イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
明日投稿しようと思ったのを予約ミスりました(^^;;
一度消すの勿体無いので、このまま投稿しちゃいます。
「おー、結構薪になりそうな枝が落ちてるな」
林の中には様々な形の枝が散らばっていた。これぞ自然の宝物庫だ。
さらに進んでいくと、枝葉だけでなく。コロコロと松ぼっくりも転がっていた。
「管理人さんが蒔いたりしてくれてるんやろか」
「いや、まさか。……まさかね」
あらたは背後から何か視線を感じたような気がして振り返ってみる。しかし、そこには誰もいない。
こ、怖いわけではないが、話題を変えよう。
「そうだ。あおい、確か松ぼっくりってさ。火種にもよく使われるんだよね?」
「そうやね、自然の優秀な着火剤言われとるしなぁ。リンちゃんもよく使う言うてたで。かさが開いてる物がええんやて」
「じゃあ、これも拾っとくか」
ころころと転がっている松ぼっくりを手に取る。
独特なこのフォルム。いつ見てもコロコロとしていて可愛らしいな。これを燃やしてしまうのが勿体無いくらいだ。
\コンニチハ/
「……あれ? あおい、今何か言った?」
「んーん。何も言ってへんよ」
「なんだ、気のせいか」
どこからか、あおいとよく似た声が聞こえてきた気がしたのだが。
「じゃあ、枝と松ぼっくりを手分けして集めようか」
「おーっ!」
それから、二人で持参した袋が一杯になるくらいの松ぼっくりと、両手沢山の枝を拾い集める。
「とりすぎたけど。まぁ、いいか」
「拾い過ぎたけど。まぁ、ええよね」
つい集める事に夢中になっていた二人は、予想よりも多くの材料を回収した。
「そんじゃ、ライターでさっそく着けますか」
「あ、まって。あらたくん」
「ん?」
持って来た焚き火道具の中からライターを取り出そうとしていたあらたをあおいが制止する。
「やってみたいことがあんねん」
「やってみたい事?」
「これなんやけど」
差し出された手にあったのは、およそ5センチくらいの黒い棒だ。
そして、それに繋がれた刃の無いカッターのような形状のアイテム。
「何これ?」
「これなー。ファイヤースターターっていって火をつける為の道具なんよ」
「へぇ、そんなのがあるんだ」
「火っていうよりは、火花なんやけどなー。この棒がマグネシウムでできとって。これにこのストライカーっていう付属品を擦り回せて、その摩擦で火花を散らすんやって」
なるほどな。火打石みたいなものか。
「ちょっとカッコいいかも。あおい、よく持ってたね」
「ふふ、この前ネットで安いの見つけてな。今日の為にポチっといたんよー」
「じゃあ、新しいキャンプグッズって訳だ」
「うん。せやから、これ使ってうちらもベテランキャンパーの仲間入りや」
言われてみると、よくキャンプ動画とかに出てくる慣れている人たちはライターとかを使わずにつけるって各務原さんとか大垣さんも言ってたな。
確かに、これが出来たらその人達に一歩近づけるのかもしれない。
「じゃあ、やってみようか」
「それじゃあ、いくでー」
さっそく気合を入れてあおいが構える。
「待ってあおい。手袋外した方が良いかもしれないよ。引火したら危ないし」
「あ、それもそうやね」
あおいは一旦手袋を外してから、向き直る。
「あらたくんに貰ったものやから。ついずっと着けてしまうんよ」
「嬉しいけど。こればかりは仕方ないね」
俺も、もしもの為にマフラーは外させてもらおう。
「今度こそ……」
あおいは、火種に使おうとした松ぼっくりを下に置いて、ファイヤースターターの棒の先を近づけた。
「んっ!」
ジュッ!
力を入れて、擦り合わせるとちっちゃな火花が飛び散った。
「おー。ほんとに火花が出た」
「ちょっと楽しいかもなぁ。これ」
「俺も後でやってもいい?」
「もちろんや。……でも、つかへんね。今度はもっと力入れてやってみるわ。……んっ!」
ジュッ!
あおいは、そう言って数回力強く擦り合わせて火花をぶつける。
「……もう一回や」
ジュッ!
ジュッ!!
「…………」
「…………」
「……つかないね」
「おかしいなぁ」
一向に火がつく気配のない松ぼっくり。
「あらたくん、ちょっとやってもらってもええ?」
「うん、いいけど」
それは願ったり叶ったりなのだが。ベテランキャンパーへの登竜門を叩くのではなかったのだろうか。
「ふんっ!」
ジュッ!!
「おおっ! 今、めっちゃ火花出たんやない? さすが男の子やね!」
「でも、つかないな。…もう一度」
男で力があるというのもあるのだろう。あおいの時よりも、火花の大きさは確かに大きくなった。今度はしっかりと、火花が見える。
ジュウッ!
「その調子やで、あらたくん!」
「ふっ! ふっ!!」
何度かやってみるが、松ぼっくりは火花を浴びるだけで灯らない。
これだけの火花が出るのなら不良品ということもないのだろうけど。
「難しいなこれ。もしかして、使い方が悪いのかな」
「でも、火花はちゃんと出とるで?」
「それもそうか」
「んー、次は私がもう一回やってみるわ」
そして、何度か交代しながら挑戦するも松ぼっくりは何の変化もなく。ただ時間だけが過ぎていく。
焚き火で暖まるつもりが、運動して身体はどんどんとポカポカと暖かくなっていった。
「ぜ、全然つかへん」
「火花はちゃんと出てるんだけどなぁ。やっぱりコツがあるのかな」
「はぁ。もう諦めて、いっその事ライター使おか…」
かれこれ一時間近くは格闘している。おかげで、息も上がっている。
「えっ、せっかくあおいが買ってきてくれたやつなのに…」
「ちょっと面白そうや思て買っただけやから気にせんでええよ。それに、これ以上はあらたくんにも迷惑や」
「全然迷惑なんかじゃないよ。あおいが気に病むことはないって」
「ううん。私が言い出した事やから。我儘に付き合ってくれてありがとな。いつも通りにライターでつけよ?」
「あおい……」
あおいが良いというのなら、俺も諦めるけど。せっかく火おこしを普通とは違うやり方で提案してくれたのにな。
「火は付けられなかったけどさ。ファイヤースターターなんて初めて使ったし。俺はすごく楽しかったよ」
「……うん、ありがとう」
随分落ち込んじゃってるな。
こういう時、大垣さんとかなら笑い飛ばして元気付けるんだろうけど。
あらたは、どうにかしてあおいを元気付けられないかと考える。すると。
「あ、そうだ」
置いたままにしていた薪を見て、あらたは何かを思いついた。
「じゃあさ、フェザースティックは?」
「フェザースティック?」
「うん、趣向を変えるなら。着火剤を変えてみるのはどうかなって」
あらたは薪の中から手頃な長さと太さを兼ね備えたものを一つ手に取った。