貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
「絶品ッ!! 理事長として食事の場に赴くことが何度もあったが、たったひと口で感動を覚えたのは初めてだッ! ……いや、本当に美味しいなこのパフェ。お店で食べようと思ったらいくら支払えばいいんだ……?」
「いやぁ、普段のジャージ姿でアンニュイなトレーナーさんも悪くないけど……スタイリッシュなコックコートも似合っているね」
「料理自慢のトレ公が本気で作ったバナナパフェか。せっかくの機会だ、こりゃなんとしても1着になって味を盗ませてもらう必要があるさね!」
「わぁ……とっても美味しそう……♪ 見た目もキレイでキラキラしてるし、ここまで甘くてイイ香りがしてくるね……!」
「なんなら試食してる理事長の髪の毛などが物理的にキラキラしてる気がしますけど。まぁ、あのトレーナーさんが作るパフェですからねぇ? ご利益のひとつぐらいあったとしてもいまさら驚きませんが」
「そーいや最近パフェとか食ってねーかも。てか、チョコレートとバナナのパフェとかいっつも変なコトしてるクセにこーゆーとこガチの組み合わせでくんのウケる」
「いや、そもそもコース横でパフェ作るとか意味わかんないんだけど……。景品っていうから、てっきりどこかのカフェテリアとかそういう……えぇ……? なんでみんなリアクション薄いワケ……? まさかアタシが間違ってんの……?」
「トレーナーさんが改造したコース……いつもと少しだけ違うターフの香り……ここをおもいっきり走ったらどんな景色が見えるのかしら? フフッ♪ 楽しみね!」
「……よし。これはいつもと変わらないたわけ発案の模擬レースだな、うん。そうだなスズカ楽しみだなぁ」
戯れにダウジングを試みたら現代人類には好ましくない物品を掘り起こしてしまい溢れる正邪混合☆マーベラス案件を知り合いを呼びつけて封印することになったりと多少の紆余曲折はありましたが、無事コースの改造は完了して模擬レースを開催することができました。
参加ウマ娘を集める行程にしても、景品として貴方が肉体・魂・精神の全てを駆使して作り上げた『糖質脂質極限カット完全比率チョコバナナパフェ』を用意することで滞りなく解決しています。とあるウマ娘が「ウチらのトコのトレーナーがプチ宝塚記念やるらしいんだけど参加したいヤツおらん?」といった内容の文章を広めたりもしていましたが、貴方はその事実を知らないため自動的に存在しないものとして扱われることでしょう。
ウマ娘と担当トレーナーが交わす約束事のように微笑ましいものではなく、手前勝手な都合で景品を設定して真剣勝負を汚す行為。これは確実に追放ポイントが高いだろうと貴方の中では拍手喝采が鳴り止まない様子。
そしてそれを偶然ふらりと現れたトレセン学園の最高権力者である秋川やよい理事長に献上することで、普段あれだけウマ娘たちに偉そうな態度を見せておきながら権力者には恥も外聞も無く媚びるのかとヘイトを稼ぐことも忘れません。
「有用な方程式も使いこなせなければ意味がない、とは確かに同意できるが……そのためにコースまで作り替えてしまうとは。ここまでお膳立てしてもらったのでは、先頭でゴールを駆け抜けなければならないな」
「へぇ、ハヤヒデがそういうコト言うの珍しいね。ま、いいんじゃない? そっちのほうが生き生きしてるし。だからって、負けるつもりはないけど」
「うぉぉぉぉッ!! 燃えてきたぁぁぁぁッ!! ハヤヒデッ! タイシンッ! 今日はよろしくねッ!!」
「先輩ッ! 今日は胸を借りるつもりで挑ませてもらいますッ! よろしくお願いしますッ!」
「ここまで充実した模擬レースはなかなか参加できませんからね。ありがたく、オレもしっかり勉強させてもらいます」
特に誘った覚えはありませんが、案の定BNWが揃い踏みと相成りまして。ウイニングチケットの担当トレーナーであるナイスガイと、ナリタタイシンの担当トレーナーであるイケメンが律儀に挨拶にやってきました。
なんとまぁ礼儀正しいことでしょうか。悪役トレーナーとして礼節の欠片も見せることなく今日まで追放ムーブを続けてきた貴方にしてみれば、自分相手に頭を下げさせることに申し訳なさを感じてしまう場面でしょう。
もちろんこのまま「はいヨロシク~」とはなりません。
かつては己が新人の立場であり、先輩トレーナーに対して生意気な態度を示すことでヘイトを稼いできました。
しかし、いまでは追放計画が順調に進んだ結果こうして貴方が先輩という絶対的立場を手にするまでに至ったのです。
ならば、やるべきことは決まっています。先輩風をギュンギュンに「吹き荒れる様はまさに嵐……ッ!!」と超忍が恐れ戦くレベルで吹かせてパワハラを実行するしかありません!
まず、貴方はわざとらしくタメ息を吐いて秋川やよい理事長の方へ向き直り「新人トレーナーたちは能力こそ優秀でも態度に問題があるようですね」と報告します。
誰がどう見ても礼儀正しい挨拶をした後輩トレーナーたちへの評価としては不適切であり、ウマ娘たちも、後輩トレーナーたちも、そして秋川やよい理事長もスプーンを止めて「は?」という心の声が聞こえてきそうな表情になっています。
これにして下拵えは完了です。貴方は後輩トレーナーたちへ「たとえ模擬レースでも勝つつもりがないのなら、自分の担当するウマ娘こそが必ず勝利するのだと断言すらできない程度の意気地しか持っていないのなら、気安く話しかけてくるんじゃねぇ」とこれ以上無いほどの上から目線で、自分こそ担当するウマ娘がひとりもスカウトできずにいるという事実を棚上げしてドヤ語りをするのでした。