貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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なにやらお気に入りのゲームのBGMについてチラホラご意見が届いているようですね。なぜそうなったのか作者にはサッパリまったく皆目検討がつきませんが。

ちなみに作者はGジェネレーション ジェネシスという作品のOPとか好きですね。歌い手の方をゲーム中にパイロットとして使えるのでよく聞いてます。以前モブウマ娘ちゃんの話を書いてるときなんかも聞いてました。


☆さくしゃは しょうきに もどった☆

 

 

 ぴゅーぴゅーぽこぽこ

 

 ぴゅーぴゅーぽこぽこ

 

 あったかふわふわに

 

 布団乾燥機を交換に出したら

 

 真紅のカクテルドレスを着た世紀末覇王が

 

 タヌキに咥えられてやってきた

 

『赤がすごくて、すごく赤いです!』

 

 タキオンの薬は概ねデンジャー

 

 ご飯のお供にポークジンジャー

 

 授けて遣わすドロンチェンジャー

 

 銭形平次の必殺デリンジャー

 

『今回はパワーが足りませんでしたね』

 

※立体交差で波乱が起きるか! 

※立体交差で波乱が起きるか! 

※オバディオブリバディオディマンサ! 

※立体交差で波乱が起きるか! 

 

『じゃがいも60kgを消費しました』

 

 ヘイブラザー プリティーダービー部

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 中央トレセン学園の年末年始。

 

 大多数のウマ娘たちは冬休みというまとまった休日を利用して実家に帰省するが、様々な理由で寮に残っているウマ娘たちもそれなりの人数がいる。

 年明けすぐにレースを控えている者、単純に帰るのが面倒で残った者、そもそも実家が海外にあり簡単には帰ることができない者。正月を寮で過ごすウマ娘たちが抱える理由は様々だが、そんな彼女たちが共通して解決しなければならない問題がひとつだけ存在する。

 

 食事、である。

 

 学生であるウマ娘たちよりは短いが、学園のスタッフも必要最低限の人員だけを残して大半が貴重なまとまった連休を楽しんでいる真っ最中。当然だがカフェテリアなど営業しているワケがなく、ウマ娘たちは自炊をするか外食をするかの2択を迫られる。

 もちろん寮の冷蔵庫には充分な食材が並んでいるし、商店街にはコンビニエンスストアを含め元日から営業している店舗はいくつもある。たかが数日、自分が食べるご飯の世話もできないような残念なウマ娘などいないだろう……という大人たちのささやかな願いはもちろん叶っていない。

 

 トレセンのお母さんことスーパークリークやトレセンのオカンことヒシアマゾンなど料理を得意とするウマ娘は決して少なくない。少なくないが料理ができることとやる気は別問題なのだ。

 

 

 

 

「ン~♪ いつものバーベキューとは違いマスが、この『シチリン』を使ったクッキングも楽しいデスね! これがニホンのワサビサザビー、とってもアメージングッ!」

 

「サムズベジタブル、アンドミート! シーフードテイスト! まさに満腹、幸福、眼福デェェスッ!」

 

「タイキ先輩、それを言うなら『侘び寂び』ですよ~。それとエル、お気に入りのソースを使うのはいいですが、ほかの人の食べ物にかからないよう気をつけてくださいね」

 

 手抜きの食事が続いている育ち盛りのウマ娘たち、それでも明日の栄光を手にするためにトレーニングに励んでいるところへ里帰りからフラりと戻ってきた名物トレーナーが冷蔵庫の整理をするべく炭火を起こしたという情報はあっという間に広がった。

 もともと彼のトレーナールームに出入りしていたウマ娘などは熱帯魚たちの世話をしているところに鉢合わせ、そこからLANEで餓えたる同胞たちへ情報を発信。ダートコースで持久力トレーニングに励んでいたグラスワンダーも、キングヘイローから連絡を受けたエルコンドルパサーに誘われ手早く着替えを済ませて参加することにした。

 

 バーベキューや焼き肉といった賑やかな雰囲気とは違う静かな、それでいて炭火の揺らめきが心をソワソワさせる独特の面白さ。ポラリスのトレーナールームの外にある、いつの間に用意したのかわからない簡素な掘っ建て小屋も味わいがあってよい。風よけはもちろん炭火の熱が暖房としてちゃんと機能してくれているおかげで思いの外快適である。

