イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第5章 伊豆キャン
第三十八話 「いずいずいずいずいずい」


 

「なでしこちゃん。ソロキャンどうやった?」

 

「良かったよー。富士宮観光もできたし」

 

週明けの月曜日、部室棟へ向かう途中のなでしこと合流したあらたとあおいは、週末に行われたソロキャンの成果を聞いていた。

 

「キャンプ場も夜景がキレイなとこでね。晩ごはんもなかなか上手くできたんだ」

 

「これホイル焼きだ。すごいね各務原さん」

 

「うまそうやなぁ」

 

「アルミホイル巻いて焼くだけだから簡単だよ。機会があれば、キャンプする時にも作るからね!」

 

「「わーい!」」

 

熱されて柔らかくなったキノコと野菜のホイル焼き。その一枚がとても美味しそうに見えた。これが食べれるとなれば、その時のキャンプが楽しみである。

 

「あおいちゃんたちはどうだった?」

 

「うん、なでしこちゃんに教えてもらったフレンチトースト。あらたくんも気に入ってくれたみたいや」

 

「あのフレンチトーストすごく美味しかった。ふわふわで朝から食欲が尽きなかったよ」

 

「それはきっと、あおいちゃんの愛情も入ってたからだねぇ」

 

「なでしこちゃん。冗談やめてや〜」

 

「えへへ。でも、カップルでキャンプなんて憧れちゃうよぅー」

 

昨日のキャンプ場での朝。朝食を担当してくれたのはあおい。

なでしこからフレンチトーストの美味しい作り方のレシピを教わり、それを完全に再現した事で。あっという間に二人して朝食を食べ終えてしまったのだ。

 

ホイル焼きも美味しそうだし、各務原さんは本当に料理上手だよな。

 

「二人で本栖湖に行ったんだよねぃ」

 

「せやで。富士山もよう見えて綺麗だったわぁ」

 

「過ごしやすいところで良かったよ」

 

「あそこはリンちゃんと出会うきっかけになった場所なんだぁ。だから、私もまた行きたいんだよね!」

 

「夜は疲れてあっという間に寝ちゃったんやけどなー」

 

「…………」

 

あらたは、その日のことを思い出して少々顔が赤くなる。

 

「小牧くん顔が赤いけど、どうしたの?」

 

「ううん、なんでもない。各務原さんは夜どう過ごしてたの?」

 

「私は、ごはん食べ終わってからちょっと暇だったかな。キャンプ場が圏外だったから。だから景色見ながらボーッと考え事してたんだけど…。そしたら、またみんなとキャンプ行きたくなっちゃった」

 

「そっかぁ」

 

「うへへ」

 

柔らかい笑顔のなでしこにつられ、二人も自然と笑みが溢れる。

 

「これからはソロキャンとグルキャン。交互にやってきたいと思います」

 

「なら次は、そのグルキャンだね」

 

「この前、なでしこちゃんのバイト先で話した件についても決めんとな〜」

 

「そうだぞお前ら!」

 

「びっくりした〜。あき、いつの間に」

 

突如として後ろから声がして振り返ると、我らが部長。大垣千明がそこにいた。

 

「あきちゃんお疲れ様〜」

 

「各隊員、グループでの写真投稿ご苦労! 有意義なキャンプを堪能できたようで何よりだ!」

 

「おっす!」

 

「その探検隊ネタ。まだ続いてたんだ」

 

「小牧隊員! ノリが悪いぞ!」

 

「ほんと冗談が好きな奴やなー」

 

「あおいがそれを言うのか……」

 

「なんのことや〜?」

 

ホラ顔で首を傾げるあおい。

 

「よし! クリキャンぶりの野クルオールスターキャンプ。さっそく先生に相談しに行こうぜ!」

 

「って、職員室は逆方向やないか」

 

進行方向と真逆の職員室へ行こうと、千明は親指を指す。

 

