イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》 作:あきと。
リンがスマホを操作すると、最初に表示されたのは海沿いの道を写した一枚だった。
「これは……西伊豆の方だね。朝、富士山がちょっと見えてさ」
「おおー! ええ景色やなぁ〜」
「あ、ほんとだ。うっすらだけど富士山見える!」
なでしこが身を乗り出して画面を覗き込む。
「朝日と海ってだけで優勝なのに、そこに富士山はずるいよ〜」
「確かに。これはテンション上がるやつだな……」
続いてスライドされたのは、海の見える綺麗な写真。
「これは途中で寄った休憩地。ほら、海が見えるとこ」
「えっ、なにそれ最高じゃん!」
「リン……お前だけずるくないか?」
「いや、別に……普通に寄っただけだし」
そう言いながらも、ほんの少しだけ得意げな表情を浮かべるリン。
「あ、でもさでもさ! こんな景色の良いところにソロでいるのちょっと寂しくない?」
恵那がニヤニヤしながら問いかける。
「……別に」
「間があったね今」
「いや、ほんとに」
「ほんまかいな〜」
あおいがくすくすと笑う。
「でもリンちゃんらしいよね。好きな景色独り占めって感じで」
「……まぁ、それはそうかも」
小さく頷くリン。
その様子に、あらたはふっと笑みを浮かべた。
「でもさ、こうやって写真見せてもらうとさ」
「ん?」
「なんか一緒に旅してる感じするよな」
「せやな〜。けどあらたくん、うちらの写真の量もリンちゃんに負けてへんで」
「そうだね」
「……」
一瞬、リンの目がわずかに見開かれる。
「……ありがと」
ぽつりと、いつもより柔らかい声で返す。
「じゃあ次はこれかな」
なでしこが勢いよく身を乗り出す。
「おおっ、これは……」
画面に映し出されたのは、でっかい甲殻類の写真だった。
「でっかいザリガニちゃんや」
「いや、エビだろ。リン、お前ほんと面白い写真ばっかだな!」
「人のこと言えないだろ……」
「確かに」
千明のツッコミに、全員が一斉に頷く。
「よーし! じゃあ次の目的地も期待していいってことだよね!」
なでしこが目を輝かせる。
「うん。次は確か……」
「お土産屋さん寄って、そのあとキャンプ場やな〜」
あおいがフォローするように口を挟む。
「お、いよいよキャンプ本番か」
「楽しみだね〜」
「その前に食べ歩きもあるけどな」
「それがメインでは?」
「違うからな!?」
わいわいと騒がしい空気の中、テーブルの上のハンバーガーはすっかりなくなっていた。
「みなさん、そろそろ行きましょうか」
鳥羽先生が立ち上がる。
「次も食うぞー!」
「おー!」
「みんな元気すぎだろ……」
そんな軽口を叩きながら、一行は店を後にした。
伊豆の旅は、まだまだこれからだ。