イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》   作:あきと。

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お久しぶりです。
この間の更新もありがとうございます!
超絶まったりでありながら、読んでくださる方々がいるのは本当にありがたいし、励みになります。
なんとか、これからも書いていく気持ちは御座いますので、何卒よろしくお願いします!




第五十四話 「トンボロってなに?」

 

 

鳥羽先生の車とリンの原付を停めた駐輪場へと戻る一行。

潮の香りがふわりと風に乗って漂う中、自然と次の行き先の話題になる。

 

「リンが回ったジオスポットが二ヶ所。で、あたしらが一ヶ所。全部はムリだけど、目立つ所は回りたいよな」

 

千明が腕を組みながら言う。

 

「だねー」

 

なでしこが元気よく頷く。

 

「はい! わさびアイス美味しかったで!」

 

元気よく手を挙げたのはあかりちゃんだ。

 

「え!? わさびアイス!?」

 

各務原さんの目が一気に見開かれる。

 

「各務原さん、思いっきり寝てたもんな」

 

あらたが苦笑しながら言う。

 

「うぅぅ……私も食べたかったぁー」

 

「わさびアイスは伊豆名物やから、この先にもあるはずやで、なでしこちゃん」

 

あおいがフォローするように微笑む。

確かにさっきもわさびアイスの文字の旗が立ってたもんな。

 

「ほんと!?」

 

一瞬で機嫌が戻るなでしこ。

 

「あと、ループ橋もおもろかったで」

 

あかりが続ける。

 

「ジェットコースターみたいだったねー」

 

恵那が楽しそうに頷く。

 

「ふえー……」

 

「“ふえー”って、あんだけ揺れてても起きんなんて、なでしこちゃんすごいわ」

 

「えへへ」

 

褒められてるのかどうか微妙なところで、なでしこは嬉しそうに笑う。

 

そんなやり取りをしながら歩いていると、次の予定の話へと移っていく。

 

「堂ヶ島のトンボロは明後日行くんだっけ?」

 

斉藤さんがスマホを確認しながら聞いた。

 

「あぁ、明後日の昼頃がちょうどいいらしい」

 

大垣さんが答えてくれる。

 

「なぁ、あおいちゃん。トンボロってなんなん?」

 

あかりちゃんが首をかしげた。

 

「あぁ、あかりちゃん。それはね……」

 

「豚トロの仲間やで」

 

にっこりと、何の迷いもなく言い切るあおい。

 

「へぇー、どんな味するん?」

 

「いや、あおい」

 

「あらたくんも好きやもんなぁ」

 

さらっと、俺もあおいのホラに巻き込まれる。

 

「息をするようにウソを教えるイヌ子。そもそもトンボロを知らない事自体がウソのチビイヌ子……。これが、ホラ吹き姉妹の騙し合いだ」

 

千明が遠い目をする。

 

「恐ろしいね、あきちゃん……」

 

なでしこも隣で真顔で頷く。

 

「深読みしすぎだ」

 

リンが淡々と返す。

 

「そして、それに自然と乗っかれる小牧もまた……」

 

「いやでも、今のはちょっと本当っぽいよね」

 

あらたが苦笑する。

 

「だろ!? あいつらナチュラルに混ぜてくるからな!」

 

「あらたくんまでひどいわ〜。ちゃんと教えただけやのに」

 

「だからどこがだよ」

 

「トンボロ美味しそうやのになぁ」

 

「名前だけはそうかもだけど……。ていうか俺、あかりちゃんの中でトンボロが好物ってことになってるけど大丈夫なのかな」

 

恵那がくすっと笑う。

 

「でもなでしこちゃんなら食べに行きそう」

 

「行くよ!」

 

「行くんだ……」

 

リンが小さく呟いた。

 

「いや、各務原さんまで。トンボロは食べれないよ」

 

「楽しみやなぁ」

 

俺たちの会話が全く耳に入っていないあかりちゃん。

 

そんな風に、わいわいと騒ぎながら、一行は駐車場へと辿り着いて乗り込む。

それぞれがシートベルトを締めた。

 

「それじゃ、キャンプの買い出し行くぞー!」

 

大垣さんの号令。

 

「おーっ!」

 

俺たちの元気な返事が重なる。

 

エンジンがかかり、車がゆっくりと走り出した。

 

窓の外には、青い海と広がる空。

 

「……なんかさ」

 

あらたがぽつりと呟く。

 

「ん?」

 

隣のあおいが顔を向ける。

 

「どうしたん? あらたくん」

 

「こういうの、いいなって思ってさ」

 

「こういうの?」

 

「みんなでご飯食べて、色々話して、次どこ行くか決めて」

 

少しだけ照れたように笑う。

 

「修学旅行みたいだなって」

 

「ふふっ、ほんまやなぁ」

 

あおいが優しく笑う。

 

「でもな、あらたくん」

 

「ん?」

 

「これは“今”しかできへん特別な時間やで」

 

「……だね」

 

前の席では、なでしこと千明がすでに次に食べるものの話で盛り上がっている。

 

後ろでは恵那とあかりがスマホを覗き込みながら笑っている。

窓の外を見れば、原付に乗る志摩さん。

 

その全部が、心地よかった。

 

「よし、買い出しも楽しむか」

 

あらたが小さく呟く。

その言葉に、あおいがくすっと笑った。

 

車は次の目的地へと進んでいく。

 

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