皆が1回戦の祝勝会を雷雷軒にて行うと円堂先輩が言って私とニャル、ハス太はごめんなさいとパスした
ニャルとのデートでおこづかいが尽きてしまうという悲しみと他のメンバーに奢ってもらうのは気まずいので、更に特訓してくるという理由で、ハス太とニャルは心配だから付いていくという理由で祝勝会をパスした
栗松がノリが悪いでやんすと言われたが、仕方がないし、私だってノリが悪いと思ったよ
「で、秘密の特訓はどこでやるの? ニャルは知ってそうだけど?」
「付いてきてください」
私はとりあえず郊外にある私の家の近くの空き地にやって来た
「ここは」
「A.私がこの前まで練習をしていた空き地です……開きます」
「何が?」
私は分身をして皇帝と覇王にハス太とニャルの手を繋いでもらう
「うわ! いきなり過ぎない?」
ハス太は皇帝にいきなり右手を捕まれて驚くが、ニャルは覇王に捕まれても全く動揺しない
私は左手で指を鳴らすと扉が出現した
「え? えぇ!? 扉! が現れたよ!!」
「ハス太、手を離すと扉が見えなくなりますので離さないでください……入りますよ」
扉を開くとサッカーコートが広がっていた
「えぇ……なにこれ? 不思議現象なんだけど……」
「ハス太、ここで特訓をしましょう。少し準備をするのでベンチで2人は待っていてください」
私は1と書かれた扉を開いてロボットの準備を始めた
「ロボット!? 20体も居るじゃん」
「サッカーロボットです。ここのロボットは帝国学園のメンバーより遥かに強いです。ハス太は私と一緒にこのメンバーと試合をしてもらいます」
「試合……試合!? 僕野生中との試合でヘロヘロなんだけど」
「ハス太、あとこのユニホームに着替えてください」
「これ? 重!? なにこれ」
「今20kgに調整したユニホームです。これを着用して試合に出てください」
「死んじゃう死んじゃう……ニャルもなんか言ってよ」
「逝きなさいハス太」
「絶対漢字が逝けだよね! 鬼悪魔!」
「ニャルは4の部屋の冷蔵庫にドリンクが入っているので持ってきておいてください。ではハス太、特訓をします。今の実力では帝国学園には通用しないのでね」
「逝きたくない! 死にたくない!! うわぁぁぁぁ」
ズルズルと首根っこを捕まれたハス太はジタバタするが、私の力の前には無力
哀れハス太はフィールドに立たされた
試合が始まるとロボット達は明らかに人間の出せるスピードよりも速く動き回る
消えたと錯覚するくらい速い
僕は向かってくるボールを取りに行こうと走るが、ユニホームが重いのと野生中の疲れでうまく走ることができない
震撼はロボットの動きを見極めてパスカットしたり、シュートしたりしているが、円堂先輩に似ているロボットが震撼の必殺シュートのライフルV3を技無しで止めるのを見て僕のレベルとかけ離れた試合が展開されているのを嫌でもわかった
それでも諦める事なく走り続け、またまた目の前にボールを持ったロボットがやって来た
「這いよる触手」
僕の必殺ブロック技を真っ正面から粉砕される
「ぐわぁ!」
そのままロボットがシュートを放つが、震撼が右足でブロックする
ギュルギュルと震撼の右足の中でまだボールが回転している
とんでもない威力だ
「ハス太!」
震撼からパスが飛んできた
僕は胸でトラップするとほぼ動けない体に鞭打って必死に前進をする
あっという間にロボットに囲まれ、エンゼルボールで突破しようにもロボット達の行動の方が圧倒的に早く吹き飛ばされてしまった
「おっと、大丈夫ですか」
震撼が吹き飛ばされた僕をキャッチしてくれて、地面に叩きつけられることは無かったが、めっちゃ怖かった
「ハス太、私がなぜこのような特訓をさせているかわかりますか?」
「……わかんない。僕を痛め付けたい様には思えないし……」
「速さに慣れて欲しいのです。このロボット達は全力の私の1.2倍速く動くように設定してあります。最初はそのユニホームを着た状態で速さになれてください」
「速さに……慣れる……」
「あと15分やったら休憩を取りますから頑張ってください」
その後ハス太は無理にボールを取るような行動はせずに、シュートのブロックやドリブルするロボットと併走しようと努力した
