貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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へちま。

 アプリでは4ターンの行動選択、そしてアップデートで追加された差し入れイベントによる回復で構成されていた夏合宿ですが、もちろんこの世界ではそのような簡単な作業で終わることもなければマイナスイベントの連続で絶好調から普通まで一気にテンションが下降してタブレット端末やマウスを叩きつけたくなるようなこともありません。

 

 具体的にトレセン学園とURAが夏合宿に関係する各所とどのようなやり取りをしたのか貴方はなにも知りませんが、8週間という期間を上手に使い複数のグループにウマ娘たちを分けたことはエアグルーヴを助手席に乗せたときに聞かされています。

 ほかには、花壇や畑などの環境整備に関係する委員会に所属するウマ娘たちや、学園に残るウマ娘が多いことから寮長であるふたりのウマ娘が別々のタイミングで夏合宿に参加することなどをフジキセキを助手席に乗せたときに聞かされています。

 

 

 ほかのトレーナーたちが自分が担当するウマ娘を、チームを運営している者はチーフとサブトレーナーが手分けをしてウマ娘たちを送迎している中、取引ウマ娘たちの交友関係と悪役トレーナーとしての矜持故に貴方は学園と合宿先を何往復もすることになっている様子。

 思い返せば交通費に関する書類を渡されたときに、ガソリン代のような細かな収入もキッチリ回収してこそ守銭奴らしさをアピールできると深く考えずにペンとハンコを手に持ちましたが──冷静に考えれば、あの駿川たづな秘書が悪役トレーナーである貴方に微笑みながら頭を下げるなどという奇行を見せた時点で罠を疑うべきだったのでしょう。

 

 ワナの神のほくそ笑みが聞こえてきたところで、いまさら送迎をサボタージュすることは不可能。なぜなら貴方の目的はウマ娘たちから嫌われて中央トレセン学園から追放されることですが、自分の都合を優先してウマ娘たちが良質なトレーニングに参加する機会を損なわせるワケにはいかないからです。

 

 こうして学園側に先手を取られてしまった貴方ですが、もちろんこのまま相手の思惑通りに動くはずがありません。

 超一流の悪役トレーナーたるもの多少の出遅れなどなにするものぞ。仮に宇宙で最も難しい知恵の輪を差し出されても2秒で真っ直ぐにできる知恵の持ち主である貴方ですから、ここからの巻き返しについては心配するだけ無駄でしかありません! 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 自分が仕事をしている横で、別の誰かが遊んでいる姿が面白くないのはヒトもウマも同じこと。

 

 狙い目は全てのウマ娘たちが同時にトレーニングを行っているタイミングです。短期参加組の最終日や、通常参加組の休息日にそれを実行した場合、どちらにも取引ウマ娘がそれなりの人数参加している貴方は遊んでいても“正当な権利”として判断されてしまう可能性が微粒子レベルで存在するかもしれません。

 幸いにしてアプリとは違い夏合宿のスケジュールは施設の利用等の関係から予め学園側で全て決定されていますので、あとは取引ウマ娘たちがそれぞれどのような日程でトレーニングを行っているのかさえ把握すれば自然と答えは導かれます。もちろん貴方はその程度のことなど完璧に頭にインプットしていますので、この作戦は最初から成功することが約束されているようなものです。

 

 

 

 

 そして現在。

 

 

 

 

「にげろにげろ~ッ! ウインディちゃんのウォーターバズーカに()()はないのだぁ~ッ! チケゾー、かくごするのだッ!!」

 

「わわッ!? くっそ~ッ! さすがダートが得意なだけあって、砂浜での動きもなんて素早いんだッ! うぉぉぉぉッ! 当たるもんかぁ~ッ!!」

 

「発射されるまでのタイムラグ、そもそもオモチャですから水の勢いなどウマ娘の動体視力であれば冷静に回避することが──ひゃんッ!?」

 

「しゃ~い☆ 油断大敵だよ、フラッシュさんッ♪ よ~し、このまま大活躍してウマドルは砂の上でも可憐で無敵なところを見せちゃ──ひゃいッ!?」

 

「命中、確認。引き続きオペレーション『側面陽動』を続行します。アキュートさん、援護をお願いします」

 

「なるほどねぇ。このハンドルをくるくる回すだけで次々とお水が飛び出す仕掛けなんじゃねぇ。これならあたしでも扱えそうじゃねぇ。そぉれ、くるくる~」

 

「うぉぉぉいッ!? 誰やねんアキュートにガトリングなんか持たせたヤツはッ!! っていうかあんなん誰が用意したっちゅうかドコで売っとんねんッ!?」

 

「いやぁ~、そんなことするトレーナーなんてひとりしかいないだろ~? ど~すっかなぁ、まずはアキュートをなんとかすっか? ナカヤマ、なんかゴツいスナイパーライフルみたいな水鉄砲をアキュートの横で構えてるクリスエスなんとかなんねぇ?」

 

「やれやれ、本当にあんなものどっから調達してくるんだか、あのバカは。まぁ、いつものことだがな。クックック……ッ! さて、ゴルシの言う通りこのままだと全滅を待つだけになるな。だが、自暴自棄になって飛び出すのは勝負ですらない。どうにかタイミングを──」

 

 

「──待たせてしまったな、諸君」

 

 

「む……。ルドルフ、やはりこちらにきたか。いいだろう。──Target、Insight」

 

「友軍の到着まで、このEフィールドを維持する。皆ッ! 私に続けッ!! たとえどのような勝負であろうと、この『皇帝』シンボリルドルフは逃げはしないということを教えてやろうッ!!」

 

 

 無情にも現段階で“関わりのあるウマ娘が全員トレーニングに参加しているタイミング”を見つけることができなかった貴方は、とりあえずレクリエーションに介入するという地味な嫌がらせでお茶を濁していました。

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