全国大会2回戦、千羽山中学との対戦は響監督が全員揃っているのにも関わらず1人足りないと言い続け、試合が始まらないでいた
「全員揃っているんですよ!」
「なんで試合を始めないんですか! 響監督」
審判があと3分以内にグランドに出なかったら試合放棄と見なすと忠告してきた
「……何を考えているんだ」
私は響監督が何を待っているのか理解できなかった
焦る
源田さんに世宇子を叩き潰すと言った手前、こんなところで試合放棄なんてふざけてる
「監督!」
「響監督!!」
皆も焦る
その時コツコツと誰かが通路を歩く音がした
「誰だ!!」
私は叫んだ
すると出てきたのはドレッドヘアーにゴーグル、青いマントを翻した鬼道有人がそこに居た
「やっと来たか」
「「「ええぇ!? 嘘ぉ!?」」」
雷門のユニホームを着用した鬼道さんが居るではないか
「待たせたな」
「鬼道どうして鬼道がうちのユニホームを!?」
皆驚いているが、会場全体も驚いている
『鬼道……間違いありません帝国学園の鬼道選手です』
どうなってんだとかそんなのアリかよと観客から罵声が飛ぶ
『ええっと失礼……有りました大会規約64条第2項試合開始前に転入手続きをしていれば大会に出場するのは問題ないとのことです!!』
実況の人が解説してくれたがつまり監督は鬼道さんが来るのを知っていて……
「あのままでは引き下がれない……世宇子の奴らに必ずリベンジする!」
「鬼道俺にはわかってたぜ! お前があのまま引き下がるような奴じゃないと!!」
円堂先輩は鬼道さん……いや、鬼道先輩か
鬼道先輩が世宇子に負けっぱなしで終わるような人じゃないと信じて……
「なんて執念だ」
「少林、すまないが鬼道にかわってベンチだ。鬼道、右サイドに入れ、左サイドは松野で行く」
「「「はい!」」」
私はモノクルをこの試合から着用する
「お? 震撼どうした? 珍しい眼鏡だな片方しか無いぞ?」
「モノクルです。前の事故で視力が変わってしまい、今までは裸眼でやってきたのですが、やっぱり視力に差があると厳しいので……」
「そうか! 似合ってるぞそれ! 今日もバンバン決めていけよ」
「了解致しました」
視力に差が有るのは事実だが、事故で義眼となった方は視力が高すぎる為落として調整するためのモノクルだ
田中特製のスポーツ用モノクルをしっかりはめ込み、臨戦態勢完了
「無限の壁の強さ確かめさせていただきます」
『さぁ試合開始だ!!』
ホイッスルと同時に染岡先輩から豪炎寺先輩に渡り、豪炎寺先輩は私に向かってバックパスをする
ややズレていたが、私の身体能力でカバーし、ライフルの発射準備にかかる
キュイイイイインと回転と同時に機械音がフィールドに響き渡り、ドンと発射する
「ライフルV3」
『出た! 数多の中学を絶望に陥れてきた大選手お得意の超ロングシュート! ライフルだ!! 発射されてから威力が全然落ちること無くゴールに突き刺さってきたこの技は千羽山にも通用するのか!?』
「無駄ずら」
「「「無限の壁」」」
『出た千羽山の絶対的防御の無限の壁だ!! ライフルを難なく止めて見せた!!』
「豚の糞ずら」
「ドンマイドンマイ切り替えてけ!!」
円堂先輩が後ろから励ましてくれた
次は決める
ただ今のでわかった
源田さんや円堂先輩よりは弱い
源田さんは単独で止めていたのを彼らは3人で止めていたのが1つ
そもそも能力が源田さんや円堂先輩より劣っている
ゴキゴキっと首を鳴らす
「絶対防御はこちらだ」
ここから約10分は守りのサッカーだった
パスが私とハス太からの以外繋がらないのでフォワードの2人に行く前にボールがカットされてしまうのだ
ただ私、壁山、ハス太の3人による必殺タクティクス絶対防衛線で攻撃を完全にシャットアウト
これに横から切れ味抜群のスライディングでボールを奪う土門先輩のお陰で私達の負荷もあまり無い
千羽山は絶対防衛線の突破方法がわからずにいたずらに時間を消費し、10分が経過すると鬼道先輩が動き始めた
