貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
育成に慣れたプレイヤーにはスキルポイント扱いされることもあるかもしれない弥生賞ですが、貴方が転生したウマ娘の世界では皐月賞の前哨戦として重要度の高いレースという位置付けは守られています。
故に、弥生賞に出走するウマ娘は世間からも注目されることになり、公に賭け事などは行われてませんがSNSなどでは誰が1着になるのか人気投票のようなものが活性化している様子。
ちなみに貴方は今世ではこの手のサービスは一切利用していません。せっかくチート能力を持って転生したのですから、俗世に惑わされるような忙しない生き方などお断りというスタンスだからです。
携帯端末は通話とメール専用というシンプルさを突き詰めたクラシックスタイル。なので弥生賞の世間が予想する1着は誰なのかという話も、体内時計トレーニングで良い結果を出したトーセンジョーダンをモチベーション維持のためにガイドブック取材お断りの洋食屋さんに連れていったときに教えてもらいました。
一番人気はメジロライアン、二番人気はアグネスタキオン、三番人気はアイネスフウジンと、ウマ娘ファンとしては面白いですが指導者的立場としては少々悩ましい結果となっています。
なにせ未だに3人にはアプローチを仕掛けてくるトレーナーが現れていないため、弥生賞の準備もその先の皐月賞を視野に入れたトレーニングの組み立てとアドバイスも全て悪役トレーナーである貴方の手が入ってしまっているからです。
せめてクラシック路線が本格的に始まるまえにスカウトされて欲しかったところでしたが、さすがにこうなってしまえば諦めるしかないでしょう。
もっとも、頭を切り替えて開き直ってしまえばプール掃除の小学生に持たせたホースのように次々と叡知が流れ出す賢い貴方は新しい追放プランのヒントを見つけ出してしまうことが可能です。
一番人気が名門メジロ家のウマ娘であるのも実に好都合。こうしたゴシップ的な情報に簡単に踊らされてしまうのが大衆心理であることを知っている貴方が立案したグレイトな作戦は次の通り。
①弥生賞はメジロライアンの勝ちが確定したようだなと公言する。
②それを聞いたウマ娘たちがネットの評価を鵜呑みにしていることに気がつく。
③ウマ娘の本質を見ようとせず風評だけで判断するなんてトレーナーの風上にもおけない!
④トレセン学園を追放される。
それはまるで大自然の雨風に削られ磨かれた自然石のような美しさすら感じる、様々な要素を無駄として排除した芸術的な計画でした。
覗き込む角度によっては支柱がやや不安定に見えるかもしれませんが、それを逆手にとって茹でたアスパラガスをはんぺんに突き刺して隣に並べてカモフラージュすれば戦国の天才軍師・竹中半兵衛でさえも見なかったことにして無言で通り過ぎるレベルの妙手です。
善は急げ。メジロライアンもアイネスフウジンもアグネスタキオンもレースの準備のために嫌でも貴方のルームに脚を運ばなければなりませんし、取り引きをしているウマ娘の全体数は一向に減る様子が無いためギャラリーの数も充分です。
都合良く人気の話題になったタイミングで貴方は言いました。次の弥生賞は、出走するウマ娘たちが全員100パーセントの力で走るとすれば、100パーセントの確率でメジロライアンが勝つことになるだろう……と。
敢えて100パーセントのところを強調することにより、メジロライアンにプレッシャーを与えつつ予測が外れたときに貴方が節穴アイの持ち主であると強く印象付けることが可能という見事な二段構えのプランです。
事実として、弥生賞に出走するウマ娘たちの能力をチートを使い数値化して比較した場合メジロライアンが一番勝率が高く、このまま何事もなくレースが開催されれば本当に彼女が1着になるだろうと貴方も考えています。
しかし、勝負の世界に100パーセントなどというものは基本的に存在しないことも知っています。なにより、レース中に成長して自分の限界を乗り越えるウマ娘が現れる可能性もありますから事前に結果が確定することなどあり得ません。
そこまで考えた貴方は気がつきます。本当にメジロライアンが勝利したときに備え、ひとつ保険をかけておくのも悪くないと。
続けて貴方は言いました。しかしこれは、あくまで100パーセントの走りで満足した場合の話であると。もしも弥生賞までに壁を越えるだけの気迫を身につけたウマ娘が現れれば……そのときはどうなるかはわからないと付け加えました。