大震撼は強さを求めたい   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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フットボールフロンティア編
プロローグ


 ポンポンポーンと球体が蹴り上げられる

 

 そこにいたのはみすぼらしい少年であった

 

 少年は球体を必死に蹴る

 

 ドリブルをしたかと思えばリフティングを始め、そして木に向かって球体を蹴った

 

 ドゴ、メキメキ ズドン

 

 その球体の正体は金属球であり、倒木した木にめり込んでいた

 

 金属球には白いマジックペンで模様が書かれており、それはサッカーボールのように見えた

 

 金属球にはこう書いていった

 

《復讐》と

 

 蹴った少年の瞳は俗に言うレイプ目という絶望が色濃く現れていたが、その少年の瞳の更に奥にはメラメラと燃え上がる黒い感情が渦巻いていた

 

 少年の名前は大震撼(だい しんかん)……とある男に全てを壊された男の更に残骸でしかない……残りカスでしかなかった

 

 しかしその残りカスは燻り続けた

 

 いつの日か火が着く事を夢見て

 

 ずっとずっと燻り続けた

 

 その煙が奴に届くと信じて

 

 

 

 

 

 

 大震撼の生まれは父親が教師、母親は震撼を産んですぐに体調を崩して亡くなり、その祖父母によって育てられた

 

 震撼は祖父母も好きであったが、父が何よりも大好きだった

 

 震撼の父親はとある中学校の先生をしていた

 

 父親は休みの日も部活動の顧問がありたまにしか遊んではくれなかったが、たまにの休みに必ず父親は震撼とサッカーに関する事をした

 

 例えばサッカーの大会に観戦しに行ったりだとか、庭でサッカーを教えたりだとか

 

 震撼にとってそれはとても楽しく、震撼は次第にサッカーにのめり込んでいった

 

 サッカーをすれば大好きな父親を喜ばせられる

 

 上手くなれば大好きな父親ともっと楽しく過ごせると

 

 震撼の成長を父親は素直に喜んだ

 

 父親もサッカーが大好きだったのだ

 

 そんなある日父親が顧問をしていたサッカー部が地区予選決勝に進出できたと聞いた

 

 父親は喜びながら震撼にも教え子達のプレーを見てほしいと言って、大会に来るように誘ってくれた

 

 父親は大会の都合で別行動をしなければいけないけれど

 

「見ていてくれ! 大江戸中学サッカー部が帝国学園を破って全国へいく姿を!」

 

 父親はそう言ってその日は朝早くから家を飛び出していった

 

 祖父母と震撼はその姿を見送った

 

 

 

 

 

 

 お爺ちゃんの運転で会場である帝国学園に到着したボクは試合が始まるのを楽しみにしていた

 

 パパが監督として指揮する姿を見たかったのだ

 

「衝撃が立派になってねぇ」

 

「母さん衝撃のチームなら無敗の帝国学園だって勝てるさ」

 

 お爺ちゃん達も試合を楽しみにしていた

 

 会場入りして試合がいまかいまかと待っていた

 

 試合開始時刻の45分前に大江戸中学の選手達が入場してきた

 

 選手達はなぜか焦っているようにも見えた

 

 試合開始15分前……パパが出てこない

 

 パパの姿が見えないのだ

 

 そして試合開始時刻になってもパパは現れなかった

 

 大江戸中学は監督不在として棄権せざる終えなくなり、試合することなく敗北した

 

 聞こえてくるのは監督に対しての罵声

 

 観客は暴言を叫び、選手達は涙を流しながら恨み言を言う

 

 そんなハズはない

 

 パパは試合を楽しみにしていたし、朝早く試合のために家から出ていった

 

 なのになのになのに……

 

「……はい、え!? 衝撃が!」

 

「お父さん衝撃がどうしたの」

 

「……衝撃が……死んだ」

 

「……え、え? 死んだ? ……馬鹿を言うんじゃないよ! 衝撃は今朝元気良く出ていったじゃない!」

 

「駐車場の車の中で自殺しているのを発見された……」

 