パスの時にテンポ、タイミング、方向の指示を行いハス太が努力していた司令塔としての役割をこの短時間でこなし、雷門のズレを修正してパスが繋がるようになった
その後ドラゴントルネード、イナズマ落とし、ライフルトルネード、ドラゴンインパクトの全てを無限の壁で止められたものの、私に全く焦りは無かった
鬼道先輩にアイコンタクトを送ると彼も理解してくれたらしい
後半動くと
「後半震撼を一番前に置く……3-4-2-1にする。無限の壁は驚異ではあるが弱点はある」
「弱点?」
「無限の壁は3人技だということだ。3人のうち誰かが欠ければ無限の壁は簡単に突破することができる。震撼を前に置いたのは分身でディフェンスを掻き乱すことで無限の壁を発動できなくさせる」
「なるほどその手があったか」
「でも震撼が抜けたら絶対防衛線は発動できませんよ鬼道先輩」
「ハス太と言ったな。千羽山のオフェンスの動きをみていたが、土門、ハス太、壁山の3人であれば対象可能だ。ハス太、ディフェンス陣の指揮はお前が取れ」
「僕ですか?」
「お前は俺が言う前からパスコースの修正が既にできていた。全体が見えている証拠だ。俺とお前で指揮系統を分裂させることで相手のオフェンスの動きに柔軟に対応することができると判断した。やってくれるな」
「わかりました。精一杯やらせてもらいます」
「ダメそうならすぐに切り替えて俺が全体指揮を取る形にする。皆も良いな」
「1つ良いか」
「何だ半田」
「雷門のサッカーは豪炎寺と染岡のツートップ。それに震撼と円堂の2人が防御の中心となって他を寄せ付けない防御力を誇る雷門必勝の型を簡単に変えて良いのかよ」
「半田……」
「確かにそれはそうでやんすが……」
「わかってないな」
「なに!」
「ここはフットボールフロンティア全国大会、全国の強豪が雌雄を決する場所だ。今までのお仲間サッカーがいつまでも通用すると思うな」
「半田先輩、私も鬼道先輩の意見に賛成です」
「震撼まで」
「必勝の型と貴方は言いましたね。型ができてしまえば相手は対処しやすくなります。今日を入れてあと3回勝たなければ全国の頂点には行けません。全国で勝ち進むには今までのやり方とは別の方法も取らなければならないのです」
「やってみようぜ半田」
「円堂……わかったよ」
『さぁ千羽山からのキックオフで後半開始です』
『おおっと猛烈な勢いで震撼が上がっていく! 速い速いぞ』
「ち! 山根!」
「電撃銃」
走りながら指に気を集め、指鉄砲の形を作り、そのまま電撃を発射した
「ぐわ!」
「「「山根!!」」」
痺れて動けない隙に私はボールを奪う
「行かせないっぺ」
「ミッションスタート……零戦」
『大選手! 飛行している!! 低空ながら高速で敵陣深くに侵入を開始!!』
「かごめだっぺ!」
「無理だっぺ!! あいつ速すぎるっぺよ!」
「追い付けないだす」
私はそのまま回転して空に飛び上がると、再び機械音が響き始まる
「いくべお前ら無限の壁ずら」
「「おう」」
「震撼ダメだ! 防がれるぞ」
鬼道先輩の声が聞こえてきたが、私は確信している
こいつで無限の壁は破れると
「対物ライフル!!」
凄まじい回転がかかったせいで細長い槍の様にも見えるボールが無限の壁に突き刺さる
メキメキと嫌な音が鳴り響き、バリンと無限の壁が崩壊する
「「「ぐわぁ!」」」
『ご、ゴール! 無限の壁超人の前に破れる!! なんというシュートだ大選手圧倒的な力を見せつけます』
「ナイス震撼」
「無限の壁が破られて動揺しています。ファイヤートルネードでも今なら決まるでしょう」
「わかった。助かる」
千羽山の精神的支柱であった無限の壁という絶対防御が簡単に突破されたことにより千羽山は明らかに動揺していた
仲間同士でぶつかったり、パスミスしたりと様々なミスを連発していた
それに付け入らない私達ではない
円堂先輩、豪炎寺先輩、鬼道先輩の新技イナズマブレイブで2点目、私のリアルインパクトで3点目を取ると戦意を喪失してしまい、後半だけで5点取られて千羽山は敗北した