「ゼヒューゼヒューゼヒュー」
野生中との試合の疲労と更にロボット達との試合で疲労が限界に到達したハス太は過呼吸の様になりながら倒れた
それを担いでベンチに運び込み、ニャルに取ってきて貰ったドリンクをチビチビと飲ませる
すると呼吸が安定して眠るように気絶している
「不思議ドリンクね。あれだけ呼吸が乱れていたのに飲ませただけでこうだと医者要らずってわけ……それよりも震撼は何kgのユニホームを着用しているの?」
「A.100kgです」
「それに重りつきで約60kgのハス太を担ぐなんて人間やめてるわね」
「A.まだまだ私は成長できます。人間はまだやめてませんよ」
「いつかはやめるってことじゃない……はぁ、ナイアルラトホテップ様の信者に成ってなければミ=ゴに紹介していたわよ。たぶん気に入られて貴方も私達と同じように改造されれば……」
「私は改造して人間をやめる気はありませんよ。人間には無限の可能性があるのです」
「手っ取り早く上位種族になれるのに?」
「力には興味がありますが、力を全てにしてしまえば影山と同じです。私の父が求めていたのは努力による勝利です。汚い手での勝利に何の価値もない」
「ふふ、わかったわ……まだ続けるのかしら?」
「ええ、ニャルはどうしますか? 1の部屋はロボットの格納庫、2の部屋は洗濯と温泉、3はミーティングルーム、4は空の本棚と私室ですが」
「そうね……先に温泉に入っているわ。タオルなどは有るかしら」
「A.使っても減らないタオルが置かれています」
「了解したわ」
ニャルはそう言うと2番の扉から温泉に向かっていった
「やりますか」
私はリモコンでロボット達を再起動させ、ハス太がフィールドに居た時よりも出力を上げた
「さぁ行きましょうか」
「{僕の力を全力を出そうじゃないか}」
「[ふん、俺も楽しませてもらうぞ]」
「A.全力で行きます」
僕が目を覚めるとベンチの上だった
頭に冷えたタオルと、横には七色に光るなぞのドリンクが置かれていた
「んん……ここは」
そうだ、震撼に連れられて変な空間に来たんだっけ……
バゴンと激しい衝突音が響いてきた
震撼がロボットとタックルしている
明らかに僕と試合していた時よりもロボットは強く、速くなってる
震撼はボロボロになりながらも笑っている
それは狂人の様にニヤリと
良く見るとボールも鉄球でやっているので、震撼はトラップする度に骨が軋む嫌な音がきこえてくるが、震撼はそれでもお構い無しにドリブルを続ける
激しいチャージや、ロボットから放たれる必殺技に吹き飛ばされながらも果敢に攻め続ける
分身を出しては突破を敢行するがロボットの巧みな守備にブロックやスライディングで止められてしまう
そんな様子を見ていた僕は、震撼に対して不思議な感情が芽生えていることに気がついた
最初は弱小サッカー部に似合わない強さへの興味、次に鍛えぬかれた身体と歪んではいるがサッカーへ対する情熱への感心、そして今だ
震撼を見ていると彼を手伝いたい、支えたいという気持ちが湧いてくるのだ
「ハス太、それは損得勘定を無視した物ですか?」
「うわ! ニャル! いつの間に……僕話してたっけ?」
「小声ですが、口に出ていましたよ……まぁあの異常なトレーニングをしても壊れない肉体は本当に人間か疑いたくなりますが、肉体は高次元に纏まった人間ですね。精神が分裂していても正常なのは違和感がありますが……」
「損得勘定か……震撼だったら見返りなんかは求めないかな……何なんだろう……この気持ち」
「ハス太、それは恋ですよ」
「恋……恋かぁ……恋だと確かにしっくりくるけど男性同士だよ」
「貴方はバイだとおもっていたのですが?」
「まぁそうだけど……本気でこう胸が熱くなるような恋をするとはおもってもみなかった……」
「ふふ、ハス太、震撼は渡しませんよ」
「ん? ニャルも震撼を狙ってるの?」
「ええ、彼とは命の危機を共に打ち勝ったりしてますからね。デートだってしましたし」
「デート!? ……良いなぁ……」
「あら、私は共にピッチでプレイできるハス太の方が羨ましいですが……信頼を得ることができるじゃないですか」
「信頼……」
