イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第十九話 「大きなカリブーとカリブーくん」

 

『次は富士山レーダードーム前ー』

 

ピンポーン。

 

バスに乗り、まったりとした時間を過ごし、最初の目的地へと辿り着く。

 

「うー、やっぱさみーなー」

 

「だねー。さすが避暑地」

 

バスを降りると、冷たい空気が肌を撫でる。

 

「ここって、……道の駅?」

 

「みたいやね」

 

降りて最初に目に入ったのは、横長の建物。

 

周囲には大きな駐車場もあり、観光客や地元の人らしき人たちで賑わっていた。

 

「富士ビール館だって、先生喜びそー」

 

「よっし!土産に買っていってやろうぜー」

 

「いや、俺ら未成年だから」

 

確かに鳥羽先生なら喜びそうだが、それは頂けないぞ大垣さん。

 

「まぁ冗談はさておき、着いたぞ」

 

大垣さんを先頭にした俺たちの前には、一際大きな施設が出迎える。

 

「これはでかいな」

 

「身延のカリブーより広いんやない?」

 

「ああ。この辺で一番でかい直営店らしい」

 

屋根には、見覚えのあるアルファベットの文字が掲げられている。

野クルにとっては、馴染みのあるアウトドアショップだ。

 

「あっ、カリブーくんや!!」

 

「カリブーくん?」

 

店内に入って出迎えてくれたのは、二足歩行の鹿を模したマスコットキャラクター、『カリブーくん』であった。

 

こんな等身大サイズのカリブーくんを見るのは俺も初めてだ。

なんとも言葉には言い表せないオーラのようなものを感じる。

 

斉藤さんはというと、初めて見るのか首を傾げている。

 

「あっ」

 

しかし、あおいはいち早く自身の足をカリブーくんの方へ向けた。

 

「はぁ〜、もふもふやぁ〜」

 

自身の体重を預けるように、あおいは両腕でひしっと、カリブーくんを抱きしめる。

 

「もふもふだね」

 

どうやら、斉藤さんも気に入ったようだ。

 

「お子様だなぁ。抱きつくなよ」

 

千明は呆れ口調で言う。

 

「え、ええやんか別にー」

 

あおいは千明の発言に口を窄ませる。

 

「まったく、しょうがないヤツだなぁ。お前もそう思わないか。小牧」

 

しかし、俺の耳には二人の会話は届いていなかった。

なぜなら、

 

「これは抱きつかざるをえない」

 

「せやろー」

 

俺もしっかりとカリブーくんのもふもふ具合を堪能していたからだ。

俺とあおいが抱きついても、まだ余裕のあるカリブーくん。皆さんもおひとつどうですか!(¥360,000)

 

「お前もかよ…」

 

千明はあらたを見て、ため息をつく。

だが、当然そんな事は本人に届いていないわけで。

 

「恵那ちゃん!写真や写真!!」

 

「はーい。あっ、小牧くんも一緒に入ったら?」

 

「えっ!何これ写真とか撮っていいの!!」

 

目を輝かせるあらたに恵那は、うんうん、と笑顔でうなづいた。

 

「お前らテンション爆上がりじゃねーか」

 

夢にまで見た等身大カリブーくんをバックに、写真撮影を満喫する三人。しかし、千明はそれに流されず、いち早く店の奥へ行こうとしていた。

 

「ほら、いつまでもそんな事してないで、さっさといくぞ…」

 

が、そこで彼女の足が止まった。

 

(あ、足が動かない!?)

 

まるで金縛りにでもあったかのように、千明はその場で硬直をする。

 

(まさか!?)

 

どうにか動かせる視線だけを、事の原因であろうモノ(カリブーくん)に向けた。

 

(こいつの間合いに、入っているのか?)

 

すると、千明の身体は吸い寄せられるように、途端にカリブーくんの方へと距離を詰めていく。

 

(ダメだ!引き寄せられるっ!!)

 

ぼふっ!

