イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第二十六話 「ノンアルコールカクテル」

 

「ん?」

 

岬の先に着き、椅子を広げていると微かな音が上空から聴こえて目を向ける。

 

「あらたくん。上なんか見てどうしたん?」

 

「いやあれ、なんか飛んでる」

 

「んー?」

 

音がした方を指差す。そこには、音を出しながら飛ぶ物体があった。

 

「ドローン? いや、ラジコンかあれ」

 

「趣味やなぁ……」

 

ラジコンといえば、子供の頃よく外で妹のひかりと遊んだ事を思い出す。

特に男子の間では、ラジコンに興味を持つものが多いだろう。なによりあのような乗り物はカッコいいからな!まさに、男のロマンだ!

 

そんな飛行機型のラジコンを眺めながら寛ぐ一行。

 

「山のキャンプもええけど、湖畔もええもんやなぁ」

 

「まぁ、寒いけどね。俺なんかカイロが手放せないよ」

 

ポケットからカイロを取り出して振りながら、冷えた手を温める。

バイトをしているスーパーゼブラに行く時に、バイクに乗るため、ある程度の寒さには慣れているが湖に囲まれているからか余計寒い。

 

「けど、この景色が見れればおあいこかな」

 

「だなー、椅子もあって快適快適……」

 

端で足を伸ばして横になる大垣さんが言い淀む。

彼女の視線を追うと、一人地べたにシートを広げて座る斉藤さんが。

そういえば、斉藤さんは椅子を持っていなかったんだよな。

 

「斉藤さん、良かったら俺の椅子使う?」

 

「えっ、そんな悪いよ」

 

「いいよいいよ。俺が椅子で、女子が一人で地べたって。俺の方が悪い気がするし」

 

「でも……」

 

申し訳なさそうにする斉藤さん。けれど、俺はもう自分の椅子はある程度堪能した。地べたに座るくらいなんて事ない。

 

「なぁ、イヌ子。小牧の奴、優しすぎないか? 普段から思ってたけど、あいつ絶対女子にモテる性格してるよな」

 

「せやろなー。実際、私もあらたくんのそんな優しいところが大好きやもん」

 

「急に惚気んな!」

 

「いや、あきが話振ってきたんやん……」

 

何やら大垣さんがあおいに耳打ちをしているが、急に自分の椅子を持ち上げた。

 

「てか、私が一つ貸してやんよ」

 

「あきちゃん、いいの?」

 

「だって、二人のどっちかが地べたで、椅子二つも使ってたら私が悪モンみてーじゃんか」

 

「あきはほんまええやつやな」

 

「ええやつやー」

 

「ありがとう大垣さん」

 

「よせやい!照れるぜちくしょうめ」

 

恥ずかしがる大垣さんは、それを紛らわそうとテーブル風キッチンラックの上にガスコンロを置いて、他にも色々と出して何やら作り始める。

 

「大垣さん。何か作るの?」

 

「あぁ。ホットバタードラムカウっていうカクテルだ」

 

「えっ、カクテルってお酒じゃ……」

 

「安心しろノンアルコールだから」

 

「そ、そうなんだ」

 

ちょっと驚いたけど、ノンアルコールなら安心だな。

お湯が沸くのを待って、大垣さんが作ったノンアルコールカクテルを貰う。

 

「ん! これ美味いなぁ」

 

「うん、美味しい。冷えた身体が暖まる」

 

「シナモンが利いてて落ち着くよ」

 

各々が感想を述べる。

 

「こんなに美味しい飲み物。よく知ってたね大垣さん」

 

「バイト先の先輩に教わったんだよ」

 

「さすが酒屋さんバイト」

 

そういえば、大垣さんは俺とあおいがバイトをしているゼブラの向かいに建つ酒屋さんでバイトをしているんだったな。

こういう知識が得られるところを見ると、酒屋さんも楽しそうだ。

 

「ねー、みんなで写真撮らない?」

 

「おぉー、ええなぁ。なでしこちゃん達にも後で送らな」

 

「そうだな!あいつらが羨ましがるような写真を送ろうぜー!」

 

「あきはほんま悪いやつやで」

 

そんな女子らしいキャッキャとした会話に俺は入っていけず、一人カクテルをすする。

女子だらけの空間で居心地が悪いわけではないけど、この空気の中入る勇気がない。

 

「あらたくん何しとるん? 写真撮るでー」

 

「あ、うん」

 

俺はあおいに肩をぽんぽんとされて、斉藤さんが掲げるスマホの画面に写ろうと三人に近づく。

 

「おいおい、お二人さん。もっと近寄って。ほら、イヌ子も」

 

「な、なんやなんや?」

 

「ちゃんとフレームには入ってると思うけど」

 

「いやいや小牧くん。あきちゃんの言う通りだよー。このままだと、ちゃんと写らないよー?」

 

「恵那ちゃんまで……あたっ」

 

大垣さんと斉藤さんが悪戯顔で、俺とあおいを必要以上にくっつけさせようとしてくる。おかげで、あおいと軽くコツンと頭をぶつけてしまった。

 

「あおい、大丈夫?」

 

「う、うん……」

 

「!?」

 

あおいに視線を向けると、あおいの顔が間近にあった。

それもそうだ。頭をぶつけるくらいに近づいていたのだから。

 

おかげで、俺は自分でも分かるくらいに顔が急激に熱くなる。絶対にこれはカクテルのせいとかではない……。

 

「な、なんか照れるなぁ」

 

「だね……」

 

あおいも同じようで、可愛らしい照れ笑いを浮かべている。

 

「ほらほら恵那!早く撮らねーと、こいつらの熱さに私らが溶けちまうぞ!」

 

「そうだねあきちゃん!じゃあ、撮るねー♪」

 

「「…………」」

 

二人の冗談に流されながら、顔を真っ赤に染めた俺とあおい。満面の笑顔の大垣さんと斉藤さん。その四人で撮った写真が、各務原さんと志摩さんに送られる事となった。

 

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