鬼道先輩が雷門に加わって一番影響を受けたのはハス太だった
ハス太は鬼道先輩に司令塔の立ち回りや全体指揮のやり方等を学ぼうとし、それに鬼道先輩が快く教えてくれた
「全体指揮ってやっぱり難しいですね……」
「なに、学ぼうとする姿勢が有るだけ立派だし、俺にだって利点がある。ハス太が指揮が上手くなればそれだけ俺の負担も減る。俺が雷門に居る間は教えてやる」
「ありがとうございます」
一方私は豪炎寺先輩と連携シュートの練習をしていた
ただ、この頃連携シュートと言えば豪炎寺先輩みたいな風潮を感じる
それだけファイヤートルネードが連携に適した必殺技であるのだが……それだけに私も必死にファイヤートルネード習得を陰で下鶴さんと行っているのだが、相性の問題か難航していた
「震撼集中しろ! 次の相手が無限の壁以上の防御技を持っている可能性がある! 世宇子は必ず持っている! 打開するための新技習得を言い出したのは震撼お前だろ」
「すみません」
「よしいくぞ」
豪炎寺先輩は全てにおいて炎の人だ
熱く皆を焚き付けて円堂先輩が足りない部分を冷静に判断し、支えながらも自身の役割をきっちり果たす
その燃え上がる闘志を内に秘めていることで爆発的な攻撃力になるのだと考えられた
それを新技に生かせれば良しと思い、豪炎寺先輩に声掛けして新技作製に取りかかった……が、ライフルトルネード以上の技はなかなかできなかった
一応火縄バレットという技ができたのだが、威力はライフルトルネードの方が上、ロングシュートできるがそれはライフルトルネードも同じなため利点とはならない
なんとも中途半端な技となってしまった
ちなみに下鶴さんとやったら滅茶苦茶上手くいった
それこそファイヤートルネードの合体技を諦めてこの技の派生や進化させた方が良いんじゃないかってぐらいには私と下鶴さんに火縄バレットは合っていたのだ
……正直今の豪炎寺先輩とでは良い必殺技は完成しないと感じた
豪炎寺先輩と私の相性が実はあまりよろしくないのではないかと私が一方的にだが感じてしまっている
いや、円堂先輩とハス太、染岡先輩、土門先輩、鬼道先輩以外の面々とどこか壁みたいなのが有るように感じた
今はそれが水面下で動いているだけでいつか爆発するような……そんな感じがしてならない
「もう一度だ」
「はい!」
練習は続いていく
ある日練習をしていたら、ミスキックでボールがフィールド外に転がってしまい、それを拾った人がドリブルをして練習に乱入してきた
ドリブルで少林、宍戸、壁山、栗松4人をあっという間に抜き去るとそのまま円堂先輩の居るゴールにシュートを決める
シュートは円堂先輩が止めたものの、乱入してきた人は素晴らしい動きをしていた
皆でその人物を囲んでスゲーなお前だとか、どこの選手なんだとか質問すると木野先輩と土門先輩が用事から帰ってきたらしく、2人が囲んでいる皆に近づくと、木野先輩に乱入してきた人が抱きついた
「会いたかった」
「てめー! 秋になりしや……一ノ瀬! 一ノ瀬なのか! 本当に!!」
どうやら木野先輩と土門先輩の知り合いらしく、2人がアメリカに住んでいた時の友達なんだと
事故で死んだことになっていたが、それは怪我でもうサッカーができない体になってしまっていたからで、リハビリや手術を繰り返し、このようにまたサッカーができるまで回復したのだと教えてくれた
「震撼、彼まだ完治してないね」
ハス太が小声で教えてくれた
「筋肉の付き方がおかしい。事故の後遺症がまだ残ってるし、今のままサッカーを続けたら確実に将来歩けなくなる」
ハス太の現状の人を視る目は確かだ
将来性を視る目は甘いが、ハス太がそう断言したということは彼は爆弾を抱えながらサッカーをしている
田中に頼めば彼を治すことは可能だろうが、今さっき会った人物を助けるほど私はお人好しではない
一ノ瀬さんは皆と混じってサッカーの練習をするが、それを止める訳にもいかずにただただ自分の練習をこなすに留めた
