イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
劇場版の公開が近づくにつれて、ゆるキャン△SSが
盛り上がっていって欲しいと思う今日この頃。
テスト休み明けの放課後、野外活動サークル部長殿からの『作戦会議!』という呼び出しを受けて校庭へと集合した。
そこには、いつもの野クルの3人と他にもう一人の人物がすでに集まっていた。
「あらたくん。こちら、前から話してた斉藤さん」
初対面という事で、あおいさんが間を取り持ってくれた。
「はじめまして、斉藤恵那です。よろしくね小牧くん!」
「どうも、小牧あらたです」
先週聞かされていたクリキャンへの野クルメンバー以外の参加者。斉藤さんと初めて挨拶を交わす。
「犬山さんから聞いてた通り、優しそうな彼氏さんだ!」
「そういえば、斉藤さんにはクリスマスキャンプ誘った時にあらたくんの事話したんやったね」
「うん!隣のクラスだから何度かすれ違ったりはしてたけど、話すのは初めてだよね」
斉藤さんに視線を向けられて頷き返す。
明るくて人付き合いが良さそうな子である。
「さて!斉藤隊員と小牧隊員が我が探検隊に体験入隊するという事だが、ウチの探検隊は甘くないぞ!!覚悟はあるか!?」
「おす!!」
「お、おす!!」
何だろうこの小芝居は、しかもそれに乗っかれる斉藤さんもすごいな。
ひとまず、自分もそれに乗っかる事にする。
改めて、クリスマスキャンプへ行くメンバー(一人を除いて)が揃った。
大垣さんが買ったという焚き火台を囲み、お茶をしながらの作戦会議が始まる。
「えー、キャンプの日取りは24、25日。場所は五湖周辺て事だけ決まっておりますがー、具体的なキャンプ場はこれから決めてきまーす」
「たいちょう!!おやつはいく、」
「好きなだけ持って来てよし!!」
さっそく手を挙げたなでしこに対して、質問を言い切る前に千明が答える。
なんだか慣れているような対応の早さだったな。
「じゃ犬山くん、持ってく物の説明よろしく」
「はいはい」
話は進み、あおいさんにバトンタッチされ、持ち物の話へと移る。
「基本は前のキャンプと同じやな。あらたくんの持ちもんはこの前揃えたし、テントはうちらのと志摩さんのもあるから、斉藤さんは寝袋と着替えくらいやな」
「わかった」
「リンちゃん来る気になってよかったよね」
「だね!」
本日は委員会があるという事で、志摩さんは欠席していた。
「ねぇ、斉藤さん。志摩さんって、何の委員会なの?」
クリキャンへ行くメンバーの中でまだ顔を合わせた事がないのは彼女のみ。
同じ学校とはいえ、顔を知らないと挨拶のしようもないため、キャンプ当日まで会えないかもしれないという不安があった。
「図書委員だよ。今日も図書室で貸し出しの当番なんだって」
「えっ?」
それを聞いて、ある人物の顔が浮かんだ。
「もしかして、お団子頭で背の小さな子?」
「そうだよ。小牧くんリンと知り合いなの?」
「ううん、ちょっと話したことあるくらいで」
「そうなんだ」
そうかあの子が志摩さんだったのか。
この前閉館ギリギリで貸し出しの対応をしてくれた時のことを思い出す。最近図書室によく行くようになってから何度か見かけていた。
他の図書委員もいるだろうが、いつも利用する際は、だいたいその子だったので、もしやと思ったのだ。
「あおいさん、教えてくれたらよかったのに」
あおいさんには、一緒に帰る日は図書室で待つ事を伝えてある。だから当然、志摩さんと会った事があるかもしれない事は知っているはずだ。
「あれ、言ってへんかったっけ〜」
と、とぼけたような事をいう。
この顔、面白そうだと思ってわざと黙ってたな。
「そういう事は教えなさい」
「ふふっ、ごめんごめん。許してや〜」
さすがに小突くのは可哀想なので、掌で頭にポンポンと触れてやる。
付き合うようになって距離が縮まってからというもの、ちょいちょいからかわれる頻度が増えてきたような気がする。
まぁ、それだけ心を開いてくれているのだろう。嬉しいといえば嬉しいが。
「なぁ、なでしこ」
「なぁに?あきちゃん」
「もしかして、あたしらはキャンプ中ずっとこの二人のイチャつきを見せられるのか?」
「仲良しカップルだよね〜」
「あたしは耐えれる気しないんだが」
「え〜、いいと思うけどなぁ。あおいちゃんも楽しそうだし」
「まぁ、それはそうだが」
何やら大垣さんと各務原さんがこちらを見ながらブツブツと話している。何かまずい事をしただろうか。
