イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第四十八話 「ループ橋」

 

 

ぐおーっ。

 

車の旋回による重力に、身体が大きく傾く。

 

「うわー!」

 

「キャー!」

 

【河津七滝ループ橋】

下田市・河津駅方面からは反時計回りの上り坂、伊豆市・天城トンネル方面からは時計回りの下り坂で720度・2回転ループする橋である。

 

「あははっ! これすごーっ! 重力すごーっ!」

 

絶叫マシンさながらの曲がり道。車内にいるあらた達もその遠心力に巻き込まれる。特に小学生のあかりはその状況に大興奮。

 

「おー。身体がすごい流される」

 

なんとか体勢を保とうとするが、シートや手すりに触れていないと窓に向かって身体が引っ張られる。

制限速度を守ってこれって、どれだけの角度なんだ。

 

「あおい平気?」

 

「う、うん。今のところは平気やで」

 

「大丈夫? まだだいぶあるみたいだけど」

 

「せ、せやね。って、わあっ!」

 

「っ!」

 

隣で頑張っていたあおいがあらたに寄り掛かる。

 

「ご、ごめんなぁ。あらたくん」

 

申し訳なさそうにチラッと片目を瞑りながら上目遣いでこちらを見る視線と重なる。これだけ近い距離だと、心臓の鼓動や呼吸の音も聞こえてしまいそうだ。

 

こんなシチュエーションに遭遇したら世の男子は皆ときめいてしまうことだろう。実際、俺がそうだ。

 

「いいよいいよ全然平気」

 

「なんや絶叫マシン乗ってるような感覚やな。楽しんでええんか分からんけど」

 

「ははっ。遠慮せず寄っ掛かってよ」

 

今朝は逆に肩を貸してもらっていたわけだからな。

 

「それなら、遠慮なく行かせてもらうな。正直、もう限界やわ」

 

「え」

 

重力が流れる側にいる自分よりも、内側にいるあおいの方が大変だろう。そう思った瞬間。

 

「わあっ」

 

橋を進んでいくにつれて、さらに重力が掛かる。

 

ぎゅっ。

 

「っ!」

 

あおいはあらたに抱きつくような形で、両腕でしがみつく。その表情は申し訳ないというよりも、どこか嬉しそうな笑顔を浮かべたまま彼氏であるあらたにあおいは身を任せる。

 

「…………」

 

隣が他の誰かではなくあおいで良かったと、あらたは心底安心する。あおいという可愛い彼女がいるのに、もし他の誰かとこんな状況になってしまっては通報ものである。

 

「「わぁーっ!」」

 

どうやら俺たちに限らず、前方にいる他の全員に先生までもが大きく身体が傾いている。特に運転しながらの鳥羽先生は大変そうだ。

この後ろからの光景。本当にジェットコースターみたいだな。

 

「そうだ。いつかあおいと一緒に……」

 

遊園地に遊びに行ってみたいなと考えているうちに、下り坂へと入りなだらかな道へと戻っていく。

 

「ここおもろいー」

 

キャッキャっと無邪気な笑顔で喜ぶあかり。

子供にとって、この道はある意味ちょっとしたお楽しみスポットなのかもしれない。

 

「このループ橋は伊豆観光名所の一つにもなっているんですよ」

 

「「へぇー」」

 

「先生もっかいやってー。次は2倍速で!!」

 

「危ないからだめですよー」

 

そもそも制限速度が決まっているため無理である。

 

「河津を過ぎたらもうすぐ下田だね」

 

「せやなぁ。リンちゃんは今どの辺やろ?」

 

「斉藤さん。志摩さんからの返信ってあった?」

 

「さっきもう少しで着くって言ってたよー」

 

リンとの連絡のやり取りを担当するのは恵那。

 

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