 

「ん。そっち、そろそろいいんじゃない?」

 

 金属製の串にチーズを刺して炙っているナリタタイシンに促され、グラスワンダーは1品目の食材を──ポラリスのメンバーが美味しそうに食べていたことから好奇心を刺激され挑戦することにした『トマト』を串から外して皿の上に移した。

 食文化として、加熱することによりトマトの旨味が増すことは知っている。だがこうして丸ごと炭火で焼いて食べるというのは初めての試みであり、普段何気なく口にしていたトマトがどのような変化を遂げているのか楽しみでもあり不安でもあった。

 

「グラスさん、焼きトマトならオリーブオイルと塩で食べるのがオススメよ。このソルトミルを使うといいわ」

 

「あら、ありがとうございます。それでは……ん~、加減がわかりませんし、まずは控え目にしてみましょうか」

 

 焦げ目に引っ掛かるかどうかという程度にオリーブオイルを。そしてカリッ、カリッと軽くソルトミルを捻り準備は完了。切り分ける箸に伝わってくる感触は、とろりと蕩けるようでもありフワリと柔らかくもある。

 それでいて持ち上げてみればしっかりと重みが感じられ、水分がすっかり抜け落ちてしまった……などということにはならなかったようだ。

 

 

 さて、まじまじと観察している間に冷めてしまったのではもったいない。まずはひと口。

 

 

「これは……まぁ♪」

 

 じわりと染み出る酸味と甘味、それをオリーブオイルの油分が上手にまとめている。そして塩の役目は輪郭が広がりすぎて味がぼやけてしまうのを防ぐことにあるのだろう。

 チーズをトッピングしたりほかの具材をつめる器としてオーブンで焼いたものとはまるで違う、どこまでもトマトの美味しさを尊重した味わい。少々贔屓目というか偏見が含まれた言い方になるが、こうした食材そのものを楽しむ調理法はいかにも日本的だ。

 

 こうなるとメインとなるお肉や魚介類に移行する前に、もう少し野菜たちを楽しんでみたいという気分になる。

 

 そちらもそちらで興味はあるのだ。少し離れた場所で焼き牡蠣の味付けについてバター醤油と塩レモンのどちらが格上かを決めるために、それぞれの派閥の代表ウマ娘同士がトレーニングで使用しているドラム缶をリングに見立ててアームレスリングを開催しているのをついつい観戦してしまうぐらいには。

 

「クックック。よ~く見ておけ、アレが去年のジャパンカップの最終直線でイカれたデッドヒートを見せつけてくれた優駿ふたりのご尊顔だぞ。実にありがてェだろう?」

 

「喧嘩するほど仲がいい、ですか~。いえ、そもそもケンカでなくじゃれあっているだけなのでしょうが」

 

「フッフッフ! 世界最強のウマ娘としていつかはエルもあんな走りを……そういえばナカヤマ先輩、今日はシリウス先輩は一緒じゃないんデスか?」

 

「あぁ、アイツなら会長サマと一緒に帰ったよ。たまにはシンボリの本家に顔を出すのも悪くないってな。以前なら絶対にありえねェ話だが……まぁ、いまの会長サマのことはそれなりに気に入ってんだろうさ」

 

 以前と比べてシンボリルドルフとシリウスシンボリの距離感がだいぶ近くなったことは、ウマ娘たちにとってはもちろん学園関係者にとっても驚くべき変化だった。価値観の違いから衝突するのは相変わらずだが、それでも雰囲気はだいぶ親しげなモノになっている。

 

 どれぐらい親しげかというと、ギャンブル勝負をポラリストレーナーに挑んで返り討ちにあったウマ娘たちに罰ゲームが言い渡されたさいにシリウスシンボリの条件が「お前今日一日ルドルフの前では1人称をシリウスにして上目使いで妹が甘える感じな。もちろんちゃんとルドルフお姉ちゃんって呼べよ」という内容であることを聞き付けたシンボリルドルフが特に用事もないのに太陽の如くキラキラが溢れた笑顔で追いかけ回すぐらいには親しくなっていた。

 当然ながら翌日にはバッチリ報復が成されたのだが。それはそれは見事なヘッドロックであり、無敗の三冠ウマ娘の口から「待てッ! 中身がッ! 耳から脳みそがッ!?」などという悲鳴が飛び出る光景はそう何度も拝めるものではないだろう。