「ねぇ、プレゼント交換ってやらないの?クリスマスだし」
『プレゼントこうかん…』
恵那の質問に一同が声を揃えて復唱する。
それを聞いたとたん皆おどおどとしだす。
「あ、マズい事聞いちゃったかな」
「斉藤…本当のクリスマスプレゼントはな、みんなの心の中にあるものなんだぜ」
恵那の肩に手を置いて、良い話風と良い顔をで装う千明。
「せや、私お肉をプレゼントにしてまおー」
「あっ!!ずりーぞイヌ子!!」
反対に、手のひらをポンと叩いて、あおいはひらめいた。
どうやらこの前懸賞で当たったというお肉をプレゼントとして振る舞うらしい。
しかし、
「にくー!!」
「おにくーっ」
と野クルメンバーでそれはずるいと、ギャーギャーと言い合いが始まった。
「お肉って?」
「あおいさんが懸賞で当てたみたいなんだ。しかもかなり高級なやつ」
「おー、ラッキーガールだね」
何の事だろうと分からない斉藤さんへ俺が補足の説明をしてやる。
「そうだ!プレゼントのかわりにおもてなしするってどうかな?」
「おもてなし?」
三人で戯れ合いながら、各務原さんが一つの提案を持ち出した。
「例えば、あおいちゃんはお肉を使った料理でみんなをおもてなし。私は次の日朝ごはんを作ってみんなをもてなすとか!これだったら家から食材持ってくればいいし」
「キャンプで出来る遊び考えてくるとか?」
「あ、それありやなー」
「クリスマス気分に浸れるおもてなしとか?」
「確かに、物とかだけじゃなくてそういうのをプレゼントって言うのもありだよね」
『賛成ー!』
満場一致という事で、プレゼント交換ならぬ、おもてなし合いを皆でする事となった。
「一人はみんなのために!!みんなは一人のために!!ワンフォーオール、オールインワンだよ!!」
「……オールフォーワンね」
「オールワンワン?」
ドンッ!とみんなの前で堂々と言う各務原さんだったが、微妙に言葉が違う事を伝える。結局別の単語を口にしているが。
皆でお話をしながらしばらくして、斉藤さんが飼っている犬も連れていって良いかと言う話題となった。
そして今は愛犬のちくわの写真を見せてもらっている。
「あははっ、これ何やの斉藤さんっ!」
「あははは、可愛すぎるよ!!」
その可愛さに皆癒されていた所、斉藤さんがスマホペンで何やらいたずらをしたらしい。
「あらたくんも見てみー」
「ん、…ははっ、確かにこれは可愛いね」
寝顔にスマホペンで加筆されたチワワの写真に思わず笑ってしまう。
「ちょっとあなた達!!こんな所で何やってるの!?」
談笑していた所で、背後からの声。それに皆が振り向く。
「鳥羽先生」
俺たちに声をかけて来たのは、産休で休んでいる先生の代わりに最近赴任された「鳥羽美波」先生だ。
「校庭で焚き火なんてして、火事になったらどうするんですか!」
どうやら、お湯を沸かす為に使っていた焚き火を注意しに来たようだ。
今更だが、確かに校庭で火を扱うのは危険かもしれない。
大垣さんらが手慣れたように準備をしていたので自然と疑問に思わずにいた。
「あ、先生。あたし達一応登山部の大町先生に許可取ってからやってます。野外活動サークルの活動って事で」
「えっ、そうなんですか?」
どうやらしっかりと許可は取っているらしい。
俺が来た時には、すでに他のメンバーは揃っており、火をつける寸前でもあったために、そういう手順を踏んでいた事は知らなかった。
さすが高校生。ちゃんと考えて行動しているのだなと感心する。
とはいえ、危険には変わりないという事で、一度焚き火を消し、鳥羽先生に連れられ、大町先生の居る職員室へと行く事に。
「大丈夫ですよー。最初のうちは私が指導しましたし」
「ですが…」
「まぁ、全く心配じゃない訳ではないですが、私も他の部の顧問がありますしねぇ」
ことの一連の話を聞いて、大町先生も鳥羽先生を説得してくれた。
大町先生も、大垣さん達の普段からの活動を見て安心だろうと感じていたのだろう。それでも、鳥羽先生はまだ心配をされているようだ。
すると、大町先生が何やら閃いた顔をする。
「そうだ。いっそ鳥羽先生が監督されたらどうです?」
「へっ!?」
「確か先生、まだフリーでしたよね!!」
「え!?先生が顧問やってくれるんですか!?」
「!!?」
大町先生の提案を聞いて、千明が目をキラキラと光らせる。
「いやー安心しました!!教頭へは私から言っときますね!!」
「!!!?」
それを最後に大町先生は席を外し(結構なスピードで)、鳥羽先生と俺たちは残される。
「わーっ、顧問がついたー!」
「やったー!」