一ノ瀬さんはフィールドの魔術師と呼ばれるほどの天才ミッドフィルダーだ
ゲームメイクではなく自身の個々の技能が高いパターンだ
勿論ゲームメイクもできなくはないが、鬼道先輩には1歩劣る
それが私の評価だ
彼が私をどう思っているかはわからないが、私はそう評価した
彼は円堂先輩を気に入ったらしくトライペガサスという技を復活させようと言い出し、円堂先輩は準決勝が近いというのにその技を物にしてやると意気込んでいる
こうなっては彼らは止まらない
一方私は豪炎寺先輩とまだ何もできてない新必殺技の開発に時間を浪費することとなる
打ち切っても良いが、それをしてしまえば豪炎寺先輩との関係が拗れてしまう
だから私は言い出さない
鬼道先輩は気がついているかもしれないがね……
「彼凄いね、身体能力が僕達と同じ人じゃないみたいだ。鬼道はどう思うかな」
「あぁ、震撼は俺が見てきた中で1番凄いディフェンダーだ。一ノ瀬、アメリカではどうだ?」
「あんなに凄いシュート技を持っているのにディフェンダーなのかい? ……アメリカには居なかったな彼ぐらい凄い選手は」
「あぁ、奴はリベロだが、攻守共にトップクラス……いや、更に上にいる。俺達はまだ奴を最大限に生かせた事がない」
「でも鬼道、君はこの前加入したばっかりなんだろ? 生かせないのは仕方がないんじゃないか?」
「いや、それでも生かすのが司令塔だ……ただ豪炎寺と組ませたのは失敗だったな」
「相性が悪そうだね。見てたらわかるよ」
「あぁ、震撼の成長速度に豪炎寺が追い付いていない。豪炎寺も日本屈指のストライカーだが、震撼には残念ながら完成度で劣ってしまっている……豪炎寺が一皮剥けなければ新技は完成しないだろう」
「それでも技の開発を続けさせているのは何か意味があるのかい?」
「新技の開発は震撼が言い出したんだ。豪炎寺はそれに付き合っているに過ぎない……だから豪炎寺は震撼が納得するまで続けさせるし、震撼は言い出した自分が諦めてしまったら悪いと思って開発中止を言い出せない」
「なら止めさせるべきだと僕は思うけどね」
「タイミングが重要だ。タイミングをミスれば2人に亀裂が走る」
「いや、これは今言った方が良い……豪炎寺、震撼ちょっと良いか」
「あ、一ノ瀬待て」
一ノ瀬さんとなし崩し的に巻き込まれた鬼道先輩の説得で新技開発は中止となった
私はこれ以上時間を浪費しなくてホッとしたが、豪炎寺先輩はとても悔しそうにしていた
しかしこれでハッキリした天才タイプの豪炎寺先輩と努力と理詰めで新技を開発する私では相性が悪いことが
恐らくファイヤートルネードが私ができるようになれば話しは変わってくるのだろうけど、今の私と豪炎寺先輩では必殺技はできない
私は基礎練習に戻り、新技開発は異空間でのみ行うことになる
一ノ瀬さんが来て数日が経過し、一ノ瀬さんがアメリカに帰る日となった
トライペガサスはあと少しで完成しそうだが、まだ出来上がっておらず、時間的にラストチャンスの時、木野先輩がトライペガサスの中心点に立って目印とした
トライペガサスは3人……この場合は円堂先輩、土門先輩、一ノ瀬さんの3人がボールを中心に重なり、トップスピードで走り込み、交わった瞬間に青い炎がボールを押し上げてペガサスの形になって、それを相手ゴールに3人でボールを空中で蹴り、ペガサスが空からかけ降りる様に見える技だ
威力はイナズマブレイブよりは少し落ちるかな位の技だ
ラストチャンスは木野先輩のアシストもあり成功し、空にペガサスが現れた
満足した一ノ瀬さんは皆にお別れをいうとアメリカに帰っていった
……と誰もが思ったが、なんと日本に残ることにしたらしい
円堂先輩や皆に感化されてこのチームでプレイしたいとの事
一ノ瀬さんがチームに加わったことで準決勝は多少楽に勝てるかもしれない
「皆さん! 準決勝の相手が決まりました!! 準決勝は木戸川清修です!」
強豪木戸川清修が対戦相手に決まり、私達は準備を始める……勝つために