 

「模範的優等生の会長サマがあんな本性を隠していたのは驚きだが、退屈なウマ娘がトップに立つよりは何百倍も面白ぇ。……っと、そろそろ焼けたか。どうだ、オマエらも食うか?」

 

「これは、しいたけ……ですか?」

 

「なんだか意外デスねー。ナカヤマ先輩ならイキナリお肉をガッツリ食べてそうなイメージがアリマス」

 

「ハッ。たしかに肉はウマイがな、そんなもんは誰でも知ってる当たり前のことだ。だからこそ、あえて肉に匹敵する旨さを野菜の中から引き当てることに挑戦する。そのほうが楽しめるし──これでも味覚は普通なほうなんでな。どこぞの生徒会役員みたいに肉オンリーなんて食ってられるか。ホレ、かなり肉厚だから濃いめの味付けでもイケるかもな」

 

 

 共通するとあるウマ娘のことを思い浮かべつつ、グラスワンダーとエルコンドルパサーは差し出されたしいたけをお皿で受けとる。

 和食を好むグラスワンダーにとっては見慣れた食材のハズなのだが、十字の切り込みはともかくサイズはまるで別物のように大きい。

 

 たかがしいたけ、されどしいたけ。ついさきほど炭火焼きトマトという新しい可能性を体験したこともあってどんなものかと期待したくなる。

 隣ではさっそくエルコンドルパサーが自前の激辛ソースをタップリかけて食べている。それでは食材の味がわからなくなってしまうのに……と、そう思いながらも本人()()が楽しんでいるのならそれでよいだろうとグラスワンダーも調味料に手を伸ばす。

 

 ここは素直に醤油で食べてみようか。そんな当たり障りのないことを考えているところにナカヤマフェスタの視線がこちらに向いていることに気づいた。

 

 静かに笑っている? 

 

 否。

 

 これは、嗤われている……ッ! 

 

 視線の意味に気がついたとき、グラスワンダーの脳裏にさきほどのナカヤマフェスタの言葉が甦る。お肉が美味であるのは常識であり、それを打ち破るために焼かれたのがこのしいたけであると。

 それを受け取っておきながら、自分はお醤油で味付けをしようとしたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!! 

 

「んー、お野菜も美味しいデスが、そろそろ違うものも……タイシン先輩! その串焼きはお魚デスか?」

 

「鯖だけど。食べたいなら勝手にすれば?」

 

「感謝デ~ス♪」

 

 試されている、というほど大仰なことではない。自分が、グラスワンダーというウマ娘の選択をただ面白がっているだけなのは理解できる。ここで王道たるお醤油を手に取ったところで、それがお前にとっての正解ならばそうなのだろうと受け入れるのがナカヤマフェスタというウマ娘なのも知っている。

 だが、このままお醤油を炭火焼きしいたけに纏わせるのは可能性を否定する行為に等しいのでないか。数多の分岐路を前にして尚愚直に正道を駆け抜けるのと、分岐路の存在に気づかぬまま誰かの蹄跡をなぞるのではまるで意味がちがうのではないか。

 

 迷わず走ることと、なにも考えずに走ることは違うのだ! 

 

「ん~、ブタ肉とキムチのタッグもなかなか……でもまだまだパワーアップしても……タイシン先輩! エル特製のホットソー「ゼッタイいらない」迷いのない即答ッ!?」

 

 指先が鈍っているグラスワンダーを横目に、ナカヤマフェスタはマヨネーズに七味唐辛子とかつお節、そして青のりを加えたものを少しだけしいたけに付けて食べ始めた。

 素材の味を損なわない程度に、しかしジャンクフードにも似た香りで自分のフィールドに引き寄せる妙手。それを無香料のミネラルウォーターで流し込む姿にはある種の美学さえも感じられる。

 

 

 出遅れた。これ以上迷うのはせっかくのホカホカしいたけに対してあまりにも非礼。わずかに焦りを感じ始めたグラスワンダーだったが、視界の端に藍色の模様が可愛らしい陶器の調味料入れを発見し──勝負を仕掛けた。

 

 

 品性を蔑ろにすることなく、その上で迷いを振り切るように強気でしいたけに口を付ける。

 

 まずは熱、炭火焼きならではの内側にしっかりと蓄えられた火の名残を唇に感じつつ、心地好い弾力としいたけの香りがパチンッと弾けた。そこに追い込みをかけるのは……味噌、である。