「ええ、信頼。好意を持ってもらっている相手から頼ってもらえるのですよ。嬉しくないですか?」
「……嬉しいね」
「その為には強くなる必要がありますけどね。ハス太、貴方には足りないものが沢山ありますよ。その為には練習を沢山するしかなくて?」
「……はは、ニャルには敵わないな。わかったよ。僕頑張る……震撼に僕が本気で狙っていることは内緒にしてよ」
「ええ、言いませんよ。まぁ私が有利なのは変わりませんのでせいぜい努力しなさい」
「ふふーん、僕が震撼のハートをがっちり握っちゃうもんねー」
僕はニャルと握手をした
互いに震撼に好意を持つものとして
異性の親友として
震撼のこの場所という秘密を共有する者として
「ミッションコンプリート……ハス太、ニャルですか。ハス太どうしますか? このまま入浴していきますか」
「本当! 行く行く!!」
「ニャルはどうしますか?」
「少しこの空間を探索しますわ。貴方達が入浴し終わるくらいにはここに居ますわ」
「じゃあハス太行きましょうか」
「じゃあねーニャル~」
私とハス太は2の扉の中に入り、洗濯物を洗濯機に入れてお風呂に入る
「わぁ! お風呂広いし、種類も沢山じゃん! どうなってるんだろう!」
「私も譲り受けたとしか言えません」
「なにこのシャンプーやリンス……めっちゃいい匂いするじゃん! 震撼体洗いっこしようや」
「A.ニヤついているので嫌です」
「そんなー!」
「馬鹿やってないで洗いますよ」
体を洗い、風呂に入ってからサウナに入る
ハス太もサウナに入り、リラックスしている
「ねぇ震撼、どうやってこんな場所を知ってるの?」
「……私は神に会いました。神から試練を与えられ、それを乗り越えたご褒美にこの場所をいただきました」
「神!? ……神かぁ……それなら納得できるか! 何! 神様って普通に居るの!? 試練って何さ」
体がサウナによって徐々に暖まる
「巨大な蛇に戦いを挑まされました……勝ちましたが、危なかったです」
「ふぇ……僕だったら無理だな……」
「鉄球を扱えるようになれば戦えますよ。一緒に鉄球で訓練しましょう」
「いや、それできるの震撼だけだからね」
私はションボリする
「神かぁ……不思議な事も有るんだねこの世には」
ハス太はそんなことを言っているが、ハス太も改造されたことにより失敗作とはいえ神に近しい存在の一端を持つ者……もしハス太が何らかの出来事で神の力を使えるようになったら……ハス太はハス太のままで居れるのでしょうか
ニャルはニャルのままの様ですが、ハス太も同じとはわかりません
ニャルはハス太に知らせるべきではないと言っていましたが、私はハス太も知るべきだと思っています
最も今では無いですがね
「おーい、震撼大丈夫? ボーッとして。一回出ない? 熱くって」
「そうですね。汗を流してから水風呂に入りましょう」
雑談をしながらハス太と風呂やサウナを堪能しながらベンチに戻るとニャルがベンチで本を読んでいた
「ふふーん、必殺ノート2冊読ませてもらったわ。円堂先輩のノートとは完成度が全然違うわね」
「読まれましたか」
「分身の作り方は無理ね。普通の人間では分身を維持すること、遠隔操作することができずに破綻するわ。分身ペンギンなんかも普通は不可能ね……ハス太トーチカ覚えない?」
「トーチカ……震撼のブロック技だよね」
「えぇ、貴方なら習得可能だと思うわ。2つのトーチカが揃ったら何か起こると思わないかしら」
「……なるほど。やってみる価値はありそうですね。ハス太、必殺ノートバージョン1を貸します。今日家で読んでください」
「わかったよ!」
「今日はこれで解散としましょう。また明日練習後に行いましょう」
「えぇ、わかったわ」
「りょーかい!」
この場で解散となり、それぞれ帰路についた
今日は河川敷が空いているということなので河川敷で紅白戦の様な練習をしていると橋の上にギャラリーが沢山居るのに皆気がついた
「遂にできたかもな」
「風丸さん何ができたんですか?」
「ファンだよファン!」
「「「ファン!?」」」
「違います。あれは他校の偵察隊です」
「「「偵察隊!?」」」
「皆考えてみなよ帝国から2点も奪って尾刈斗中、野生中と強豪を連勝したんだよ。そんな無名校を他校がほっとくわけないだろ」