 

「……結局抱きついとるやないかい」

 

カシャカシャ。

 

先程までカリブーくんに興味を示そうとしなかった大垣さん。

理由は分からないが、こちらの世界へ来た証拠として、俺と斉藤さんは逃さずシャッターを切った。

 

◇◇◇◇

 

アウトドア商品の売り場まで進んでいくと、どれも目を引く商品ばかりが並んでいた。

 

「富士山が近いせいか。登山グッズが充実しとるなぁ」

 

「あっ、これ俺たちが使ってるのと同じシュラフだ」

 

俺は壁際にさげられていた見覚えのあるシュラフに手を触れる。

 

「こっちは私のと同じシュラフだ」

 

偶然にも、斉藤さんが所有している高級シュラフも並んでいる。あおいの言う通り、確かに充実した商品ラインナップだ。

 

「いつか登山とかもしてみたいなぁ」

 

「それもええなぁ。でも登山はもうちょっと暖かくなってからの方がええんやない?」

 

「確かに、今の時期は大変かも」

 

言われてみると、確かにこの時期の登山はどちらかと言うとベテランの人が行ってそうなイメージだ。

 

「そうだね。春とか夏になったら行ってみようかな。もう少しカジュアルなハイキングとか」

 

「遠足みたいで楽しそうやね。それなら私お弁当作っていくわ」

 

あおいちゃんのお弁当。

キャンプごはんも美味しかったし。考えるだけでお腹が空いてくる。

 

「春になれば、ちくわも連れて行けそうだし私も行きたいかも」

 

「お前らもう先の話してるのかよー。キャンプはこれからだってのに。……まぁ、楽しそうではあるけど」

 

今はキャンプ中だと言うのに、もう来年度の予定の話をしている事に、面白くなって皆で笑った。

 

ここに各務原さんがいたら、『登山キャンプ!?やろうやろう!!』とか言いそうだな。

 

 

「なぁなぁ、これ良くないか?」

 

「ん?」

 

しばらく店内を見て回っていると、大垣さんが何やら見つけたらしい。

 

「おー、オシャレ食器や」

 

そこには、棚に吊り下げられている食器類が並んでいた。

どれも木目調の自然を思わせるものばかりだ。

 

「北欧っぽい木皿だね」

 

「これさ、プラスチックみたいだよ」

 

「あっ、ホンマや」

 

実際手に取ってみると、まずは軽さに驚いた。

よく見ると、木製ではなくプラスチック製と書かれている。

 

「そうそう。だから手入れも楽そうだしいいよな」

 

「確かに、水にも強そうだね」

 

「だろー」

 

キャンプをする際にこういった物が一つでもあると、雰囲気がさらによくなりそうだ。

俺も一つくらい欲しいかも、と心の中で思う。

 

「あれ?この前の木皿はどうしたの?」

 

「うぐっ!」

 

「木皿?」

 

すると、斉藤さんが何か思い出したように言う。

 

「あきちゃん達がクリスマス前に、学校でシーズニング?してたんだよ」

 

「へぇー。じゃあ大垣さんはもう持ってるんだ?」

 

「せや、オイル塗ったのにクリキャンで使うてへんかったやん」

 

あおいも、そういえば、という表情で千明に問う。

 

「あーー、あれなー」

 

「色々あってな。今は元気にサボテンの鉢やってるよ」

 

\コンニチハ/

 

『??』

 

サボテン?何の事だろう。

 

「そ、そうだイヌ子。イスはどうすんだ?小牧と一緒に買うって言ってたろ?」

 

しかし、大垣さんはそれ以上の事は語ろうとはせず、別の話題を振る。

 

「あ、せやせや」

 

「せっかくだし、ここで買いたいよね」

 

俺も改めて店内を見渡し、キャンプ椅子のコーナーを見つける。

 

そう。今回のキャンプのもう一つの目的は、二人で新しいキャンプ椅子を買う事だ!

 

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