貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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いくぞ、読者諸君。

賢さの低下は充分か?


ろいやる。

 はて、何故このような事態になったのだろうか? 常にパーフェクトプランの世界で生きている貴方でもさすがに今回の事態を目の当たりにしては不思議そうに首を傾げ、そしてウマ娘たちに丁寧に筋肉をほぐしてウォーミングアップをするように指示を出しています。

 

 

 現在、貴方は中央トレセン学園が保有する敷地内のレース場にて開催されている“ファインモーションとその担当トレーナー(仮)が保護者であるお父さん(王)にトゥインクル・シリーズに挑むに足る走りを見せる”という試験的なレースの立会人のひとりという立場です。

 

 そんな大事な場面に引っ張り出されたこと自体がトレセン学園の、ひいてはそこに通う全てのウマ娘たちの名誉に関わる大問題であると貴方は確信しています。

 しかし事態はそれだけに収まらず、どういうワケかファインモーションの対戦相手となるウマ娘たちの参加を貴方が取り仕切ることになってしまったのでした。

 

 ある日のことです。いつものように2台のパソコンを右手と左手でそれぞれ操作して取引中のウマ娘たちのトレーニングプランとレース日程と食事管理と外食引率のためのスケジュール調整などをしていたところに、ファインモーションの担当となる予定である若い男性トレーナーが貴方のルームにやってきました。

 彼の依頼はテストに協力してくれるウマ娘を集めること。新人である自分には実力のあるウマ娘たちを充分に集めるだけの繋がりが無く、だからといって学園が用意してくれたシチュエーションでは説得力に欠けると判断してここへ足を運んだと言うではありませんか。

 

 その条件で何故学園中のウマ娘から敵対視されている自分を頼りにしようと考えたのか問い詰めるだけでなく説教をしてやりたいところですが、悪のトレーナーである貴方にそのような資格などありません。

 むしろ、この状況を自己利益のために活用してこそ完璧なヘイトコントロールというものです。貴方はファインモーションの担当トレーナー(仮)の頼み事を安請け合いすることに決めました。

 

 もちろん本当に期待通りのウマ娘を集めるつもりなどありません。軽々しく引き受けた上でメンバー集めに失敗し、そして一切の反省を見せることなく適当な言い訳でもして知らんぷりをする。これが実行されれば信用を失う行為としては確かに満点と言えるでしょう。

 

 

 結果はもちろん見ての通り。距離適性がマイル以外のウマ娘やダートのほうが得意なウマ娘なども含め、現在のファインモーションをギリギリ上回る実力者たちがバッチリ集まっています。

 

 

 おかしい、何故ウマ娘たちは当たり前のようにターフに集まったのか。当然ですが貴方は彼女たちに個別に声をかけたりはしていません。適当にルームにいたウマ娘へ向けて大雑把に頼んで終わっています。

 

 まず、依頼者であるファイントレーナーを了承の返事で帰らせます。

 

 次に、ルームにいたウマ娘へ作業をしながら適当にメンツを集めるよう指示を出します。

 

 そして、その場にいた何者かの「おけまる水産ッ!」という元気の良い声を聞きます。

 

 いったいどこに成功する要素があったのか、完全な失敗を前提に行動を選んだ貴方には皆目見当が付きません。となれば、結局のところファインモーションとその担当トレーナーを応援したいというウマ娘たちの純粋な願いによる自発的な行動の結果なのだろうと納得することにしました。

 さて、こうして試験が始まった以上は貴方には参加するウマ娘たちが万全な状態で走れるように取り計らう義務があります。真の悪党こそ勝負の華を愛でるだけの器を示さなければならないからです。

 

 とはいえ、ただ頑張れと言うだけでは芸がありません。そもそも貴方は守銭奴としてウマ娘を利用するというスタンスを一瞬足りとも忘れたことはないので、ここは厳しい言葉で反骨精神を煽ることで実力を引き出すことにしましょう! 

 

 後輩を応援するイベントのようなものと考えているのか、準備運動をするウマ娘たちは全員が楽しげな雰囲気です。ここに場の空気をブチ壊す悪意ある一言を投げ入れるなど簡単なこと。

 貴方は攻撃的な気配を放つことで無言のままウマ娘たちの視線を集めることに成功しました。取引関係にあるウマ娘たちは貴方の悪意には慣れていますので、これだけでもウマ娘たちの眼差しには強い光が宿ります。

 

 

 当然この程度で終わらせるほど貴方は甘くありません。ウマ娘たちへ向けて「公式記録に残らなければ勝者が褒め称えられることもない。だがこれは間違いなくウマ娘の誇りを賭けた真剣勝負だ。全力で走る覚悟が無い者がゲートに入ることは認めない」と言いました。

 

 

 ウマ娘たちにしてみれば「仕事もしないで給料だけ盗むように受け取っているお前が偉そうになにを言ってるんだ」と反論したい暴言でしょう。

 これで参加するのを辞めるウマ娘が現れてくれれば作戦は完了なのですが……やはり後輩のことを想う気持ちには勝てなかったのか、それとも自分の言葉など路傍の石ほどの価値もないと無視されたのか、ファインモーションの試験レースは無事フルゲートでのスタートとなりました。




これはただの自慢話ですが、デイリーレジェンドレースのおかげで無事カレンチャンをお迎えできました。レーシングカーニバルでまとまったピースが集まっていたので楽勝でしたね。

そしてこの報告をしてしまったことにより、本作をカレンチャン未登場で終わらせることができなくなりました。だって持ってるんだもの。

そうか、これがハニートラップか……ッ!?

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