貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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けだま。

 コース作りの報酬に貴方が調理した豚肉と牡蠣のキムチ鍋を食べるゴールドシップとマーベラスサンデーとトレセン学園レース場整備スタッフの皆さんが少し離れた小部屋から見守る中、ついに勝手に改造グランプリ宝塚記念編が始まろうとしています。

 とても偉いことに貴方はビワハヤヒデの走りをトレーナーたちに宣伝するという目的を忘れてはいませんので、今回の出走メンバーには“メイクデビュー前の高等部ウマ娘のみ”という制限を設けることでパワーバランスの調整についても配慮は完璧です。

 

 視界の端っこのところで参加資格を得られなかった芦毛の怪物(仮)や日本の総大将(仮)やメジロの名優(仮)が両手両膝を地面につけてショックを受けている気がしますが、それぞれスーパークリークとキングヘイローとトウカイテイオーが慰めているので放置しても問題はありません。

 

 

 最大のライバルとなる可能性が高いウイニングチケットとナリタタイシンは現在、貴方の暴言を受けて義憤に燃える担当トレーナーたちと丁寧に打ち合わせを行っている真っ最中。

 そして堂々と大きな声で中央トレセン学園の害悪にして最低の悪役トレーナーを打ち倒し、ウマ娘たちの未来のために必ず追放してみせるといった内容の宣言をしたと意訳してメッセージをうけとった貴方は大満足。

 

 そんな新世代の頼もしさに秋川やよい理事長も『激アツッ!!』と扇子を広げて大喜びの様子。パフェをテイスティングしたことも含めてなのかやたらとキラキラして上機嫌です。

 

 

 肝心のビワハヤヒデにアピールポイントになりそうな仕掛けどころについて序盤、中盤、終盤それぞれにアドバイスをしっかりと行い、もちろんほかの参加者で貴方と取り引きをしているウマ娘たちにも悪役の嗜みとしてそれぞれに1番にゴール板を駆け抜けるために必要な指示を出している貴方でしたが……どこか楽し気なウマ娘たちの様子を見て『おかしい。なにかひと味、刺激が足りないな?』と感じます。

 

 

 ウマ娘たちが心のままに走る姿を見るのはとても楽しいことなのですが、なにを隠そう貴方は中央トレセン学園から追放されて自由気ままにウマ娘たちのレースを楽しめる立場を手に入れたいという志を持つ悪役トレーナー。

 ならばこの場で求めるべきは、もっと刺々しい雰囲気でギスギスした視線が交差するような激しいバトル。もちろん熱中し過ぎて怪我をしてしまうようでは困りますが、お遊び気分でぬるま湯のような走りの模擬レースで「楽しかった~」などという感想が出てくるようでは悪役としての沽券に関わるというもの。

 

 

 さて、なにか良い具合に使えそうなネタはないかとキョロキョロする貴方ですが──誰よりも楽しそうにターフの具合をフミフミして確かめているサイレンススズカと目が合ったので、これは丁度いいと手招きをします。

 

 

「トレーナーさん? なにか、気になることでもありましたか?」

 

 自分がこれから起爆剤として利用されるとも知らずに無防備にトテトテと歩いて近付いてくるとは、大真面目に早くサイレンススズカを担当してくれるトレーナーを見つける必要がありそうだ……。

 

 そんなことを思いながら、貴方はサイレンススズカにとある山の中に大昔のウマ娘たちがトレーニングに利用していたコース跡地を発見したことを伝えます。

 少し整備すれば使えるようになること、そして車で移動すれば日帰りで充分トレーニングを堪能できると話した上で──スタートから200メートル以降、1度も先頭を譲らないでゴールしたら教えてやろうと告げました。

 

 

 ピクリッ! とウォーミングアップをしているウマ娘たちの耳が動き、貴方に敵意がタップリと含まれている気がする視線が集まります。

 貴方は続けて「特別ルールの追加だ。もしもサイレンススズカが1着になった場合は、五バ身以内にいたウマ娘は1着扱いにしてパフェを食わせてやろう」と高笑いしました。

 

 

 なんとわかりやすい挑発でしょうか! 真剣勝負の世界に生きるウマ娘たちに対して情けをかけてやるという上から目線のこのセリフ、貴方の意図を理解できていない者など未だ見ぬ景色に想いを馳せる異次元の逃亡者以外では勝手に材料を使ってオリジナルパフェを作っている最中のハルウララとツインターボぐらいなものです! 

 

 

 こうして無敵のチート能力を駆使して製作されたコースに、鉄壁の悪役ムーヴによって積み重ねられた風評、そこにマザーボードを紛失してもチョコチップクッキーで代用可能な究極の演算能力を持つ頭脳によって導かれた追放の方程式は完成しました。

 この模擬レースが終わるころにはビワハヤヒデの走りに魅了されたトレーナーたちがスカウトを行うべく計画を立て始めるのはもちろん、ついでに大逃げを指示したサイレンススズカの類いまれなるスピードも注目を集めることになるでしょう。

 

 BNWのクラシック級での活躍を自宅のモニターでのんびり眺めて楽しむ、そんな未来を想像しながら貴方はスタートの時をいまかいまかと待ちわびていました。




次回は模擬レース視点です。
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