マックス先輩がそう付け足す
「わかってるじゃない」
すると河川敷のグランドに執事に日傘をさしてもらいながら夏未先輩がゆっくりと降りてきた
「必殺技の練習を禁止します。相手に情報を与えるのは得策ではないわ。必殺技の練習をしたければイナビカリ修練場で行いなさい」
「それもそうだな」
そんなことを話しているとレーダーが付いたトラックが3台やって来て私達の偵察を始めた
「なんだあれは!」
「なんだかヤバくないっすか!」
「明らかに異常だよな」
「おいおい、皆大丈夫だ。とにかく必殺技無しで練習を再開しようぜ」
円堂先輩の言葉で解散となり、皆元の位置に戻る
その後普通に練習をして、休憩になると音無マネージャーがトラックに乗っている人物が御影専農の杉森と下鶴だと情報をくれた
「御影専農の正ゴールキーパーの杉森とエースストライカーの下鶴です。杉森は正ゴールキーパーになってから失点したことが無いんだとか」
「そんなスゲー奴と次試合できるのか! よっしゃ! 初失点は俺達が決めてやる!」
円堂先輩は盛り上がり、それに釣られて他の皆の士気も上がる
「よし! 練習再開だ!」
練習が再開してからもパス回しや普通のシュート、ドリブルなんかの基礎を中心とした練習を続けていると、グランドに杉森と下鶴が入ってきた
「ちょっとタイム! お前ら、練習中にグランドに入ってくるなよ」
「なぜ必殺技を使わない」
「なぜって……」
「我々はお前達の情報を既にインプットしている。勝利は確実だ」
「勝利は確実って……試合はやってみなくちゃわからないだろ」
「試合……試合ではない。ただの害虫駆除だ」
「害虫!?」
「ひどいっすよ!」
「あんまりでやんす!」
「「「そうだそうだ」」」
害虫と言われて腹が立った皆、特に染岡先輩なんかはキレて殴りかかろうとしているのを私とハス太が止めに入る
「取り消せよ今の言葉!!」
「取り消す? なぜ事実を取り消す必要がある? お前達のチームランクはC-……我々には勝てない」
「頭に来た! いいぜ見せてやるよ! 俺達の必殺技を!!」
円堂先輩が啖呵を切った
成り行きで1on1の勝負となり、始めは円堂先輩と下鶴の勝負
驚くことに下鶴はファイヤートルネードを放ち、驚いた円堂先輩は熱血パンチでガードしようとしたが、止めきれずにシュートはゴールに入ってしまう
「そんな……豪炎寺さんのファイヤートルネードが……」
「コピーされたなんて……」
明らかに皆動揺している
「豪炎寺……すまない」
「任せろ円堂」
円堂先輩からボールを受け取った豪炎寺先輩は続いて杉森との勝負になる
豪炎寺先輩から放たれたファイヤートルネードは今度は杉森のシュートポケットに止められてしまう
「これでわかっただろう」
「お前達は我々には勝てない」
「そんなの試合が始まってみなければわからないだろ!」
「諦めの悪い奴らだ」
そう言うと杉森と下鶴は帰っていった
皆の士気が明らかに低下している
「どうした皆! まだ試合までには時間がある! 特訓して勝ちに行くぞ!!」
「でも豪炎寺さんのシュートが止められたっす……」
「そうでやんすよ」
「何言ってるんだお前ら! 俺達には合体シュートがある! 震撼の3人でバンバン点を取ってやるよ!」
「期待してるぜ染岡!」
「任せろ円堂!」
『勝利確率75.0%……シュミレーションを終了してください』
「……やはり大震撼が勝率を大きく下げているか」
「監督いかが致しますか」
「この勝率では総帥にお見せすることができない。先日来ていただいた時には大震撼のデータを外したのを見せたが、大震撼を入れただけで勝率が25%も下がるとは……杉森、ロケット拳で震撼のライフルを弾く可能性は幾らだった」
「25%になります」
「うむむ……宛にできん数字だ……何より厄介なのが奴がディフェンスな事だ。ディフェンスゾーンからのシュートでこの確率なのだからセンターラインを越えた瞬間に確率がはね上がる……仕方がない。杉森、あれを使うぞ」
「……あれですか。しかしまだ完成できておりませんがよろしいので?」
「なんとしてでも完成させろ。でなければ次の試合負けるぞ」
「は!!」