「じ、自殺!! 自殺ってどういうことよ!」

 

 お爺ちゃんとお婆ちゃんが喧嘩が始まる

 

 ボクは状況が劇的に変化しすぎて全く着いていけなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 震撼はその日のうちに父親である衝撃に病院の霊安室で面会した

 

 そこに居たのは冷たくなって変わり果てた父親の姿であった

 

 祖父母は泣き崩れ、震撼は現実を受け止められずにただ唖然としていた

 

 警察は事件性は無く、一酸化炭素中毒による自殺と言われたが、そんなハズはないと震撼は断言できた

 

 あれだけ父親が誇りだと言って、父親が育てたチーム

 

 例え相手が数十年無敗だからって逃げ出すような相手では無かったハズだ

 

 しかし、それを知るのは震撼と祖父母しか居ない

 

 震撼と祖父母は今回の件で地域のコミュニティーから差別され、虐められるようになる

 

 帝国を恐れて自殺した教師の子供だとか、自身の教え子を信じられてない小心者の家族だとか

 

 誹謗中傷が飛び交った

 

 祖母は周囲の圧により病気になり、メンタルもボロボロだったため耐えきれずに他界

 

 祖父も一気に老け込んでしまった

 

 祖父は親戚の助けも借りて住み慣れ、楽しく過ごした家を手放した

 

 ここに居ては自身も震撼もダメになると感じ取ったのだ

 

 転居先は稲妻町……そこの借家にひっそりと移り住んだ

 

 祖父は不慣れながらに家事を始め、震撼はそれを手伝う生活が始まった

 

 空いた時間、震撼はサッカーをしていた

 

 亡き父との最後の繋がりであるからだ

 

 サッカーをしていれば天国に旅立った父親の衝撃に届くかもしれないと幼き震撼はそう思った

 

 そう思うことにした

 

 それには天国まで届く名声が必要であり、サッカーが上手くなければならなかった

 

 とにかくサッカーボールを蹴った

 

 蹴って蹴って蹴りまくってボールやシューズが幾つもボロボロになって……そう、そうなるまで練習をしていた

 

 少年サッカーチームに入りたかったが、祖父の貯金も限りがある

 

 これからの震撼の学費を考えると近くのサッカーチームの月謝を払うには働かなければならず、消費するボールやシューズの事を考えると震撼もチームに入りたいとは言い出せなかった

 

 そんなある日震撼が町を歩いていると廃材の中から幾つもの鉄球を見つけた

 

 震撼はそれを持ち帰り、サッカーボールの替わりとして特訓に使うようになった

 

 重くて固い鉄球は震撼に負荷をかけ続けた

 

 鉄球で遊んでいる震撼の元にとある刑事がやって来た

 

 なんでも父親の死に疑問を持ち、自身が調査している別件に関係あるのではないかというものだ

 

 刑事さんに祖父と震撼は当時の父親の様子を詳しく話したところ、帝国学園総帥の影山という男性が関わっているのではないかと話された

 

 影山は帝国学園にとって障害となる選手やチームを妨害するためなら手段を選ばないと言う

 

 その話を聞いて震撼は幼いながらに理解した

 

 影山が父親を消したのだと

 

 直接殺したのは違う人物かもしれないが、元を辿れば影山に着くのではないかと

 

『見ていてくれ! 大江戸中学が全国にいく姿を!』

 

 父親の言葉を思い出す

 

 父親が作ったチームは父親に恨みを抱きながら世代が交代した

 

 今さら父親は殺されたのだと言っても信じる人は少ない

 

 事実世間的には自殺したことになっているのだ

 

 悔しい……力の無い自分が

 

 悔しい……真実がわからない現状が

 

 悔しい……大好きな父親が悪者にされるのが

 

 次第に悔しさが父親を葬ったとされる影山に向かう

 

 悔しさは憎しみへと変わり、それが原動力として震撼を動かし始める

 

 刑事さんが帰った後、残された震撼は鉄球を素足で蹴る

 

 痛みは無い

 

 痛みよりも憎しみの方が強いからだ

 

 この日、震撼は復讐を誓う

 

