イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第四十九話 「花より渋滞」

 

ふざけて送ったなでしこの写真のみではなく、しっかりと情報交換も欠かさない。そんな広報的な立場にある恵那のおかげで時間の把握が随分と助かっていた一行。

 

「もっとかかると思ってましたが順調に来れましたね。これならリンと合流する前にちょっと下田観光出来るんじゃないすか?」

 

「ですね」

 

前方に座る鳥羽先生と大垣さんがそんな事を口にする。

確かにこのまま順調にいけば予定よりも早く着きそうだ。……と、思っていたのだけど。

 

「あれっ? さっきから全然進んでなくないすか?」

 

話すのに夢中になっていたせえか、スムーズに走っていた車両がしばらく動いていないことに気付く。

フロントガラス越しに見れば、長く連なる車たちが目に入る。

 

「先で渋滞してるみたいだね」

 

「ホンマや、事故でもあったんかな?」

 

「ですかねぇ」

 

「俺、調べてみます」

 

オンタイムの交通情報を知るために、あらたがマップのアプリを起動させる。

 

「あ、動きましたよ」

 

「でも、すぐ止まっちゃったよ?」

 

わずか車一台分くらい進んだところで、再び車は止まり、あらたが事態の深刻さに気が付くのは、ほぼ同時だった。

 

「うっわ! しばらく先までこのルート真っ赤ですよ」

 

画面に映されたのは、およそ数キロ先までの渋滞を示す真っ赤な赤線。

 

「あー、やっぱり渋滞しとるんやね」

 

あおいがあらたのスマホを覗き込み残念な顔をする。

 

「これだと下田観光は無理なんやない?」

 

「だね。渋滞抜けるまでしばらくかかりそう」

 

「ねぇ、二人とも」

 

前に座る恵那が二人に振り返る。

 

「あそこ、桜咲いてない?」

 

「え、桜?」

 

指差された方角を見ると、桃色の花をつけた木々が少しだけ見える。

 

「ふっ、あたしでなきゃ見逃しちまうな」

 

「いや、見つけたのは斉藤さんじゃ……」

 

あらたも目を凝らして、遠くを見つめる。

 

「うーん。ここからだとよく見えないけど、言われてみれば……」

 

「えー、でも開花までは一ヶ月くらいあるで?」

 

「確かにニュースとかでまだ先だって言ってたけど。梅とかかな?」

 

「はっ!?」

 

急にそれを聞いて驚く素振りを見せた鳥羽先生。

先生は肩を震わせながらゆっくりとこちらへと振り返る。

 

「先生、どうかしたんですか?」

 

「も、もしかして、それは河津桜では……」

 

「あー、日本一早咲きの桜ってやつですよね確か」

 

そっか、あれが有名な河津桜。今まで縁がなかったけど、まさかお目に掛かれるとは。

今日みたいに天気が良い日は花見に最適……。まてよ、花見?。

 

「河津町では2月から3月にかけて毎年桜まつりが開催されているんですが」

 

あらたの予想が現実へと変わる。

 

「周辺道路がとんでもなく渋滞する事でも有名なんですよーっ!!」

 

「「えーーーっ!!」」

 

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