 もちろんただの生味噌ではない。上質なシルクを思わせるなめらかな舌触りは食べる者のことを考えて丁寧に裏ごしされた証拠。そこにハチミツが加わることでお醤油の鋭さとは趣を別とする味噌の塩気がさらに甘く柔らかいものになっている。

 

 しいたけと味噌、旨味のマリアージュ。その背後を一瞬で駆け抜けた清涼なる風の正体は山椒オイルだ。辛味も痺れも感じないギリギリのラインで混ぜられたそのオイルはグラスワンダーも何度か見たことがある。

 アンティーク調の瓶に、まるで翡翠のように美しいそれは香りを確かめるまで山椒であるとは想像すらしなかった。インターネットで調べたものとは別物の輝きは、やはり一流のトレーナーともなるとウマ娘が口にするものにも妥協はしないのか。

 

 ラストスパート、グラスワンダーが手にした飲み物は玄米茶である。可能性、大いに結構。だがそもそも自分はそれほど器用な性格はしておらず、これと決めたことは簡単に変えられない頑なさも自覚している。

 ならばどこまでも。正々堂々、真向勝負で受けて立つのが我が流儀。これが私だと、これでどうだとナカヤマフェスタのほうに向き直れば──満足そうに微笑んでいる。どうやら先輩からの洗礼は無事合格できたらしい。

 

 

「しかしトレーナーくん。ずいぶんと大量にお餅を用意したものだねぇ」

 

「なんか商店街歩いてたらメッチャもらったンだよ。正月なのに学園に行くのかって聞かれたから、トレセン学園を遊び場にできるのはトレーナーの特権ですって答えたら、なんかこうなった」

 

「うん? ……あー、うん。なるほど。だいたい理解したわ。まぁいいんじゃないかしら? お正月らしくて。それで、どんな味付けで食べるつもり? 特別にこのキングが用意してあげてもいいわよ!」

 

「じゃあホイップクリームとチョコソースで」

 

「……そういえば賞味期限が近かったわね。まだ残るようなら明日はホットケーキにでも挑戦してみようかしら」

 

「ふぅン? なるほどなるほど、考えてみればお餅は甘味なら和菓子が沢山あるじゃないか! トレーナーくーん、私にもなにか……そういえば冷凍庫に紅茶アイスがあったねぇ!」

 

「自分で取ってこい」

 

「えぇー?」

 

 

「商店街を歩くだけでお餅や美味しいものがたくさん集まる……これが中央トレセン学園のトレーナーか……!」

 

「んなワケあるか」

 

「おぉ……! やっぱり都会はお餅の食べ方もなんだかオシャレだべ……!」

 

「素直か」

 

「せっかくだしうどんでも茹でるか? 8ビートで大根おろしも完璧だぜ!」

 

「そこはもうちょいボケろや。あ、ウチのぶんも今日はツユ濃いめで頼むわ」

 

 

 

 

「……醤油と、海苔でいかせてもらうぜ?」

 

「……では、ピザソースとチーズで受けて立ちます」

 

 戦いはまだ終わっていない。

 

 今度はお互いに、自分の領域を出し惜しまず。

 

 本格化が進み選抜レースに参加できるようになるまでは、トレーニングの延長線上にあるような勝負ばかりになるのも仕方ないと考えていたグラスワンダー。

 だがここは中央トレセン学園。戦いを、勝利を求めるウマ娘たちが集う場所。お餅の食べ方ひとつでも、こうして先輩ウマ娘と価値観をぶつけ合い高め合うことができるのだ。

 

 

 臆するなかれ、グラスワンダー。

 

 強者に挑むがウマ娘の誉れなり。

 

 たとえ、明日に体重計が控えども。

 

 

(※ナカヤマフェスタのヒミツ:炭酸水が苦手。忘れてたので修正しました)




お肉じゃなくてお野菜なので飯テロにはならないな! ヨシッ!


しばらくは他作品の更新を優先するので続きは気長にお待ち下さい。

ちなみにシーズン4はファインモーションのほか、イナリワンとオグリキャップとスーパークリークのメイクデビューあたりの予定です。それとBNWもぼちぼち。
あとは中等部のウマ娘たちの物語に備えて年代スキップをどうにかしたいところさん。
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