 影山を倒して父親の無念を晴らすのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからの特訓は本当に血のにじむ、流血を伴う凄まじいものだった

 

 足の皮がめくれ、身体中に打撲根や内出血跡が至るところにでき、肺が潰れそうになるまで走り、重りを背負って筋トレをする

 

 目は真っ赤に充血し、肩まで伸びていた綺麗な黒髪は散々に乱れ、滝のような汗が地面に滴っていた

 

「はぁ……はぁ……体温上昇、水分不足、冷却を……」

 

 よろよろと水道の蛇口を捻る

 

 吹き出てきた水を浴びながら、水分を補給する

 

「ミッションを確認、ドリブル、障害物を突破、シュート。プロセスを構築……完了」

 

 まるでロボットかのような言動、我流の訓練は体にダメージが蓄積していったが、そんなのお構いなしに練習を続けた

 

「ドリブル良好、突破……不良、再度挑戦……不良、不良、不良……突破は可能、再計算……回転、サイドスピン……ひとりワンツー!」

 

 障害物として置いた割れた三角コーンをひとりワンツーで突破する

 

「……改良開始」

 

 今さっきできたひとりワンツーを何度も何度も繰り返し、技を進化させ、自身に合った技にしていく

 

「重量感と突破力、速度を強化、迂回時のロスを最小限に……」

 

 鉄球を使ってるとは思えない速度でドリブルを続ける

 

「シュート。コース良し、威力不足」

 

「疲労蓄積、休息10分」

 

 ついに疲労が限界に到達し、足が震え始めたところで休憩を取った

 

 頭の休憩中も頭の中ではイメージトレーニングを続ける

 

 シュートの何が良くなかったか

 

 なぜ威力が不足していたのか

 

 純粋に筋力不足だと結論付けると休憩を終了し、筋トレを開始する

 

「1、2、3、4、5……」

 

 鉄球を担いだ状態でスクワット、木を使って逆懸垂、腹筋、背筋etc……日が暮れても月明かりを頼りに練習を続ける

 

「……食事の時間」

 

 夕飯の時間の20分前に練習を切り上げ、震撼は練習機材を片して祖父の待つ借家に帰る

 

「ただいま帰りました」

 

「震撼帰ったか。晩御飯できてるからお風呂に入ってきなさい」

 

「はい、了解しました」

 

 祖父は思う……昔はこうでは無かったと

 

 自身に対してもロボットの様な敬語を使い、全身ボロボロのハズなのに、それを顔に出さない

 

 どれだけ傷ついても、どれだけ死にかけるほど練習しても笑顔を見せてくれることが無い

 

 昔は息子の話題が出る度に満面の笑みを浮かべていたのに……震撼、不甲斐ない祖父でゴメンよ……と

 

 風呂から出た震撼は柔軟を開始する

 

 ぐにゃぐにゃに体をほぐして明日に備える

 

 体をほぐし終わると祖父と一緒に食事を始める

 

 祖父が色々話しかけるが、震撼は事務的な返答をするだけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 必殺技……サッカーに限らず陸上以外ではほぼほぼ浸透している個人の資質に左右されるテクニックである

 

 火が出たり、波が起こったり、巨大な手が出たり……様々な技が存在する

 

 震撼も技を持っていたりする

 

 例えばひとりワンツーだったりするが、震撼にとってひとりワンツーは必殺技には入らない

 

「ライフル」

 

 鉄球を両足で挟み込み、空中で両腕をプロペラのようにし、体を回転させ、ライフリングのごとくボールを回転させ、ゴールに一直線にぶちこむ震撼の必殺技の1つである

 

 他には『トーチカ』というブロック技も持っている

 

 その名の通りトーチカが現れて進路を防いだり、シュートをブロックする技だ

 

『浸透』

 

 ボールを蹴り上げると同時に分裂させ、砲弾のように打ち込み、敵が混乱している間に突破する技

 

『リトルインパクト』

 

 浸透もう一つの必殺技でボールを自分の頭の高さに蹴り上げ、ボールに向かってサイドキックをする技で、キックと同時に空間に小さな亀裂が入る

 

