イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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第五十三話 「伊豆の味とみんなの時間」

 

リンがスマホを操作すると、最初に表示されたのは海沿いの道を写した一枚だった。

 

「これは……西伊豆の方だね。朝、富士山がちょっと見えてさ」

 

「おおー! ええ景色やなぁ〜」

 

「あ、ほんとだ。うっすらだけど富士山見える!」

 

なでしこが身を乗り出して画面を覗き込む。

 

「朝日と海ってだけで優勝なのに、そこに富士山はずるいよ〜」

 

「確かに。これはテンション上がるやつだな……」

 

続いてスライドされたのは、海の見える綺麗な写真。

 

「これは途中で寄った休憩地。ほら、海が見えるとこ」

 

「えっ、なにそれ最高じゃん!」

 

「リン……お前だけずるくないか?」

 

「いや、別に……普通に寄っただけだし」

 

そう言いながらも、ほんの少しだけ得意げな表情を浮かべるリン。

 

「あ、でもさでもさ! こんな景色の良いところにソロでいるのちょっと寂しくない?」

 

恵那がニヤニヤしながら問いかける。

 

「……別に」

 

「間があったね今」

 

「いや、ほんとに」

 

「ほんまかいな〜」

 

あおいがくすくすと笑う。

 

「でもリンちゃんらしいよね。好きな景色独り占めって感じで」

 

「……まぁ、それはそうかも」

 

小さく頷くリン。

その様子に、あらたはふっと笑みを浮かべた。

 

「でもさ、こうやって写真見せてもらうとさ」

 

「ん?」

 

「なんか一緒に旅してる感じするよな」

 

「せやな〜。けどあらたくん、うちらの写真の量もリンちゃんに負けてへんで」

 

「そうだね」

 

「……」

 

一瞬、リンの目がわずかに見開かれる。

 

「……ありがと」

 

ぽつりと、いつもより柔らかい声で返す。

 

「じゃあ次はこれかな」

 

なでしこが勢いよく身を乗り出す。

 

「おおっ、これは……」

 

画面に映し出されたのは、でっかい甲殻類の写真だった。

 

「でっかいザリガニちゃんや」

 

「いや、エビだろ。リン、お前ほんと面白い写真ばっかだな!」

 

「人のこと言えないだろ……」

 

「確かに」

 

千明のツッコミに、全員が一斉に頷く。

 

「よーし! じゃあ次の目的地も期待していいってことだよね!」

 

なでしこが目を輝かせる。

 

「うん。次は確か……」

 

「お土産屋さん寄って、そのあとキャンプ場やな〜」

 

あおいがフォローするように口を挟む。

 

「お、いよいよキャンプ本番か」

 

「楽しみだね〜」

 

「その前に食べ歩きもあるけどな」

 

「それがメインでは?」

 

「違うからな!?」

 

わいわいと騒がしい空気の中、テーブルの上のハンバーガーはすっかりなくなっていた。

 

「みなさん、そろそろ行きましょうか」

 

鳥羽先生が立ち上がる。

 

「次も食うぞー!」

 

「おー!」

 

「みんな元気すぎだろ……」

 

そんな軽口を叩きながら、一行は店を後にした。

伊豆の旅は、まだまだこれからだ。

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