのキャンプ実施日なのだ。

 

「あらたくん、大丈夫?」

 

「ん、何とか」

 

かくん、と頭を揺らしたところで隣のあおいに声をかけられる。

 

「暖かくて少し眠くなっちゃっただけだから」

 

「大丈夫だぞ小牧」

 

2人で話していると、あおいの隣から大垣さんがひょこっと顔を出す。

 

「恵那はあっという間に、夢の中へと旅だったからな」

 

前に屈みながら一番端に座る斉藤さんを見ると、眼を瞑りスースーと、息をする彼女の姿があった。

 

「恵那ちゃんはマイペースやなぁ」

 

そんな話をしながら少しすると、目的地の駅に到着する。

 

 

「富士山駅…」

 

『ついたーっ!!』

 

駅を出てすぐの所で皆両手を挙げて天を仰ぐ。

 

「でっかい鳥居がシブいぜー」

 

前に出てスマホのカメラを向ける大垣さん。

入り口に聳え立つ大きな鳥居の前で、ちゃっかり俺も左右にいる斉藤さんとあおいと共にピースをしてシャッターに収まる。

 

そうして、俺たちは足を進めた。

 

「くしゅん!!」

 

あおいが横でくしゃみをする。

 

「ちゅうか、むっちゃ寒いなぁ」

 

「昨日また雪降ったみたいだし着込んで来て良かったね」

 

「あらたくんはそこまで寒くなさそうやけど」

 

「え、俺?」

 

あおいの言う通り、あらたは他の三人に比べれば、そこまで苦な表情を浮かべてはいなかった。

 

「まぁ、もともと東北の方に住んでたし、それなりには我慢できるよ。それに、あおいから貰ったマフラーもあるし」

 

俺は首元に巻いたマフラーに触れながら言った。

 

「あらたくん…」

 

「おーおー、朝からお熱いじゃねーか。お二人さん」

 

「こっちが照れてしまいますなー」

 

2人を横目に千明と恵那はニヨニヨとした視線を送る。

 

「それはそうと、あきちゃん。ここからはどうするの?」

 

「おう。周遊バスが出てっからそれに乗っ…てぇっ!?」

 

瞬間、前を歩く大垣さんが踏み潰した雪に、脚を取られる。

 

「むわっ!!」

 

気づけば、ずるっ、と盛大に宙を舞い。

 

がしっ。

 

「ふわっ!?」

 

「あおい!!?」

 

上着の袖を掴まれたあおいが前に倒れそうになる。

そんな彼女の腰の辺りを、俺が瞬時に掴んだ。

 

だが、

 

「うおっ!?」

 

助けに入ったあらただったが、彼もまた脚を取られ足腰に力が入り切らず、前のめりに倒れそうになる。

 

ピタッ。

 

どうにかこうにか、三人縦に並んだ形で身体は留まり、ケガに至ることは無かった。

が、この体制はキツい。

 

「え、恵那。たすけてくれ」

 

「ふふっ」

 

カシャ。

 

唯一巻き込まれなかった斉藤さんは、そんな俺たちをシャッターに収めるのだった。

 

◇◇◇◇

 

「山中湖行きフリーパスでお願いします」

 

「はい。一人1340円ね」

 

千明の案内により、バスの乗車券を購入しに来た一行。

 

「へぇー、二日間乗り降り自由かぁ。キャンプ場行く前に山中湖観光できるやん」

 

「だね。俺、山中湖行くの初めてだからすごい楽しみ」

 

大垣さんから手渡されたパスには、あおいの言う通りお得な情報が記されていた。

 

「まてまて、時刻表を見てみろお前ら」

 

「えっ」

 

それを聞いて、窓口の横に張り出された時刻表を見る。

 

「山中湖右回りが4本。左回りが5本……」

 

「これ、ちょっと降りてフラフラしてたらすぐ最終バスだね」

 

「ゆっくり…ってわけには行かなそうだね」

 

「だろ?」

 

あまりにも予想に反するバスの本数に、少々不安を覚えた。

 

「まぁ、あたしに任せとけって。バッチリ決めて来てっから」

 

そんな俺たちとは裏腹に、大垣さんは余裕の表情で親指を立てる。

なんと頼りになる佇まい。

 

「さすが部長だね」

 

「そうだろうそうだろう。…ってもうバス来てんじゃん!?」

 

うん、ごめん。前言撤回だ。

 

窓から見えるバス停には、すでに俺たちが乗る予定のバスが停車していた。

 

「急げお前らっ!!あれに乗り遅れたら、一時間待ちだぞっ!!」

 

「今バッチリて言うたばっかりやーん」

 

なんとかダッシュでバスへと乗り込んで、一番後ろの席に四人で腰を下ろす。

 

「で、これからどうするの?」

 

「ああ」

 

落ち着いた所でバスは出発し、斉藤さんが今後の予定を大垣さんに尋ねる。

俺とあおいも斉藤さん同様、今後の予定をまだ聞かされてはいない。

 

「まずカリブー富士吉田に寄って、次に山中湖の温泉に行く。んでスーパーで買い出ししてキャンプ場に到着。明日は山中湖観光だ」

 

『おー』

 

バタバタしたキャンプの始まりだったが、聞かされた今後の予定は、どうやらしっかりとしているようだ。

個人的にも楽しみな観光が、最後にあるというのも、なんだか乙な感じがする。

 

「温泉を外さない所がナイスやで、あき!」

 

「あたぼうよ!!」

 

「けど、なでしこちゃんもリンちゃんもバイト。先生も用事で来れんなんてなぁ」

 

「働いてると休みが合わなくなるし、仕方ないよ」

 

「人が働いてる時にするキャンプほど、楽しいもんはねーぜ」

 

クックックッ、と悪い笑みを千明が浮かべる。

 

「キャンプ場着いたら写真送ってやろーwケケケケ」

 

「ほんま悪いヤツやで」

 

「うん悪いヤツや」

 

キャンプ好きの二人からしたら、それなりのダメージなんだろうなぁ。ほんと悪いヤツやな大垣さん。

 

「でも、バイト決まって良かったよね。なでしこちゃん」

 

「今度みんなで寄ってこか」

 

今日のキャンプの楽しみを胸に、おしゃべりをしながら俺たちは、最初の目的地であるカリブー富士吉田店を目指した。

 

 

この時の俺たちは、まだ知らなかった。

こんなに楽しいキャンプが、まさかあんな事になるなんて、思っても見なかったんだ。

 

 

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