イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第四十六話 「道中の車内で」

 

「いいかお前らー」

 

山梨から伊豆へ向かう車の中で、前の席に座る千明に注目が集まる。

 

「今回のキャンプは伊豆のジオパーク巡りと伊豆の食材をキャンプめしで味わうのがメインテーマだ! 抜かるなよ!!」

 

「「おーっす」」

 

【ジオパーク】

火山や地層、地形など貴重な地質遺産を多く保有する自然公園。

一つ一つの地質遺産は、ジオサイト又はジオスポットと呼ばれています。

 

「ジオパーク巡り面白そうだよね」

 

今回はキャンプをする事だけが目的ではない。

せっかくの伊豆への遠出。ただ泊まって帰るだけでは損というもの。キャンプ&観光、この二つを考慮して全員で決めたのが今回のテーマなのである。

 

「あかりちゃんが考えてくれたんだよね?」

 

「せやで! 伊豆のガイドブックに載っとったんよー」

 

どこから取り出したのか、一つの雑誌をあかりは見せる。

 

小学生のうちからこんな雑誌を読むとは。用意周到。子供の頃の自分から比べてみても、あかりちゃんはだいぶ大人である。

 

「それにしてもみんなで行くキャンプ久々だよねぇー」

 

「確かに、キャンプ自体は行ってたけど」

 

「集まっていくのは、なんだかんだ言ってクリキャンぶりなんやなぁ」

 

楽しみで表情を綻ばせるなでしこ。そんな彼女の顔を見て千明がクスッと笑う。

 

「ていうか、なでしこ。目の下にすげークマできてねーか?」

 

「実は、そわそわしすぎて昨日全然眠れなかったんだー」

 

「大丈夫かよー……って、小牧も似たようなもんだけど」

 

「えっ!? 小牧くんも寝不足なの? 大丈夫!?」

 

その言葉をそのままお返ししたいクマを浮かべる各務原さんに、俺は笑顔で答えた。

 

「うん。車の中で少し寝たから平気だよ」

 

あらたの場合。今朝のツーリングでの疲れが大きな原因なのだが。

 

「そっかぁー。でも、大丈夫!! せっかくの伊豆キャン。寝てなんていらんないよ!!」

 

どんなコンディションであっても、なでしこはなでしこだった。眠気を想わせないほどにはしゃぐ。

 

「あかりちゃんも今日は寝かさないぞーっ」

 

「キャーッ」

 

 

  数分後ーー

 

 

「すかーっ」

 

「ま、そうなるわなぁ」

 

暖房の効いた車内に心地良い揺れ。

各務原さんを夢の中に誘うには十分だった。その証拠に、今はブランケットを布団がわりにでかい鼻提灯を出しながら寝ている。

 

「志摩さんは、今どの辺だろうね」

 

「さっき、静岡入ったって連絡あったぞー」

 

「すごいなぁ。本当に原付で行ってるんだ」

 

「リンは長野にも浜松にも行ってるからねー」

 

「本当にリンちゃんはストロングスタイルやね」

 

「原付より早いバイクでも行ける気しないな」

 

「おいおい、そんなんで大丈夫かー?」

 

バックミラーに映る千明の瞳と視線が重なる。

 

「大垣さん? 大丈夫って??」

 

「ゆくゆくはイヌ子を小牧のバイクに乗せてキャンプに行くんだろー?」

 

確かに、それは今の俺の目標の一つだが長距離を走るつもりは全然なかった。

 

「それはそうなんだけど…」

 

「そんな。あらたくん、あの約束は嘘やったん?」

 

「あ、あおい?」

 

「なでしこちゃんたちが食べたみたいな浜松の大きな鰻を一緒に食べようって約束したやんか。およよよよ」

 

「何その小芝居……」

 

調子が上がって来たのか、あおいの目がどんどんのいつものホラ吹きの目に変わりつつある。

いかん! このままでは、俺ひとりが揶揄われる旅になってしまう。

 

「私も鰻食べたーい! にーちゃんつれてってー」

 

「え?」

 

すると、ホラ吹きの妹。あかりが鰻というセリフに目を輝かせる。

 

「いいねあかりちゃん。じゃあ、私も行こうかな。ご馳走様です小牧くん」

 

「え? え?」

 

「むにゃむにゃ、鰻ー? 私にも奢ってぇ……。すぴー」

 

寝ているなでしこまで、夢の中から便乗する。

 

「まってまって、無理だからね? ていうか、いつの間にか俺が奢ることになってるし」

 

「あたしと先生も入れて六人。あ、リンも入れて七人か」

 

「あら、私も頂けるんですか?」

 

「すごい出費になるな。小牧」

 

しかし、この理不尽な状況に、あらたは珍しく黙ってはいなかった。

 

「……いや、違うよ大垣さん」

 

「ん? 何が違うんだ?」

 

「大垣さんはさ。部長だよね」

 

「お、おう」

 

「俺は思うんだよ。それなら、みんなに鰻を奢るべきなのは器の大きい人であると」

 

「器の……大きい」

 

「そうだよ。だから、ここで奢るのは俺じゃない。大垣さん……いや、大垣部長であるべきなんだよ」

 

「そ、そうか。分かったぞ。なら、その鰻。私が奢って…」

 

「「ご馳走様でーす」」

 

「乗り換えはえーなお前ら!!」

 

千明以外。先生までもが、口を揃えてそう言った。

なんだこの車内。めちゃくちゃ楽しいではないか。

 

「まてまてまて。なでしこたちが食ったっていう鰻って、一つ四千円くらいすんだろ? ということは……」

 

「あき、鼻血出とるで」

 

「はっ!」

 

手で計算をする千明の鼻から赤い鮮血が流れる。どうやら身体が拒否反応を起こしたらしい。

 

それにしても俺もこんな猿芝居をするとはな。

無意識のうちに、だいぶこれからのキャンプに期待が高まって気持ちがハイになっていたみたいだ。

 

 





クリキャンのところ、描いてたのが懐かしいですねぇ。(ちゃんと更新しろ!)
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