貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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ジュエルが。

 人知れずエアグルーヴのトレーニングをサポートしてGⅠレース勝利までの道筋を構築するべく行動している貴方ですが、彼女がスカウトされる可能性を微粒子レベルでも減らしてしまうことのないように細心の注意が必要であることは言うまでもありません。

 しかしご安心ください! ウマ娘が関わる事柄についての気づかいが完璧であることは説明するまでもありませんし、超一流の悪役トレーナーである自分の姿しか見えていない貴方ではウマ娘たちとの距離感を見誤ることなどできません! 

 

 具体的には、まず貴方はサイレンススズカのモーニングランニングのために早朝5時前にはトレセン学園にやってきてサイレンススズカのグッドナイトヘッドバットのために夜10時を過ぎてからトレセン学園を立ち去るのが基本的な日常です。

 平均して約17時間ほどトレセン学園で毎日ダラダラと過ごしているということは、それだけ接触するウマ娘の人数も多くなるということ。もちろん貴方は全員の顔と名前をチート能力に頼るまでもなく完璧に記憶していますので、改めてアクションを起こすまでもなくエアグルーヴのサポートを偽装することなど余裕でした。

 

 

 どれぐらい余裕かというと、他人を信用せず金銭だけを心の支えにしていた暗殺者がとある超高額報酬の任務中に出会った幼い頃に死に別れた弟と瓜二つの少年に長年愛用していたナイフを託して逃がしたあと致命傷を隠したまま民間人が避難する時間を稼ぐため政府直轄の特殊部隊の前に堂々と姿を現し「喜べ。無抵抗のヤツを相手にごっこ遊びしか知らないお前たちに、この俺が本物の戦闘を教えてやる」と心の底から楽しそうに笑っている様子を見て「死神も最新装備で包囲してしまえばこの程度か。どれ、その無様な死に顔を特等席で拝んでやろうじゃないか」と勝利と昇進を確信し現場にやってきたエリート指揮官ぐらい余裕があることでしょう。

 

 

 貴方がエアグルーヴだけを贔屓しているなどという勘違いが起こらないことは証明されましたが、だからといって普通のトレーニングを提案してはいけません。

 能力は伸ばす、コンディションも落とさない、そしてなによりも周囲の眼からはトレーニングしているようには見えない珍妙にして奇天烈な方法でウマ娘たちが成長するのを手伝う必要があるからです。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 と、いうことで現在。エアグルーヴとビワハヤヒデを含めた20人ほどのウマ娘が目隠しをした状態でロープを仕切りとした狭いダートコースの上を後ろ向きで早歩きをしている周囲をほかのウマ娘たちがスイカ割りの雰囲気で囃し立てるという謎の光景が広がっています。

 

 なぜこれでステータスが強化されるのか、そもそも参加しているウマ娘たちの脚質を考えるならターフでもいいのではないか。

 そんな疑問を抱きつつも、結果として自身の評価を下げつつウマ娘たちが鍛えられるなら“なんだか知らんがとにかくヨシ”の精神で貴方は納得することにしている様子。

 

 しかし、世の中どこにでも変わり者はいるらしく貴方の意味不明なトレーニングを参考にするウマ娘やトレーナーが存在するのですから油断なりません。

 

 エアグルーヴに勝利したウマ娘はアニメやアプリで活躍するネームドウマ娘ではない、いわゆる“モブウマ娘”に分類されるキャラクターでした。

 ですがそのウマ娘を担当していた新人トレーナーは、貴方が取引ウマ娘たちに実行させているトレーニングを上手に取り込むことで見事ウマ娘をメイクデビューで勝利に導いているのです。

 

 その事実を貴方は決して軽んじてはいません。考案した本人でさえ正攻法の真っ当なトレーニングでも同じように鍛えることができるのにと疑問に思っているところを、その新人トレーナーはしっかりと分析し有効活用してみせたのですから当然でしょう。

 やはり本物のトレーナーはひと味もふた味も違うのかと貴方は大喜びです。心のどこかでは「もしかしてGⅠを含めた重賞レースに勝利しているウマ娘たちを真似すれば簡単に強くなれるだろうと安易に考えているのではないか?」と疑心を抱いたり「あのウマ娘ならエアグルーヴを真似して賢く走らせるよりも頭の中を空っぽにして正攻法で走らせたほうが余計なことに気を取られないのに」と懸念したりもしましたが全ては余計なお世話でしかないなと完全に安心しています。

 

 

 これまでは奇抜さ故にウマ娘たちも興味があったのかもしれないが、これからはそれもなくなる。もはや取引ウマ娘たちが自分から離れていくのは秒読み状態と言えるだろう。

 悪役トレーナーである己のアイディアを有効活用してみせた新人トレーナーたちの才能に満足した貴方は、短時間高密度トレーニングを希望するアルバイト組ウマ娘たちに呼ばれて歩いて行きました。








☆ネタバレ☆

この世界のサイレンススズカは秋の天皇賞で何故か故障率0%の絶好調で圧勝します。
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