貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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雪見だいふくはノーマルも良いが小さいヤツが9個並んでいるヤツも良い。


ほわぁ。

 貴方は目的のために楽しみながら悪役トレーナーとしての立ち振舞いを実行していますが、その裏では秘かにウマ娘たちを支えるために然り気無く様々な支援をしていると自負しています。

 悪事がそうであるように、善行も暴かれさえしなければ評価されることもない。訓練された兵士が大勢配備されている密林の基地でもダンボールひとつで完璧なスニーキングミッションを遂行できるエージェントの如く、貴方のウマ娘たちを想う姿の隠しぶりは正面戦士も納得の完成度でしょう。

 

 しかし、それは逆の見方をするのであれば……表だってウマ娘たちやその関係者へ手助けすることはできない、という意味でもあります。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「えっと、その……すみません? ドーベルのことで悩んでいたときに、えーと、1度頭の中を整理しようと思ってベンチでコーヒーを飲んでいたらいつの間にか隣にいて。それで」

 

「トレーナー様にはわたくしはもちろん、ライアンお姉様もお世話になっておりますので~。ドーベルのことを相談なさるのであれば、トレーナー様以上の適任者はおりませんわ~」

 

 のんびり屋さんではあるものの行動力そのものはメジロのウマ娘の中でも屈指であり、しかもマイペースであるメジロブライト。彼女が貴方のルームにやってくること自体は特に問題ではありません。

 何故ならメジロブライトはトレーニングの準備とウォーミングアップに関してほかのウマ娘よりも丁寧に行うため時間がかかり、練習を始めるころには貴方の縄張りである第9レース場しか利用できなくなっているため自然と夜間練習に参加しているからです。

 

 

 デビュー前のウマ娘の中でもトップクラスのスタミナと致命的なほど瞬発力に個性が含まれていることから、ハルウララを始めとした長距離チャレンジ組の併走相手として重宝しているメジロブライトですが……まさか悩めるメジロドーベルの担当トレーナーを連れてくるとはチート転生者である貴方でも予測することはできませんでした。

 

 

 冷静で的確な判断に自信のある貴方は、このままメジロドーベルの担当トレーナーの悩みを聞き出すことは悪役トレーナーとしてあるまじき行為であることを見逃しません。

 ですが、目の前の好青年オーラに溢れたドーベルトレーナーもまた自分を追放する者として期待できる正統派トレーナーのひとりです。メジロライアンとメジロブライトから得た情報によれば多少のぎこちなさはあるものの良好な関係を築いているとのことで安心していましたが、なんらかのトラブルによりその信頼関係に綻びが生じるのは貴方にとっても困る事態でしょう。

 

 

 悪の美学か。

 

 夢の実利か。

 

 

 ここにきてチート能力があるからと様々な選択肢を踏み倒してきた“ツケ”が貴方を悩ませることになっている様子。

 

 自由に生きることを堪能してきた貴方はチョコあんぱんとチョコパイのどちらを購入するべきか選ばなければならないときでさえ、自分は無敵のチート能力者様なんだぞと堂々とした足取りで両方レジへ持っていくほどの自由ぶりを発揮していたのです。

 選ぶという本来であれば誰もが乗り越えてきた試練を放棄していた貴方には、どちらを選ぶのが最良の未来を掴むことに繋がるのか瞬時に判断することができません。

 

 チョコあんぱんを上に放り投げて食べる貴方の姿を見て興味を持ったメジロブライトが「あ~」と口を開けて待機しているところにポイッちょと食べさせる姿を見たひとりの勇者の魂が宇宙へ旅立つことになり目覚めるまでヒシアケボノが膝枕をしていたりもしましたが、そんなことより目の前のイケメンをどうするべきか。

 

 

 時間稼ぎをかねてわざとらしく「ふ~ん」などと唸りつつちらり、とメジロライアンのほうを向いたところで貴方はとある事実を忘却していたことを思い出しました。

 

 そう、貴方は自分がメジロ家からは危険人物として認識され追放の準備が着実に進められているという夢のような事実が存在することをすっかり忘れていたのです! 

 

 

 正義感の強いメジロライアンであれば自分の極悪非道ぶりについては実家に間違いなく報告しているはずですし、以前にはレース場でメジロ家のお友達らしき貴婦人相手にも暴言を吐き捨てるという非の打ち所の無い悪役ムーヴを実行しています。

 メジロブライトについてはフワフワした振る舞いからなにか重要なピースを見落としている気がしなくもありませんが、アレでもやはりメジロのウマ娘。心の強さや意志力に優れた彼女もまた自分の傍若無人な姿には思うところがあるはず。

 

 

 そう、メジロ家のウマ娘たちに接触して悪役トレーナーとしての自分をたっぷりと見せつけたことで貴方の追放フラグは練りたて鮮度抜群のフレッシュコンクリートをたっぷり使用した土台の上に屹立しており、たとえカナブンが衝突してもピクリとしかしないほど頑強なのです! 

 

 

 選ばない。ここでも選ぶ必要などない。貴方はこれまで積み重ねてきた実績が我が身を助けることを噛み締め、やはり日頃の行いこそが望む結末を迎えるためには重要なのだなとニヤリと笑いながら、ドーベルトレーナーへの聞き取りを開始しました。




ほわぁ~?
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