イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
「そうそう。すり潰して丸めたご飯をそんな感じで……」
あらたとあおいと恵那の三人は予定をしていた、きりたんぽ鍋を作り始めていた。
塩水を使ってすり潰したお米を、今はきりたんぽの形を作るべく、割り箸に刺して棒状に形づくりをしている最中だ。
「こんな感じ?」
「うん、あおい上手だね」
「ほんま? あらたくん教えるの上手やもん」
「昔家族で作ったことがあってさ」
「小牧くん、これでいい?」
「うん、完璧」
あおいも斉藤さんも俺が教えた通りにこなして、すでに半分程きりたんぽのベースを作り上げてくれていた。
「にーちゃん、きりたんぽの作り方なんて、よう知っとるねぇ」
「あ、はい。俺、地元が東北の方で。去年山梨に引っ越して来たばかりなんです。それで」
「そうけ。東北もうんまい物がいっぱいあるでねぇ」
隣で見ていたおじさん……飯田さんに褒められながら俺たちは作業を続けていく。
お姉さんは、すでに別の鍋でモツ鍋を作り終え、現在はストーブの上で保温中だ。今は俺たちの鍋も手伝ってもらっている。手際が良くて早いし、料理を作り慣れているのかもしれない。
寒い中での鍋料理……。安心したのもあってか、余計にお腹が空いて来た。
「おーい、イヌ子ー」
「……ん? なんか聞こえへん?」
「今の声、大垣さん?」
「あっ! もしかしてあきちゃん、戻って来たんじゃない?」
「恵那ー、小牧ー。どこだー?」
その声はだんだんと近づいて来る。
そうか、俺たちが何処にいるのか分からないんだ。スマホの電源は切れてるし連絡が出来なかったからな。
あらたの推測通り、千明には現在三人の居場所が分かっていない状況にあった。
「眼鏡をかけていた子ね。その子もぜひ呼んで来てください」
「ありがとうございます」
あおいが席を外してテントから顔を出す。
「あきー! こっちやー!」
「ぬっ!?」
そして、コンビニから帰還した千明もテントの中へとやって来る。
「うおーっ! あったけぇー」
「おかえりー」
「そっか、お姉さんとこでお世話になってたのか」
「ありがとうな、あき。寒かったやろ?」
「いやぁ、まぁ。そうでもないぜ」
曇った眼鏡のレンズを小っ恥ずかしそうに擦る大垣さん。俺からしても、こんなに頑張ってくれていた大垣さんには感謝しなくては。
「つーか、あたしがコンビニ行ってる間、こんな温かい所でぬくぬくしてたのか。ちくしゃうめ!!」
「「へへーっ」」
「本当にありがとう大垣さん」
「おうよ!」
「ほら、嬢ちゃんもストーブの近くで暖まりな」
「ありがとうございます」
「大垣さん、ここ座って」
あおいの方に、もう少し近付きストーブに一番近いスペースを作り出す。
「お? きりたんぽ」
「お姉さん達と一緒に、鍋パーティーやろうって話になったんだよ」
「そっかー!」
「こっちはモツ鍋だに」
飯島さんが、ストーブの上の鍋の蓋を開けて、ぐつぐつと煮込まれたモツ鍋を披露する。
白い湯気がボワっと広がり美味しそうな香りと、具材の姿が現れる。
「おーっ!! いいっすねー」
大垣さんはよだれを垂らしながら、間近で鍋の様子を窺う。
「シメにラーメンもあるんですよ」
「最高じゃないすか!」
「きりたんぽ鍋、忘れとるやろ」
「大垣さんは、頑張って走ってくれたし。沢山食べてもらおうよ」
「それもそうやな」
そして、被っていた帽子を脱いで、テーブルの前に腰掛ける。
「あきちゃんも、一緒に作ろう」
「あいよ!」
千明が合流して、ようやく全員で夕飯の支度に入る。あとは、先に割り箸に刺したきりたんぽから、どんどん焼いていくのみ。
と、その時。
「大垣さーん!! 犬山さーん!!」
「ん?」
いよいよ、山中湖編ラストスパートです!
そして、今回同時にゆるキャンでもう1作品投稿始めました。
お時間があれば、そちらもよろしくお願いします。