貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
数々の名馬のウマソウルを宿す主役級ウマ娘たちを相手に立て板を流れる水の如く鮮やかにヘイトを蓄積し追放されるための準備を進めている貴方ですが、当然ながら報復としてウマ娘たちからも様々な妨害行為のような仕打ちを受けています。
もちろんそうした行動について、貴方は悪役としてトレセン学園を円満追放されるために必要なモノであると割り切っているのでウマ娘たちを恨むようなことはありません。
むしろ、こうして悪意を大義名分と共に発散することで余計なトラブルが起こり得る可能性を減らせるのであれば大歓迎したいぐらいです。
と、いうワケで。
今回は貴方がどれだけウマ娘たちから嫌われているのか、普段の完全無欠な悪役ムーヴとセットで確認してみることにしましょう!
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現在、貴方はメイクデビュー前のウマ娘からシニア級を走るウマ娘まで幅広い取引相手を抱えています。珍妙奇天烈なトレーニング方法と友情の破壊すら辞さない本気の模擬レースを強要することで不信感を荒稼ぎしていますが、当然ながら能力が高まればウマ娘たちも目標を達成する日がやってきます。
それがGⅠレースの勝利だろうと模擬レースで入着することだろうと本気でトレーナーとして働く意志の無い貴方は分け隔てることなく平等な目標として扱っていますが、やはり小さな夢をひとつ叶えれば次の夢を見たくなるのが心情なのでしょう。目標を達成したウマ娘たちから取り引きの更新と次の目標設定を要求されてしまいます。
悪人だろうが、やる気が無かろうが学園から給料を受け取っているトレーナーに違いはない。ならば徹底的に利用して楽などさせるものかという無言のメッセージが聴こえる耳を装備している貴方はご満悦の様子。
もちろん内心ではウマ娘たちの活躍を喜んでいる貴方には肉体的にも精神的にもダメージはありませんし、そんな浮かれ気分も巧妙にカモフラージュすることでウマ娘たちに知られることなく発散しているので問題ありません。
貴方が取り引きを完了したウマ娘のための新しいトレーニングプラン改良計画を考えているときには、いつも食べているポッキーをノーマルタイプからアーモンドクラッシュタイプに然り気無く昇格させています。
しかも箱から直接抜き取って食べるのではなく、知り合いのアンティークショップで購入したお気に入りのガラス製のコップにずらりと立ててから1本1本楽しむという贅沢仕様です。
そのお店は忍者のコスプレが似合うナイスガイが経営しており、山での修行中に天狗と間違われて斬られそうになったお詫びとして良質な商品を少しだけ割引きして売ってくれるようになりました。
貴方にはそうした品々の金銭的価値や歴史的価値はサッパリですが、それらの品々を手掛けた職人たちのオーラを感じることはできるので感性のままに気に入った商品を購入しています。このアーモンドクラッシュポッキーが並んでいるガラス製のコップもそんな一目惚れの一品なのです。
1本1本丁寧に味わいながらパソコンをカタカタと奏でる貴方ですが、そんな不真面目なスタイルで作業をするトレーナーを野放しにするほど取引相手のウマ娘たちは優しくありません。
例えば、マヤノトップガンなどはポッキーの変化を目敏くロックオンして「トレーナーちゃん、マヤにも1本ちょーだい♪」と返事も聞かずに抜き取ると、それを咥えたまま貴方の作業を監視するため当然のように横に座ったり背もたれに肘を乗せたりしてきます。
あるいは、シリウスシンボリなどはお菓子を食む貴方をまるで子どもだなとからかいながらポッキーを抜き取り、その後は視線を貴方とコップとの間を何度か往復させて「マジかテメェ……」と呟いていました。きっと下らない拘りのためにお金を使う貴方に呆れているのでしょう。
あとはメジロライアンが「うん、知ってた」という謎の副音声が聞こえてきそうな米顔で1本抜き取ったり、トウカイテイオーなどは器用なことにコップを一切視界に入れることなく3本ほどまとめて持っていったりします。
次々とルームに乗り込んでくるウマ娘たちの共謀により貴方のポッキーはいつの間にか食い尽くされてプリッツやトッポなどの別のお菓子に変化してしまいますが、当然この程度の報復で狼狽えるようでは悪役トレーナーとしては三流以下というものです。
目には目を、歯には歯を。食べ物による攻撃には食べ物による反撃を実行して然るべき。食事の内容を絞る必要があるウマ娘が何人か揃った頃合いを見計らい、貴方は昼食前のお腹がペコちゃんになる時間帯を狙ってお肉と油の旨味がたっぷり含まれた中華料理の香りを学園中に拡散するという鬼畜の所業を実行します。
本来ならばそのようなことはあり得ないのですが、チート能力者である貴方にとっては造作もないこと。取り引きとは全く関係のないウマ娘や職員、ついでに警備員と彼らの隣でお座りしている野良犬たちまで含めトレセン学園の敷地内にいる大多数を巻き添えにしてしまいますが知ったことではありません。
お昼休みの開始を告げるチャイムの音色、同時にルームまで届くウマ娘たちの雄叫びと学園全体が揺れているのではないかと錯覚するほどの地響き。
中にはミスターシービーやアイネスフウジンのように冷静に貴方のルームにやってきて私物のお茶碗にご飯を盛り始めるウマ娘もいますが、いまごろカフェテリアを含めた食堂では仁義無きメニュー争奪戦が繰り広げられていることを思えば誤差の範囲でしょう。
本来ならばひとり静かに楽しむはずだったランチタイムが少々賑やかになってしまいましたが、ゼロから百まで思い通りに事が進むのもそれはそれで面白味に欠けるというもの。
こうした細かい抵抗を無慈悲かつ理不尽に押し潰すのがチート転生者の腕の見せ所です。昼休憩の時間を食事もせずに走ることに費やしかねない頭スズカな異次元の逃亡者をマチカネフクキタルがちゃんと連れてきたことを確認すると、貴方はどのような形で悪意を解き放つかアレコレと想像するのを楽しみながら白菜の浅漬けに箸をのばすのでした。
ちなみに作者はトッポ派です。