 以上4つの技(ひとりワンツーを入れれば5つ)を持っていたりする

 

 どれもこれも震撼にとっては威力不足で進化させたいと常々思っている

 

 そのためには地道な特訓をするしかない

 

 試合による経験が無いのでとにかく特訓をするしか能力を伸ばすことができない

 

 しかし、そんな事を覆す出来事が起こる

 

 フットボールフロンティア予選で帝国学園の試合を観ることができたのだ

 

 小学校の友達が旅行で帝国学園の試合のチケットが余っていたから1枚くれたのだが、そこで初めて帝国学園の試合を観ることができた

 

 ジャッジスルー、キラースライド、デスゾーン、パワーシールド

 

 どの技も進化を残しており、明らかに力をセーブしているのが観てとれた

 

 悔しいが今の自分では敵わない

 

 しかし、圧倒的なレベルの試合を観ることで自身の必殺技をどうすれば強くできるかがわかった

 

 分身すれば良いのだ

 

 キラースライドを見てそう思った

 

 足を高速で分裂したように見せるキラースライドと違い分身は必殺技の原動力でもある気を著しく消費する

 

 分身を生み出し、簡単な動作をさせだけでも凄まじく疲れるのだが、震撼は喜んだ

 

「成長の余地大いにあり……よし!」

 

 自ずと鉄球を蹴る足に力が入る

 

 完成すれば帝国学園だって倒せる

 

 そう思えるほどの力を秘めていることがわかったのだ

 

 分身を扱うための特訓を始めた

 

 まずは思考の分裂である

 

 本体が指示を出すとはいえ分身自身が思考を持っていれば咄嗟の判断が楽になると考えられたからだ

 

 精神を分裂させる方法は簡単だ

 

 鏡に向かってお前は誰だというのを繰り返せば精神は徐々に分裂していく

 

 もしくは自身を分裂させるイメージをすれば良い

 

 そして思考を持たない分身をとにかく動かす

 

 普通の人間であれば精神が分裂などしたならば体の主導権を奪い合って盛大な殺し合いの末に自殺か廃人になるのだが、震撼は復讐心と元々壊れていたことにより奇妙な共存をすることができた

 

 震撼は分裂した思考と話し合いながら名前をつけた

 

 [皇帝]と{覇王}、そして自身を(英雄)とした

 

 分身に思考を付与して満足に動かすようになるまで2年の年月が経過していた

 

 ただ、思考を付与できるということは分身を使った練習の効率が通常の3倍になったことを意味し、必殺技の錬度は爆発的に進化し続けることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [うむ! 実に充実しているではないか! これなら帝国学園にも通用するのではないか? ]

 

 {ハーハッハッハ! なーに! まだまだ帝国学園に勝つには実力が足りないではないのか? }

 

(さっさとパスをしてください)

 

 今はドリブルとパスを連続で行う練習をしている

 

 思考の2人は私から分裂した思考なのにやたらと煩い

 

 思考が分裂してからというもの私の学校の成績も上がり始めた

 

 皇帝は文系で、覇王は理系が得意だ

 

 授業で聞き逃したところとかをアドバイスをくれる

 

 いっつも脳をフル回転させているけれど脳がオーバーヒートすることはない

 

 脳も3人の人格に対応するために成長しているのかもしれない

 

 小学生6年生となり、身長も伸び始めて大柄とはいかないが、普通の小学生よりは少し背が高いかなってぐらいには背が伸びている

 

 これなら……これならば帝国学園に通用するのでは? 

 

 いや、足りない……圧倒しなければ……

 

 もはや強迫観念のようになった強さへのこだわり

 

 憎しみが、強さへの執念が……震撼を強くする

 


 使える技

 

 ・ライフルV3

 ・真トーチカ

 ・浸透V3

 ・真リトルインパクト

 ・ひとりワンツーV3

 ・??? 

 ・??? 

 ・??? 

 ・??? 

 ・分身フェイント

 ・分身シュート

 ・分身ディフェンス

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