「そんじゃ、行くぞお前ら!」

 

「お〜っす!」

 

駆け足で戻る千明となでしこ。

そんな二人をあらたとあおいは見届ける。

 

「ちょっ! 二人とも! 別に走らなくてもええやん」

 

「二人とも今日も元気だなぁ」

 

週末は一人バイトだった千明も、今は元気に次の予定を見据えているようだ。

 

「俺たちも行こうか」

 

「しゃあないなぁ。行こか」

 

仕方ないという表情のあおいと、小走りで再度校舎の方へと戻っていく。

職員室へ向かう途中、各務原さんと大垣さんからキャンプデートについて色々と聞かれたのは、言うまでもない。

 

 

 

「それなら、3月頭に伊豆へ行くのはどうですか?」

 

「伊豆キャンすかー」

 

「伊豆かぁ。行った事ないな」

 

「いいよね伊豆!」

 

「うん。ええよね伊豆!!」

 

女性陣のテンションが高い。確かに、地名は聞いた事もあるくらいだから有名なのだろう。

先生が言うには、登山部の大町先生に勧められたとか。

 

「先生、俺も伊豆に行くの初めてなんですけど。どんなところなんです?」

 

東北に住んでいた頃から名前自体はよく聞いていたが、実際どういう場所なのかまでは知らない。

 

「観光地として有名ですね。冬でも比較的暖かいですし」

 

観光地が多いのに対して、気候も暖かいのなら過ごしやすそうだ。確かに良いかもしれない。

 

「それに、山中湖でお世話になった飯田さんにもお礼に行きたいですしね」

 

「あっ、なるほど」

 

飯田さんたちにはその節は大変にお世話になりました。

寒い山中湖での夜を乗り越えられたのは、飯田さんと我らがシマリン様のおかげである。その時の感謝を改めて伝えるというのは、とても良い考えだ。

 

「飯田さんって、コーギーと飛行機と薪ストーブの?」

 

「せやでー」

 

「チョコちゃんかわいいよねぇ。私も会ってみたいなぁ」

 

その場に居なかったなでしこも、その時の写真を見て山中湖キャンプでの出来事を知っていた。

ちっちゃな足で歩くチョコちゃんは確かに可愛い。俺もまた会いたい。

 

「でも先生。なんで3月なんすか? まだ一ヶ月以上先ですよ?」

 

鳥羽先生が挙げたキャンプの時期に疑問を浮かべる千明。

それを聞いたあらた達も鳥羽先生へと視線を向ける。

 

「大垣さん達。この前キャンプしたばかりでしょう?」

 

「はいっ! 私も昨日行ったばかりですっ!!」

 

「そうですね。俺たちも昨日…」

 

「行ってきたばかりやなぁ」

 

「あたしはバイトだったけどな!」

 

「まだ言うとるんかい」

 

今回はその為でもあるキャンプだと言うのにも関わらず、大垣さんは口を尖らせている。

これは伊豆キャンに行くまで根に持つ奴だなきっと。

 

「伊豆でのキャンプとなると旅費もかかりますし。少し間をあけた方がいいかと思って」

 

「確かに、この前イス買っちまったから。資金不足は否めない…」

 

「せやなぁ」

 

「伊豆でおいしい物とか食べたいもんね」

 

「それまで、またバイトで稼がないとだね」

 

今までのキャンプよりも遠い場所という事で、きっと色々なことにお金を使うことになるだろう。それに向けての準備は、しっかりしておきたい。

そして、鳥羽先生は笑顔で続ける。

 

「それに、2月末には期末テストも控えてますし」

 

あっ。

 

「「そうだった!!」」

 

「ね。大垣さん」

 

「あー…。そっすねー」

 

学生の本文は勉強。部活やバイトに費やすのも大切なことだけど。勉学を疎かにしてはいけない。

念を押すように、部内で一番前回のテストがギリギリだった大垣さんに視線を送る。

 

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