みんなで両手をあげて喜ぶ。
俺と斉藤さんは野クルのメンバーではないが、一緒に手をあげて3人と共に喜びを分かち合った。
反対に鳥羽先生は不安げな表情を浮かべていたが、大町先生が向かった教頭先生の席からは、教頭自ら親指を立てて「頼みます!」と言ったようなサインが送られて来ていた。
「というのが、野クルの主な活動です!」
そして、もう一度焚き火をしていた校庭へと戻り、部長である大垣さんから野クルの活動内容について鳥羽先生へ説明をした。
「キャンプ、ですか」
「はい!今度の休みにも行くんだよね」
『ね〜っ!』
各務原さんの言葉に皆も乗っかった。
メンバーも女子だけ、顧問の先生も女性という事で、さすがに肩身が狭く感じる。
「あ、次のクリスマスキャンプ。良かったら鳥羽先生もどうですか?」
「えっ、私もですか?」
どうやら早速、顧問として鳥羽先生にもキャンプのお誘いをする大垣さん。
「みんなっ!」
それと同時に、各務原さんが声をあげた。
「見てみて!リンちゃんから連絡きたんだけど、この『朝霧高原』って所すごく良さそう!!」
志摩さんから送られてきたURLを開いたキャンプ場のサイトを見せられる。
「朝霧高原かぁ〜」
「楽しみだねー!」
「ここなら、富士山もバッチリ見えるで〜」
「お風呂もあるんだね!」
「芝生が広がってて景色も良さそうだね」
俺も含め、賛成の声があがる。
これでキャンプの目的地が決まったようだ。
「(…朝霧だったら)ベーコンとビールよね」
「ビール?」
会話を聞いて発言をした鳥羽先生にみんなの視線が集まる。
そういえば、大垣さんの働いてる酒屋さんで「グビ姉」と言うあだ名がつけられているとか聞いたな。
「いえ、何でもないですっ!……あっ」
5人の視線が集まる中で、鳥羽先生と俺の目があった。
「あの、小牧くんは男の子ですよね?」
「えっ、はい。そうですけど」
どこをどうみたら俺が女子に見えるのだろう。
それか、この中に男子がいる事に問題を感じているのかもしれない。
そんな疑問を抱き、先生の次の言葉を待つ。
「せんせっ!」
「はいっ!?各務原…さん何ですか?」
先生が言葉を続けようとした瞬間、各務原さんが挙手する。
「あおいちゃんと小牧くんはお付き合いをしてるんですっ!!」
「えぇっ!?そ、そうなんですか!!」
「はい!なので、二人のためにも小牧くんを一緒にキャンプに行かせてあげてくださいっ!!」
「なでしこちゃん……。先生私からもお願いします」
あおいさんも先生の言葉に不安を感じていたのか、ハッキリと述べてくれた各務原さんを見て頭を下げた。
それに続いて、大垣さんと斉藤さんまでもが頭を下げてくれる。そうして最後に、俺も頭を下げた。
「いや、あの私は別に反対をしている訳ではなくて」
「えっ?」
だが、先生からは予想していなかった返事が返ってくる。
「男の子一人だと、小牧くんが寂しくないですか?」
『あ』
先生という立場である鳥羽先生は、もしかしたら唯一の男である俺が今回のキャンプへ参加する事に反対なのかもしれないと思ったが、どうやら違ったようだ。
それを聞いて、他の四人もこちらに向き直す。
「そういや、イヌ子にさり気なく小牧に聞いといてくれって連絡するの忘れてたわ」
「すまんすまん」とうっかり顔で千明が謝った。
「あき。もう、さり気ないどころの話やないで」
それはごもっともである。
「なでしこちゃんもありがとうなぁ」
「ううん、私こそ早とちりしちゃったみたいでごめんなさい」
「いや、今の流れは俺も…というか、みんな同じ事考えると思うよ」
良かった。もしかしたら先生から止められるのかもと一瞬ひやりとしたが、逆に心配してくれていたようだ。良い先生である。
どちらにせよ、俺たちの事を想ってくれた各務原さんにも感謝しかない。一緒に頭を下げてくれた二人にも。
「俺は大丈夫です。友達も部活やら家族と過ごすとかで来れそうな人はいないですし。そもそも俺も誘って貰っている身ですので」
「そうですか。小牧くんがいいのであれば私から言う事はありません」
男一人で寂しくないかと言われれば寂しいかもしれない。
しかし、そんな事よりもあおいさんと過ごせる事と、こんなにも楽しい他のメンバーとキャンプができるのだから、きっと寂しさなんてある筈もない。
「それにしてもお付き合いですか。青春ですね…」
「へ?」
「い、いえっ、こちらの話ですっ」
鳥羽先生が俺とあおいさんを見て何か言っていたようだが、よく聞こえなかった。
今は、今度のキャンプへの期待で胸がいっぱいだ。